日本消化器内視鏡学会雑誌
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S状結腸異所性胃粘膜の1例
齋藤 淑人龍城 真衣子石毛 崇
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2020 年 62 巻 8 号 p. 1494-1495

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症例

患者:7歳,男児.

主訴:下血.

現病歴:生後9カ月時に血便が出現しA病院を受診した.異所性胃粘膜シンチグラフィを施行したが,結果は陰性であり,経過観察とされた.4歳8カ月時に穿孔性腹膜炎を発症し,保存的加療された.原因検索のためB病院を受診し異所性胃粘膜シンチグラフィを再検したところ陽性であり,メッケル憩室穿孔による腹膜炎と考えた(Figure 1).4歳10カ月時に腹腔鏡補助下小腸切除術を予定されるも小腸に病変を発見できず手術を終了した.経過観察されていたが6歳11カ月時に再度下血を認めた.異所性胃粘膜シンチグラフィにて腹部正中に再度集積を認め,原因検索目的に当院紹介となった.

Figure 1 

6歳11カ月時,腹膜炎発症時施行した異所性胃粘膜シンチグラフィ.10分後頃より,下腹部正中(矢印)に集積を認めた.

検査所見:当院で経肛門的ダブルバルーン内視鏡検査を施行した.回腸に病変なく,肛門から10cm程度のS状結腸に隆起性病変を認めた(Figure 2-a).生検病理にて胃腺窩上皮に被覆された胃底腺組織を認め,S状結腸異所性胃粘膜と診断した(Figure 2-b).

Figure 2 

経肛門ダブルバルーン内視鏡所見(a).肛門から約10cm程度のS状結腸に隆起性病変を認めた.(b)同部位からの生検病理所見.腺窩上皮に被覆された組織で,間質に胃底腺を認めた(HE染色,40倍).

解説

異所性胃粘膜は成熟した胃粘膜組織が胃以外の解剖学的位置に存在することと定義される.Aqsaらの検討では存在部位として十二指腸が最も多く,ついでメッケル憩室と続き,食道や小腸,結腸,直腸では稀と報告している 1.異所性胃粘膜をきたす疾患としてはメッケル憩室の他,消化管重複症や平滑筋腫などが知られている.メッケル憩室は消化管発生の過程で生じる卵黄腸管遺残症の一形態であり,小児期,とくに8歳以下での発症の報告が最も多い 2.その症状の多くは消化管出血が最も多く,ついで腸閉塞・腸重積などで発症する.診断としては異所性胃粘膜シンチグラフィの有用性が指摘されており,Irvineらは正しい手法で検査を行うことで感度・特異度とも100%とすることができたと報告している 3.しかし,異所性胃粘膜シンチグラフィでは核種が胃粘膜に集積することから,異所性胃粘膜を合併する疾患ではメッケル憩室以外の疾患においても陽性となることに注意が必要である 4.本症例ではとくにS状結腸という稀な部位に本症を認めており,診断に難渋した.

近年,メッケル憩室の診断におけるバルーン小腸内視鏡の有用性が報告されている 5.バルーン小腸内視鏡は小児においても安全に行えると報告されている 6.異所性胃粘膜シンチ陽性小児例において,本検査は小腸・大腸を同時に観察できる有力な診断ツールとなりうることが示唆された.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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