2020 年 62 巻 8 号 p. 1561-1564
本学の母体である獨協学園は,1881(明治14)年に創立された獨逸学協会をその起源としており,130有余年の歴史を有するわが国でも有数の伝統をもつ学校法人である.
1973(昭和48)年 獨協医科大学開学.
1974(昭和49)年 本学の開学時に内科学講座の一つとして,消化器内科学(原田尚初代主任教授)が開設された(1976年第二内科に変更).内視鏡部が組織され,当初,検査台3台のみの内視鏡室が運営されていた.
1996(平成8)年 寺野彰第2代主任教授のもと,検査室7室(透視可能2室含む)からなる旧内視鏡センターが開設された.
2015(平成27)年 寺野彰学長,平石秀幸第3代主任教授のご尽力により,関東大震災後,耐震強度を大幅に強化した教育医療棟が新設された際に,消化器内科外来と隣接する位置に最新システムを導入した現行の消化器内視鏡センターが新規に設置された.
組織消化器内視鏡センターは中央部門の一つとして独立した組織となっている.センター長:入澤篤志,副センター長:郷田憲一,看護師長が中心となって運営され,消化器内科・第1外科・第2外科・健康管理科(人間ドック)・呼吸器内科・耳鼻咽喉科・血液腫瘍内科の医師が合同で内視鏡業務に携わっている.
検査室レイアウト

消化器内視鏡センターは受付・待合室・前処置エリア・内視鏡検査室・リカバリーエリア(4床)・内視鏡洗浄室・トイレ(2室)・カンファレンス室・医師控室・看護師控室などから構成され総床面積は620m2である.旧内視鏡センター(360m2)に比し格段に広くなり,検査室規模・検査件数ともに県内屈指の規模を誇る.全8室ある内視鏡検査室はすべて個別化され,肝胆膵処置・小腸大腸内視鏡用にシールドされたX線透視室(2部屋)も完備されている.また,治療処置用として使用される4つの検査室では,光源・内視鏡システムおよび21インチ・モニター2台(それぞれ術者・介助者用)はすべて天井からの吊り下げ式となっており,床上の配線をなくし,人・器具の最適なレイアウトと安全な移動が行えるよう配慮されている.レーザー光を用いる光線力学療法を行える部屋も設置している.また,カンファレンス・医師控室には,後述するアノテーション・システムを用いて遠隔的に指導できるよう無線トランシーバランシーバ8台が備えられている.アノテーション・システムには超音波内視鏡やESDなど,言葉での指導で足りない点を図上で視覚的に的確な指導ができるため,教育的メリットは大きく,学生・若手医師をはじめ内視鏡診断・治療テクニックの習得を目指す医師に高評価をえている.このように当内視鏡センターは救急・一般診療とともに,教育・指導に重点をおいた設備が整っている.
表に示すごとく,年間総件数は約10,000件あり,県内屈指の検査・治療件数である.上下部消化管スクリーニング検査は毎日行っており,胆膵内視鏡は主に月・金曜,上部・下部精査内視鏡・ESDなどの治療は火曜・木曜に行っている.また,全身麻酔下ESDや咽喉頭表在癌に対する耳鼻咽喉・頭頸部外科との合同手術(ELPS)も導入しており,主に木曜・土曜に行っている.炎症性大腸疾患は県内・外から広く患者紹介を受けているため,カプセル・小腸内視鏡件数も多く,主に火曜日に行っている.X線TV室は2室が対面となっており,内視鏡センター専属の放射線技師が1名配属されているため,ERCP関連手技や小腸内視鏡・気管支鏡などの透視が必要な検査・治療を同時に並行して効率よく行うことができる.
内視鏡検査数に対してリカバリーベッドが少ないため,鎮静剤の使用については症例を選定して行っている.また,夜間・休日の緊急内視鏡においては,医師2~3名(オンコール),看護師1名(夜勤)の体制で対応している.その他,咽喉頭表在癌に対する内視鏡を用いた経口的切除術(ELPS)・十二指腸表在性非乳頭部上皮性腫瘍をはじめ,サイズの大きな食道表在癌・胃早期癌など,全身麻酔を要すると判断された場合には手術室で,麻酔専門医による気管内挿管の全身麻酔下の管理下で行っている.
(2020年3月現在)
医師:消化器内視鏡学会 指導医6名,消化器内視鏡学会 専門医7名,その他スタッフ7名,研修医など4名
内視鏡技師:Ⅰ種6名,放射線技師1名
看護師:常勤12名,非常勤3名
事務職:1名
その他:補助3名
(2020年3月現在)

(2019年1月~2019年12月まで)

当内視鏡センターは教育・診療・研究からなる三位一体の指導方針を掲げており,その中で特に“教育”に注力していることが特徴といえる.当センターには消化器内視鏡学会認定の指導医・専門医が合計13名在籍しており,各分野で週1回のカンファレンスと検査・治療時の直接指導により,基礎から専門性の高い診断・治療を幅広く指導できる体制が整っている.当院は臨床研修指定病院であるため,2年目までの初期研修医全員が1-2カ月の期間ローテーションをしており,内視鏡検査・治療の介助や所見記載,さらに希望者には最新のシミュレーター(Mikoto社製上部・大腸内視鏡トレーニングシステム)によるスコープ操作のトレーニングを行っており,患者に対する前の極めて初期の段階から実践的に指導している.このシミュレーターは人間型で皮膚・顔(眼・表情)・声に加え,内視鏡検査の侵襲の目安となる咽頭反射や胃の過伸展にいたるまでリアルに再現されており,検査終了時には患者の安楽度や検査時間など項目ごとに点数が表示されるため,細かく具体的な指導を可能にしている.また3年目以降の後期研修医で消化器内視鏡領域の専門研修(サブスペシャリティー)を希望する者は学会認定の専門研修カリキュラムに則って指導している.専門研修カリキュラムには,特定の診療科に偏らず満遍なく卒後5年目まで内科専門研修を受けた後に消化器内視鏡専門研修を受けるコースと内科専門研修中と後に分けて消化器内視鏡専門研修を受けるコースがあり,前者は9年目に,後者は最短で7年目に消化器内視鏡学会の専門医の受験資格条件(上部・下部消化管内視鏡診断・治療 それぞれ1,000例・300例)を満たすことを指導目標としている.当大学の特徴から総合内科的に地域医療に広く貢献しつつ消化器内視鏡に携わることを希望する医師が多く,前者はそのニーズにマッチしている.一方,後者においては,シミュレーター実習からオリジナルの評価表を用いた適切な撮像法の指導まで網羅した専用の教育プログラムを準備している.消化器内視鏡専門研修は胆膵・消化管グループの双方に所属しつつ,オールラウンドな消化器内視鏡医を育めるよう指導している.
緻密な専門的指導を高いレベルで達成すべく,当センターでは最新のアノテーション・システムを導入している.このシステムでは,検査中の内視鏡画像が検査室内に設置された専用ディスプレイと指導者が持つiPad画面双方に同時に映し出され,指導者がiPad画像上にタッチペンで絵や文字を書き込むと,それが術者用の専用ディスプレイ上にもリアルタイムに描かれるものである.指導医がiPadに映し出される閲覧画面上に絵を描くことで,内視鏡画像を「図」として理解させることができるため,画像理解・描出法は格段に向上すると考えられる.胆膵におけるEUS画面上の対象物やEUS-FNAの穿刺ラインを,消化管では拡大内視鏡画像における表在癌の境界やESD時の剝離深度などをラインで明確に示すことが可能で,特に効果的である.
大学病院および県内外の関連施設で研修する内視鏡初学者を対象にして,前述した消化管内視鏡トレーニングモデルの他に多数のトレーニングモデル(EUS,EUS-FNA,大腸内視鏡挿入)を体験できるハンズオンセミナーを年1回,さらに動物モデル・拡大内視鏡ドライ・モデルを用いたESDハンズオンコースを年2回開催し,次世代を担う消化器内視鏡医の育成に努めている.
大学病院の内視鏡センターという立場上,専門性の高い内視鏡診療の需要に応えるべく,高度な診療レベルを提供・維持するためには,内視鏡医やコメディカルスタッフの人員の確保や設備・医療機器の拡充は必要不可欠である.
人員については,専門的な内視鏡検査・治療件数が増加している一方で,これらを施行または指導できる医師が限られており,看護師も慢性的な人員不足である.さらに,コメディカルスタッフに内視鏡技師など有資格者が少ないことも問題である.よって,専門性の高い内視鏡検査・治療を並行して行うことが難しく,検査室1室あたりあるいは医師一人あたりの検査件数は多くない.よって,今後さらに多様化・専門化し,件数も増加していく内視鏡業務に対応できるよう,病院運営側との客観的運用評価に基づいた看護師人員数増加の交渉,前述した内視鏡専門医と共に内視鏡技師の育成,また内視鏡技師資格を有するMEを採用し慢性的看護師不足の対策を図っていきたい.鎮静を希望される患者あるいは拡大内視鏡など精査内視鏡の件数が増加しているため,鎮静下での内視鏡検査枠を増設する必要がある.それに伴い,リカバリースペースが今まで以上に不足することが予想されるため,今後,リカバリー室の拡充をしていく必要があろう.さらに鎮静剤投与予定の患者はルート確保のため隣接する消化器内科外来を経由して当センターに入室するため,極めて非効率的である.当センター内でルート確保し迅速に検査をスタートできるような仕組みを構築する必要があろう.さらに最近,一般病院で対応の不可能な難易度の高い内視鏡治療を要する高齢患者の症例の紹介が増えている.そのようなケースでは通常,長時間の鎮静を要し,合併症のリスクも高まる.そこで,安全管理・合併症対策からも手術室での気管内挿管・全身麻酔下での内視鏡治療を推進しており,2020年5月からは手術室に消化器内科枠(毎週半日)が新設される予定である.
本稿で述べた内視鏡医・内視鏡技師の育成と課題の対策を講じていくことにより,教育を柱に高いレベルの診療・研究を提供・実践できるアカデミックなハイボリューム・センターを目指していきたい.