日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
宮崎大学医学部附属病院 光学医療診療部
責任者:河上 洋  〒889-1692 宮崎県宮崎市清武町木原5200
三池 忠
著者情報
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2021 年 63 巻 1 号 p. 121-124

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概要

沿革・特徴など

1973(昭和48)年3月に宮崎県民の医師不足の解消に対する熱意と,無医大県解消の施策により,宮崎医科大学として医学部の設置が決定された.1977(昭和52)年10月には宮崎医科大学医学部附属病院として創設され,地域への貢献を大きな目標に掲げた.しかし,学生の中に「目的意識の希薄」や「動機なき入学」が目立つようになり,1990(平成2)年から「ゆとり」と「多様性」を踏まえた独特な方法である「ユニーク入試」を採用した.その結果,「一芸入試」などとして地元の高校に敬遠されるようになり,宮崎医科大学の存在理由を問われかねない状況に陥った.そこで改めて,2000(平成12)年から本来の受験様式となった.しかし,落ち込んだ医師不足の解消は難しく,現在は地域枠,地域特別枠をそれぞれ設けることにより,県内の医師の充実を目指している.2003(平成15)年10月には旧宮崎大学と宮崎医科大学を統合して新「宮崎大学」が設立され,宮崎大学医学部附属病院と名称が変更された.現在,宮崎県内でがん拠点病院としての役割を担う唯一の特定機能病院であり,部局横断的な連携体制を整えている.

組織

光学医療診療部は中央診療部門に所属し,専従医師は3名である.診療に対しては消化器内科,肝臓内科,外科(消化管・内分泌・小児外科)と呼吸器内科より多数の医師が携わり協同で運営している.看護師は日中は専属の8名の看護師,時間外は救急部の看護師が業務をサポートしている.光学医療診療部部長が全体を統括し,消化器内科診療科長を兼任している.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

2000(平成12)年4月に医学部附属病院2階に光学医療診療部が開設され,2010(平成22)年に外来診療棟開設に伴い,現在の場所に移転した.2018(平成30)年10月に拡充し,リニューアルオープンとなった.

内視鏡室は,通常の4室の内視鏡検査室に加え,広めに設計された1室の処置・治療用室,X線を備えた2室のX線透視室の計7室を有する.特筆すべきは,処置室の1室とX線透視室の2室に対してシーリングペンダントを導入し,室内灯に全室LEDライトとCO2送気装置を完備していることである.内視鏡室の画像処理システムに関しては,solemioシステムを使用することでJEDへの対応も可能となっている.すべての内視鏡画像とバイタルモニターはリアルタイムに医師記録室へモニタされるため,複数の医師や看護師による客観的な評価が可能となっている.指導医は各検査室の進行状況や急変時の把握や対応も可能である.受付や下部消化管の前処置室は待合室にTVを常時放映し,問診専用室やゆったりとしたリカバリールームを設置することで患者の精神的なストレスの緩和に役立っている.南北に広いという県の特徴から,遠方から来院される高齢者の方や付き添いの家族の方々も安心して検査を受けてもらえるように,下部消化管内視鏡検査の前処置は院内で行うように勧めている.また多くの鎮静剤使用希望者に対しては積極的に使用し,検査後はリカバリールームで十分に経過観察を行っている.最終的に看護師が確認後に帰宅するシステムを運用している.

スタッフ

(2020年4月現在)

医師:指導医9名,専門医25名,その他19名

看護師:常勤6名(副看護師長1名,看護師7名)

事務補佐員:2名

技能補佐員:1名

ドクターズクラーク:1名

 

 

設備・備品

(2020年4月現在)

 

 

実績

(2019年4月~2020年3月)

 

 

指導体制,指導方針

各診療科によって指導体制や方針が異なるため,本稿では主に消化器内科について述べる.当院では,内視鏡に少しでも興味をもってもらうため,学生の頃から内視鏡に触れる機会を設けている.クリニカルクラークシップの時期に内視鏡室での見学や講義のみならず,2009(平成21)年からは消化器内視鏡のシミュレーター(GI Mentor)を用いた実習を学生一人一人に対して積極的に行っている.当院は研修指定病院であり,多くの初期研修医がローテートする.そのため初期研修1年目では研修期間が1カ月と短く,現場の内視鏡検査や治療を見学し,内視鏡検査に関する必要な知識習得が中心となる.ただ実際には雰囲気を味わうだけで研修期間を終えてしまうことが多い.初期研修2年目でも研修期間が1-2カ月と短い.積極的な研修医には内視鏡トレーニングモデルを用いた指導を行い,臨床では上部消化管内視鏡検査時に上級医の指導のもと,引き抜き操作等も経験させている.しかし短期間の研修ではやはりそれ以上の研修は難しいと考える.3年目以降の後期研修医は診療科を希望して選択し,主に病棟での診療業務の中心を担う立場となる.当科では3グループ(消化管内視鏡治療,炎症性腸疾患領域,胆膵領域)を4カ月毎にローテートしながら,上部消化管内視鏡検査を習得することを目標にしている.また,可能な限り多くの止血や内視鏡治療等の介助を行い,コロンモデル等で十分なトレーニングを積んだ後,実際の下部消化管内視鏡検査の挿入を開始する.最終的には上級医の介助のもと1人で止血術や大腸EMRをできることが“独り立ち”としての目標であり,学外の関連病院に派遣する目安と考えている.その後は自分の専門を決め,専門性の高いそれぞれの手技の習得を目指す.

教育体制は基本的に屋根瓦方式を採用している.初期研修医に対して後期研修医,後期研修医に対してスタッフと,それぞれの立場での研鑽と指導を同時に行うことができるため,双方の成長に繋がっている.緊急内視鏡検査に際して,指導も兼ねての上級・下級医師のペアによるオンコール体制もその一環である.毎週の各グループや全体カンファレンスを通して,各種ガイドラインの再確認や,高齢化,複雑化に伴う難しい個別化医療の選択や方針を討論している.また,内視鏡画像や病理組織像の対比をもとに詳細な検討を行い,それぞれ個人におけるスキルアップを目指している.国内先進施設への留学を通して,自意識の改革や培った知識や経験の還元も推奨している.地方の大学病院の特性から,術前診断や診断・治療困難症例から緩和医療まで幅広く患者を受け入れており,県内の最後の砦としての果たす役割は大きい.

現状の問題点と課題

光学医療診療部が移転し,2016(平成28)年4月に河上洋教授が当科に就任されて以来,消化管癌や胆膵系に関連した内視鏡の件数が順調に増加しているが,医療者のマンパワー不足が一番の問題である.地方の大学病院の特性から,宮崎県内の残留が少ない上に,医師の入れ替わりも多く,安定した医師の確保が課題である.看護師は専属で8名所属しているが,鎮静剤使用の内視鏡検査数の増加に伴い,検査の介助やリカバリールームへの移動,適切な配置も必要となるため,十分な看護スタッフの確保も課題である.また,当院は専任内視鏡技師や臨床工学士が不在であり,その役割を看護師が行っている.専任技師の確保も重要な課題である.専門的知識の共有以外にも,技師としての豊富な知識や経験はコストの削減など期待される点も大きく,研究活動や内視鏡件数の増加などにも繋がる可能性がある.ただし,技師資格は看護部の評価対象とならないため,当院における免許取得が推奨されないことも問題である.検査室としては,他科と共用であるX線透視室に対して,胆膵内視鏡,ダブルバルーン内視鏡,静脈瘤治療,気管支鏡やその他の透視下での検査や治療が集中し,時間調整が難しいことが多く,予定の調整に対して検討が必要である.移転・拡充に伴い,問診専用室やリカバリールーム,前処置のスペースなどのハード面は充実し,検査の効率や患者の導線は格段に良くなった.しかし,医師,看護師,内視鏡技師等の安定した医療者の確保といったソフト面の充実は,今後も努力が必要である.

大学病院として検査や手術において関連病院と密に協力し,独善的にならないように多職種で協同し,定期的に討論を行い,安全で質の高い内視鏡診療を提供できるように努力していきたい.

 
© 2021 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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