2021 年 63 巻 12 号 p. 2486-2494
食道アカラシアは,食道運動障害性疾患の代表的な疾患である.経口内視鏡下筋層切開術(per-oral endoscopic myotomy:POEM)が考案されると,それまで外科的に行われていたHeller筋層切開術に代わりうる低侵襲治療法として世界中に普及した.治療の奏効率も高く,優れた治療である一方で,その新規性からPOEM導入にあたっては様々なハードルが存在する.稀な疾患であるなどといった臨床的問題に加え,保険請求における施設基準など制度的問題も存在するため新規導入は簡単ではない.どちらの問題も決して簡単にクリアできるものではないが,治療により症状が劇的に改善することも多いPOEMは,術者にとってやりがいの大きい治療でもある.また,POEMは様々な新規治療に発展する将来性を持った優れた治療であることから,これらのハードルを乗り越えて新規導入する意義は大きい.