日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
三井記念病院
責任者:戸田信夫  〒101-8643 東京都千代田区神田和泉町1番地
戸田 信夫
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2021 年 63 巻 3 号 p. 331-333

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概要

沿革・特徴など

三井記念病院は「世界有数の電気街」「サブカルチャーの聖地」として有名な秋葉原にある病床数482の急性期総合病院.1906年,三井家総代三井八郎右衞門氏が慈善診療を目的に私財を投じて設立した財団法人三井慈善病院を前身とし,1970年に社会福祉法人三井記念病院に名称が改められた.慈善診療とは生活困窮者のみの診療を行い診療費は無料,逆に三井関係者の診療は禁止されていた.この精神は今も脈々と引き継がれている.

内視鏡が開始されたのは1967年.米国にて「ファイバースコープ」の技術を習得された須川暢一先生により導入された.当初は見学することすら許されなかったそうだが,須川先生の「内視鏡検査が主流になる時代が来る」とのお考えのもと若手医師への教育がはじまったと伝わっている.

病室や外来の1室を使用しての検査の時代が続いた後の1980年,病院の増築に伴い内視鏡すべての検査ができる本格的な内視鏡室が誕生,さらに2009年1月病院の改築に伴い現在の検査入院棟4Fに内視鏡室が設けられ今日に至っている.

組織

内視鏡部は中央診療部の独立した一部門である.消化器内科,消化器外科,呼吸器内科,呼吸器外科が診療,治療を行っている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡センターの特徴

総床面積265.14m2であり,内視鏡受付,前処置室,中待合,説明室,トイレ,リカバリールーム,検査室(上下部3室,放射線透視室1室),準備室,洗浄室,機材室,更衣室,スタッフルームなどから構成されている.検査室周囲に通路を確保して汚染器具,清潔器具が交わらないように分離している.電子カルテの端末及び内視鏡ファイリングシステムが準備室に設置されている.両者は連動しており,病理検体のオーダーはファイリングシステムを介して行うことになっている.

上部内視鏡検査及び超音波内視鏡検査を午前中に,下部内視鏡検査を午後に行い,ERCP/interventional EUSなど胆膵内視鏡,バルーン小腸内視鏡などは放射線透視室にて並行して行い,上下部ESD,PEG増設は水曜午後に集約している.

リカバリールームは,簡易ベッド3台をカーテンで仕切ることができるように配置して,検査後はモニター管理の下で十分な安静が保たれるように配慮している.トイレは3室であり,1室は車椅子で入室可能である.

当院は地域の基幹病院として救急搬送の受け入れをしている.消化管出血,胆道ドレナージなどの緊急内視鏡検査処置が必要な症例も多く,24時間,365日対応できるように3名のオンコール体制で対応している.

スタッフ

(2020年6月現在)

医師:消化器内視鏡学会 指導医2名,消化器内視鏡学会 専門医4名,その他スタッフ4名,研修医など9名

内視鏡技師:Ⅰ種2名,Ⅱ種1名

看護師:常勤6名

事務職:2名

その他:看護助手2名

設備・備品

(2020年6月現在)

 

 

実績

(2019年1月~2019年12月)

 

 

指導体制,指導方針

内視鏡のトレーニングは専門を消化器内科,消化器外科に決めた後の後期研修医から開始し,後期研修は基本3年間としている.

1カ月程度見学ならびに介助しつつ,内視鏡の基本構造,取り扱いの学習,症例検討会への参加,入門書での学習をし,上部消化管内視鏡の挿入練習(模型を用いたトレーニング)した後,上級医の指導のもと実際の症例を経験する.下部内視鏡は上部200例程度経験したところで開始する.初めの50例程度は,挿入Easy caseを選んで行っている.3年間の後期研修で上部消化管700-1,000例,下部消化管300-500例を経験し,早期胃癌の内視鏡診断,消化管出血の対応,下部消化管盲腸到達率95%を目標としている.早期胃癌の粘膜切除術,悪性消化管狭窄に対するステント留置,ERCP関連手技(乳頭切開術,結石除去,ステント留置)などのより高度な手技は主に助手として参加しているが,後期研修の最終学年で症例を選んで20例程度行っている.

これまでは上記の内視鏡研修であったが,新研修システムが導入され,6-12カ月異なる外部病院に出向する研修医と3年連続して当院で研修するものとが混在するようになる.流動的に対応せざるを得ない.

現状の問題点と今後

コメディカルの人員不足

コメディカルの人員不足が最大の課題である.現在常勤看護師6名(1名は内視鏡技師資格あり),内視鏡技師2名体制だが,鎮静剤希望者,高齢者,合併症を有する患者,侵襲性の高い内視鏡手技の増加から,術前,術中,術後の安全性を確保するには人員配置が困難になりつつある.このため検査室数,医師数は充足しているにも拘わらず検査数を制限する事態が生じている.すべてのコメディカルは向上心が高くかつ献身的に働いてくれているが,それ故に時間外勤務も常習化し,月間40時間を超えるものもおり頭を悩ませている.

リカバリーベッド

鎮静剤希望者が増加してきている中,現在3台のリカバリーベッドしかなく対応に限界がある.検査終了後覚醒まで60分間リカバリーベッド上でモニタリングしているが,観察している看護師の人員不足と相まって1時間あたり鎮静可能な症例数は1から2例である.このため鎮静剤希望者に対する内視鏡待ち期間が長期化している.

コメディカルの人員,リカバリーベッド不足いずれも内視鏡室だけで解決可能な課題ではないが,今後も限られた人員の中で,医師・コメディカルが内視鏡業務に最大の熱意を持ちつつ,協調して安全かつ質の高い診療を目指し,設備や機器の更新,スタッフの配置や増員にも取り組んでいきたい.

 
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