日本消化器内視鏡学会雑誌
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手技の解説
十二指腸underwater EMRのコツと注意点
加藤 元彦 佐々木 基
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2021 年 63 巻 5 号 p. 1125-1136

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要旨

内視鏡機器の進歩や内視鏡医の意識の向上により,上部消化管内視鏡スクリーニング検査中に比較的小型の十二指腸上皮性腫瘍(Superficial Duodenal Epithelial Neoplasia:SDET)を発見する機会は増加してきている.壁が薄い十二指腸では,術前の生検により容易に強い線維化をきたし,局注による病変の挙上が得られずEMRが不可能となることもしばしば経験される.近年消化管内腔を水で満たし,局注を行わずに切除を行うUnderwater EMR(UEMR)が報告された.UEMRでは局注を省略することで粘膜下層の線維化によらず切除することが可能で,術中の穿孔リスクも低いことが分かってきた.このようにUEMRでは技術的な困難性からこれまでESDに回っていた症例の切除を可能とし,技術的ハードルや偶発症のリスクが高いESDを回避することができる可能性がある.UEMRは安全確実な治療として,小型SDETの標準的治療となることが期待される.

Ⅰ はじめに

十二指腸の上皮性腫瘍(Superficial Duodenal Epithelial Neoplasia:SDET)は従来まれな疾患であると考えられてきたが,近年の内視鏡機器の進歩や内視鏡医の意識の向上により,上部消化管内視鏡スクリーニング検査中に発見される機会は増加してきている.

SDETの内視鏡治療は薄い壁,術後の胆汁・膵液の暴露などの十二指腸の解剖学的特性から偶発症のリスクが高い 1)~3ことが知られている.特にESDは術中や術後の穿孔のリスクが極めて高いことが知られており,比較的小型の病変に対しては可能な限りESDを避けることが望ましい.他方,十二指腸は粘膜,粘膜下層が薄く,わずかな生検によっても強い線維化によりEMRが困難,あるいは不可能になることもしばしば経験される.

近年,SDETに対してunderwater EMR(UEMR)が導入され,良好な成績が報告されている 4)~6.本稿では20mm以下の比較的小型のSDETに対するUEMRについての現況につき概説する.

Ⅱ 治療方針を決定するために必要な術前診断

前述のように十二指腸壁は粘膜,粘膜下層が薄いために,特に平坦陥凹型の病変ではわずかな生検のみで強い線維化をきたし,治療難易度が著しく高くなることをしばしば経験する(Figure 1).さらにSDETの癌・非癌の診断は感度37.5%,特異度83.1%と特に感度が低く,生検で非癌であったとしても悪性を完全には否定することができない 7.このためSDETの診断において生検病理診断は有害であるだけでなく,その有効性にも疑問があり,生検に頼ることのない内視鏡診断が重要である.

Figure 1 

生検により強い粘膜下層の線維化をきたした症例.

a:病変のインジゴカルミン散布像.3mm程度の陥凹性病変.前医の生検により中心部にひきつれを伴っている.

b:局注後の内視鏡像.病変中心部は挙上不良でnon-lifting sign陽性であった.

c:ESD中の粘膜下層の所見.病変直下には生検による粘膜下層の強い線維化を認めた.

食道,胃,大腸など他の臓器と同様にNarrow Band ImagingやBlue Laser Imagingなどをはじめとする画像強調内視鏡併用下に拡大観察を行うことで最終の組織学的所見を予測することが可能である.われわれの検討では閉鎖ループ状の構造を呈していること,あるいは粘膜内白色不透明物質(White opaque substance:WOS)の沈着の程度が少なくなるほど内視鏡切除後に癌と診断される割合が増加していた(Figure 2).これらの所見と腫瘍径を組み合わせ,「腫瘍径12mm以下かつWOS陽性」という比較的シンプルな基準を用いると,感度90.5%,特異度52.4%,正診率65.1%と特に高い感度を示した 8.このため内視鏡診断でより悪性の可能性が高い病変を絞り込むことが可能であることが示唆される.まれではあるがSDETにも粘膜下層深部への浸潤癌が含まれる(Figure 3).特に十二指腸の粘膜下層浸潤癌は転移リスクが高いことが報告されており 9),10,悪性が疑われる病変については安易に内視鏡治療を行うことなく特に十分な術前精査が必要であることは言うまでもない.

Figure 2 

最終病理像が癌であった病変の画像強調内視鏡所見.(Nakayama A, Kato M, Takatori Y et al. How I do it: Endoscopic diagnosis for superficial non-ampullary duodenal epithelial tumors. Dig Endosc 2020;32:417-24.).

Figure 3 

粘膜下層への浸潤を認めた表在性十二指腸腫瘍.

a:白色光観察.十二指腸球部前壁に40mm大の表面平滑な平坦隆起性病変を認める.

b:白色光観察(インジゴカルミン散布).

c:NBI併用拡大観察.腫瘍は閉鎖状ループを主体とする微細表面構造を呈し,white opaque substanceは認められなかった.

d:ESD切除検体(ルーペ像).

e:ESD切除検体(拡大像).腫瘍細胞は粘膜下層に深く浸潤していた.

Ⅲ 十二指腸UEMRの適応の考え方

前述のごとく腫瘍径は腫瘍の担癌率と相関する.大型の病変では局所の根治性を保ち正確な病理診断を可能とするためわれわれの施設では分割切除は許容せず,ESDでの一括切除を原則としている.他方十二指腸ESDは先進施設であっても偶発症の発生頻度が他の臓器と比べて極めて高いことは既知の事実であり 1,可能な限り避けるべきである.上記の理由からわれわれの施設では腫瘍径20mm以下をUEMRの適応としている.また腫瘍径が大きくても有茎性の病変などスネアでの一括切除が可能な病変についても適応となる. また近年UEMR同様通電を行わずに切除するcold polypectomyが報告されている 11.十二指腸における切除能は不明ではあるが,大腸においては切除深度が浅くなり,癌に対する適応は避けるべきとされている 12),13ことから,われわれは家族性大腸腺腫症の多発十二指腸病変など悪性の可能性が低いWOS陽性の小型病変に適応を限っている.

Ⅳ 十二指腸UEMRに必要な器材と準備

われわれの施設でのUEMRで使用する機材をTable 1に示す.スコープは治療用のものを用いるが,屈曲が強い十二指腸ではアングルがしっかりと効くスコープが有用である.特に下行部の前壁側の病変ではスネアリングの際に病変を6時方向にもってくるためにダウンアングルが強く効く必要がある.また十二指腸深部の病変ではアプローチが困難になることがあり,こうした症例においては下部用のスコープを使用することがある.

Table 1 

Underwater EMRに用いる機器・機材.

十二指腸管腔内の浸水には,術後の電解質異常を防ぐために生理食塩水を用いる.体温程度に温めておくと注水時の腸管の過度の蠕動を抑制することができる.

スネアについては,われわれはスネアリング時の跳ね上がりを起こしにくい硬めのスネアを好んで使用している.局注時と違い浸水時に病変は送気時に比べて縮む.このため使用するのは病変サイズよりも小さめのスネアでも可能であり,大きすぎるサイズのスネアでは狭い管腔での操作が難しくなることがある.実際に20mm程度までの病変であれば13-15mm程度のスネアで十分である.使用前にスネアを長軸方向に押して変形させておくと,スネアを開いた際に側方方向により広がり,有効である(Figure 4).高周波発生装置の設定は通常のEMR時のものと同様である.

Figure 4 

使用前のスネアの加工.

a-c:使用する前にスネアを長軸方向に抑え込むことで円形に近い形となる.

d, e:スネアを変形することで側方方向の余裕をもって切除することが可能となる.

Ⅴ UEMRの実際

UEMRの実際をFigure 5に示す.スネアリングやクリッピングの際の視野を確保するために先端の透明フードは必須である.病変にアプローチした後に浸水を行うが,この前に管腔内を十分に虚脱しておくことでその後に気泡により視野が妨げられることを防ぐことができる.また治療前にインジゴカルミン散布による観察を行った場合には十分に洗浄しておかないと注入された生理食塩水が濁り視野の妨げとなる.浸水は鉗子孔またはウォータージェットを用いて行うが,左側臥位であっても300-500mLを注入することで完全に浸水することが可能である.スネアリング時は周囲の粘膜を多めに絞扼し,「粘膜に皺を寄せる」ように行うことが側方断端を確保するコツである.また,浸水下で病変の境界が分かりにくい場合,画像強調内視鏡観察下に行うと境界が分かりやすくなる.絞扼時にスネアシースを奥に押し込むとスネア先端が跳ねてしまい病変肛門側に遺残を引き起こす原因となる.このためはじめはあえてスネアを引き気味にし,「虫取り網で引っ掛ける」ようなイメージでスネアリングし,周囲の粘膜に皺が寄り,肛門側の組織を把持したことを確認した後にシースを押し出していくときれいにスネアリングしやすい.

Figure 5 

Underwater EMRの実際.

a:十二指腸下行部後壁側に径7mm大の陥凹性病変を認める.

b-f:生理食塩水を内腔に満たし,スネアで病変を一括切除した.

g:インジゴカルミンを散布し,辺縁に遺残のないことを確認.

h:クリップで創部を完全に縫縮したところ.

UEMRではスネアリングの最終段階でどうしても肛門側の視認性が悪くなるため,この部分で遺残をするリスクがあるが,逆に下十二指腸角の外側壁など比較的病変に正対している部分では大型の病変であっても容易に一括切除を得ることができ(Figure 6),このような部位は逆にESDが困難であるため良い適応となる.また,病変がKerckling襞の上に沿うように腸管の短軸方向に広がっているような場合,スネアの先端を病変の側方に接地させた後にスコープ操作でスネアを腸管の短軸方向に沿わせ,Kerckling襞自体を隆起性の病変と見立てて絞扼することで切除が可能となる(Figure 7).Kerckling襞は大腸の半月襞と異なり,粘膜および粘膜下層のみからなっており,切除したとしても穿孔はきたしにくい.このため複数回の生検で粘膜下層に強い線維化があるような症例においても同様に局注を省略して切除することで安全確実に切除をすることができる(Figure 8).実際にわれわれの部門でUEMRを施行した219例においては術中穿孔および遅発性穿孔は1例も認めていない(95%信頼区間0-1.7%)(Table 2).前述のように術前の生検による線維化の有無によらず切除が可能となるので,スネアリング可能なサイズの病変であれば従来法でnon-lifting signのためにESDに回っていたような症例でも切除が可能となり,実際にわれわれの部門では従来法では30%程度であったESDへのコンバートが13%と有意に減少した 6

Figure 6 

比較的大型の十二指腸病変に対するunderwater EMR.

a, b:下十二指腸角外側壁に径20mm大の平坦隆起性病変を認める.サイズは比較的大きいものの,筋層に正対する位置にあり,病変の全貌も容易に観察されるため,ESDよりもUEMRの良い適応と判断した.

c:浸水後の内視鏡像.

d, e:スネアリングは辺縁に十分余裕をもって行う.

f:偶発症なく病変は一括切除された.

g:クリッピングで切除後の粘膜欠損部を完全に縫縮した.

h:切除検体.病理学的に低異型度腺腫,切除断端は水平,垂直とも陰性であった.

Figure 7 

スネアリング時の方向の調整.

a:十二指下行部,Kerckling襞に乗るように径18mm大の平坦隆起性病変を認める.

b:スコープを左にローテーションすることでスネア先端を病変肛門側,内側壁側に置く.

c-f:スネアシースを押し出しながら,スコープを軽く左にローテーションしながら右アングルをかけると腸管の短軸方向へのスネアリングが可能となる.

g:病変は一括切除された.

Figure 8 

生検による線維化を伴う症例に対するunderwater EMR.

a:下行部後壁の7mm大平坦隆起性病変.病変中央部に前医での生検によるひきつれを伴っている.

b, c:浸水下の観察.NBI観察にすることで病変の境界は明瞭となった.

d, e:浸水下にスネアリング.

 f:穿孔なく病変を一括切除した.

g:切除標本.垂直,水平断端は陰性であった.粘膜下層には強い線維化を認めた.

Table 2 

Underwater EMRの成績(n=219).

切除後の遅発性の偶発症予防には切除後の創部の完全な縫縮が重要である.われわれの検討では十二指腸の内視鏡治療後に粘膜の欠損部を完全に縫縮することでそのリスクを80%以上減少させていた一方,不完全な縫縮症例ではリスクの低下は認められなかった 3),14.前述のように十二指腸のKerckling襞は粘膜と粘膜下層のみからなり,十二指腸の粘膜はいわば「筋層に比べて余っている」状態であるため創部を寄せて閉鎖することは比較的容易である.比較的大きな粘膜欠損では粘膜だけでなく筋層を合わせるようにすると術後に離開を予防できる.この際切除時と同様に管腔内を水で満たすことで腸管の過度の緊張を取り,縫縮が容易になることが報告されている 15.また,もっとも重要な中央部の縫縮にはクリッピング前に再開閉可能なクリップを用い,把持できていることを確認することで確実な縫縮が可能となる(Figure 9).

Figure 9 

比較的大きな粘膜欠損に対するクリップ縫縮.

a:18mm大の病変の切除後の粘膜欠損部.

b:浸水下に観察を行うと腸管の過度の緊張が取れ縫縮が容易となる.

c:欠損中央部のクリッピング.再開閉可能なクリップを用いることで確実な縫縮が可能となる.

d:中央部が縫縮されれば,追加のクリップは安価な単回閉鎖のクリップでも容易に縫縮することが可能である.本症例では計8カ所のクリッピングで完全縫縮が得られた.

Ⅵ 治療のピットフォール

前述のようにUEMRは線維化があるような病変に対しても安全な切除が可能になるが,一方で分割切除や断端不明/陽性の症例が従来のEMRに比べて増加する可能性がある.実際にUEMRの一括切除割合は87%とEMRの96%に比べて有意に悪い結果であった 6.UEMRで遺残が起こりやすいのはスネアリングの際に視認性が不良になりやすい病変の肛門側である(Figure 10).このためわれわれは特に分割切除になりやすい15mmを超えるような病変に対しては病変肛門側の病変外に局注を打つことでマージンを確保する部分局注併用のUEMRを行うこともある(Figure 11).

Figure 10 

Underwater EMRで分割切除となった症例.

a:下行部の15mm大の平坦隆起性病変.

b:Kerckling襞にまたがる病変で肛門側に病変の伸び出しを認める.

c:浸水後.Kerckling襞のために病変肛門側の視認性は不良である.

d:スネアリング後.

e:病変肛門側に遺残を認めた(矢頭).

f:追加スネアリング.

g:切除後の粘膜欠損部.

h:病変は2分割で切除された.病理結果は低異型度腺腫であった.

Figure 11 

部分局注併用underwater EMRで切除した病変.

a, b:Treitz靭帯近傍に20mm大,白色調の隆起性病変を認める.近接困難で肛門側の視認性は不良であった.

c:ヒアルロン酸ナトリウム0.8mLを病変肛門側に局注し肛門側のマージンを確保した.

d:スネアにて一括切除.

e:遺残なく病変は切除された.

f:切除標本では肛門側に十分なマージンが確保されていた.

Ⅶ おわりに

EMRにおいて「局注」は良好な膨隆を作るのは容易でなく,術者の技量が問われる手技であった.UEMRではこのステップを省略することで術者の技量によらず再現性をもって切除ができるようになる.十二指腸ではわずかな生検でも粘膜下層に強い線維化をきたすが,UEMRはこうした病変であっても比較的容易に切除ができるようになった.従来局注による挙上不良のためにESDに回っていたような症例であっても切除が可能となり,技術的ハードルやリスクが極めて高い十二指腸ESDを回避できることはUEMRの大きなメリットである.

一方で,UEMRは特に比較的大型の病変では分割切除となる危険が高い可能性がある.切除後の大きな粘膜欠損部は縫縮が難しいこと,大型の病変では切除後に癌と診断されることが多いことなども考えれば,こうした病変は専門施設におけるESDも選択肢に上がる.治療の適応においては一つの方法に固執せず正確な術前診断に基づき個々の患者の事情に応じて決定される必要がある.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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