日本消化器内視鏡学会雑誌
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63 巻, 5 号
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総説
  • 新井 冨生
    2021 年63 巻5 号 p. 1075-1086
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
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    病理診断は検体採取の段階から始まるので,検体採取を担う内視鏡医は病理診断において重要な役割を果たしている.採取された生検検体は乾燥を避けて速やかに固定し,内視鏡治療された検体は適切に伸展して固定する.固定液は蛋白質発現や遺伝子変異の検索にも適した10%中性緩衝ホルマリンが推奨されている.内視鏡治療された検体は,壁深達度,組織型,浸潤様式,リンパ管侵襲,静脈侵襲,切除断端など各臓器に共通する項目を検討して,治療の完了や追加切除の適否を判定する.一方,ルゴール染色(食道),食道胃接合部判定,組織混在型(胃),簇出(大腸)など臓器特異的な取扱いや評価項目もある.最近普及しつつあるEUS-FNA法は検体採取や取扱いに多職種の協力が必要であり,正診率をあげるためには組織診断と細胞診の併用が有用である.内視鏡治療をさらに適切なものにするためには転移・再発リスクをより正確に予測できる因子が必要であり,臨床医と病理医の協力のもとさらなる検討が不可欠である.

  • 杉山 政則
    2021 年63 巻5 号 p. 1087-1098
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
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    私は英文論文を執筆することの重要性を認識していたが,40歳まで執筆できなかった.その後初めて研究や英文論文執筆の楽しさを知り,80篇以上の論文を筆頭著者として発表することができた.本稿では臨床医にとっての研究の意義,英文論文作成の基本を述べた.昇進・就職のための義務として始めた研究でも,新しい知見を発見・発表するという喜びを見出せるようになる.研究を通して科学的姿勢を身につけることは臨床医にとっても重要である.よい論文の条件は新知見があり,論理的,簡潔・明快なことである.研究の目的,結論,意義,独創性を明確に述べることが重要である.最初はよい英文論文の模倣から始めるとよい.細かなことは気にしないで,とりあえず一気に書き上げて,あとで直せばよい.

    【結論】不完全でもよいから,とにかく書いてみよう.あとはだれか(指導者)が直してくれるだろう.

症例
  • 中村 佳史, 塩野 泰功, 田中 翔太, 西川 健一郎, 勝田 浩司
    2021 年63 巻5 号 p. 1099-1105
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
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    症例は68歳男性.右下肢開放骨折で入院中に腹痛と下痢が出現し,改善しないため当科へ紹介となった.CTで遠位回腸に壁肥厚を認め,経肛門的シングルバルーン内視鏡で同部位に全周性区域性潰瘍がみられた.低アルブミン血症もみられることから99mTc-DTPA-HSAシンチグラフィを行うと,潰瘍と一致する部位に集積を認めた.虚血性小腸炎による蛋白漏出性胃腸症と診断し,保存的加療を行ったが改善しないため回盲部切除術を施行した.術後,症状や低アルブミン血症の改善が得られた.虚血性小腸炎により蛋白漏出性胃腸症が生じ得ることを念頭に置く必要がある.

  • 坂田 奈津子, 竹内 祐樹, 松永 圭司, 岡本 憲洋, 川久保 洋晴, 坂田 資尚, 下田 良, 江﨑 幹宏
    2021 年63 巻5 号 p. 1106-1112
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
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    症例は69歳男性.慢性下痢の精査目的で下部消化管内視鏡検査を施行した.横行結腸に2型進行癌を認めたが,その口側にY字型の人工血管を疑う異物を認めた.大腸壁に穿通を疑う部位は見られなかったが,上部消化管内視鏡検査で十二指腸水平脚に周囲からの襞集中を伴う多結節状隆起を認めた.腹部造影CT検査では,以前に置換された腹部人工血管は消失し,腎動脈分枝部より遠位側の腹部大動脈は血栓閉塞していた.また,十二指腸水平脚は背側で虚脱した腹部大動脈と癒着していたことから,同部位から人工血管が腸管に迷入したと考えられた.大動脈十二指腸瘻より人工血管が完全に腸管内へ迷入したきわめて珍しい症例であり,ここに報告する.

  • 河野 友彦, 岡信 秀治, 初鹿 佳輝, 坂本 愛子, 田中 裕輔, 山下 由美子, 保田 和毅, 笹尾 昌悟, 藤原 恵, 古川 善也
    2021 年63 巻5 号 p. 1113-1118
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
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    症例は54歳女性.腹部腫瘤を主訴に近医を受診した際に腹部超音波検査で回盲部腫瘤を指摘されたため,当科外来を紹介受診した.大腸内視鏡検査で盲腸に粘液に覆われた30mm大の凹凸不整な結節状の隆起性病変を認め,内視鏡上は1型進行大腸癌を疑った.しかし生検組織の病理検査では上皮細胞に癌の所見はなく栄養型のアメーバ虫体を認めたため,アメーバ性大腸炎と診断し,メトロニダゾール投与を行ったところ腫瘤は消失した.アメーバ虫体の浸潤による粘膜表層の炎症性滲出物の増加が粘膜上層にとどまらず深部に浸潤していることが腫瘤を形成した原因と考えられた.アメーバ性大腸炎で1型進行癌様の形態を呈する症例は稀であるため報告する.

  • 髙橋 賢一, 七里 頼子, 井上 照彬, 兼子 直也, 森 雅史, 小宮山 明, 大澤 恵, 杉本 健
    2021 年63 巻5 号 p. 1119-1124
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
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    症例は74歳,男性.便潜血反応陽性を主訴に受診.内視鏡検査で直腸に隆起性病変を認め直腸粘膜脱症候群を疑った.経過観察中に短期間で潰瘍性病変へ形態が変化したことから悪性リンパ腫を疑ったが確定診断に難渋し,内視鏡検査と生検を繰り返し,最終的にはEBER(EBV-encoded RNA)陽性所見からEBV(Epstein-Barr virus)関連の末梢性T細胞リンパ腫・非特定型(peripheral T-cell lymphoma,not otherwise specified:PTCL-NOS)と診断した.全身化学療法を行ったが,初診から約10カ月の短期間で死亡した.消化管原発悪性リンパ腫においてT細胞性リンパ腫は少なく,EBV陽性のPTCL-NOSはさらに稀であり予後不良であることが知られる.本例は内視鏡所見が短期間で急激に変化し,その経時的変化を観察し得た貴重な症例であり報告する.

手技の解説
  • 加藤 元彦, 佐々木 基
    2021 年63 巻5 号 p. 1125-1136
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
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    内視鏡機器の進歩や内視鏡医の意識の向上により,上部消化管内視鏡スクリーニング検査中に比較的小型の十二指腸上皮性腫瘍(Superficial Duodenal Epithelial Neoplasia:SDET)を発見する機会は増加してきている.壁が薄い十二指腸では,術前の生検により容易に強い線維化をきたし,局注による病変の挙上が得られずEMRが不可能となることもしばしば経験される.近年消化管内腔を水で満たし,局注を行わずに切除を行うUnderwater EMR(UEMR)が報告された.UEMRでは局注を省略することで粘膜下層の線維化によらず切除することが可能で,術中の穿孔リスクも低いことが分かってきた.このようにUEMRでは技術的な困難性からこれまでESDに回っていた症例の切除を可能とし,技術的ハードルや偶発症のリスクが高いESDを回避することができる可能性がある.UEMRは安全確実な治療として,小型SDETの標準的治療となることが期待される.

資料
  • 橋本 林太朗, 井上 晴洋, 島村 勇人, 桜庭 篤, 冨澤 裕
    2021 年63 巻5 号 p. 1137-1146
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
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    電子付録

    【背景・目的】経口内視鏡的筋層切開術(POEM)は,食道アカラシアに対する有効かつ安全な救済療法として報告されているが,まとまった報告は限られている.そこでわれわれは,従来の内視鏡治療や外科的治療の効果が不十分であった症例に対するPOEMの臨床的成功率と有害事象の発生率を報告した研究のシステマティックレビューとメタアナリシスを行った.

    【方法】内視鏡治療または外科的治療の効果が不十分である食道アカラシア患者におけるPOEMの有効性と安全性を報告する論文を対象に,2018年12月までの文献検索を行った.Primary outcomeは臨床的成功率とし,臨床的成功はPOEM後Eckardtスコア≦3と定義した.Secondary outcomeは,手技時間,POEMに関連する逆流性食道炎(GERD)および手技に関連する有害事象の発生率とした.

    【結果】487人の患者の転帰を報告した7つの研究がメタアナリシスに含まれる研究として基準を満たした.POEMの臨床的成功率は88%(95%信頼区間(CI):79~94%)であった.平均手術時間は64分(95%CI:44~85分)であった.POEMに関連したGERDは20%(95%CI:16~24%)の患者に認められた.全有害事象の推定発生率は10%(95%CI:5~18%)であり,出血,mucosotomy,気胸,気腹,胸水・縦隔炎,皮下気腫の各々のリスクは1~4%であった.

    【結論】従来の内視鏡治療または外科的治療の効果が不十分な食道アカラシア患者に対するPOEMは効果的で安全な治療法である.食道アカラシアに対するPOEMの持続的な有効性を検証するためには,より多くの患者を対象としたさらなる長期追跡調査が必要である.

ガイドライン
  • 浦岡 俊夫, 滝沢 耕平, 田中 信治, 樫田 博史, 斎藤 豊, 矢作 直久, 山野 泰穂, 斎藤 彰一, 久部 高司, 八尾 隆史, 渡 ...
    2021 年63 巻5 号 p. 1147-1158
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
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    日本消化器内視鏡学会では,大腸EMRとESDの棲み分け,そのための術前診断,実際の内視鏡治療の有効性と安全性を第一線の臨床現場で確保するための指針として「大腸ESD/EMRガイドライン(第2版)」を2019年に作成した.大腸ポリープに対しては,ポリペクトミーやEMRなど通電を伴う内視鏡切除がこれまで適用されてきたが,最近,通電を伴わないcold polypectomyを導入・実施する施設が増えてきている.そこで,新たな知見を加えて,cold polypectomyに関する追補版を作成することとなった.しかし,各ステートメントに関してのエビデンスレベルは不十分なものが多く,今後は臨床現場での追補ガイドラインの検証が必要である.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 炭山 和毅
    2021 年63 巻5 号 p. 1167
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
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    【背景および目的】大腸表在型隆起性病変に対するUnderwater EMR(UEMR)は,粘膜下局所注入を伴う従来のEMR(CEMR)の有望な代替治療法として登場した.本システマティックレビューおよびメタ解析の目的は,大腸表在型隆起性病変に対する治療効果と安全性についてUEMRとCEMRを比較することである.

    【方法】解析対象文献は,2020年5月までに出版された研究報告を対象としMEDLINE/PubMed,The Cochrane Library,CINAHL,Google Scholarおよび Scopusを用い検索が行われ,UEMRとCEMRが直接比較されている研究のみが解析された.評価項目は,病変一括切除率,再発率,術後出血率,穿孔,切除時間であった.

    【結果】最終的に1,237病変(UEMR:614病変,CEMR:623病変)を含む7研究が解析された.その結果,一括切除率については,UEMR群がCEMR群を有意に上回っていたが(odds ratio[OR],1.84;95% confidence interval[CI],1.42-2.39;P<.001;I2=38%),サブグループ解析では,20mm以上の病変では有意な改善が認められたものの(OR,1.51;95% CI,1.06-2.14;P=.02;I2=44%),20mm未満の病変を対象とすると有意な差は認められなかった(OR,1.07;95% CI,.65-1.76;P=.80;I2=27%).再発率についても20mm以上の病変における低い再発率の影響によりUEMR群ではCEMRに比して有意に抑制された(OR,.30;95% CI,.16-.57;P=.0002;I2=0%).一方,術後出血率(OR,1.11;95% CI,.57-2.17;P=.76;I2=0%)や穿孔率(OR,.72;95% CI,.19-2.83;P=.64;I2=0%).については両群に有意差は認められなかった.

    【結論】本システマティックレビューおよびメタ解析の結果,UEMRはCEMRの安全かつ有効な代替となり得ることが示された.適正なトレーニングが必要であるが,UEMRは大腸表在型隆起性病変に対する第一治療戦略として強く検討が推奨される.

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