日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡治療および外科的治療に抵抗性のアカラシア患者に対する救済療法としてPOEMは有効で安全である―システマティックレビューとメタアナリシス―
橋本 林太朗井上 晴洋島村 勇人桜庭 篤冨澤 裕
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電子付録

2021 年 63 巻 5 号 p. 1137-1146

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抄録

【背景・目的】経口内視鏡的筋層切開術(POEM)は,食道アカラシアに対する有効かつ安全な救済療法として報告されているが,まとまった報告は限られている.そこでわれわれは,従来の内視鏡治療や外科的治療の効果が不十分であった症例に対するPOEMの臨床的成功率と有害事象の発生率を報告した研究のシステマティックレビューとメタアナリシスを行った.

【方法】内視鏡治療または外科的治療の効果が不十分である食道アカラシア患者におけるPOEMの有効性と安全性を報告する論文を対象に,2018年12月までの文献検索を行った.Primary outcomeは臨床的成功率とし,臨床的成功はPOEM後Eckardtスコア≦3と定義した.Secondary outcomeは,手技時間,POEMに関連する逆流性食道炎(GERD)および手技に関連する有害事象の発生率とした.

【結果】487人の患者の転帰を報告した7つの研究がメタアナリシスに含まれる研究として基準を満たした.POEMの臨床的成功率は88%(95%信頼区間(CI):79~94%)であった.平均手術時間は64分(95%CI:44~85分)であった.POEMに関連したGERDは20%(95%CI:16~24%)の患者に認められた.全有害事象の推定発生率は10%(95%CI:5~18%)であり,出血,mucosotomy,気胸,気腹,胸水・縦隔炎,皮下気腫の各々のリスクは1~4%であった.

【結論】従来の内視鏡治療または外科的治療の効果が不十分な食道アカラシア患者に対するPOEMは効果的で安全な治療法である.食道アカラシアに対するPOEMの持続的な有効性を検証するためには,より多くの患者を対象としたさらなる長期追跡調査が必要である.

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© 2021 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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