2021 年 63 巻 5 号 p. 1159-1162
東海大学医学部付属病院は1975年に神奈川県の県央ならびに県西の中核医療機関として開院した.東海大学の創立者松前重義は,「ヒューマニズムと科学の調和をはかり,新しい医療体制の確立をめざす」と宣言し,「人格豊かで幅広い視野とヒューマニズムに基づく使命感を持った医師を育成する」と共に「患者さんの精神的な支えとなり,心あたたまる人間性豊かな病院を建設する」を基本理念としている.それ以来,東海大学医学部付属病院は,高度先端医療の提供,先端医学および医療技術の研究・開発,そして良き医療人の育成を担う特定機能病院として46年目を迎えている.2006年に現在の14階建ての病院棟(5号館)が完成し,2021年4月現在,35の標榜科,許可病床数804床,2019年度外来患者数2,468人,2019年度1日平均入院患者数775人と神奈川県西部の地域医療にも大きく貢献している.
組織内視鏡室は中央診療部門の一つとして位置づけられている.内視鏡室では,消化器内科,消化器外科,健診センターが中心となり消化器内視鏡検査を,また,呼吸器内科,呼吸器外科が気管支鏡検査を行っている.内視鏡室は,これらの診療科と連携をとりながら,内視鏡業務の運営と安全管理を行っている.
検査室レイアウト

当院の内視鏡室は病院棟2階,第4診療センター内に配置されている.
またX線透視室は病院棟1階にあり,ERCP,ダブルバルーン小腸内視鏡,気管支鏡検査などを行っている.中央の検査室の3室(検査室4,5,7)は,ESDをはじめとした治療内視鏡を行っており,緊急対応時も人員の招集や物品の準備などの対応を迅速にできる体制が整っている.
内視鏡検査開始時には施行医,看護師,内視鏡検査技師など複数のコメディカルでタイムアウトを行い患者の診療情報を共有している.これにより術前に生検に伴うリスクや鎮静に伴うリスク,服用薬剤の確認を再度行っている.また内視鏡検査を実施する全ての部屋で患者の血圧や呼吸状態などを複数の医療者でモニターし,検査後の患者の状態に合わせて回復室を使用している.施設内の全8室にファイリングシステムと院内電子カルテ端末が装備されており,検査終了後はレポートと画像を閲覧可能である.また最新の医療機器を導入しており,上部消化管内視鏡検査,大腸内視鏡検査,ERCP検査,拡大内視鏡検査,超音波内視鏡検査,小腸バルーン内視鏡検査などを実施している.
(2021年3月時点)
医師:常勤医51名(消化器内科,消化器外科,呼吸器内科,呼吸器外科,救命救急科,健診センター)
内視鏡技師:Ⅰ種6名,その他2名
看護師:常勤7名(内視鏡技師資格あり1名)
その他:洗浄員2名,事務職5名

東海大学医学部内科学系消化器内科学(医学部付属病院(伊勢原))のスタッフ
(2021年3月時点)

(2018年4月~2019年3月まで)

東海大学医学部のクリニカルクラークシップでは内視鏡モデルを使用した実習を行っており,さらに各専門グループにわかれて実際の内視鏡検査を見学する時間も設けている.これにより在学中から内視鏡検査について触れ,実地で学ぶ機会を豊富に提供している.
初期研修医の多くは消化器内科をローテートし,まずは当院にある内視鏡モデル(上部消化管・ERCP研修モデルE型LM-022,大腸内視鏡用トレーニングモデルM-40,内視鏡治療トレーニングモデル)を使用しての基本動作,内視鏡についての基本的知識を身につけることを目標にしている.臨床助手(専攻医)や助教が,屋根瓦方式で初期研修医の指導を行い,個々の経験や技術を積極的に伝授している.上級医によって基本動作が身についたと判断された初期研修医は,担当患者の上部消化管内視鏡検査を上級医の指導のもとで行っている.研修期間中の初期研修医は個々の能力に差があるものの,最終的に上部消化管内視鏡検査を上級医の指導のもと,単独で行っており,少なくとも一通りのスクリーニング検査までは独立して行えるまでに到達する.
消化器内科に入局後の臨床助手1年目(卒後3年目)は,週1回以上,上級医のマンツーマン指導のもとで上部消化管内視鏡検査を行う.指導医からの知識と技術の振り返りを毎回受ける.また同時に消化管出血に対して内視鏡的止血術の知識と技術の会得も上級医の指導のもと,充分な安全配慮のもとで行っている.
また臨床助手1年目の後半から臨床助手2年目(卒後4年目)は大腸内視鏡検査の基本技術の研修期間となる.特に大腸内視鏡モデルを使用して基本動作を学びつつ,上級医の指導下で腸管内視鏡像の観察から始まり,徐々に挿入を開始する.下部消化管内視鏡検査が安定して挿入と観察が行えるようになった段階で,大腸ポリープのpolypectomyやEMRの指導を開始する.
臨床助手2年目の後半から臨床助手3年目(卒後5年目)には,ESDやEUSあるいはERCPなどの修練が開始される.
臨床助手修了後は助教に昇格し,各専門領域の先端技術を学修するとともに先端医学・医療の開発のための研究に従事し,専門医資格や博士(医学)号の取得を行う.
カンファレンスではESDやERCPの症例の提示や高難度症例の対策,治療方針の検討などが行われる.さらに月1回の病理医と治療後の内視鏡画像と病理組織学的所見の対比を行うフィードバック検討会も行っている.
臨床研修指定病院であるので初期研修医の多くが消化器内科をローテーションするが,8週間と短い期間であるため,内視鏡に実際に触れる機会が限られてくる.また,現在の新専門医制度下の専攻医の場合,基本診療領域である内科専門医プログラムと併行して,サブスペシャルティとしての新たに整備される消化器内科専門医プログラムを研修する中での内視鏡研修という位置づけになる.そのため,オンラインやAIを駆使し,より効率的な教育研修環境を模索し常に開発し続けている.
また,当院は地域の中核病院である一方で,大学病院でもあるため,高難度症例を多く診ており,多くの合併症をかかえる超高齢症例や多くの介助を必要とする症例も多い.そのため,鎮静下での内視鏡検査時は全例EtCO2モニターをはじめとした各種モニターの装着など,合併症の予防に細心の注意を払っており,安全かつ正確な内視鏡検査を心掛けている.その一方で一症例にかかる検査準備時間が増えており,検査開始までの時間の短縮も今後の課題となっている.
また当院における消化器内視鏡検査施行までの予約待機時間が,地域を中心とした需要が増えると共に長期化している.とりわけ大腸内視鏡検査は待機期間が約1カ月半程度に及んでいる.内視鏡検査室はほぼフル稼働しており,新たな検査枠の増設やコメディカルの増員も今後の重要な課題である.こうした内視鏡室や人員制約の下で,予定外の緊急内視鏡検査も頻繁に行われているので検査待機時間がさらに長期化する一因となっている.本年度より,一部の大腸内視鏡検査を午前中から開始しており,これにより検査の待機期間が以前と比較し短くなっている.
また本学は総合大学であり,理工学部等他学部や一般企業とも協力し,高速通信網やAI技術を応用した内視鏡検査・診断の遠隔サポートやリモートコントロール,遠隔教育体制の構築など大学病院の内視鏡室として最先端の研究開発に着手している.今後はAI技術を駆使することで診断精度と教育研修効果のさらなる向上を目指している.とりわけ現在のようなコロナ禍での生活様式の変化に対応して,人の移動や時間の削減への効果が期待できると考えられる.また,地域全体の医療レベルの均一化,施設間での最新知識や技術の共有など様々な効果が期待でき,今後の医療の発展への貢献も期待される.