日本消化器内視鏡学会雑誌
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大腸内視鏡AIの現状と将来
三澤 将史 工藤 進英森 悠一前田 康晴小川 悠史一政 克郎工藤 豊樹若村 邦彦林 武雅宮地 英行馬場 俊之石田 文生伊東 隼人小田 昌宏森 健策
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2021 年 63 巻 7 号 p. 1402-1416

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抄録

大腸癌の世界的な罹患率と死亡率は依然として高い状態である.大腸内視鏡検査は,腫瘍性病変の発見と切除のためのゴールドスタンダードと考えられている.しかし,大腸内視鏡検査は,人間のパフォーマンスの限界に関連したいくつかの不確実性を包含する.第一に,1回の大腸内視鏡検査では,大腸腫瘍性病変の約4分の1が見逃される.第二に,optical biosyに関しては,エキスパートでない医師が高い精度で診断することは依然として困難である.第三に,腺腫検出率に関連するいくつかの質の指標(例えば,盲腸到達,腸管前処置,抜去速度など)の記録が不完全な場合がある.近年の機械学習技術の向上とコンピュータ性能の向上に伴い,人工知能を用いたコンピュータ支援診断は,内視鏡医に利用されるようになってきた.特に,深層学習の出現により,従来の機械学習技術よりもコンピュータ支援システムの開発が容易になり,現在では,前者が大腸内視鏡によるコンピュータ支援診断の標準的な人工知能と考えられている.これまでのところ,コンピュータ支援検出システムは,腫瘍性病変の検出率を向上させる可能性が指摘されている.さらに,コンピュータ診断支援システムは,optical biopsyにおいて診断精度を向上させる可能性がある.さらに,大腸内視鏡検査の質の向上を目的とした,いくつかの人工知能支援システムが報告されている.コンピュータ支援システムを臨床現場に導入することで,パフォーマンスの低い内視鏡医の教育やリアルタイムの臨床意思決定の支援など,さらなる利点が得られる可能性がある.

本レビューでは,主に消化器内科医から報告されている大腸内視鏡検査時のコンピュータ支援診断に焦点を当て,その現状と限界,今後の展望について考察した.

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© 2021 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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