日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
国立病院機構 南和歌山医療センター
責任者:木下幾晴  〒646-8558 和歌山県田辺市たきない町27-1
木下 幾晴
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2021 年 63 巻 7 号 p. 1417

詳細

概要

沿革・特徴など

平成4年7月1日,「国立病院・療養所の再編成計画」に基づき,国立田辺病院と国立白浜温泉病院が統合し,国立南和歌山病院として設立(再編成による統合第一号病院).平成16年4月1日,独立行政法人化により国立病院機構 南和歌山医療センター(通称:南和歌山医療センター)と改名し現在に至る.

組織

内視鏡室の運営は内視鏡室運営委員会のもと行われる.委員会の医師構成メンバーは委員長(副院長)のもと消化器科・内科・外科・呼吸器科から代表を出している.内視鏡室長は現在消化器科医長が担当している.内視鏡室看護師は外来部門所属であり,臨床工学士が2名内視鏡技師として消化器内視鏡学会認定技師をとるべく内視鏡業務も行っている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡室は外来部門の2階に3室(1室は入院患者処置用)と1階の放射線室に内視鏡専用透視室の計4室からなる.4室中3室にミニチュアが施行可能な超音波装置を備え,そのうち1室にて造影超音波が施行可能である.リカバリー室は同時に7名が使用でき,内視鏡室の総面積は438.92m2となっている.

拡大内視鏡は上部が7本,下部が7本あるため,ルーチンの上下部検査から拡大内視鏡を用いることを基本としている.すべての内視鏡室で前方送水装置とCO2送気装置を備えており,予定外の治療内視鏡にも対応できるようにしている.また,透視装置には吊り下げ式の放射線防護カーテンを設置し,可能な限り被爆低減を目指している.2020年4月からはダブルバルーン内視鏡を導入したため,これまで施行不能であった小腸疾患への治療だけでなく,術後再建腸管でのERCPも施行可能となった.紀南地方の内視鏡治療を担う基幹病院として,本邦で行いうる内視鏡治療のほとんどを施行できることを目指している.

スタッフ

(2020年11月現在)

医師:消化器内視鏡学会 指導医4名(消化器科2名,内科1名,外科1名),消化器内視鏡学会 専門医3名(内科2名,外科1名),その他スタッフ5名

内視鏡技師:Ⅰ種4名,臨床工学士2名

看護師:常勤5名,非常勤1名

その他:洗浄員(交代)4名

設備・備品

(2020年11月現在)

 

 

実績

(2019年4月~2020年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

各科の内視鏡検査件数の内訳は消化器科62.8%,内科19.0%,外科18.2%となっている.主力の消化器科は消化器癌(消化管・胆膵)の内視鏡的診断・治療および,初期研修医や内視鏡学会の専攻医への教育を担当している.地方の基幹病院として求められる消化器内視鏡医は消化管も胆膵も診断から治療まで高いレベルで施行可能な医師である.したがって内視鏡教育はそれを目指して行っている.

消化管領域については拡大内視鏡をルーチン検査から用いることから,拡大内視鏡を使いこなす知識と技術をまず身につけることから始まる.週1回内視鏡読影カンファレンスでは主に生検症例,ESD症例の拡大所見と病理との対比を行っている.初期研修医には消化器内視鏡の診断に関する基本的な知識について自習するテーマを与え,週に1回全体に対してプレゼンテーションをしてもらっている.

具体的な手技の習得は,マンツーマンで指導を行い,まずはルーチンの上部検査が問題なくできるようになることを目指している.下部については研修医の状況によっては上部と同時に始めることもあるが,基本的には上部検査が独力でできるskillを身につけてから研修を開始することが望ましいと考えている.消化管の治療内視鏡については,ターゲット生検が問題なく行えるようになればESDも含めた治療内視鏡の研修を開始している.ESDについては最初は胃病変から開始し,胃病変が問題なく施行可能となれば食道・大腸へと経験を積んでいっている.

胆膵領域については,EUSとERCPは同時並行で研修を行っている.当院のEUS専用機はすべてコンベックスとなるため,まずはコンベックスでの全膵スクリーニングができることを目標としている.助手としてEUS画像の理解が上級医と一致すればスコープ操作の研修に入る.自力で全膵スクリーニングができるようになればEUS-FNAへとすすめていく.ERCPは助手としてガイドワイヤー操作や診断・治療に必要な解剖の理解がすすんだと判断すれば術者として研修を積む.

学会・研究会へは単に参加するだけでなく,発表することを積極的に推奨している.発表に際しては上級医から最大限の援助をしている.発表することで症例や自施設の成績などを振り返り,知識の整理だけでなく新たな発見をすることがあり,さらなる理解につながると考えているからである.できれば学会発表した中から論文へとつながるよう援助したいと考えている.

現状の問題点と今後

内視鏡技術の進歩に伴い,内視鏡でできる治療の幅が拡大しているが,1施設ですべての内視鏡処置をできうる病院は少ない.和歌山県は南北に長く,医師の集中する和歌山市は県最北に位置しているという地理的な特徴がある.当院のある田辺市と和歌山市は約100km離れているため,患者も容易く和歌山市まで通院できないという事情もあることから,紀南地方の基幹病院である当院の内視鏡診療に求められる役割は大きい.そのような事情から当院では本邦で行いうるほぼすべての内視鏡治療が施行可能であることを目標に掲げ,治療では現在ESD(食道・胃・大腸),ERCP,Interventional EUS,小腸疾患に対するDBE治療まで施行できるようになった.内視鏡件数は年々増加傾向にあるが,近年は増加のスピードが速い傾向にある.地域全体で病院に勤務する消化器内科医が不足していることもあり,2020年はコロナ禍にあるにも関わらず前年を上回る内視鏡件数になる見込みで,特にERCPは2020年11月の時点で,既に昨年の実績を上回っている.

現状の最も大きな問題点は,ひとえに人員不足ということにある.医師も内視鏡に携わるスタッフも足りない状況である.研修医や専攻医にとっては様々な手技を経験できる場ではあるものの,満足度の高い研修を提供するためにもスタッフの人材確保は最優先課題である.当院は女性医師も積極的に採用したいと考えている.また,性別に関わらず何らかの事情で内視鏡のキャリアを中断せざるを得なかった医師についても,再教育も含め受け入れたい.すべての内視鏡医にとって働きやすい環境づくりを構築していくことが重要であると考えている.

 
© 2021 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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