日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
福岡大学病院 内視鏡室
責任者:平井郁仁(福岡大学医学部消化器内科学講座教授,福岡大学病院内視鏡部診療部長)  〒814-0180 福岡県福岡市城南区七隈7-45-1
船越 禎広塩飽 洋生平井 郁仁
著者情報
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2021 年 63 巻 7 号 p. 1421-1424

詳細

概要

沿革・特徴など

福岡大学病院は1973年(昭和48年)に開設した.内視鏡部門は中央診療体制をとっており,1988年7月に内視鏡部として独立した.主に福岡市と近隣の市町を医療圏とし,内視鏡検査・治療では地域の中心的役割を担っている.2011年1月新病棟設立に伴い,病院新館2階に現在の内視鏡センターが新設された.

組織

内視鏡センターとして独立しているが,内視鏡に従事する看護師は放射線部所属となっている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡センターには7つのブースがある.うち2つは内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)を中心とした治療内視鏡専用ブースで,2つは救急搬送に適した位置に設置した緊急内視鏡用のブースとなっている.センターの中心に広いモニター室を設置しており,すべてのブースのブース内の状況や内視鏡画像がリアルタイムに観察可能である.機能性だけでなく,学生,研修医および若手医師の医学教育を意識した配置となっている.

スタッフ

(2020年10月現在)

医師:消化器内視鏡学会 指導医6名,消化器内視鏡学会 専門医14名,その他スタッフ20名,研修医など6名

内視鏡技師:Ⅰ種4名

看護師:常勤8名

事務職:1名

その他:3名

設備・備品

(2020年10月現在)

 

 

実績

(2019年4月~2020年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当内視鏡センターの大きな特徴として消化器内科医のみでなく,消化器外科所属の内視鏡チームが治療前精査ならびに手術室におけるESDや経口内視鏡的筋層切除術(POEM)などの治療を積極的に行っていることが挙げられる.日常診療だけでなく,週1回のESDカンファレンスやハンズオンセミナーなどで,消化器内科と消化器外科が協力してお互いに研鑽を積める環境作りに努めている.例えば,内視鏡所見で治療方針に迷う場合などは,内科・外科双方の立場から意見を集約し,さらに病理部とも密な連携をとり,各々の患者さんに最適な治療を選択するためのチーム医療を実践している.

消化管のみならず,胆膵領域も消化器内科と消化器外科所属の胆膵チームが協力して胆膵内視鏡診療を行っており,消化管同様に週1回カンファレンスを開催し,複数科で治療方針を検討できる環境が整っている.通常のERCP関連手技のみならず,術後再建腸管に対するバルーン内視鏡を用いたERCPや膵周囲液体貯留などに対するEUSガイド下治療などの処置も積極的に行っている.さらに2000年10月よりSpyGlass DS胆管・膵管鏡システムおよび電気水圧衝撃波結石破砕装置(EHL)の導入を導入しており,今後一段と胆膵内視鏡の診療の質の向上が期待される.

消化管出血など緊急性の高い疾患に関してはオンコール体制を敷くことで24時間365日内視鏡検査と処置が施行できるように努めている.バイタルサインの安定していない症例の場合は,救命センター医師と連携し,救命センター初療室での内視鏡治療を積極的に行っている.特に静脈瘤の治療は,九州でも稀少な静脈瘤治療技術認定医の指導の下,当院消化器内科肝臓グループの静脈瘤チームが積極的にEVL/EISにて止血術を行っている.

このように当院では消化管だけでなく,肝胆膵も含めた幅の広い内視鏡関連手技を行っている.内視鏡医の指導は,日本内視鏡学会認定専門医制度規則を参考にして各々の技術に応じた段階的な研修を心がけている.ESDの指導を例に挙げると,確実にターゲットの生検ができる内視鏡操作の技能,内視鏡的止血,EMRなどの手技を習得した医師にまず一定数のESDの介助を経験させる.その後,エキスパートの指導の下で比較的容易と思われる部位の適応病変から開始している.単独で実施する場合は,原則内視鏡専門医を取得した医師で一定数以上の経験後としている.胆膵領域のEST,バルーン内視鏡下ERCP,interventional EUS,静脈瘤のEVL/EISも原則は同じような方法で指導を行っている.消化器内科を専攻する医師に対しては日々の診療だけでなく内視鏡に特化したカンファレンスやハンズオンセミナーを開催し,専門的な知識と内視鏡技術を指導している.一方,医学生,研修医よび内科専攻医には,Endoscopy Simulator ACCH TOUCHや大腸内視鏡トレーニングモデル mikotoを用いて内視鏡に触れる機会を作り,消化器内科の診療に直に触れることで参加型の学習となるように心がけている.このような教育ならびに啓蒙活動により地域医療に貢献できるような医師の育成を教室の目標としている.

現状の問題点と今後

内視鏡件数の増加,患者の高齢化,手技の複雑化・多様化に伴い,医師を含めた医療スタッフの業務は増え続けている状況にある.内視鏡診療に携わる医師,看護師や内視鏡技師などの十分な人員確保が喫緊の課題である.特に特殊な知識と技能が要求される内視鏡処置に関しては専門の内視鏡技師の存在が不可欠である.当センターでは,業務の分担および医師と看護師の負担軽減のため常駐する臨床工学技士の増員を計画している.

近年,内視鏡施行時に鎮静を希望する症例が増えているが,リカバリースペースは不足している.また,大腸内視鏡の件数増加に前処置用のトイレ数や待機スペースが伴っていない.これらハード面も現状の問題点として挙げられるが,トイレの増築や前処置スペースの設置など改善点を模索している.

昨今のCOVID-19感染対策においてガウンなどの医療資源の不足,感染対策の徹底なども問題点として挙げられる.三密対策としては患者への自宅での大腸内視鏡前処置の推奨と啓蒙,医師による業務である所見入力スペースの配置変更などを行っている.また,総合大学である福岡大学の利点を活かし,工学部への協力要請の結果,施行医の負担の少ないガウンやフェースガードを開発している.現在は無償で提供してもらい,内視鏡センターだけでなく各部署で活用している.

内視鏡業務を円滑かつ安全に行うにはチーム医療と働きやすい環境作りが重要であると考えている.月に1回の多職種による内視鏡カンファレンスには,医師(消化器内科,消化器外科,呼吸器内科),看護師および臨床工学技士が参加し,業務の向上や連携のためのディスカッションを行っている.今後も医師だけでなく,多職種が協力し合って,充実した内視鏡診療を継続して行えるよう努力を続けていきたい.また,指導体制をさらに充実し,優れた消化器内視鏡専門医を多数輩出することによって地域医療や内視鏡診療の発展に寄与していきたいと考えている.

 
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