日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
がん・感染症センター都立駒込病院
責任者:飯塚敏郎  〒113-8677 東京都文京区本駒込三丁目18番22号
飯塚 敏郎
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2021 年 63 巻 9 号 p. 1666-1669

詳細

概要

沿革・特徴など

都立駒込病院は,明治12年9月にコレラの避病院として設立されたのが始まりで,昭和50年にがん及び一般診療を扱う新病院として開設された.平成19年にはエイズ診療中核拠点病院,平成20年に都道府県がん診療連携拠点病院に指定され,名称もがん・感染症センター都立駒込病院に変更となった.平成23年9月にリニューアルオープン開院式が挙行され,内視鏡室としては内視鏡検査・治療件数の増加に伴い手狭となったため,現在の本館1階に改装移転がなされた.

組織

消化器室は中央部門の一つとして独立した組織となっている.内視鏡科,消化器内科,肝臓内科,食道外科,呼吸器内科の医師が合同で内視鏡業務に携わっている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

当内視鏡室は,1階に位置し,病院入り口と同じフロアーにあり,検査を受ける方の高齢化に合わせ,アクセスしやすいようになっている.また上部下部それぞれ専用の検査室,治療室,洗浄室を有しており,使用したスコープを最短距離で洗浄室に持っていける同線を有している.各検査室では天井からの吊り下げ式となっており,床上の配線を少なくした配慮がなされている.各検査室の内視鏡進捗状況がわかるよう,それぞれのワークステーションでは,集中モニターが設置されている.さらに各検査室にはビデオ録画装置が設置されており,治療のみならずすべての検査が録画可能であり,検査終了とともに電子カルテからビデオを閲覧することが可能となっている.

表在型咽頭癌の治療や頸部食道癌の治療などは,手術室で全身麻酔下に施行している.これまでは定期的な治療枠がない状況であったが,昨年からその枠も設定でき,毎週木曜日に手術室でESDを行うことが可能となった.

胆膵領域では,ERCPとともにEUSやFNAも積極的に行われ,さらにSPACEといわれる膵液細胞診も積極的に施行し,初期段階の膵癌の発見に貢献している.

スタッフ

(2021年1月現在)

医師:消化器内視鏡学会 指導医4名,消化器内視鏡学会 専門医6名,その他レジデントなど6名

内視鏡技師:Ⅰ種7名

看護師:常勤15名,非常勤1名

事務職:1名

その他:補助7名

設備・備品

(2020年12月段階)

 

 

実績

(2020年1月~2020年12月まで)

 

 

指導体制,指導方針

初期研修医は1カ月の消化器内科ローテーションの間,指導医・上級医の指導のもと入院患者の診療に携わり,担当患者を中心に内視鏡検査・治療の見学を行っている.希望者には内視鏡トレーニングモデルを用いた指導も適宜行っている.

後期研修医(専攻医)は原則として1対1のマンツーマン指導を行っている.内視鏡トレーニングモデルによる指導を行いつつ,個々人の熟練度にもよるが上部内視鏡,大腸内視鏡,胆膵内視鏡の順に指導を行っている.早期から治療内視鏡に携われるように,治療時の介助のみならず治療前のシミュレーションのトレーニングなども行っている.内視鏡診断能力向上のため,毎週火曜日に大腸内視鏡のフィルムカンファレンス,毎週水曜日には上部内視鏡のフィルムカンファレンスを行い内視鏡診断能力の向上を図っている.またそれぞれの臓器でのキャンサーボードも毎週行われており,それらに参加することで最新の知見も得ながら診断に治療に精通するよう努力している.若手内視鏡医は内視鏡検査以外にも救急当番業務も行っており,地域の医療連携の一翼を担っている状況である.

リサーチマインド育成のため,毎週月曜日に若手医師が主体となり抄読会の開催を行っている.

ESDのトレーニングとしては,市販されているトレーニングモデルを用いてマーキングから切開剝離に至る一連の過程の操作を取得するとともに,その合間で実際の症例の一部を術者として経験し,ステップアップを図っている.

当院はがん・感染症センターということもあり,当院の特性を生かした発表・論文化を行うことができるよう,学会活動を奨励している.これまでは国際学会などの発表の機会が少ない状況であったため,今後国際学会の参加も含め奨励していく予定である.

現状の問題点と今後

・胆膵内視鏡の領域では診断や治療,またデバイスの進歩が著しいため,内視鏡件数が急増し内視鏡専用のTV室で行うような透視下での内視鏡検査が増えてきている.しかしながら,当院の内視鏡室では,消化器内視鏡が施行可能なTV室が1部屋しかないため日勤帯のみでの対応が難しいことが多い.新規にTV室の運用ができるか今後検討していく必要がある.

・当内視鏡室では近年鎮静下で行う内視鏡の件数増加が著しく,昨年にリカバリールームの席数を増加させたが不十分であり,リカバリールームのさらなる拡充,または病棟のベッドを活用できるのかなど,病棟との連携を検討していかなければならない.

・内視鏡検査の増加に伴い,内視鏡医とともにコメディカルのスタッフの人員の不足がある.特に当施設では内視鏡技師を看護師が兼ねているため,仕事量の負担から人員の確保が難しい状況にある.治療件数も増加傾向にあり,高度な医療体制を提供・維持するためのスタッフの確保が急務である.

・COVID 19パンデミックの影響を受け,感染症センターという側面からいくつかの病棟を閉鎖して,感染者の受け入れを行っている.このため通常診療を含め,内視鏡検査・治療の縮小が要請されている.がんセンターとしての側面も有しているためこうしたことは本意ではないが,現状では縮小しながら行っている.感染予防対策は可能な範囲で行いながら検査・治療を実施している.上部内視鏡検査時は被験者の頭部にボックスを留置しそれをビニールなどでカバーすることで,飛沫の飛散を抑えながら検査を行っている.内視鏡医はフェイスシールドを含めてPPEを行いながらの検査である.マスク自体はサージカルマスクを使用している.ESD施行症例に対しては,本年から全例唾液によるPCR検査を施行し陰性を確認して施行している.今後いつまでこうした状況が継続するかは不明な部分が多いが,安全面に対する配慮を十分に行いながら内視鏡診療を施行していく必要がある.

 
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