日本消化器内視鏡学会雑誌
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63 巻 , 9 号
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総説
  • 杉本 光繁, 河合 隆
    2021 年 63 巻 9 号 p. 1573-1587
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/21
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    消化性潰瘍の発症はHelicobacter pylori感染と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を含む薬剤の使用が2大要因であるが,本邦ではH. pyloriの感染率の低下と酸分泌抑制薬の普及により,その罹患率は急激に減少しつつある.また,超高齢化を迎え,薬剤起因性の消化性潰瘍が占める率が高まり,日常臨床の現場ではその対策にも注意を払うべきである.2020年に「消化性潰瘍診療ガイドライン」が改訂され,新たな酸分泌抑制薬の使用方法,H. pylori除菌治療の選択法,NSAIDs内服者への対応,特発性潰瘍の対応などエビデンスの蓄積により新たな指針も示された.上部消化管内視鏡を使用した検診の需要も増し,H. pyloriの総除菌時代を迎える中で上部消化管内視鏡検査の役割はどのように果たすべきだろうか.本稿では,「消化性潰瘍診療ガイドライン」の改訂に合わせ,臨床の現場で遭遇する消化性潰瘍診療における問題点やガイドラインの改訂点,上部消化管内視鏡検査の重要性や役割について解説する.

  • 井上 匡央
    2021 年 63 巻 9 号 p. 1588-1602
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/21
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    近年,悪性胆管狭窄に対するステント留置において,胆管内ラジオ波焼灼療法(RFA)の併用が注目されている.胆管内RFAは狭窄部の腫瘍組織を凝固壊死させ脱落を誘導し,その効果としては胆管ステント開存期間の延長や,胆管癌における生存期間の延長効果等が期待される.一方で,未だ発展途上の治療手技であり,解決すべき課題も多く,また現行のRFAデバイスでは症例を問わず十分な焼灼効果が得られるとは限らない.このため実臨床で施行する際には,現在のエビデンスを良く理解,把握した上で適用を判断する必要がある.今後のさらなる検討によって,胆管内RFAの有用性の確立と適応の明確化が必要であり,また様々な症例に対応可能なデバイスの改良も期待される.

    本稿では悪性胆管狭窄に対する内視鏡的胆管内RFAの現状と課題,そしてその展望に関して概説する.

症例
  • 景山 宏之, 喜多 雅英, 村上 詩歩, 井上 佳苗, 永井 裕大, 森分 梨奈, 梶谷 聡, 三宅 望, 松三 明宏, 西村 守
    2021 年 63 巻 9 号 p. 1603-1608
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/21
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    症例は32歳女性.SAPHO症候群に対してサラゾスルファピリジン腸溶錠1,000mgで加療中に下痢,血便,38度台の発熱をきたし,大腸内視鏡検査で下行結腸から盲腸にかけて連続性病変を認めた.非典型ではあったが,潰瘍性大腸炎の合併を疑い,メサラジン2,000mg及びメサラジン注腸1gに変更したところ悪寒戦慄,40度の発熱,頭痛,関節痛を認めた.再投与により再現性が得られ,5-ASA不耐症と診断した.約1カ月後の大腸内視鏡検査で粘膜治癒が確認されたため,サラゾスルファピリジンよる薬剤性腸炎と診断し,その原因成分は5-ASAと考えた.

  • 八木 聡一, 山崎 智朗, 奥野 高裕, 中平 晶雄, 坂田 侑平, 中原 憲一, 平田 直人, 末包 剛久, 杉森 聖司, 根引 浩子
    2021 年 63 巻 9 号 p. 1609-1615
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/21
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    症例は74歳女性.肺癌の術前の大腸内視鏡検査で,盲腸と上行結腸に1つずつ,S状結腸に2つの側方発育型腫瘍(LST:laterally spreading tumor)を認め,横行結腸に2つの大腸癌を認めた.術前に4つのLSTに対して内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD:endoscopic submucosal dissection)を行ったのちに,横行結腸癌に対して,外科的切除が行われた.約1年後に,術後サーベイランス目的に大腸内視鏡検査を行ったところ,ESDを施行した部位である,盲腸とS状結腸に2型癌を認めた.その形態と経過から大腸癌のimplantationによる再発と考えられたが,大腸癌のESD後のimplantationによる再発の報告は稀であり,本症例は2つの部位で同時に再発があったことから非常に稀な症例と考えられた.

  • 村田 淳, 小林 一三, 千原 剛, 加藤 幹那, 瀧川 貴生, 藤永 哲治, 上ノ山 直人, 名和 誉敏, 赤松 晴樹, 辻井 正彦
    2021 年 63 巻 9 号 p. 1616-1622
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/21
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    42歳男性.肛門痛を主訴に近医を受診し,直腸診と経肛門エコーで腫瘍性病変を指摘され当院紹介となった.CT,MRIでは下部直腸を圧排する65×55mmの骨盤腔由来の腫瘍を認めた.大腸内視鏡検査では腫瘍の一部が直腸粘膜面に露出していたが,鉗子生検で出血を合併したため1個しか検体採取できなかった.また検体は少量で壊死成分が多く,組織診での鑑別は困難だった.後日EUS-FNAを施行すると壊死成分の少ない検体が得られ,HE染色でN/C比が高い小円形の腫瘍細胞を認めた.免疫組織染色ではNSE・CD99が陽性で,遺伝子解析ではEWS/FLI-1の融合遺伝子を検出しEwing肉腫と診断した.骨盤腔由来のEwing肉腫を内視鏡検査で診断した症例は他に報告がなく貴重である.

  • 柴田 昌幸, 渡邉 東, 三科 友二, 笹本 貴広, 高森 頼雪, 土屋 昭彦, 西川 稿, 滝川 一, 筒井 敦子, 絹川 典子
    2021 年 63 巻 9 号 p. 1623-1629
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/21
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    58歳,女性.5年程前から排便時出血が出現.出血が多くなってきたため精査目的に当科受診.下部消化管内視鏡検査で直腸に40mm大の非腫瘍粘膜で覆われ黄色調を呈し急峻に立ち上がる,頂部潰瘍を伴う有茎性隆起性病変を認めた.潰瘍辺縁から生検し,neuroendocrine tumor(NET)の診断となった.造影CTでは側方リンパ節腫大を伴い,肝S3に石灰化伴う腫瘍も認めた.二期的に手術が施行され直腸腫瘍・腫大リンパ節・肝腫瘍ともに切除されたが,いずれも病理診断はNET G1であった.直腸NET G1で肝転移を伴う大きな腫瘍に進行した症例は稀であり,文献的考察を加味し報告する.

手技の解説
  • 鈴木 翔, 吉田 将雄, 後藤田 卓志
    2021 年 63 巻 9 号 p. 1630-1638
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/21
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    消化管腫瘍に対するESDでは,粘膜下層剝離を補助するための様々なトラクション法が考案されている.食道ESDは穿孔のリスクが高い治療であり,粘膜下層の視認性を向上させ安全に治療を行うためにトラクション法が特に有効である.このトラクション法のなかで糸付きクリップトラクション法は最も簡便で使いやすい方法である.われわれは市販のデンタルフロスを牽引糸としてトラクション法を行っている.全周切開後に切除粘膜の口側を,デンタルフロスを結び付けたクリップで牽引するだけで,粘膜下層の視認性とテンションが向上し剝離を効率的に進めることができる.また,糸付きクリップトラクション法は線維化や全周性の病変などの治療困難例に対しても有効である.糸付きクリップトラクション法は食道ESDに必須の補助手法と考えられる.

  • 滝本 見吾
    2021 年 63 巻 9 号 p. 1639-1648
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/21
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    内視鏡治療の進歩に伴い,偶発症対策の重要性が高まっている.ポリグリコール酸シートおよびフィブリン糊を用いた被覆法は外科領域から内視鏡領域に応用された方法である.今回,本被覆法を内視鏡で実施する際の準備や実施方法などを,臓器別に食道,胃,十二指腸,大腸,そして目的別に,術後狭窄予防,遅発穿孔予防,後出血予防に関して自験例や想定される機序などを交えて解説した.外科領域での使用実績から,消化器内視鏡処置の偶発症対策としての広い応用が期待できるため,ひとつの選択肢として,同方法の理解の参考として頂きたい.

資料
  • 内田 元太, 中村 正直, 山村 健史, 古川 和宏, 川嶋 啓揮, 本多 隆, 石上 雅敏, 藤城 光弘
    2021 年 63 巻 9 号 p. 1649-1665
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/21
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    電子付録

    【背景】小腸カプセル内視鏡(SBCE)やバルーン内視鏡(BAE)といった小腸内視鏡は小腸出血(SBB)の診療において有用である.しかしながら,特に顕性小腸出血(overt SBB)に対するマネジメント方法は未だ確立されていない.本メタ解析は,overt SBB診療における小腸内視鏡の統合された診断能(DYs)と統合された治療能(TYs)を評価し,内視鏡の適切なタイミングを決定することを目的とした.

    【方法】Overt SBBにおける小腸内視鏡のDYまたはTYを評価した研究を検索した.DY,TY,内視鏡のタイミングに関するデータが抽出され,統合そして解析された.Overt SBB患者における小腸内視鏡の統合されたDYと統合されたTYが算出された.さらにメタ回帰分析とサブグループ解析が行われた.

    【結果】22個の研究が選択された.統合されたDYはSBCEとBAEでそれぞれ65.2%,74.0%であった.統合されたTYはSBCEとBAEでそれぞれ55.9%,35.8%であった.メタ回帰分析では,内視鏡のタイミングがBAEのDY,さらにSBCEとBAEのTYと有意に関連していた.

    【結論】SBCEとBAEはovert SBB診療において有用な診断と治療のモダリティと思われた.サブグループ解析ではSBCEとBAEのTYは出血後2日以内でより高い傾向にあり,適切な内視鏡のタイミングは出血後2日以内と考えられた.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 河上 洋
    2021 年 63 巻 9 号 p. 1673
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/21
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    【背景】ERCPのもっとも代表的な有害事象はERCP後膵炎(PEP)である.PEPの4.7%は中等度~高度の膵炎に進展し,その死亡率は0.7%と報告されている.PEPのリスクを低減させる標準的方法は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の予防的直腸投与である.また,NSAIDsの直腸投与を行わない例において,積極的輸液によりPEPリスクが低下することがメタ解析とRCTで示されているが,NSAIDsの直腸投与に積極的輸液を上乗せした際の有用性は明らかにされていない.

    【方法】18~85歳の中等度ないし高度のPEPリスク患者に対してNSAIDsの予防的直腸投与単独群(対照群)と積極的輸液を併用した群(併用群)の2群について,ドイツ国内の22施設が参加した多施設共同オープンラベル無作為化比較試験が実施された(FLUYT試験).併用群はNSAIDs(ジクロフェナクあるいはインドメタシン)直腸投与に加えてERCP開始後60分以内に乳酸リンゲル液を20mL/kg点滴静注,引き続いて3mL/kg/時間を8時間かけて点滴静注した.対照群はNSAIDs直腸内投与に加えて,最大1.5mL/kg/時間あるいは24時間当たり3Lの生理的食塩水を点滴静注した.プライマリーエンドポイントはPEPの発症とした.

    【結果】2015年6月~2019年6月に登録された826例を1:1で割付した(併用群388例,対照群425例).年齢中央値は併用群57歳(範囲:44~71歳),対照群60歳(範囲:49~71歳),男女比は両群ともに3:2,ASA Class Ⅲは両群ともに16%が含まれており,両群間で患者背景に有意差を認めなかった.ERCPの難易度(Schutz分類 2))は両群共ともにGrade 2(単純な治療目的のERCP)が80%以上を占めていた.また,膵管ステント留置は両群共に16%併用していた.偶発症のうちPEPは併用群の30例(8%),対照群の39例(9%)が併発した(相対リスク0.84,95% CI 0.53-1.33,P=0.53).輸液関連合併症(同0.99,0.59-1.64,P=1.00),ERCP関連合併症(同0.9,0.62-1.31,P=0.62),ICUへの入院(同0.37,0.07-1.80,P=0.22),30日死亡率(同0.95,0.50-1.83,P=1.00)などの重篤な有害事象は2群間に有意差はなかった.また,併用群において積極的輸液に伴う死亡例は認められなかった.

    【結語】中等度ないし高度のPEPリスク患者に対するNSAIDsの予防的直腸投与と積極的輸液の併用はNSAIDs直腸投与単独群と比べてPEPの発症を抑制しなかった.

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