日本消化器内視鏡学会雑誌
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Letter to the Editor
Letter to the Editor
大島 忠之三輪 洋人
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2022 年 64 巻 1 号 p. 106

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今回,Image of the Monthに選出掲載された石橋ら 1の報告を興味深く読ませていただきました.Collagenous gastritisは稀な疾患で診断および治療に大変苦慮しますが,ステロイドパルス療法で初めて症状および組織所見が改善することを報告した大変興味深い症例だと思います.ただ,本報告では粘膜扁平隆起部にcollagen bandが指摘されており典型例ではない可能性があるかと思います.Collagenous gastritisは,凹凸のある胃粘膜病変で陥凹部の上皮粘膜下にcollagen bandがみられることが特徴です 2.また典型例の扁平隆起部では正常な胃底腺粘膜が残存し,軽度の炎症細胞浸潤を認めるのみでcollagen bandがみられません 3.すなわち生検部位により,collagen bandがある部位(陥凹部)とない部位(隆起部)があることも注意すべき点で,診断には,陥凹部のcollagen bandを確認することが重要ではないかと思います.

Collagenous gastritisの治療法は確立していないため,本症例の治療後の内視鏡検査で陥凹部(本症例の退色調部)粘膜上皮下のcollagen bandが消失しているかを確認できれば,ステロイド治療の効果判定および今後の治療法確立においてさらに重要な情報が得られるのではないかと思います.

Letter to the Editorへの質問に関する返答

われわれの報告「ステロイドパルス療法によりcollagen bandが消失したcollagenous gastritisの1例」に貴重なご意見,ご指摘をいただき誠にありがとうございます.ご指摘の点ですが,まず,本症例は粘膜扁平隆起部からの生検でcollagen bandが検出されましたが,ステロイドパルス療法直後に行った上部消化管内視鏡検査では,胃体部の粘膜扁平隆起部のほか,介在する陥凹部からの生検でも上皮下のcollagen bandを認めました.おそらくステロイドパルス療法前にも陥凹部にはcollagen bandは存在したものと推測します.そして,本報告内で言及はしていませんが,この部位のcollagen bandは,Figure 6と同時点で消失を確認しています.また,本症例でステロイドパルス療法前にみられた粘膜扁平隆起部の粘膜上皮下のcollagen bandは,Figure 3で示されるようにやや錯綜して存在し,典型的な繊維束とは言えません.病態進展の過程で,このような錯綜した膠原繊維が束状にまとまって典型的な繊維束を形成するのではと推察されます.

本報告では,治療前後で病理組織像の比較が可能であった粘膜扁平隆起部からの生検材料を提示しました.正確な治療前後の対比はできていませんが,典型例にみられるような陥凹部のcollagen bandもステロイドパルス療法により消失したものと考えます.

医療法人社団つるかめ会小金井つるかめクリニック

石橋史明

文 献
 
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