日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
医療法人愛知会胃腸科肛門科家田病院
責任者:家田純郎(病院長)  〒470-1219 愛知県豊田市畝部西町城ヶ堀11番地1
家田 純郎
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2022 年 64 巻 10 号 p. 2334-2336

詳細

概要

沿革・特徴

家田病院は昭和54年豊田市に家田外科として開院し,地域医療と痔の専門医療を行うようになった.昭和60年,医療法人愛知会家田病院となり,痔の専門病院として拡充し,その後,受診者の中から専門分野である肛門疾患だけでなく,直腸や結腸の疾患を有する人が多く認められたため,より精密な大腸検査の必要性を感じ,それまでの注腸造影検査に加え,平成6年全大腸内視鏡検査を導入し,大腸内視鏡センターを設置した.

年々総受診患者数が増加し,大腸内視鏡室を2室から3室へ増やした.また,電子カルテ,画像ファイリングシステム,二酸化炭素送気システム,カプセル内視鏡等を導入し,専門施設としての最先端の設備を有している.

また,多数の熟練した指導医,専門医が診療にあたっている.平成31年には日本消化器内視鏡学会指導関連施設となり,後進の指導,教育も行い,エクスパートの輩出に努めている.現在では年間,上部消化管4,800件,下部消化管7,000件以上の内視鏡検査・治療を実施し県内でもトップクラスの実績を有している.今後も苦痛のない安全な内視鏡検査を行うべく,日々研鑽に邁進している.

組織

当内視鏡検査センターは医療法人愛知会家田病院の施設であり,院長の管理下にある.消化器内科,消化器外科の医師が内視鏡検査,治療を行っている.また,家田病院の所属である看護師,検査技師,事務職員が連携して内視鏡業務を行っている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

①当施設の最大の特徴は,大腸内視鏡検査に特化した専門施設であることである.フロアーの構造,設備を効率的に配置し,前処置~検査・治療~安静解除までの一連の流れがスムーズかつ安全に行いうる動線を確保している.

②大腸検査に特に必要なトイレは,処置室に10室確保している.

③大腸内視鏡室は3室(上部内視鏡1室)合計4室あり,1日の検査件数は大腸は約30件,上部は約15件となっている.

④回復室には常時看護師を配置し,患者の状態把握に努めている.

⑤検査前~内視鏡ブース~リカバリー~離床まで,同一のストレッチャー上で患者を移動,観察し転倒防止に配慮している.

⑥内視鏡ブースはそれぞれの機能に独立し,各室にモニター,緊急時の処置に必要な機材を準備し,緊急時の対応に努めている.

⑦全例,セデーション下に内視鏡検査・治療を実施している.

⑧挿入困難例にも対応しうるべく多種多数のスコープを配備している.

⑨二酸化炭素送気システムを装備し,腹部膨満感の軽減に努めている.

⑩酸性水を使用した内視鏡洗浄システムを4台設置し,ガイドラインでの「高水準消毒」が可能となっている.

⑪内視鏡システムはDICOM画像システム(PACS)にてデジタル化されており,電子カルテシステムと連動,検査オーダー,画像管理が電子カルテ上で一元に可能となっている.

スタッフ

(2022年4月現在)

医師:指導医4名,専門医8名,その他スタッフ2名

看護師:常勤9名,非常勤5名

事務職:3名

その他:4名

設備・備品

(2022年2月現在)

 

 

実績

(2020年4月~2021年3月)

 

 

指導体制,指導方針

当施設は日本消化器内視鏡学会指導関連施設であり(施設No. 20190045),肛門診療も含め見学,研修を常時受け入れており,遠方からも多数の医師が短期・長期に渡り来訪される.指導は非常勤の内視鏡学会専門医または指導医が実施している.肛門疾患,炎症性腸疾患の患者が多い傾向があるため,実技に先んじて肛門疾患,炎症性腸疾患の知識を深めていただくレクチャールームを設けている.肛門治療後における肛門部への内視鏡挿入や観察には先行した知識が必要であり,十分な理解のもとに実技へ導く.炎症性腸疾患の内視鏡については,炎症の評価のみならず炎症に伴って生じる炎症性発がんのリスクを理解し,活動性と腫瘍の評価を共に習得していただけるよう指導する.一方,内科からの依頼で血便精査により緊急S状結腸スコープを施行することも多い.血便の緊急に対する理解を深めていただき,虚血性腸炎や憩室出血,痔疾患からの出血への対応,止血術を学んでいただく.当院では鎮静下の内視鏡検査が多いため,鎮静剤自体の効果とリスク管理,実技についても学んでいただき安全で患者に負担のない手技を心がけられる意識を持たせる.内視鏡室と炎症性腸疾患専門外来,肛門外来は隣接しているため,いつでも各専門医と内視鏡所見につき相談できる状況にあり,大腸内視鏡施行数に関しては非常に豊富であり,短期間で特に炎症性腸疾患の内視鏡,痔疾患に伴う内視鏡の知識と実技を習得できる環境にある.

現状の問題点と今後

1日の大腸検査施行数が多いため,患者への説明が十分にできているか不確かな面がある.患者本人,スタッフにアンケート調査もしくは直接聞き取りを行いながら調整しているが,更に患者の疾患に対する理解を深めていただくために肛門疾患,炎症性腸疾患のわかりやすい説明書を利用しながら効率的で患者の納得できる診療をするべきと感じている.大腸内視鏡と事前の洗浄剤飲用に関係したコロナウイルス感染を回避するため,患者間,患者とスタッフの間でも検査時に感染防護の意識を高めスタンダードプリコーションを強化して運用している.検査数に比して内視鏡医が不足しており,各医師に負担がかかっている.内視鏡医の増員による1検査に集中できる環境づくりをめざしている.

 
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