2022 年 64 巻 2 号 p. 216
【背景】Helicobacter pylori感染診断には内視鏡検査が重要だが,画像による感染診断は確立されておらず,診断には生検が重要である.人工知能(artificial intelligence;AI)は臨床診療における画像の認識・分類にて適用が増加している.
【目的】AIによる内視鏡画像を用いたH. pylori感染の診断能を評価すること.
【方法】評価者二人がデータベースを検索した.採択基準はH. pylori感染者の内視鏡画像およびAI適用によるH. pylori感染診断の研究とし,システマティックレビューとメタ解析を行った.
【結果】161本の論文を検索し8本を抽出した.AIのH. pylori感染予測の統合感度,特異度,診断オッズ比,area under the curve(AUC)は各々0.87(95%CI 0.72-0.94),0.86(95%CI 0.77-0.92),40(95%CI 15-112),0.92(95%CI 0.90-0.94)であった.メタ回帰分析では,AIによる非感染例と除菌後例との鑑別診断能は82%であった.
【結論】AIアルゴリズムはH. pylori感染の内視鏡診断に有用である.本研究の限界には,外部検証の欠如とアジアに限局した研究結果が挙げられる.
Helicobacter pyloriは胃炎,胃・十二指腸潰瘍,胃MALTリンパ腫,胃癌などの病因であり,感染診断には胃内視鏡検査が重要である.近年,NBI,BLI,LCIなどの画像強調内視鏡が開発されているが,H. pylori感染診断には生検が行われることが多い.本邦では「胃炎の京都分類」でH. pylori感染,未感染,除菌後症例に特徴的な内視鏡所見が解説されているが,施行医により感染診断の不一致が見られる.
本研究では,抽出された8研究(後方視的5本,前方視的3本)における患者1,719名の内視鏡画像(H. pylori感染385名,非感染対照1,334名),H. pylori感染者の画像2,855枚,除菌後514枚を含む陰性対照2,287枚をAIで評価した.その結果,H. pylori感染の感度0.87(95%CI 0.72-0.94),特異度0.86(95%CI 0.77-0.92),陽性尤度比6.2(95%CI 3.8-10.1),陰性尤度比0.15(95%CI 0.07-0.34),診断オッズ比40(95%CI 15-112)およびAUC 0.92(95%CI 0.90-0.94)であった.AIアルゴリズムによる未感染と除菌後例の鑑別精度は82%であり,信頼できる有用な診断手段と結論されている.
興味深い研究ではあるが,実臨床では京都分類で解説されている内視鏡所見により,多くの症例でH. pylori感染状態は予測可能であり,確定診断には,尿素呼気試験,便中抗原検査,血清抗体検査などの非侵襲的検査が主流となっている.