日本消化器内視鏡学会雑誌
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64 巻, 2 号
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総説
  • 中村 正直, 山村 健史
    2022 年 64 巻 2 号 p. 131-142
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/21
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    小腸カプセル内視鏡(small bowel capsule endoscopy:CE)は小腸全域を非侵襲的に一度で観察できるためクローン病(Crohnʼs disease:CD)に良い適応があると考える.一方では小腸狭窄によりCEが滞留するリスクについて患者背景と消化管開通性から事前に評価することが重要である.臨床診療におけるCEの役割として,①CD初回診断,他の炎症性疾患の鑑別,②CD小腸病変の存在診断,範囲診断,③CD治療の効果判定,臨床的寛解患者の内視鏡モニタリングが挙げられる.CDの診断は空腸から回腸にかけてびらんから小潰瘍が目立ち縦列する所見があれば特徴的とされる.CD小腸病変検索モダリティのなかで最も検出感度が高いのがCEである.CD治療の効果判定は治療開始後6カ月でCEを行い,活動性が低いか内視鏡的寛解であれば定期的に採血でモニタリングを継続し,次の2年以内にCEを検討する.CD診療は,CEを含め各患者に適切なモダリティで診断とモニタリングを行うことにより長期の臨床寛解維持と外科手術の回避を導くことができる.

  • 露口 利夫
    2022 年 64 巻 2 号 p. 143-152
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/21
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    急性胆管炎,胆石性膵炎,急性胆囊炎など胆膵疾患は緊急内視鏡を必要とすることがある.緊急ERCPの適応には中等症以上の急性胆管炎,胆管炎を伴う胆石性膵炎,手術や経皮経肝胆囊ドレナージ(percutaneous transhepatic gallbladder drainage,PTGBD)の適応のない急性胆囊炎などがある.急性胆管炎に対する内視鏡的ドレナージは中等症では早期,重症では直ちに行うべきである.胆管炎を伴わない胆石性膵炎に対するERCPのタイミングは緊急ではなく早期(待機的)とすべきである.ドレナージ方法の選択と施行するタイミングはガイドラインに従うだけでなく各施設において得意とする方法を選択すべきである.新たな手技としてバルーン内視鏡下ERCP,超音波内視鏡下胆道ドレナージなどがあげられるが,これらの緊急内視鏡は基幹病院において経験豊富な胆膵内視鏡医により施行されるべきである.

症例
注目の画像
手技の解説
  • 永見 康明, 大南 雅揮, 藤原 靖弘
    2022 年 64 巻 2 号 p. 181-194
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/21
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    表在型食道癌に対するESDはCO2送気やトラクション法の普及に伴ってより標準的治療となってきている.しかし,頸部食道癌,全周性病変,瘢痕に接する病変,放射線化学療法後,憩室にかかる病変,食道胃接合部癌,食道静脈瘤合併症例などは治療困難とされ,その対策についてそれぞれ解説する.これらの病変ではより偶発症のリスクが高く,基本的な手技の習熟,経験を積んだうえで,偶発症に対しての対応や外科手術対応も想定,準備し行う必要がある.

  • 寺井 智宏, 丸山 保彦
    2022 年 64 巻 2 号 p. 195-201
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/21
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    特発性胃潰瘍(H. pylori陰性NSAID陰性胃潰瘍)は,本邦では稀であり,臨床的特徴も未だ明確には分かっていない.特発性胃潰瘍のうち,8週間のプロトンポンプ阻害剤(PPI:proton pump inhibitor)投与でも治癒しないもしくはPPI中止かH2受容体拮抗薬(H2RA:H2 receptor antagonist)への変更で容易に再発する胃前庭部難治性潰瘍が報告されている.その難治性と高い再発率のため,早期にその存在自体に気づくことが重要である.胃前庭部難治性潰瘍では,大彎側に小円形で深い穴様の潰瘍と周辺の粘膜下腫瘍(SMT:submucosal tumor)様の隆起を伴うことが多い.本稿では特発性胃潰瘍のうち,胃前庭部難治性潰瘍の内視鏡的特徴について解説する.

資料
  • 金 俊文, 石井 健太郎, 岡部 義信, 糸井 隆夫, 潟沼 朗生
    2022 年 64 巻 2 号 p. 202-210
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/21
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    電子付録

    【目的】逆流防止弁付き金属ステント(anti-reflux metal stent,ARMS)は胆泥や食物残渣による再発性胆道閉塞(recurrent biliary obstruction,RBO)予防に用いられているが,最適なARMSの形状は明らかでない.本研究では,ダックビル型ARMS(duckbill-shaped ARMS,D-ARMS)を用いた胆道ドレナージの可能性,安全性,および有用性について評価した.

    【方法】本研究は本邦の三次医療機関3施設で実施された後方視的観察研究であり,胆道ドレナージにD-ARMSを用いた悪性遠位胆管狭窄例を対象とした.手技的成功,機能的奏効,有害事象,およびRBOまでの期間(time to RBO,TRBO)を評価した.

    【結果】2018年12月から2019年10月までの期間中D-ARMSを30例に留置した.手技的成功率,機能的奏効率は各々93%,87%であり,留置に難渋した症例では,ステント端を示すマーカーの視認困難や意図しないステント展開を認めた.早期偶発症は10%に認め,胆管炎と膵炎であった.留置後中央値5.1カ月(0.8−22.8)の観察期間中RBOは33%に発生し,TRBO中央値は261日であった.RBO発症例の67%でD-ARMSの抜去が可能であったが,半数に抜去時のステントの断裂を認めた.

    【結語】製品改良は依然として必要であるが,D-ARMSを用いた胆道ドレナージは安全に施行可能であり,十分なTRBOが得られた.本結果の検証には,長期経過観察期間を設けた多数例での多施設共同研究が必要である.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 中村 昌太郎
    2022 年 64 巻 2 号 p. 216
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/21
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    【背景】Helicobacter pylori感染診断には内視鏡検査が重要だが,画像による感染診断は確立されておらず,診断には生検が重要である.人工知能(artificial intelligence;AI)は臨床診療における画像の認識・分類にて適用が増加している.

    【目的】AIによる内視鏡画像を用いたH. pylori感染の診断能を評価すること.

    【方法】評価者二人がデータベースを検索した.採択基準はH. pylori感染者の内視鏡画像およびAI適用によるH. pylori感染診断の研究とし,システマティックレビューとメタ解析を行った.

    【結果】161本の論文を検索し8本を抽出した.AIのH. pylori感染予測の統合感度,特異度,診断オッズ比,area under the curve(AUC)は各々0.87(95%CI 0.72-0.94),0.86(95%CI 0.77-0.92),40(95%CI 15-112),0.92(95%CI 0.90-0.94)であった.メタ回帰分析では,AIによる非感染例と除菌後例との鑑別診断能は82%であった.

    【結論】AIアルゴリズムはH. pylori感染の内視鏡診断に有用である.本研究の限界には,外部検証の欠如とアジアに限局した研究結果が挙げられる.

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