日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
岩手医科大学附属病院/岩手医科大学附属内丸メディカルセンター
責任者:松本主之(内科学講座消化器内科消化管分野教授・内視鏡診療部長)  〒028-3695 岩手県紫波郡矢巾町医大通二丁目1番1号/〒020-8505 岩手県盛岡市内丸19-1
鳥谷 洋右梁井 俊一松本 主之
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2022 年 64 巻 4 号 p. 1062-1065

詳細

概要

沿革・特徴など

岩手医科大学は1897年に三田俊次郎によって創設された私立岩手病院を前身とし,1928年に誕生した私立岩手医学専門学校を経て,1947年に名称を岩手医科大学に変更し1951年より学校法人岩手医科大学となった.地域医療に密着した私立医科大学として,「誠の人間の育成」という建学の精神に基づき,地域医療への貢献に加え,高度先端医療の提供,医学および医療技術の研究・開発,医療人の育成を担う特定機能病院として現在に至る.2019年9月の附属病院移転に伴い,現在は特定機能病院である岩手医科大学附属病院と大学附属施設としての高度専門外来機能に加え,プライマリ・ケアの充実を目指す岩手医科大学附属内丸メディカルセンターの2施設で運営されており,両施設の密接な連携のもとに地域医療の拠点として貢献している.

組織

内視鏡診療部は中央診療部の独立した一部門であり,内視鏡室では消化管内科を中心に,肝臓内科,救急科,外科,小児科が消化器内視鏡検査を,呼吸器内科が気管支鏡検査を行っている.岩手医科大学附属病院では主に入院患者の検査・治療を,内丸メディカルセンターでは外来患者の検査を中心に運営されている.

検査室レイアウト

 

 

 

 

 

当内視鏡室の特徴

岩手医科大学附属病院 759m2

内丸メディカルセンター 240.9m2

スタッフ

(2021年6月現在)

医   師:消化器内視鏡学会 指導医6名,消化器内視鏡学会 専門医5名,その他スタッフ9名,研修医など1名

内視鏡技師:Ⅰ種5名

看護師:常勤10名

事務職:2名

その他:看護補助(洗浄スタッフ)2名

 

消化管内科および内視鏡室スタッフ

設備・備品

(2021年6月現在)

 

 

実績

(2020年1月~2020年12月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当科では消化管疾患および胆膵疾患の内視鏡検査と治療を行っている.食道,胃,十二指腸,大腸における腺腫,早期癌に対して内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD),内視鏡的粘膜切除術(EMR),underwater EMRや胆膵疾患に対する治療内視鏡に加えて,炎症性腸疾患に対する内視鏡検査数が多いことも特徴である.岩手県唯一の大学病院であり,バルーン内視鏡,カプセル内視鏡などの小腸内視鏡検査も積極的に行っている.胆膵疾患に関しては通常の内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)関連手技のみならず肝臓移植後の吻合部狭窄や術後再建腸管に対するバルーン内視鏡を用いたERCP,膵炎後の仮性嚢胞に対する超音波内視鏡による膵・胆道系処置も積極的に行っている.大学病院内の医師だけでなく,大学病院外の関連病院医師を非常勤医師として大学で受け入れ,内視鏡治療の見学,手技習得の機会を与えている.

当科では週に一回内視鏡画像カンファレンスを行い,診断に迷う症例や貴重な症例に対して医局員全員で検討している.また,月に一回の所見会では消化管造影検査,内視鏡検査所見から早期胃癌研究会に準じた形式で読影の教育を行っており,若手医師だけでなく中堅医師の勉強の場にもなっている.さらに当院では消化器内科,消化器外科,病理診断学講座の医師が協力し,上部消化器疾患,下部消化器疾患,胆膵疾患の3部門においてそれぞれカンファレンスを行っている.術前の内視鏡検査および消化管造影検査,手術所見,病理所見を提示し,3科合同で検討を行っている.

指導の基本は一例ずつの症例を大切にすることであり,若手医師と指導医がセットで通常の上下部内視鏡検査を行っている.検査の問題点や疑問点は検査当日に解決できるような環境としている.若手医師は通常の上下部内視鏡検査を施行できるようになれば,内視鏡的止血術,EMRから実際の処置を担当するようにしている.ESDでは指導医の治療に介助として参加し,手技的に難易度の高くない症例から随時施行するようにしている.不定期であるがESD施行前には豚の切除胃を使用したESDのハンズオントレーニングも行っている.通常の内視鏡手技が可能となれば,ERCP関連手技にも積極的に施行医として携わるようにしている.その際には必ず指導医が待機し,検査・処置がスムーズに進む環境を準備している.

現状の問題点と今後

岩手医科大学附属病院と内丸メディカルセンターの2施設に分かれているが,2019年の移転前と比較して医師および看護師数はほぼ不変であるため,それぞれの施設のスタッフ不足が問題となっている.今後さらなる内視鏡検査数の増加に対応するためには,人材の充実が必要不可欠であり,医師だけでなく,看護師,内視鏡検査技師の確保が急務である.また,主に外来診療を行う内丸メディカルセンターでは救急入院の対応ができないため,止血処置など入院治療が必要な場合には岩手医科大学附属病院への搬送が必要となる場合もある.

COVID-19関連に関しては,検査前の体温測定や問診票に加えて,全身麻酔下の処置など必要に応じて術前PCR検査を行っている.スタッフのスタンダードプレコーションは遵守されており,患者用マスクを導入している.岩手県内は幸いにも首都圏に比較しCOVID-19の影響は少ないが,内視鏡検査数全体としては減少傾向にある.今後はさらに安全面に考慮した上での検査数の増加が望まれる.

当院は岩手県内唯一の大学病院のため,県内他施設での治療困難例が紹介される機会が多い.ESDでは瘢痕症例などの治療困難例,胆膵疾患では術後再建腸管に対するERCP症例などが岩手県内のみならず隣県施設からも紹介される.このような困難症例に適切に対応し,かつ通常の検査数を維持することが求められている.当講座は現在若手医師の割合が高く,専門医取得を目指した教育における指導医の役割がより重大となっている.今後は一人でも多くの専門医・指導医を輩出し,教育機関としての役割のみならず,岩手県の地域医療のさらなる充実に貢献できればと考えている.

 
© 2022 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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