日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
金沢医科大学病院
責任者:北方秀一(内視鏡センター長),向井 強(同副センター長),伊藤 透(病院長)  〒920-0293 石川県河北郡内灘町大学1-1
北方 秀一
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2022 年 64 巻 5 号 p. 1171-1173

詳細

概要

沿革・特徴など

金沢医科大学病院は1974年(昭和49年)に開設した.内視鏡室は中央臨床検査部の一部門として始まり,1991年に内視鏡センターとして中央臨床検査部より独立し運用されるようになり,1992年に移転拡張し現在に至る.

組織

内視鏡センターとして独立した診療部門であり,消化器内視鏡科の医師を中心に,消化器内科・肝胆膵内科・消化器外科・呼吸器内科・呼吸器外科・小児外科の各診療科の医師が連携をとりながら運用している.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

654.74m2のスペースに,透視室1室を含む8室の個室化された検査室と,10床のリカバリーベッドがあり,すべての検査を鎮静下に実施できるようになっている.また,患者導線と独立した廊下に洗浄スペースを配置し,感染対策が十分に考慮されている.

スタッフ

(2021年9月現在)

医師:消化器内視鏡学会 指導医10名,

消化器内視鏡学会 専門医8名,

その他スタッフ17名,

研修医など3名

内視鏡技師:Ⅰ種6名

看護師:常勤11名

事務職:2名

その他:4名

設備・備品

(2021年9月現在)

 

 

実績

(2020年4月~2021年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

医学部のクリニカルクラークシップの期間には,内視鏡センターの見学のみならず,シミュレーターを用いた実習を行っている.学生に内視鏡検査に興味をもってもらうため,実際に内視鏡機器に触れる機会を提供している.

初期臨床研修医は,まず,指導医の行う検査・治療の見学,介助を行いながら,内視鏡検査に対する知識を学ぶ.並行して内視鏡トレーニングモデルを用いた指導をうけ,スコープ操作に習熟する.知識と操作方法を十分に学んだ上で指導医の監督下に上部内視鏡検査を行っている.個々の上達に差はあるが,最終的には指導医の指導の下,単独で上部のスクリーニング検査が行える程度になっている.研究期間が1,2カ月と短いが,積極的に参加させることでモチベーションが高まり,上達が期待できると考えている.

後期臨床研修医は各科に入局後本格的に研修を行うことになる.まず上級医とともに上部内視鏡検査を行いながら,適切な診断能力を身につけることを目標とする.さらに内視鏡治療や消化管出血など緊急内視鏡検査の介助に積極的に参加し技術の向上に努める.単独で上部内視鏡検査が行えるようになれば,下部内視鏡検査,超音波内視鏡検査,胆膵内視鏡検査などの研修を行っていく.

毎週のカンファレンスではESD(内視鏡的粘膜下層剝離術)やERCP(内視鏡的逆行性膵胆管造影法)の症例を中心に症例提示や治療方針の検討を行っている.治療後の症例では,内視鏡所見の再確認や病理所見との比較を行っている.研修医も担当症例の発表を行い,プレゼンテーションの力を身につけてもらうことを目標とする.また,隔週で外科や病理診断科との合同カンファレンスを行い,稀有な症例や治療方針の決定に難渋する症例などに対し総合的に討論を行っている.

コメディカルスタッフとの勉強会を随時行い,内視鏡に関する理解を深めることができるよう努めている.互いに知識と技術レベルの向上を図り,安全性の高い内視鏡センターの運営に努めている.

現状の問題点と今後

内視鏡検査数の増加,手技の複雑化・多様化に伴い,医療スタッフの負担は増え続けている.また,働き方改革の観点からも,スタッフの人員の確保が最大の課題となる.看護師の夜間・休日の緊急対応はオンコール体制で行っているが,翌日の勤務を短縮とするため,検査が回らない,他のスタッフの負担が増すといった問題が生じている.

内視鏡センターの看護師は専門知識と技能が求められるため,経験のあるスタッフの確保と,新人スタッフの教育システムの確立が課題となる.また,高周波装置や洗浄機器などの保守・点検・修理を随時行えるよう,臨床工学技士の人員確保を検討している.

大腸内視鏡検査の件数の増加により,前処置用のスペースやトイレの不足が問題となってきている.前処置用のスペースはプライバシーが保たれる環境ではなく,高齢者やADLの低下した方への配慮も難しく,今後の課題である.

 
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