日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
社会医療法人大雄会 総合大雄会病院
責任者:松山恭士  〒491-8551 愛知県一宮市桜一丁目9番9号
松山 恭士
著者情報
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2022 年 64 巻 6 号 p. 1287-1290

詳細

概要

沿革・特徴など

大雄会は1924年(大正13年)に岩田医院として開院し,国産第一号レントゲン「比叡号」を全国で初めて導入し,愛知県の民間病院で初の「総合病院」の使用許可を得た.また救命救急センター三次指定・地域中核災害医療センターの指定を受けるなど,常に進取の精神をもって発展を続けている.

内視鏡室では,疾患の早期発見に努め,上部,下部消化管,肝胆膵に対する内視鏡検査や治療を正確で安全に施行できるよう努めている.

病気の有無を調べる各種内視鏡検査を行えるほか,早期の食道,胃,大腸がんに対する内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD),ポリープ切除術,胆道結石の治療,胆道や消化管の通過障害の解除等,ほとんどの内視鏡治療に対応可能なシステムを備えており,消化管出血等の緊急疾患に対しても救命救急センターと連携して治療にあたっている.

組織

内視鏡室は診療部門の一部門として位置づけられており,主に消化器内科によって内視鏡を含む各種検査を行っている.また2019年3月1日に,愛知県北西部を中心とした愛知県西部医療圏で初めての炎症性腸疾患(IBD)センターを併設し運営している.当院では検査・治療の連携,また地域の医療機関との連携をスムーズにすることを目的として,全国でも少ない内科・外科合同の炎症性腸疾患(IBD)センターを立ち上げ,患者様に良質の診療を提供できるように努めている.また,総合病院である利点を生かして,透析や妊産婦の患者様にも,泌尿器・透析科や産婦人科と連携しながら治療にあたっている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

消化器疾患に関しては,苦痛の少ない内視鏡検査による,早期発見,早期治療の実践を,また三次救急医療施設という観点から,各科と連携を密にし,24時間体制を取っている.

検査室は十分な広さを確保し,検査室ごとに壁で区切り,プライバシーに配慮している.リラックスできる環境だけでなく,安心して検査を受けていただけるよう,リカバリー室や更衣室では携帯型のナースコールを整備し対応している.また検査中・後の患者様の様子を内視鏡室のどこからでも確認できる様,大型のモニターを2個所設置し常に確認している.

検査は基本的にほぼ全例,拡大観察が可能な内視鏡で行っている.また,鎮静使用率も平均75%以上と,つらくない検査・治療を心がけている.感染対策として,ガイドラインに準拠した洗浄と,専用洗浄機を使用した機械洗浄・高レベル消毒を行っている.なお東海地方で最も早く洗浄管理システムを導入しており,確実な衛生対策に力を入れている.

当院は日本消化器内視鏡学会を始めとした各種学会の指導施設に認定されており,学会専門医・指導医,内視鏡技師認定を受けた看護師が常勤している.臨床工学技士も常勤しており,通常治療時の介助や機器の整備だけでなく,ペースメーカーのある患者様の緊急処置にも安全に対応可能である.

中規模病院の小回りのきく利点を生かして,検査時間のスケジュールやスタッフの配備を適時修正しながら,検査までの待ち時間を極力減らすよう努めている.また患者様の利便性向上のため,以下のような各種対応も積極的に行っている.

●同じ日に外来で上部内視鏡検査と下部内視鏡検査が施行可能である.

●下部内視鏡検査が午前中に検査可能である.

●下部内視鏡検査時の腸管洗浄剤は液体タイプ,錠剤タイプの選択が可能である.

当院は各診療科を有する総合病院である.高齢の患者様や,複数の診療科に関わりのある患者様もご紹介いただくため,消化器疾患以外の合併症を有する患者様の内視鏡治療にも他の診療科と連携して対応している.

また内科外科の枠組みを超えたシームレスな治療を積極的に行っており,必要な時は検査時に外科医立ち会いの下,外科側の希望を取り入れて合同で検査治療にあたっている.

救急に関しては,当内視鏡センターの目の前がICU/HCU病棟であり,専属のスタッフが常勤していることから,治療前後の全身管理を含めたバックアップが24時間受けられる体制になっている.

スタッフ

(2022年3月現在)

医師:消化器内視鏡学会指導医2名,消化器内視鏡学会専門医3名,その他専攻医含むスタッフ4名

内視鏡技師:Ⅰ種4名

看護師:常勤10名,非常勤5名

臨床工学技士:5名

看護助手:2名

内視鏡洗浄スタッフ:2名

設備・備品

(2022年3月現在)

 

 

実績

(2020年1月~2020年12月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当院はJCEP(卒後臨床研修評価機構認定病院)であり,消化器内科に研修医が1~2名程度ローテーションしている.当科の研修は,初期・後期研修いずれも指導医のマンツーマン指導の下で,担当患者様を受け持ち,能動的な研修ができる教育体制を実践している.内視鏡検査に関しては進達状況を確認しながら,習熟度に応じた技術指導を行っている.

研修1年目では,検査の見学,介助を行い,内視鏡検査の適応等を理解した上で,内視鏡モデルを用いつつ,実技指導を行っている.研修2年目,または消化器内科志望者には,担当患者様の必要な検査や検査順序を自ら考え実践する,より能動的な研修を行っている.実技指導に関しては指導医のマンツーマンの指導の下,上部内視鏡の挿入から抜去,観察,生検まで一人で施行できることを目標に指導している.

後期研修医も指導医のマンツーマンの指導のもと上部・下部内視鏡検査を行っている.より安全で確実な検査を目指すと共に,拡大観察を含めた診断能の向上を目標としている.また熟練度に応じて消化管出血に対する止血処置やESDの介助を経て,実際に施行医として治療に関われるよう指導している.

胆膵領域の内視鏡治療も多いため,介助がスムーズに施行できるよう頻回に検査に携われるよう調整している.その後,指導医によるマンツーマンの指導のもと,選択的胆管・膵管の挿入,内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)などの各種処置の指導を行っている.

検討会は,ヒューマンエラーの予防,多職種や外科の考え方・治療結果のフィードバック,更なる精度の高い診断や技術の向上目的で,必ず内視鏡画像を含めて行っている.具体的には多職種合同,消化器内科,消化器内科外科合同の3種類のカンファレンスを毎週,内科外科合同の炎症性腸疾患センターの症例カンファレンスを毎月1回行っている.

更に地域を越えた全国のハイボリュームセンターとの連携を生かし,消化管や胆膵領域の著明なエキスパートによる,挿入,観察,診断,治療のすべての段階のハンズオントレーニングを当院内で定期的に施行しており,常に最先端の知識や技術の習得に努めている.

なお当院は中規模病院ではあるが,三次救急医療施設であり,消化管・肝胆膵すべての範囲を対応しなければならない.決して内視鏡科という立ち位置ではないため,手技だけでなく消化器内科医として,患者様やその家族の全体像を俯瞰しながら,診療を行うよう指導している.

現状の問題点と課題

当院は三次救急医療施設であり,夜間の緊急対応も積極的に行っている.ただし後期研修医を含め実働できるスタッフは5名であり,圧倒的にマンパワーが不足している.また,通常業務で鎮静剤を積極的に使用しているため,リカバリー室不足が問題である.現在も他部署へのリカバリー依頼が頻回に必要であり,リカバリー室の増設が急務であった.幸い,内視鏡フロアーの一部改築が決まり,リカバリー室が2床から4床に増設予定である.

一方,当内視鏡センターの看護師は,CTやRI,脳・心臓といったアンギオ部門も兼務している.そのため,内視鏡検査中にそれらの部署から要請があれば,対応が必要となり,内視鏡部門に関わるスタッフの減少による,検査時間の遅延も問題であった.

検査,治療の総数が増加しており,病院側より専任の内視鏡洗浄スタッフや臨床工学技士の派遣,また看護部門の協力による,スタッフの積極的増員などかなり配慮してもらっている.しかし,それでもまだ検査時間の遅延は解消されておらず,現在の検査数の増加状況,治療数の増加を考えると医師や他のメディカルスタッフの人員の充実は急務である.

また複数の診療科が利用できる処置用の透視室が1部屋しかない.緊急を含めた胆膵系検査も大幅に増加しており,近いうちに透視室が1部屋増設される予定であり期待したい.

一方でこの様な環境のために,効率化の意識が医師やメディカルスタッフに芽生え,また内視鏡検査に関わる全員の能力も向上してきている.限られたスペース,人員ではあるが,スタッフ全員が小さな工夫を積み重ねることで,更なる効率化を目指し,より質の高い検査や治療を提供できるよう日々努めている.

 
© 2022 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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