2022 年 64 巻 6 号 p. 1291-1293
当院は1910年に高木眼科医院として開設されたのが始まりで,1968年に高木病院として現在地に移設され,総合病院としての役割を担うようになった.その後は地域住民の医療ニーズの高まりに応えるべく,病棟を逐次増築し,病床数を拡張してきた.当院は本医療法人の基幹病院として,すべての診療科を有する365日24時間の救急医療体制を構築するとともに,先進的な医療の導入・推進にも努めている.一方,近年の内視鏡検査・治療件数の増加および治療技術の高度化に伴い,2021年4月より内視鏡診療スペースの拡張,機器の刷新をはかったうえで,消化器センターとして現在の診療棟に改装・移転がなされた.
組織当院の内視鏡室は中央検査部門の1つとして位置づけられている.内視鏡診療に関しては,消化器内科,消化器外科,呼吸器内科,呼吸器外科がそれぞれの専門領域に基づいて検査・治療を行っている.専属の臨床検査技師5名が内視鏡室に従事しているのに加え,看護師3名,事務員2名がローテーションで勤務しており,円滑な内視鏡診療が遂行できるよう協力しながら運営している.
検査室レイアウト
内視鏡室の改装を行うにあたって,以下の点を改善した.
①リカバリー室の拡大:年々ニーズが増加する鎮静下内視鏡に対応すべく,リカバリーベッドを2床から4床に増床した.そのため,モニタリング機器を追加導入し,内視鏡室の看護師を増員した.
②動線の整理:これまでの内視鏡室では患者,スタッフ,使用前・後の内視鏡機器移動の動線が混在していたため,新内視鏡室ではスタッフ用の裏動線の確保,洗浄室と保管庫の位置を見直した.
③処置用検査室:救急患者や治療内視鏡患者に対応するため,エレベーターホールからストレッチャーにて最短距離で搬入できる位置に処置用検査室を設置した.1室あたりの面積を以前より広く確保できるようになったため(24m2),高周波発生装置やEUS(超音波内視鏡検査)関連機器の使用,各種ドレナージチューブ留置中の患者への処置など,広いスペースが必要な状況にも容易に対応できるようになった.
この他にも,吊り下げ式モニターの設置,中央モニタリングシステムの導入,AI診断システムの導入(CAD EYEⓇ)などを新たに行った.
(2021年10月現在)
医 師:消化器内視鏡学会 指導医4名,消化器内視鏡学会 専門医4名,その他スタッフ3名,研修医など1名
内視鏡技師:Ⅰ種2名,その他技師3名
看護師:常勤3名
事務職:2名
(2021年10月現在)
(2020年9月~2021年8月まで)
当院は基幹型臨床研修病院であり,消化器内科には毎月1-2名の初期研修医がローテートしている.ローテーション初期にシミュレーターを使用して内視鏡下の解剖の理解,スコープの操作方法などを学習する機会を設けている.ある程度,検査のイメージを把握したところで,実際の検査における生検や処置の介助などに積極的に参加していただく.消化器内科に興味のある者や,選択で消化器内科を長くローテートする研修医には,上部消化管内視鏡の抜去から始め,画像撮影,挿入とステップアップしていき,最終的には1人で検査を完遂できる状態まで指導している.
専攻医については,上・下部内視鏡のスクリーニング検査,生検手技の習熟具合を確認しながら,EMR(内視鏡的粘膜切除術),ESD(内視鏡的粘膜下層剝離術)などのより侵襲的な処置の介助や術者を体験させている.胆膵内視鏡も同様の手順で進めている.毎週月曜日に,主に外来・入院患者の治療方針を確認する消化器内科カンファランス,毎週火曜日に外科,放射線科,病理診断部と合同で手術症例カンファランスを行っており,消化器疾患に関する診断,治療技術の向上や,診療科横断的な考え方のトレーニングの良い機会となっている.院内で定期的に行われるキャンサーボードやCPC(Clinico-pathological conference:臨床病理検討会)にも積極的に参加している.さらに,毎週一回抄読会を行い,最新の医学情報の共有化や知識のアップデートを図っている.
また,日々の臨床で感じた疑問や問題点を解決する一助になる事を目的として,学会や研究会・講習会などへ積極的に参加することを推奨しており,適宜学会での発表,論文作成の指導を行っている.
・近年,内視鏡処置や緊急内視鏡などの検査・治療件数の増加に伴い,1件あたりの処置に要する医師やスタッフの数が限られる事例がある.適宜外科や救急科など他科の協力を仰ぎながら対応しているが,処置時間が長くなるため,日勤帯を越える対応となる事例がしばしば発生する.スタッフの負担や医療安全の観点からは好ましい状況とはいえず,安定した医療体制の維持にはスタッフの拡充が急務である.
・現在,内視鏡室担当看護師には専属のスタッフがおらず,外来兼務の15名中3名がローテーションする配置となっている.内視鏡室では,他の検査部門と異なり,鎮静剤使用やモニター管理が必要な患者が多く,バイタルが不安定な患者対応の機会が増加の傾向にある.内視鏡診療に関わる知識や安全管理に対する意識が必要となるが,まだ不十分な状況である.専属スタッフの人員確保,スタッフの教育が今後の課題である.
・当院は地域中核病院としての役割があり,地域住民のがん検診受診促進や早期発見・早期治療の啓蒙活動も市民公開講座などを通じて積極的に行っている.現在はCOVID-19感染症の影響で実施が困難となっているが,今後は院外での広報活動も,安全面に考慮しながら広げていきたい.