日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
関西医科大学総合医療センター 内視鏡センター
責任者:島谷昌明(関西医科大学総合医療センター消化器肝臓内科 教授,同 内視鏡センター センター長)  〒570-8507 大阪府守口市文園町10-15
光山 俊行島谷 昌明
著者情報
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2022 年 64 巻 7 号 p. 1389-1392

詳細

概要

沿革・特徴など

当院は90年余りの歴史を有する私立医科大学で,1928(昭和3)年に大阪女子高等医学専門学校として創立された.その後,1932(昭和7)年に大阪府守口市に附属病院(旧滝井病院)が開院し,1949(昭和24)年に大阪女子医科大学が開設され,1954(昭和29)年に「関西医科大学」と改称された.2016(平成28)年に本館を新築するとともに「関西医科大学総合医療センター」に改称し,大阪市及び北河内2次医療圏の医療センター機能を担う地域密着型病院として生まれ変わった.本館296床,南館142床,北館39床を合わせた計477床を有し,35の診療科と連携各科がチーム医療を実践する27のセンターにより地域医療における中核病院として,高度な総合医療機関の役割を担っている.

組織

内視鏡センターは中央診療部門の一つとして独立した組織であり,内視鏡センター長は消化器肝臓内科教授(診療部長)が兼任し,全体を総括して運用を行っており,消化器肝臓内科・消化管外科・呼吸器内科の医師が内視鏡検査・治療などの診療に携わっている.また,看護師6名,消化器内視鏡学会認定技師1名,臨床工学技士1名,医療クラーク1名等が内視鏡業務に従事しており,看護師・医療クラークは外来部門所属で,臨床工学技士は臨床工学センター所属である.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

2016(平成28)年5月の本館新設に伴い,内視鏡センターは病院新館の2階に移動した.総面積は360m2であり,消化管内視鏡検査室が4室,Cアーム型透視装置を有するX線透視室が1室,前処置エリア,前処置個室(2室),リカバリーエリア,更衣室,洗浄室,検査状況を監視するモニター室,カンファレンス室などで構成されている.洗浄室は患者出入り口の対側で直結しており,内視鏡と患者の移動ルートが交わらないように配慮したレイアウトとなっている.各ブースは完全個室化となっており,すべての部屋で患者の血圧や呼吸状態などモニタリングができ,患者の安全性やプライバシーに十分配慮されている.また各ブース内にはファイリングシステムと院内電子カルテの端末が装備されており,検査終了後はレポートと内視鏡画像を閲覧可能で,医師,看護師ともに検査室内でレポート入力・記録を完結することができ,医療者の効率化にも配慮されている.上部消化管内視鏡,下部消化管内視鏡,カプセル内視鏡,ダブルバルーン小腸内視鏡,胆膵内視鏡,超音波内視鏡,胆道鏡(SpyGlass DS),気管支鏡など最新の医療機器を導入しており,様々な症例に対する内視鏡診療を実施している.全内視鏡検査室の内視鏡の映像はカンファレンス室の大型モニターから常時モニタリングできるようにしており,診療のみならず教育や指導にも広く用いている.

スタッフ

(2021年11月現在)

医師:消化器内視鏡学会指導医6名,消化器内視鏡学会専門医6名,その他スタッフ9名

内視鏡技師:Ⅰ種1名

看護師:常勤5名,非常勤1名

臨床工学技士:1名

事務職:3名

その他:内視鏡洗浄員3名

 

内視鏡センター スタッフ

設備・備品

(2021年11月現在)

 

 

実績

(2020年10月~2021年9月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当院は消化器内視鏡学会認定指導施設であるとともに,研修指定病院であり,初期研修医,後期研修医,専修医や大学院生と様々な身分の医師が内視鏡診療に携わっており,それぞれの能力や希望に応じた内視鏡研修,教育・訓練を積極的に行っている.当院における内視鏡研修システムはカリキュラムに沿って内視鏡修練医に対して指導を行っている.まず検査の見学からスタートし,検査医,介助者の動きをみて一連の流れを学んでもらう.スコープ操作については,内視鏡モデルや内視鏡シミュレーターによるトレーニングなどで基本操作を学び,撮影法を理解し,一定の基準を満たした時点で上級医の指導のもと上部消化管内視鏡検査から施行している.次に上部消化管内視鏡検査が一定レベルに達してから,下部消化管内視鏡検査を施行している.拡大・画像強調観察,内視鏡的粘膜切除術(EMR),内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD),超音波内視鏡検査(EUS),小腸内視鏡,内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)(バルーン内視鏡を用いたERCPも含む)など各専門領域における内視鏡診断・治療はほぼ並行して幅広く研修し,習熟度に応じて適宜ステップアップする.指導体制は基本的に屋根瓦方式で行っており,この方式を導入することでそれぞれの立場において研鑽と指導の両方を経験できるため,双方の成長にも繋がると考えている.緊急内視鏡の際に上級医と下級医がペアとなって対処するのもこの一環である.教育体制として,専攻医を対象に内視鏡診療に関する基本的知識の講義やトレーニングモデルを用いたミニレクチャーも適時開催している.また毎週行っている内視鏡カンファレンスを通じて内視鏡診断について学び,検査時には所見入力を自ら行い,上級医にチェックしてもらうことで診断能力を身につけるようにしている.さらに各グループのカンファレンスや内科・外科・放射線科合同カンファレンスを通して,個々の症例ごとに治療方針などを検討し,各種ガイドラインの再確認やお互いの診断能,知見の向上に努め,各人がスキルアップできる環境作りを心がけている.今後は最先端施設への国内留学を推奨し,留学を通してさらなるスキルアップを志し,国内のみならず世界でも活躍できる内視鏡医育成ができるような環境作りを目指している.また研究においても,現在全国レベルでの多施設共同研究に多数参加しているが,今後は主任研究者を務める臨床研究を積極的に行い,国内外において中心的な役割が果たせるよう努力していきたい.さらに,医師のみならず看護師・臨床工学技士等の医療スタッフにも処置具の操作などの教育・訓練を行い,内視鏡学会認定内視鏡技師の資格を積極的に取得できるような環境作りを行っている.

現状の問題点と今後

近年の内視鏡診療の進歩は目覚ましく,多様化かつ専門性が高くなってきており,さらに内視鏡件数の増加,患者の高齢化,手技の複雑化・多様化に伴い,医師を含めた医療スタッフの業務は増え続けている状況にある.実際,2020年11月に島谷昌明教授が就任されて以来,上部・下部内視鏡検査・治療を始め,特に胆膵内視鏡治療(ダブルバルーン内視鏡を用いたERCPを含む)の件数は急激に増加しており,内視鏡診療に携わる医師,看護師,内視鏡技師などの十分な人員確保が課題である.

2020年12月以降,ダブルバルーン内視鏡を始めとして上部・下部・胆膵処置用内視鏡や胆道鏡などの最新内視鏡機器やX線透視画像の高精細透視収集装置などの医療機器を新たに購入し,医療機器・医療周辺機器に関してはある程度充実してきたが,内視鏡施行時の鎮静希望者の増加に伴うリカバリースペースの不足や大腸内視鏡検査の増加に伴う前処置用のトイレ数や待機スペース不足などのハード面の改善と,医師・看護師・内視鏡技師などの十分な人員確保といったソフト面の充実が今後の課題である.女性医師や,何らかの事情で内視鏡のキャリアを中断せざるを得なかった医師についても,再教育も含め積極的に受け入れて人材面の充実に努めていきたいと考えている.また医師や看護師の負担軽減のため,常駐する臨床工学技士の増員や臨床検査技師の導入を計画している.内視鏡業務を円滑かつ安全に行うためには,業務の分担を推進してチーム医療を促進させ,働きやすい環境を作ることが重要であると考えている.また教育システムを充実させ,優れた消化器内視鏡専門医を多数輩出させ,地域医療や内視鏡診療の発展に寄与していきたいとも考えている.さらに,臨床研究など学術的活動も積極的に行い,その成果を常に国内外へ発信し続け,国内のみならず世界でも活躍できる内視鏡医の育成にも努めていきたいと考えている.以上のように,今後も地域の中核医療施設として安全でかつ質の高い内視鏡診療を継続し,大学病院としてアカデミックなハイボリュームセンターを目指して努力していきたい.

 
© 2022 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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