日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
武蔵野赤十字病院 内視鏡センター
責任者:中西裕之(消化器科部長),黒崎雅之(内視鏡センター長)  〒180-8610 東京都武蔵野市境南町1-26-1
中西 裕之 黒崎 雅之
著者情報
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2023 年 65 巻 10 号 p. 2245-2248

詳細

概要

沿革・特徴

当院は,1949年11月30日に東京都多摩医療地域の基幹病院として開設され,現在に至る.病床611床(一般528床,ICU8床,HCU22床,GICU6床,SCU9床,NICU6床,GCU12床,感染症20床)の三次救急医療施設病院として年間約10,000台の救急搬送に対応しつつ,地域がん診療連携拠点病院としてロボット手術やがんゲノム医療などの最新の治療を提供している.当院には診療科の枠を超えた13のセンターがあり,その一つとして内視鏡センターが位置付けられている.緊急内視鏡的止血術は年間100件以上,消化管内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)年間200件以上,内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)関連手技は300件以上,超音波内視鏡検査(EUS)関連手技年間100件以上施行し,緊急の症例に対し24時間体制で対応している.女性スタッフも多く在籍し,育児への配慮も積極的に行っている.

組織

院内の複数診療科から構成されるセンターの一つとして内視鏡センターがある.

医師は消化器科,外科,呼吸器科,呼吸器外科で構成され,消化器科が運営している.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

現在4部屋の内視鏡ブース,2室の透視室を有し,全室CO2送気を利用可能である.緊急内視鏡は初療室で,救命センターのバックアップ下に施行している.所見入力,修正はNEXUSと契約し,30以上のライセンスを取得しており,消化器科,呼吸器科,外科関連病棟,医局,外来至る所から入力可能としている.透視室はERCPや透視下内視鏡以外にも,放射線科の非血管系Interventional radiology(IVR),呼吸器科の経気管支肺生検(Transbronchial lung biopsy:TBLB)等と共用である.上部・下部はすべての検査室で拡大内視鏡およびNarrow band imaging(NBI)が可能である.看護師,検査技師,スコープ洗浄員が常駐し,スコープのセット,変更も素早く行われる.若手医師はスクリーニングであっても気になる所見があればその場で拡大NBIを行う環境で年間7,000件以上の内視鏡検査を施行している.また,内視鏡センターと放射線科が透視室2室を共有しており,ERCPに加え,非血管系IVRを消化器科と放射線科で協力して施行し,高難度の処置に対応している.多摩地区は実地医科の内視鏡施行体制が充実しており,当科の消化管ESDの8割以上が紹介症例であり,フォローアップ等,地域との連携が比較的良好に機能している.

スタッフ

(2023年3月現在)

医師:消化器内視鏡学会指導医5名,専門医10名,その他29名

看護師:15名

臨床検査技師:1名

スコープ洗浄員:4名

事務職:4名

 

内視鏡スタッフ

設備・備品

(2023年1月現在)

 

 

実績

(2022年1月~2022年12月)

 

 

指導体制・指導方針

当院は学術評議員が2名在籍しており,自院のみで内視鏡指導医を育成できる環境にあり,学術指導を行い,後期レジデントのみならず,中堅医師のキャリアアップにも対応している.

初期研修医は2カ月間消化器科をローテーションし,担当指導医の内視鏡の見学およびESD,胆道系処置の介助に入る.後期研修医は上部・下部消化管内視鏡検査,胆道系処置,ESD,緊急内視鏡的止血術を指導医のもとで行う.指導はある程度修練を積むまでは,検査・治療ともに上級医とのマンツーマン体制とし,リアルタイムに所見の修正,実技指導を行うことで,トラブルを回避し安心して修練を積んでいる.また,毎週のカンファレンスでESD症例を中心として,術前診断と病理所見との対比を行うことで診断精度の向上に努めている.若手・中堅医師を中心に,学会発表,論文投稿を推奨しており,その指導を行っている.

現状の問題点と今後

1)治療件数の推移と枠の確保

近年,大腸ESD件数と胆道系処置件数が増加しており,治療枠を確保し,治療待ち期間を1カ月以内にしている.術者が件数の増加で破綻しないよう,チームで活動し,勤務調整を行っている.

2)人員の確保

当センターは,特に若手医師への技術指導,専門医資格の取得,学会・論文指導などを通じて,キャリアアップを果たしていただき,研修を充実させることで期待に応え,研修希望者の増加につなげたいと考えている.また,男女を問わず,育休の取得をするなど,育児と仕事の両立に配慮している.保育園の送迎による常勤医の勤務時間調整にも対応しており,特に女性医師が働きやすい環境となっている.

看護師は内視鏡技師資格の取得を推奨しており,毎年合格者を輩出している.育児との両立が必要なスタッフが多いため,時間内に検査・処置が終了するように配慮している.

専任の洗浄員を配置し,さらに臨床検査技師も配置し内視鏡技師資格を取得している.

業務を分担することで,素早いスコープの切り替え・洗浄や,吸引瓶の交換などで,日々の円滑な検査,治療の進行が体感されている.

3)職業感染対策

コロナ禍が続いている.無症候性感染者の存在,発症後の隔離解除期間の短縮などで,スタッフから不安の声が出ている.予約患者さんは検査前1週間の自粛を徹底していただき,受診時の健康チェック,会食の有無等の問診を行っている.スタッフは,感染対策でN95マスク,ゴーグル,ガウン,手袋,帽子の着用を行い,検査1例ごとに検査台や機器の消毒を行っている.また,内視鏡センター内のウイルスの濃度と暴露時間を減らすことが感染予防において重要と考えており,換気を行っている.また,各部屋にウイルス除去用の空気清浄機を配備している.初療室では,患者は感染の有無が不明なまま救急搬送となるため,気流を発生してフィルターでウイルスを除去するタイプの装置を導入した.職員同士の会食は状況に応じて人数制限もしくは禁止した.これらの努力で内視鏡センターでの職業感染ゼロ,クラスターゼロを3年達成した.しかし,2022年末の変異株流行の際に幼児から母親が感染するなどの家族内感染事例が散発した.内視鏡センターだけでは職員の感染を制御できないため,今後の検討課題である.

4)施設,設備の拡充

今後は,増え続けるニーズに応えるべく,規模拡大を計画しており,2025年に新病院の建築が完了する見込みである.内視鏡センターは消化管内視鏡検査室7,気管支鏡検査室1,透視室2に規模拡大される予定である.また,さらなる診断精度の向上に向け,2023年内に内視鏡AIを導入予定である.超音波診断装置も2023年の最新型への変更で,造影EUSに対応し,質的診断精度の向上を目指している.また,2022年より超拡大内視鏡を導入し,拡大NBIとの組み合わせで診断精度向上に努めている.今後も,院内,地域からの要望に適切に対応し,安全確実な内視鏡診療の提供を心がける所存である.

 
© 2023 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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