日本消化器内視鏡学会雑誌
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65 巻, 10 号
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総説
  • 鈴木 翔, 河上 洋, 三池 忠
    2023 年 65 巻 10 号 p. 2145-2158
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/20
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    消化器内視鏡は消化器診療において必要不可欠な医療機器で,検査・診断のみならず治療でも大きな役割を担っている.ルーチンのEGDや全大腸内視鏡検査(total colonoscopy:TCS)の他,胆膵内視鏡,EUS,ESDや止血処置・異物除去など内視鏡スキルは多岐に渡るが,内視鏡技術を向上させるには経験と時間が必要である.現在,様々なタイプのトレーニングモデルやシミュレーターが開発されており,初学者の練習や研修医・学生指導に用いられている.トレーニングモデルは簡便性や低コストが長所で,シミュレーターは豊富な種類の内視鏡検査・手技のトレーニングができる点で優れている.練習や指導の中でトレーニングモデルやシミュレーターを上手に活用して,個々のスキルアップ,実際の内視鏡診療の向上に繋がることが期待される.

  • 南 亮悟, 柴田 理美, 飯塚 敏郎
    2023 年 65 巻 10 号 p. 2159-2173
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/20
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    種々の腸炎の診断において,内視鏡所見は重要である.一方で類似した内視鏡所見が違う疾患で認められることも多く,その鑑別には背景因子の把握とともに生検による組織診断が助けとなる.特徴的な内視鏡所見は,Graft-versus-host disease(GVHD)腸炎では,びまん性浮腫状変化・血管透見像の消失・粘膜剝離であり,non-steroidal anti-inflammatory drug(NSAIDs)起因性腸炎では,地図状びらんや浅い類円形もしくは縦走潰瘍,Clostridioides(Clostridium) difficile感染症では偽膜,膠原繊維性腸炎では浮腫・顆粒状粘膜・ひび割れ・粘膜裂創,immune-related Adverse Events(irAE)腸炎では,発赤・顆粒状粘膜・浮腫状粘膜・血管透見像の低下である.典型的な内視鏡所見の認識は診断の一助となる.

症例
  • 奥本 和夫, 桃﨑 孝, 堺 貴之, 秋葉 昭多郎, 堀内 英和, 八戸 茂美
    2023 年 65 巻 10 号 p. 2174-2179
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/20
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    症例は78歳の男性,肝内胆管癌にて肝右葉切除後,経過観察されていた.黒色便あり,上部消化管内視鏡検査施行,食道静脈瘤(LmF3CwRC1)を認めた.アンモニアは107μg/dLと高値であった.血小板が5万/μLと低値であったため,ルストロンボパグ3mg/日を1週間投与し,その後に内視鏡的硬化療法を行った.治療後,アンモニア値の正常化を認めた.8カ月の経過で食道静脈瘤の再発はなく,アンモニアの正常化も保たれている.肝切除後には門脈圧亢進を生じ,食道静脈瘤が発達する危険がある.巨木状の静脈瘤を閉塞することにより,側副血行路が遮断され,アンモニア値が低下したと考えられた.アンモニア高値である食道静脈瘤に対しては,シャントの閉塞でアンモニアが正常化することがあり,シャント閉塞前後において肝予備能やアンモニアの変化を適切に評価することが重要であると考えられた.

  • 平島 美幸, 宮本 英明, 岡崎 菜紗, 河野 亮介, 園田 隆賀, 田山 紗代子, 本田 宗倫, 具嶋 亮介, 直江 秀昭, 田中 靖人
    2023 年 65 巻 10 号 p. 2180-2186
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/20
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    症例は71歳男性.肝障害の精査目的で施行した全身CT検査で境界明瞭な類円形の肺結節影を2カ所指摘され,転移性肺腫瘍が疑われた.原発巣検索として施行した上部消化管内視鏡検査で,胃体部大彎に発赤調の扁平隆起性病変を認めた.病理組織検査でERG・CD31が陽性となる異型細胞を認め,胃血管肉腫と診断した.Paclitaxelによる化学療法を行い一旦縮小したが,その後再増大し,紫紅色の2型腫瘍様の形態を呈した.診断から11カ月後に全身状態の悪化,消化管出血により永眠した.消化管に発生する血管肉腫は原発性,転移性ともに非常に稀であり,本症例は内視鏡で経時的な形態変化を観察しえた貴重な症例と考えられた.

  • 小笠原 佑記, 沖 裕昌, 山田 高義, 中嶋 絢子, 耕崎 拓大, 谷内 恵介, 内田 一茂
    2023 年 65 巻 10 号 p. 2187-2193
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/20
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    症例は65歳男性.維持透析中で炭酸ランタンを内服していた.紹介元のEGDにて胃体下部小彎前壁に発赤調の陥凹病変(病変1)を認め,当院のEGDにて近傍に別病変(病変2)を検出した.背景粘膜はランタン沈着症の診断であった.Proton pump inhibitor内服とランタン休薬により,白色光観察では粘膜の粗造な変化は軽減し,Narrow Band Imaging(NBI)観察では胃癌病変が強調され,範囲診断が容易になっていた.ESDにより2病変を一括切除し,病理組織学的には胃癌病変のランタン沈着は非癌粘膜に比較して軽微であった.ランタン沈着症に同時多発早期胃癌を合併した症例は稀であり,内視鏡所見および病理組織学的所見を理解する上で重要な症例と考えられた.

  • 堀 達彦, 日吉 雅也, 石橋 肇, 奥野 貴之
    2023 年 65 巻 10 号 p. 2194-2199
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/20
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    症例は94歳女性.心窩部痛・下痢を主訴に前医受診し,CTにて上行結腸に壁肥厚を認め当院に紹介となった.大腸閉塞所見を認めたため,閉塞性大腸癌を疑い緊急でCSを行い,上行結腸癌と直腸癌の診断となった.上行結腸癌はスコープ通過不能であり,大腸ステントを留置した.その4日後に再度腹部膨満を認め再腸閉塞が疑われた.CTにて大腸ステント内腔に種子を疑う高吸収異物を認め,ステント閉塞が疑われた.CS下にてステント口側の梅の種子を除去した後,腸閉塞は改善し,待機的な大腸切除を行った.種子などの食餌異物による腸閉塞の報告は散見されるが,留置した大腸ステント内で閉塞した症例は稀であり,文献的考察を加えて報告する.

注目の画像
手技の解説
  • 大森 鉄平, 高鹿 美姫, 村杉 瞬
    2023 年 65 巻 10 号 p. 2202-2216
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/20
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    クローン病(Crohnʼs disease:CD)は主に小腸と大腸に炎症を繰り返し腸管ダメージが蓄積する慢性進行性破壊性の炎症性疾患である.小腸病変は臨床症状やバイオマーカーに反映しにくいことが経験されるため小腸カプセル内視鏡(Small Bowel Capsule Endoscopy:SBCE)などによる粘膜炎症の評価と定量化は重要である.CDに対するSBCEスコアとして一般的に用いられているものとしてはLewis ScoreとCapsule Endoscopy Crohnʼs Disease Activity Indexがある.スコアはさまざまなエビデンスがあるが,スコアのみで判断すると炎症と狭窄のような器質的変化が混在するCDの病態を見誤る可能性があるため注意が必要である.またレポートで報告する情報としてパテンシーカプセルによる開通性評価判定の有無,腸管手術歴,腸管通過時間を必ず明記し,スコアでは判断しにくい術後吻合部潰瘍や狭窄部位,特徴的な胃病変である竹の節状外観や十二指腸のノッチ様陥凹があればもれなく記載することが望まれる.

  • 中原 一有, 立石 敬介
    2023 年 65 巻 10 号 p. 2217-2230
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/20
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    急性胆囊炎に対する胆囊ドレナージ法には,経皮経肝ドレナージ,内視鏡的経乳頭ドレナージ(endoscopic transpapillary gallbladder drainage:ETGBD),超音波内視鏡下経消化管ドレナージがある.ETGBDは生理的ルートを介した非観血(非穿刺)手技であるため,抗血栓薬内服などの出血傾向例や腹水症例に対しても施行可能である.しかし,胆囊管を通じた手技は難易度が高く,手技成功率が低いことが課題である.ETGBDを安全に成功させるためには,ETGBDの基本手技を習得し,さらには手技困難例への対応策を身につけておくことが重要である.

資料
  • 森 悠一, James E. East, Cesare Hassan, Natalie Halvorsen, Tyler M. Berzin ...
    2023 年 65 巻 10 号 p. 2231-2241
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/20
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    電子付録

    大腸内視鏡検査用の人工知能(AI:artificial intelligence)は,臨床的エビデンスの裏付けもあり,市場に出回る数が徐々に増えてきている.それにもかかわらず,臨床的な利点や費用対効果に関するデータの欠如,信頼できるガイドラインの欠如,適応の不確かさ,導入のためのコストなど,様々な理由から,その導入は円滑に進んでいるとは言い難い.この状況を鑑み,世界内視鏡学会(WEO:World Endoscopy Organization)は,大腸内視鏡検査におけるAIの状況についての見解を,以下のポジションステートメント(立場表明,声明)として提供する.

    WEOポジションステートメント:

    1.1:大腸ポリープのコンピュータ支援検出(CADe:Computer -aided detection)は,腺腫の見逃し率を減らすことで大腸内視鏡検査の効果を改善し,腺腫の検出率を高めると考えられる.1.2:短期的には,CADeの使用は,より多くの腺腫を検出することで医療費を増やすと考えられる.1.3:長期的には,CADeによる費用の増加は,CADeに関連したがん予防によるがん治療(手術,化学療法,緩和ケア)に関する費用の節約によって釣り合う可能性がある.1.4:医療提供システムおよび行政当局は,臨床での使用を支援するためにCADeの費用対効果を評価すべきである.2.1:微小ポリープ(<=5mm)に対するコンピュータ支援診断(CADx:Computer -aided diagnosis)が十分な精度を持つ場合,ポリペクトミー,病理検査,あるいはその両方を減らすことによって医療費を削減できると期待される.2.2:医療提供システムと行政当局は,臨床現場での使用を支援するためにCADxの費用対効果を評価すべきである.3:われわれは,AI導入が異なる医療システムにおける集団と社会に利益をもたらすかどうかを理解するために,幅広い質の高い費用対効果研究を実施することを推奨する.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 中村 正直
    2023 年 65 巻 10 号 p. 2249
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/20
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    【背景】パテンシーカプセル(patency capsule:PC)は,小腸カプセル内視鏡(capsule endoscopy:CE)の前に小腸の狭窄を除外するために推奨される検査法である.われわれはPCが不通過であった患者と通過した患者の長期の臨床転帰を調査し,その長期予後を比較検討した.

    【方法】寛解期の小腸クローン病(Crohn’s disease:CD)の成人患者を対象とした2つの前向きコホート研究の事後解析を行った.論文内では2013年から2020年の間にPCを受けたCD患者を対象としていた.主要アウトカムはフォローアップ期間中の腸管手術または内視鏡拡張術の必要性であった.

    【結果】合計190名の患者が選択された(47名:PC不通過,143名:PC通過,フォローアップ期間中央値34.12カ月).PCが不通過であった患者では,主要アウトカムの発生率が高かった(21.3% vs 1.4%,ハザード比[HR] 20.3,95%信頼区間[CI]4.4-93.7,P<0.001).各々の調査項目についても,PC不通過では腸管手術(14.9% vs 0.70%,P<0.001),内視鏡的拡張術(14.9% vs 0.70%,P<0.001),入院(23.3% vs 5.7%,P<0.001),臨床的再燃(43.9% vs 27.7%,P=0.005)の割合が高かった.PC不通過はその後の腸管手術,内視鏡的拡張術の統計学的に唯一の独立した有意な因子として挙げられた.190名のうちPC不通過の1名で自制内の腹部症状の自覚が48時間あった.

    【結論】寛解期CD患者であってもPCが不通過であれば,そうでない患者よりも長期的な臨床転帰が悪化する.PC自体が安全で安価な新規の予後判定検査として有用であるかもしれない.

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