2023 年 65 巻 11 号 p. 2310-2311
59歳,男性.膵頭部の30mm大腫瘤性病変の精査目的で当科紹介受診となった.
腹部造影CT検査(Figure 1):膵頭部に30mm 大の早期相で均一に濃染される多血性腫瘍を認めた.総胆管,主膵管に拡張所見は認めなかった.

造影CT.
膵頭部に30mm大の早期相で均一に濃染される多血性腫瘍を認め,徐々に造影効果は減弱した.
超音波内視鏡検査(Figure 2):ラジアル型超音波内視鏡検査(EUS)スコープを用いて観察した.病変は,膵頭部に境界明瞭,類円形,辺縁整,平滑,内部均一な低エコー腫瘤として描出された.病変の主座は膵実質にあると思われたが,十二指腸第4層と連続する腫瘤として描出された.

超音波内視鏡(BモードEUS画像).
膵頭部に境界明瞭,類円形,辺縁整,平滑,内部均一な低エコー腫瘤として描出された.腫瘍の一部辺縁では十二指腸第4層と連続する腫瘤として描出された(矢頭).
造影超音波内視鏡検査(電子動画 1):ペルフルブタン0.015mL/kgをボーラス静注投与10秒後から病変は均一に濃染され,60秒後も遷延性に濃染された.続いてコンベックス型超音波内視鏡を使用し22G穿刺針にて超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA)を施行した.病理組織では,紡錘形腫瘍細胞を認め十二指腸Gastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断した.腫瘍は乳頭と近接しており,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.
電子動画 1
病理組織学所見(Figure 3):膵頭部に境界明瞭な27mm大の充実性腫瘍を認めた.腫瘍は十二指腸の固有筋層から発生し膵実質を圧排するように存在しており,組織学的には束状に増殖する紡錘形腫瘍細胞を認めた.免疫染色にてKIT陽性,MIB-1陽性率5%程度,核分裂像1/50HPFであり,十二指腸GIST,Fletcher分類で低リスクと診断した.

病理組織 HE染色 ルーペ像.
腫瘍は十二指腸の固有筋層から発生し膵実質を圧排していた.
GISTは全消化管に発生するが,そのうち十二指腸は5%と比較的稀である 1).壁外発育型の場合,十二指腸下行脚原発のGISTが膵頭部領域で膵実質に埋没するように発育することがあり,膵頭部腫瘍と術前診断されることが多いと報告されている 2).本症例は内視鏡検査で粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)として認識できない病変で,CT等では膵腫瘍と診断されていた.しかし,EUSで十二指腸固有筋層と連続する腫瘍として描出され,膵臓側に壁外発育を呈する十二指腸SMTと診断でき,EUSでの病変の局在診断を注意深く行うことが重要であると考えられた.
ペルフルブタンを用いた造影EUSによる上部消化管SMTの鑑別診断において,投与10~15秒後のearly phaseでは周囲から病変内部に流入する血流を,40~60秒後のlate phaseでは造影剤による病変全体の造影パターンを観察し,それぞれの時相での病変内血流を評価することが重要であると報告されている 3).造影EUSによるGISTとそれ以外の消化管SMTの鑑別診断に関する検討ではhyper-enhancementがGISTの所見であるとされ,GISTの悪性度診断においてはirregular vessels,heterogeneus enhancement,non-enhancement spotsを認めることがhigh-grade malignancy GISTの所見であると報告されている 3)~5).本症例ではearly phaseで病変内部に上記所見を認めず均一に造影され,late phaseではhyper-enhancementを呈するlow-grade malignancy GISTの造影パターンで最終病理診断と一致しており,これらの報告を支持する結果であった.膵頭部領域の腫瘍では,膵臓側に発育する十二指腸SMTを鑑別にあげることが重要で,EUSによる局在診断および造影EUSによる質的診断が有用であった.