日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
消化管悪性リンパ腫の内視鏡診断
弓削 亮 岡 志郎田中 信治
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2023 年 65 巻 2 号 p. 107-116

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要旨

消化管原発悪性リンパ腫は節外性リンパ腫のなかで30~40%を占めており,消化管はリンパ節に次ぐ悪性リンパ腫の好発臓器である.消化管悪性リンパ腫は組織型と臨床病期により予後を含めた臨床経過,選択すべき治療法が異なるため,正確な病理組織診断および病期診断が求められる.また,さまざまな組織型があり内視鏡所見も多彩であるが,病型とある程度対応しているため,消化管悪性リンパ腫の基本的な発育進展様式を理解した上で,組織型ごとの特徴的な内視鏡所見を把握することが正確な病理組織診断につながる.本稿では代表的な内視鏡所見を提示しながら,消化管悪性リンパ腫の内視鏡診断の要点について概説する.

Abstract

Primary malignant lymphomas of the gastrointestinal tract account for 30-40% of all extranodal lymphomas, and the gastrointestinal tract is the second most common organ of origin for lymphoma, after the lymph nodes. As the clinical course, including prognosis and treatment options, of gastrointestinal malignant lymphoma differs depending on the histological type and clinical stage, accurate histopathological and staging diagnosis is required. Furthermore, there are various histologic types and endoscopic findings which can correspond to the same pathologic type to some extent. Therefore, an accurate histopathologic diagnosis can only be made through understanding the basic developmental pattern of gastrointestinal malignant lymphoma and the characteristic endoscopic findings of each histologic type. This article outlines the essential characteristics of endoscopic diagnosis of gastrointestinal malignant lymphoma, with the presentation of representative endoscopic findings.

Ⅰ はじめに

悪性リンパ腫は節性と節外性に大別されるが,消化管原発悪性リンパ腫は節外性リンパ腫のなかでも30~40%を占め最も多い.消化管原発悪性リンパ腫の発生部位は胃が最も多く(60~80%),小腸(20~30%),大腸(5~10%)と続く 1),2

悪性リンパ腫は組織学的に多くの病型に分類されているが,胃では低悪性度のMALTリンパ腫(mucosa associated lymphoma tissue;MALT)と中悪性度のびまん性大細胞性B細胞性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma;DLBCL)とでほとんどを占める 3

小腸や大腸など腸管に発生する悪性リンパ腫では,DLBCLが最も多い組織型であり30~70%を占める 4),5.小腸ではDLBCLだけでなく,MALT,濾胞性リンパ腫(follicular Lymphoma;FL)やNK/T細胞リンパ腫が比較的多くみられる 6.特に近年,カプセル内視鏡(capsule endoscopy;CE)やバルーン内視鏡(baloon endoscopy;BE)の普及に伴って小腸悪性リンパ腫の診断例が増加している 7)~10.腸管悪性リンパ腫の組織型としてDLBCL,MALT,FLに続いてマントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma;MCL)もまれに経験される 7),11

このように消化管悪性リンパ腫にはさまざまな組織型があるが,組織型と臨床病期により予後を含めた臨床経過,選択すべき治療法が異なるので,正確な病理組織診断および病期診断が求められる.そのためには消化管悪性リンパ腫の内視鏡所見の特徴を把握し,質の高い生検検体を採取することが重要である.

悪性リンパ腫は上皮性腫瘍である癌と違い,粘膜上皮下組織から発生し,特に初期病変においては粘膜下腫瘍(非上皮性腫瘍)としての性格を有する肉眼形態を示すことが多い.リンパ腫細胞は粘膜下で非腫瘍性腺管を圧排する形で間質へ進展し,髄様に増生することで間質反応や線維化を伴わないために柔らかい外観を呈すると考えられる 12.しかし,同時に上皮内へもリンパ腫細胞は浸潤するため,上皮性腫瘍に類似した肉眼形態も併せ持っていることが特徴と言える.このような基本的な消化管悪性リンパ腫の発育進展様式を理解した上で,個々の組織型における特徴的な内視鏡所見を把握すれば,より正確な内視鏡診断につながると考えられる.

本稿では消化管悪性リンパ腫として日常遭遇しうる頻度の高い病変を中心に,胃悪性リンパ腫と腸管(小腸,大腸)悪性リンパ腫に分けて,内視鏡所見の要点について概説する.

Ⅱ 胃悪性リンパ腫

Ⅱ-1 肉眼分類

胃悪性リンパ腫の肉眼分類は国際的に統一されていないが,本邦では八尾の分類(表層拡大型・腫瘤形成型・巨大皺襞型)と佐野の分類(表層型・潰瘍型・隆起型・決潰型・巨大皺襞型)がよく使用されている 13),14.胃悪性リンパ腫の肉眼像は非常に多彩であり,従来の分類にはあてはまらないような特殊な肉眼型も報告されている.

Ⅱ-2 胃MALTリンパ腫

胃MALTリンパ腫は腫瘍細胞の増殖が比較的緩やかなため,粘膜から粘膜下層に限局する症例が多く,表層に非腫瘍性腺管をまだらに残しつつ,一部で上皮腺管への浸潤(lymphoepithelial lesion;LEL)を示しながら病変が進展していく.頻度的には粘膜から粘膜下層に限局した表層拡大型・表層型を呈することが多く,境界不明瞭な褪色調の陥凹性病変が典型的な内視鏡所見であるが(Figure 1-a),潰瘍性病変の場合や胃炎に類似した病変,陥凹型早期胃癌に類似した病変,隆起型の病変(Figure 1-b)など,非常に多彩な肉眼形態を示す 15.近年Helicobacter pyloriHp)感染率の低下に伴い,Hp陰性の胃MALTリンパ症例が増加傾向にあり,従来の分類にあてはまらない肉眼形態を示すHp陰性胃MALTリンパ腫症例も報告されている.前庭部から胃角にかけて鳥肌胃炎様の顆粒状隆起の多発を認めるような胃MALTリンパ腫が報告されており(Figure 1-c,d),顆粒状隆起の局在が前庭部にとどまらず,胃角小彎から体部小彎にかけて連続性に進展している点が通常の鳥肌胃炎との鑑別点となる 16.また,体部全体に顆粒状隆起の多発を認める形態を呈するMLP(multiple lymphomatous polyposis)型の症例も報告されている(Figure 1-e 17.特にHp陰性例においてこのような形態を呈する背景にはNHPH(Non-Helicobacter pylori-Helicobacter)感染の影響が推測されている 16),17

Figure 1 

胃MALTリンパ腫.

a:表層型の1例.境界不明瞭な褪色調の陥凹性病変.

b:隆起型の1例.表面平滑な結節状の粘膜下腫瘍様隆起を認める.

c:鳥肌胃炎様の1例.

d:インジゴカルミン散布像.前庭部から胃角にかけて顆粒状隆起が多発.

e:MLP型の1例.体部中心に顆粒状隆起が多発.

f:Figure 1-aのNBI拡大観察像.無構造領域,樹枝状血管,腺管の膨化所見を認める.

c,d,(Takigawa H et al. Helicobacter suis infection is associated with nodular gastritis-like appearance of gastric mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma. Cancer Med 2019;8:4370-9. より一部改変して転載).

頻度的に多い表層型の胃MALTリンパ腫は0-Ⅱc型の早期胃癌との鑑別が重要となる.通常内視鏡観察においては,MALTリンパ腫では境界が不明瞭である点,類似病変の多発がある点などに留意して鑑別する.赤松ら 18は0-Ⅱc型の早期胃癌と類似する胃MALTリンパ腫との鑑別のポイントとして,正常粘膜との境界が全周あるいは一部で不明瞭であること,蚕食像がないか,あってもごく一部の辺縁にのみ認められること,陥凹内に粘膜模様が観察されること,病変が多発することの4点が重要と報告している.

胃MALTリンパ腫はNarrow band imaging(NBI)拡大観察による特徴的な内視鏡所見が鑑別に有用とする報告がある.野中ら 19は胃MALTリンパ腫の表層にみられる特徴的な内視鏡所見として,腺構造が消失した粘膜に認める樹枝状の血管像を挙げ,Tree like appearance;TLAと命名し,褪色調の陥凹性病変を呈する未分化型胃癌とMALTリンパ腫との鑑別に有用であると報告している.小野ら 20),21は胃MALTリンパ腫のNBI拡大観察像の特徴として,腫瘍浸潤によって腺管構造が破壊されることによる無構造領域と異常血管,間質への浸潤により窩間が引き延ばされることによる腺管の膨化所見を上げ,これらの所見が混在して観察されると報告している.自験例においても表層型の症例で樹枝状血管や腺管の膨化所見を認めている(Figure 1-f).これらの所見を認めた部位を狙った生検を行うことは,組織診断における正診率の向上につながる.また,治療によって病理組織学的な寛解が得られるとこれらの所見は消失するとされており,治療効果判定にも有用と考えられる.

Ⅱ-3 胃DLBCL

DLBCL は増殖速度が速いため,粘膜下腫瘍様の立ち上がりを有する腫瘤の形成や潰瘍形成をきたす頻度がMALTリンパ腫と比較して高い.1型や2型の進行胃癌と類似した潰瘍を形成する場合が多く鑑別を要する.

上皮性悪性腫瘍の場合は辺縁に蚕食像などの上皮性の悪性所見を認めるのに対して,DLBCLでは腫瘍辺縁に虫食い状の非腫瘍性腺管の残存を認めることがあり,この点で鑑別できる場合がある 12.また,DLBCLでは辺縁に粘膜下腫瘍様の所見を有し,病変の大きさや深達度に比して柔らかく,壁の進展性は保たれているのに対して,上皮性悪性腫瘍の場合は比較的硬く,壁の収縮を伴っていることが多い.DLBCLの潰瘍底は厚いクリーム状の黄色調の白苔を有し,幅の狭い辺縁が整の耳介様の周堤を持った平皿状の潰瘍であることが多い(Figure 2).一方,上皮性悪性腫瘍の潰瘍底は凹凸不整で不均一であることが多い.内視鏡検査時には,これらの鑑別点を念頭に入れ,空気量を調整し病変の立ち上がりと潰瘍辺縁を意識した観察を行い,さらに多発病変の有無も確認することが重要である.

Figure 2 

胃DLBCL.

潰瘍型の1例.立ち上がりは正常粘膜に被覆され,粘膜下腫瘍様で耳介様周堤を呈する.

生検を採取する部位については,上皮性悪性腫瘍の場合と同様に潰瘍の中心部は壊死組織が多いため,潰瘍辺縁からの採取が必要である.上皮性悪性腫瘍と異なり,悪性リンパ腫の潰瘍辺縁では非腫瘍性上皮の残存がまだらに認められることがあるため,詳細に内視鏡観察した上で複数個所からの生検が必要である.

Ⅲ 腸管悪性リンパ腫

Ⅲ-1 肉眼分類

腸管悪性リンパ腫の肉眼形態もさらに多彩であり,統一された分類はないが,中村ら 6は小腸悪性リンパ腫の肉眼所見を5型(隆起型,潰瘍型,MLP型,びまん型,混合型)に分類している.潰瘍型ではDLBCLが大半を占め(60例中39例,65%),隆起型でもDLBCLが多かった(39例中23例,59%).また,MLP型ではFLの頻度が高く(38例中30例,79%),MCLは5例すべてがMLP型となっている.びまん型は14例中10例(71%)でNK/T細胞リンパ腫であったと報告されている.このように腸管悪性リンパ腫の肉眼型と組織型の間にはある程度の相関性がみられており,肉眼型からリンパ腫の組織型を推測可能である.

Ⅲ-2 小腸FL

FLは,腫瘍の増大速度が遅く,緩徐な経過をたどる予後良好なindolentリンパ腫である.内視鏡所見の典型像は,十二指腸下行部にみられる白色顆粒状隆起の集籏および多発所見である(Figure 3-a 22),23.絨毛の白色調変化を呈する場合や(Figure 3-b),MLP様隆起を呈することもあり,その場合はMCLやMALTとの鑑別が必要となる.空腸や回腸においても同様の白色顆粒を呈することが多いが,十二指腸に比べて内視鏡所見が多彩であり,腫瘤形成を呈する症例,正常のリンパ濾胞過形成との鑑別を要するような正色調の多発性隆起性病変も認める 24.また,まれながら全周性の開放性小腸潰瘍を呈する場合もある 25

Figure 3 

小腸FL.

a:白色顆粒状隆起の集簇像.

b:絨毛の白色調変化.

多くの患者の発見契機は検診目的の上部消化管内視鏡検査であり,偶然発見されることが多いが 24,空腸・回腸にも病変が多発していることが多い.そのため,病期診断に必要な骨髄検査やCTに加えて,小腸内視鏡検査(BE,CE)が必須である.BEとCEで小腸FL病変の検出率に差はないと報告されているが 24),26,CEは病変のスクリーニングには有用であるが生検組織による確定診断はできない点に留意する必要がある.前述のように,正常のリンパ濾胞過形成との鑑別を要するような病変も存在することから,正しい局在を把握するためにはBEによる全小腸の検索が必須である.また,一見正常と思われる部位からの生検でリンパ腫細胞を検出した症例は過去にも報告されており 24,消化管病変の検索にはtarget biopsyのみならずstep biopsyを行うことも重要であると考えられる.

小腸原発FLは無治療経過観察とした場合でも良好な長期予後が得られているが,増悪する症例を一部に認めており,慎重な経過観察が必要とされている 27.隅岡ら 28は小腸FLの内視鏡所見として,1/2周以上の周在性,病変が密在し正常粘膜を介さず癒合している所見,の2つが増悪を予測する独立した因子であると報告している.

Ⅲ-3 腸管MALTリンパ腫

消化管原発MALTリンパ腫の好発部位は約8割が胃である.一方で小腸や大腸原発の腸管MALTリンパ腫の割合は8~28%と報告されている 29)~32.肉眼型としては隆起型が最も多く,潰瘍型やびまん型を呈することもある 33

腸管MALTリンパ腫の内視鏡所見も多彩であるが,大腸のMALTリンパ腫ではほとんどが隆起型である(Figure 4-a 30),34.限局した隆起型を呈するMALTリンパ腫は,癌や神経内分泌腫瘍,GIST(gastro intestinal stromal tumor)などの粘膜下腫瘍様病変との鑑別が問題となるが,神経内分泌腫瘍,GISTに比べるとMALTリンパ腫は柔らかさがあり,伸展性が良好である.また,癌でみられる不整な上皮性変化に乏しく,表面は平滑または結節状を呈する.自験例では全結腸にわたりたこいぼ様の小隆起が多発する特殊な形態を呈する症例も経験しており,いずれのびらんからもMALTリンパ腫細胞が検出された(Figure 4-b).

Figure 4 

腸管MALTリンパ腫.

a:直腸隆起型の1例.表面平滑な結節状の粘膜下腫瘍様隆起を認める.

b:結腸MLP型の1例.インジゴカルミン散布像.全結腸にたこいぼ様びらんが多発.

c:回腸MLP型の1例.インジゴカルミン散布像.回腸にリンパ濾胞様の小隆起が多発.

大腸において隆起型が主体であったのに対して小腸においては潰瘍型,びまん型および混合型など,多彩な肉眼形態が認められる 35.潰瘍を形成する場合には,癌またはDLBCLなどの高悪性度リンパ腫との鑑別が必要である.病変や壁の伸展性,潰瘍の辺縁に蚕食像などの上皮性の変化が認められないことが癌との鑑別点となる.また,腫瘍の大きさと管腔の狭窄に比べて通過障害の所見が乏しいことも特徴と考えられる.MLP様隆起を呈することもあり(Figure 4-c),その場合は,FL,MCL,消化管ポリポーシスなどとの鑑別が必要である.

Ⅲ-4 腸管DLBCL

腸管悪性リンパ腫のなかで組織学的にはDLBCLが最も頻度が高い 4),5.胃DLBCLと同様に腸管DLBCLにおいても,その肉眼型は潰瘍型や隆起型を呈すること多い.胃と同様に1型や2型の進行癌との鑑別が必要であり,鑑別のポイントは前述の胃DLBCLと同様である.腸管DLBCLで狭窄を伴う場合は,全周性に長い狭窄を呈する一方で内腔の進展が比較的良好で通過障害をきたしにくい(Figure 5).

Figure 5 

大腸DLBCL.

潰瘍型の1例.潰瘍辺縁に不整所見はなく,耳介様周堤を呈する.全周性に長い狭窄を呈するも通過障害をきたしていない.

Ⅲ-5 マントル細胞リンパ腫

MCLは,消化管原発悪性リンパ腫のなかでは1~4%と比較的まれである 36.肉眼型では,MLP型が大半を占める 37.岡田ら 38は本邦におけるMCL69例の肉眼形態を部位別にreviewしており,MLP型は小腸・大腸では50例中36例(72%)であったと報告している.1984年にIsaacsonら 39はMLPを呈する悪性リンパ腫は病理学的にはMCLであると報告しており,欧米ではMLPはMCLの一病態であるとする考え方が一般的である.しかし,本邦においてはその後に濾胞性リンパ腫,MALTリンパ腫,成人T細胞リンパ腫などの症例においてもMLPを呈することが報告されている.MCL以外の組織型についての報告の多くは本邦からのものであるため,人種差があるかなど解明されていない点も多い 36

MCLでは大小不同の光沢のある粘膜下腫瘍様の隆起の集簇であり,個々の隆起はMLP型のFLやMALTよりも大型の傾向があるとされる 40が,自験例のように比較的均一な小隆起の多発を呈する場合もあり(Figure 6),肉眼所見は多彩である.

Figure 6 

大腸MCL.

インジゴカルミン散布像.S状結腸に比較的均一な小隆起の多発を認めた.

Ⅲ-6 NK/T細胞リンパ腫

消化管悪性リンパ腫のほとんどはB細胞性リンパ腫であり,NK/T細胞性リンパ腫はまれであるが,小腸においては,NK/T細胞性リンパ腫の占める割合が13~34%と比較的高い 6),41)~43.NK/T細胞リンパ腫の肉眼型としては,明瞭な腫瘤や潰瘍を形成せず,びまん性に皺襞の腫大を認めるびまん型が多いことが特徴である 3

NK/T細胞リンパ腫で代表的な疾患としてMEITL(monomorphic epitheliotropic intestinal T-cell lymphoma)と成人T細胞性白血病/リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma;ATLL),とがあり,いずれも高悪性度で予後不良である 44

MEITLは空腸と回腸が好発部位であり,しばしば多発する.十二指腸,胃,腸管外に原発巣を作ることはまれである 45.肉眼像は小腸の広範囲にわたる浮腫状粘膜と散在する潰瘍性病変が多いとされ,粘膜面の変化として顆粒状粘膜,粘膜肥厚などの内視鏡所見が報告されている 45),46.また,非浸潤部に絨毛の萎縮,陰窩過形成を認めることがあるが,これは中型~大型の腫瘍細胞が上皮内へ浸潤するためと考えられている 45.自験例においても,小腸粘膜面の浮腫状変化,広範囲の浅い潰瘍性病変を認めた(Figure 7).

Figure 7 

小腸MEITL.

空腸に粘膜面の浮腫状変化および浅い潰瘍性病変を認めた.

ATLLはHTLV-1感染によるTリンパ系腫瘍であり,腫瘍細胞は全身諸臓器への浸潤傾向が強く多彩な臨床症状を呈する.消化管へも高率に浸潤し,胃を含めた全消化管で浸潤がみられる.腸管病変は多彩であり,内視鏡所見として小腸では空腸の発赤隆起,回腸末端の辺縁隆起を伴う潰瘍,リンパ濾胞の腫大などが報告されている 47)~50.また,大腸では中村らの肉眼形態分類上,びまん型とMLP型が大半を占めると報告されている 32

Ⅳ まとめ

消化管悪性リンパ腫は多彩な組織型および肉眼形態を呈するが,特徴的な内視鏡所見と組織型には相関がある.発生臓器,組織型および臨床病期により治療法と予後は大きく異なるため,本疾患の形態学的特徴を理解し,正確な内視鏡診断とそれに続く組織診断を行うことが重要である.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

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