2023 年 65 巻 4 号 p. 375
症例は10代,女性.潰瘍性大腸炎で通院中.トファシチニブ20錠,アザチオプリン20錠を意図的に一度に服用し来院.トファシチニブ服用者において,用量依存的に静脈血栓塞栓症の発現頻度が高くなることが知られている.また,アザチオプリンの過量投与により骨髄抑制をきたすことがあり,過量投与時には胃洗浄や対症療法などの適切な処置を行うこと,またその後,頻回の血液検査および患者の状態を注意深く観察する必要があると添付文書に記載されている.これらをふまえ,内視鏡的に胃内の薬剤を除去する方針となった.オーバーチューブを挿入のうえで胃体部~穹窿部の塊状の薬剤および残渣を回収ネット(RescueNet,Boston Scientific社製)で口腔外へ排出した.前庭部には溶解した薬剤がべったりと付着していた(Figure 1).十二指腸への流出を可及的に防ぐため,自動送水による洗浄ではなく,引き続き回収ネットで除去を行った.
回収ネットを胃粘膜に沿わせて操作したところ,ネット部分で薬剤がぬぐい取られた(ビデオクリップ 1)(Figure 2).同様の操作を2回行い,付着した薬剤の大部分を除去した.わずかに残った薬剤は自動送水で洗浄し,吸引除去した.入院のうえで1週間経過を観察したが,薬剤過量服用に伴う副作用はみられず,退院となった.
ビデオクリップ 1
回収ネットは通常,異物や切除した組織を捕捉し,内視鏡的に体外へ排出するために使用される 1).本症例でも体部の塊状の薬剤はネットで捕捉・把持したうえで除去した.一方,前庭部では溶解した薬剤が広範囲に貼り付いており,通常の回収ネットの使用法では何度もデバイスの出し入れを要すると考えられたため,ネットの剛性を利用し,ネット部分で薬剤をぬぐい取る方法を採用した.これにより2回の操作で大部分の薬剤を除去することが可能であった.自験例のように胃粘膜に薄く広く付着した薬剤を機械的に除去する場合には,回収ネットで擦過する方法が選択肢となると考えられた.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし
ビデオクリップ 1 回収ネットによる擦過.
回収ネットを胃粘膜に沿わせて操作したところ,薬剤がぬぐい取られた.同様の操作を2回行い,付着した薬剤の大部分を除去した.わずかに残った薬剤は自動送水で洗浄し,吸引除去した.
Figure 1 上部消化管内視鏡検査.
前庭部に溶解した薬剤がべったりと付着している.
Figure 2 上部消化管内視鏡検査.
回収ネット(RescueNet,Boston Scientific社製)による擦過.ネットの剛性を利用し,1回の擦過操作で広い面積の薬剤を除去した.