2023 年 65 巻 4 号 p. 405-407
当院は1939年に保証責任江南医療購買販売利用組合連合会甲賀病院として設立され,1981年に名称を公立甲賀病院に変更された.2013年4月には新築移転し,2019年4月から地方独立行政法人公立甲賀病院となった.内視鏡部門も放射線科の一部門として機能していたが,検査数の増加や難易度の高い内視鏡処置が増えたこともあり,移転に伴い新たに内視鏡センターとして運用されるようになった.センター化に伴い専門性の高い治療にも集中し易い環境が整い,メディカルスタッフも含めた運用面でのコーディネイトも容易になってきている.
組織旧病院では放射線科の一部に位置付けられていたが,新病院より内視鏡センターとして独立した診療部門となっている.
検査室レイアウト
レントゲン室を2部屋有しており,呼吸器内科や外科,整形外科等と共同で検査,治療に使用している.鎮静下内視鏡後でのリカバリーベッドは外来部門のベッドを利用しており,受付,看護師等のコメディカルは放射線部門での扱いとなっている.カンファレンスルームには大型内視鏡画像モニターが設置されており,全6室の内視鏡画像をリアルタイムに把握できる様になっている.
(2022年5月現在)
医師:消化器内視鏡学会 指導医1名,消化器内視鏡学会 専門医4名,その他スタッフ3名,研修医など1名
内視鏡技師:Ⅰ種1名
看護師:常勤12名,非常勤1名
事務職:4名
その他:1名
(2022年5月現在)
(2021年4月~2022年3月まで)
当院では初期研修医が10名で,消化器内科の後期研修医は1名となっている.
①研修医への指導
ローテーションでの研修医指導に関しては,まず上部消化管内視鏡検査の手技に対し希望があるかを聴取し,その上で希望のない者には病棟業務を中心とした指導としている.基本的には希望のないものに内視鏡検査等の見学指導等はしておらず,担当患者の検査見学程度としている.内視鏡処置等に関しては,介助や鎮静の管理等を行ってもらっている.
内視鏡操作等への希望がある者に対しては,まずは内視鏡検査モデルによる練習で指導している.一連の操作が可能になれば,上級医の判断の下で,鎮静での上部消化管内視鏡検査を実践してもらう.引き抜き観察から開始し,症例数ではなくスムーズな操作ができている段階で挿入から観察までを実施してもらっている.
②後期研修医への指導
上下部消化管内視鏡検査を可能な限り多く経験してもらっている.その上で十分スコープ操作ができていると判断すれば超音波内視鏡検査(EUS)や内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP),内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)までを段階的に実施してもらう.実際にはERCPであれば挿入から開始し,スムーズに十二指腸まで到達できているとなれば胆管へのカニュレーションをしてもらい,難しいと判断すれば10分以内で交代するようにしている.ESDではマーキングから開始し,スコープ操作が安定していると判断すれば局注から粘膜切開まで実施してもらい,スコープ操作が困難となった時点で交代するようにしている.
夜間,休日での緊急内視鏡は後期研修医2名を含めた実質6名で担当しており,後期研修医のみで十分処置できるように早期の技術習得を目指している.具体的には日中の緊急止血等は積極的に実施してもらい,トラブルシューティング等も含め指導している.
①リカバリーベッド
近年鎮静での内視鏡検査は増加しているが,当院では鎮静検査は全体の10%程度となっている.これは当院ではリカバリーベッドが外来のベッドを使用しているため制限がかけられていることによる.今後鎮静検査は増大していくことが予想され,ベッドの確保は重要な課題であると思われる.
②大腸前処置
当院では自宅での前処置を基本としているが,高齢者への検査も増えており病院内での前処置も必要となってきている.しかし病院内での前処置を行うスペースが確保できておらず,現状では1日1名までとなっている.
③後期研修医の派遣ローテーション
当院での後期研修医は当院初期研修から継続する医師と,3年目に大学から派遣される医師の2名で構成されている.更に新専門医制度の影響もあり,再び2~4年程度で大学へ戻ることが多い.このため若手医師が入れ替わる際は緊急処置に対応できるまで一定の期間を要するため,それまでは上級医の負担が増えてしまうことが問題となっている.
④コメディカル
近年内視鏡検査や処置は目まぐるしい進歩を遂げており,より専門的な治療が一般病院でも施行できることが望まれる.そのためには内視鏡センター専属のスタッフを増員することが重要であるが,このコロナ禍で十分な人材確保が難しい状況となっている.働き方改革も進められており,より一層効率化した運営を行うことで,充実した医療が維持できることを目指していきたい.