2023 年 65 巻 7 号 p. 1280-1282
当院は1954年に国民健康保険士別病院として診療を開始,1957年に市立士別総合病院として許可を受け,1964年に救急指定病院となった.1976年に透析室を設置,1987年には現在の場所へ新築移転し,2003年には療養病棟を開設した.2007年に病院名を士別市立病院に改称,同年内視鏡センターが誕生し,2009年にPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)センターを設置した.同年に日本内視鏡学会指導施設に認定され,現在に至る.内視鏡センターとしての規模は小さいが,超音波内視鏡検査(EUS),バルーン内視鏡,胆道鏡など,随時最新の機器に更新するだけでなく,受診者の大半を占める高齢者に配慮した検査,治療体制を整えている.希望者には鎮静を行い,原則CO2送気とすることによって,苦痛を軽減することにも努めている.
組織内視鏡センター設立以前から消化器内科を中心に内視鏡検査を行ってきた.内視鏡センター・PEGセンターは独立部門であり,特にPEG/在宅医療学会認定の専門胃瘻管理者が常在している.他院からの新規胃瘻造設や交換にも随時対応しており,近隣施設からの疑問や相談にも応じている.また,隣接する保健センターからの検診にも対応し,現在は消化器内科と一般内科で内視鏡検査を共同で行っている.ファイリングシステムは2017年にNEXUSを導入し,JED projectにもtype 1で参加している.
検査室レイアウト

2009年に内視鏡センターを改築し,検査室は個室となり検査・治療用2部屋,放射線科内に内視鏡専用X線透視室を1部屋装備している.
受診者の高齢化に伴い,内視鏡室内で内視鏡スタッフの管理下のもとで腸管洗浄剤の内服ができ,安全に配慮し且つリラックスできる空間とした.内視鏡センター内では緊急下部消化管内視鏡への対応として浣腸ができる特殊トイレも設置した.待合室全体を茶色と木目を多く使用したことで,落ち着きのある空間となっている.
希望者には鎮静を積極的に行い,消化管内視鏡では拡大内視鏡に加え4Kモニターを組み合わせることで早期に病変を診断できるよう心がけている.
また,経皮的穿刺・ドレナージやCV(central vein)ポート造設など消化器内科医師が施行する手技に関しては内視鏡スタッフが準備・介助を担当することから,内視鏡業務の延長として行え,日頃からのメンバーであるため良好なコミュニケーションが図られている.
田舎の小さな病院ではあるが健診内視鏡から治療まで一連の手技が出来るように,医師・スタッフが一丸となり地域に貢献している.
(2022年4月現在)
医師:4名(日本消化器内視鏡学会指導医2名,専門医1名)
看護師:8名(うち第1種消化器内視鏡技師4名)交代制
クラーク:2名
洗浄助手:1名
(2022年9月現在)

(2021年1月~2021年12月 COVID-19により減)

当院の内視鏡センターは日本消化器内視鏡学会の指導施設に認定されている.指導医2名,専門医1名の少人数ではあるが,特に胆膵内視鏡を専門とする医師,特に食道・胃静脈瘤治療を専門とする医師,内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)および胆膵内視鏡全般を行う医師の3名で,上部・下部消化管・胆膵領域のすべてに偏りなく指導できる体制である.もちろんEUS,バルーン内視鏡,胆道鏡などの指導も可能である.さらに,2カ月毎に士別市地域医療アドバイザーであるNTT東日本関東病院の大圃研医師に実際にESDを行っていただき,内視鏡操作,治療について指導を仰いでいる.ある程度内視鏡に携わった医師でもさらに学習ができる環境といえる.内視鏡初学者には,内視鏡の取り扱いの説明の後,上下部のモデルを用いて内視鏡操作法について指導,トレーニングの時間を十分に割き,指導医が検査可能と判断した時点で,鎮静患者の上部消化管内視鏡(EGD)から開始している.多くの初学者は,トレーニング開始から初回のEGDまでは概ね2-3週程度,上達の程度でTotal CSも3-4週程度で施行できている.ポリープ切除や内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)などの介助は数回の見学の後に積極的に参加してもらっている.残念ながら臨床研修病院ではなく,現在も研修医,専攻医ともいない状況であるが,逆にマンツーマンでの十分な指導が可能で,個々の希望や能力に合わせた教育をうけることができる環境にある.もちろん学会発表や論文作成の指導も可能である.
当院が位置する道北地方において,人口あたりの医師数が比較的確保されている旭川市を除き,慢性的な医師不足である.人口減少と高齢化も著しい.1973年には321床あった当院の病床は徐々に縮小し,現在は133床,うち一般病床は55床となり,周辺の基幹病院から療養患者を受ける病院としての役割へシフトしてきている.とはいえ,市内と隣町の救急車は,小児,明らかな急性冠症候群,脳卒中が強く疑われる患者以外はすべて当院に搬送される.消化器疾患に関しては,南へ50km以上先にある大学病院や北へ20km以上先にある旭川市を除く道北唯一の基幹病院へ,極力搬送しなくてもすむように努めており,消化器癌,消化管出血,胆石などへの対応を行っている.人口の多い地域の大病院や救急医療が集中する基幹病院とは異なり,診療には比較的余裕があるが,受診患者や入院患者のほとんどは高齢者であり,心疾患や脳血管疾患などを抱えていることも多い.当然,内視鏡治療にはより一層の配慮が必要とされる.内視鏡技術と消化器疾患だけの知識だけでは,個々の患者の安全な治療は担保できず,総合内科医としての視点も必要である.これから日本全体が迎える超高齢化社会において,安全に内視鏡治療を行う上で,内視鏡以外の知識を増やすことも重要と考えている.各診療科がそろっていない病院でも十分に対応できる内視鏡医を育成する環境は十分であるのか,検証も必要ではないだろうか.