日本消化器内視鏡学会雑誌
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65 巻, 7 号
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総説
  • 上堂 文也, 七條 智聖
    2023 年 65 巻 7 号 p. 1195-1204
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/20
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    胃粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)は胃壁を構成するさまざまな組織から生じるが,そのうち65-80%を占める消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)は潜在的に悪性の性質を持ち,治療を要する.GISTの治療は外科切除が標準であるが,近年は経口内視鏡を用いた内視鏡的全層切除術(endoscopic full-thickness resection:EFTR)の報告が増えている.GISTに対するEFTRの利点は内腔発育型の病変において,体壁の切開なしに胃壁と壁外組織の損傷を最小化することで臓器機能を温存できることである.GISTはリンパ節転移や浸潤性発育がないため局所切除の良い適応で,過去の多くの文献からは小さなGISTに対するEFTRの腫瘍学的・技術的な実施可能性は高いものと考えられる.以上のことから,2020年9月より11-30mmの筋原性の内腔発育型胃SMTで,潰瘍形成がなく,組織学的にGIST,または臨床的にGISTを疑う悪性所見(増大傾向,辺縁不正,実質不均一)があるものには内視鏡的胃局所切除術を先進医療Aとして施行することが可能となった.今後,前向き研究による転帰の検証が期待される.

  • 糸井 隆夫, 祖父尼 淳, 土屋 貴愛
    2023 年 65 巻 7 号 p. 1205-1217
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/20
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    胆膵内視鏡関連手技はERCPやEUSに大別され,今日では胆膵疾患診療に共に欠かせないものとなっており,診療レベルの均一化という点でその教育は極めて重要である.欧米を中心に胆膵内視鏡関連手技の教育はAdvanced endoscopic trainees program(AETP)が以前より用いられ,その評価方法として最近The EUS and ERCP Skills Assessment Tool(TEESAT)なるものも提唱されている.一方,本邦では未だ評価法はもとより,教育方法に関しても確立したものはない.こうした現状の中で近年,教育アシストツールとして,関連手技に関する成書,ビデオが数多く出版され,ライブセミナー,バーチャルシミュレーター,ドライ・ウエットモデルや実際の生体動物モデルによるハンズオンなどが盛んに行われている.本邦においては,これらを上手に利用して,自施設の症例で上級医のもとで胆膵内視鏡関連手技の研鑽を積むことが重要である.

症例
  • 小田 眞由, 木阪 吉保, 田中 良憲, 横山 桂, 島本 豊伎, 曹 芳, 多保 祐里, 平岡 亜弥, 田鶴谷 奈友, 水上 祐治
    2023 年 65 巻 7 号 p. 1218-1224
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/20
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    症例は61歳男性.アルコール性肝硬変,食道静脈瘤治療後で定期通院していた.食道静脈瘤治療後の経過観察目的にEGDを受け,観察時のscope接触で胃粘膜損傷を来したが自然止血したため帰宅した.検査後9日目に心窩部痛が出現し,翌日に発熱したため受診した.CTではびまん性の胃壁肥厚を認めた.胃蜂窩織炎を考え,ampicillin sodium/sulbactam sodiumの投与を開始した.入院第5病日のEGDで行った生検培養では血液培養で検出されたStreptococcus-alpha hemolyticが検出された.EGD後に発症する胃蜂窩織炎の頻度は稀と考えられるが,糖尿病,肝硬変や担癌状態など免疫低下状態にある患者においては,本疾患のリスクも想定した対応が必要である.

  • 黒木 暢一, 堀口 みなみ, 田井 博, 谷口 正次
    2023 年 65 巻 7 号 p. 1225-1231
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/20
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    症例は69歳女性.腹痛,嘔吐を主訴に来院した.CTにて最大37mm大の含気性の腫瘤像が胃に4個と空腸に1個みられた.空腸の腫瘤は内腔を占め,口側腸管は拡張して腸液が充満していた.柿の嗜好歴があり腫瘤は柿胃石と考え,胃石が空腸に陥頓したものと診断した.腹膜刺激症状はみられず,緊急手術ではなく,まず保存的加療を選択した.イレウス管を挿入し減圧後,コーラ溶解療法を行ったところ,胃石は回腸まで移動した.最終的に回腸に嵌頓したため,経肛門的にシングルバルーン内視鏡を挿入し,鉗子口からコーラを注入,スネア破砕を行い,胃石を回収することに成功した.結石分析はタンニン98%であり,柿胃石に矛盾しなかった.

  • 喜田 裕一, 澤田 つな騎, 石川 恵里, 榊原 綾子, 山村 健史, 前田 啓子, 江﨑 正哉, 濱崎 元伸, 村手 健太郎, 中村 正直
    2023 年 65 巻 7 号 p. 1232-1238
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/20
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    症例は50歳女性.基礎疾患に神経線維腫症1型があり,42歳時に前医で小腸の壁肥厚と拡張を指摘されたが原因不明とされた.今回,下痢に伴う電解質異常のため前医に入院となったが,腸管拡張も高度となり,精査のため当院へ転院となった.ダブルバルーン内視鏡検査を施行したところ空腸は高度に拡張し,回腸末端に炎症性ポリープと縦走潰瘍を認めた.非潰瘍部の生検組織よりganglioneuromatosisの診断を得た.腸管のびまん性ganglioneuromatosisは神経線維腫症1型の稀な合併症であり,小腸病変を内視鏡で観察,診断し得た貴重な症例と考えられた.

  • 三浦 康誠, 西尾 乾司, 北村 陽平, 後藤 哲宏, 松本 光司
    2023 年 65 巻 7 号 p. 1239-1244
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/20
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    症例は67歳男性.7年前に便潜血陽性で精査CSを施行し盲腸血管性病変を指摘された.今回,他疾患精査で行ったCSにて,盲腸の病変は7年前より明らかに増大していた.無症状ではあったが,今後の出血などのリスクを考え,手術を施行した.手術標本の病理所見は海綿状血管腫の所見が病変の一部にみられるが,大部分は血管中膜に豊富な弾性線維と平滑筋を有する拡張性の静脈からなる静脈型血管腫を呈していた.結腸の血管腫は発生頻度が少なく,報告はあるもののほとんどは血便などの症状を有し,組織学的には海綿状血管腫の病変である.今回われわれは,無症状のうちに増大していた,組織型も稀である盲腸静脈型血管腫の症例を経験したので報告する.

Video Communication
手技の解説
  • 大木 亜津子, 竹内 弘久, 阿部 展次
    2023 年 65 巻 7 号 p. 1246-1254
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/20
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    電子付録

    消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)を含む胃粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)に対する低侵襲治療として内視鏡的胃全層切除術(endoscopic full-thickness resection:EFTR)を行ってきた.治療適応はdelleを有さない腫瘍径3cm以下の管腔内発育型SMTとしている.適応となる腫瘍の局在は,ESDの基本的な内視鏡の取り回しが可能な部位であれば技術的には可能であるが,胃壁に全層欠損(穿孔)が起こった後に,胃内腔から見ると漿膜外で裏打ち組織となる胃周囲間膜(大網や小網)のない部位では胃内から腹腔内へ脱気されてしまい,胃内の送気状態が維持できず視野確保困難となる.胃周囲間膜の裏打ちがある部位,すなわち小彎側に位置する腫瘍がEFTRの最も良い適応であり,EFTRの導入には最も適切な部位と言える.剝離を進めるうえで,腫瘍の牽引が必要となる場合がある.腫瘍自体の重さがあるために通常のESDに用いる牽引(糸付きクリップやエンドトラックなど)では不十分な場合が認められる.強力で有効な牽引を行うための工夫も供覧する.本稿では胃SMTの術前画像評価,治療適応,手技の実際,トラブルシューティング(腫瘍牽引,腹腔穿刺),周術期管理について述べる.

  • 山階 武, 武尾 真宏, 島谷 昌明
    2023 年 65 巻 7 号 p. 1255-1265
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/20
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    十二指腸腫瘍に対する内視鏡切除の重要性が認識されつつあるが,EMRは出血や穿孔などの偶発症が一定の頻度で起こる.近年,局注を行わずに病変を浸水させ,スネアリングで切除するUnderwater EMRの有用性の報告が増えてきている.一括切除率の上昇や施行時間の短縮が報告されているが,部位によっては水が溜まりにくかったり,残渣などにより浸水下での視認性の低下などが問題となることがある.そこで水の代わりに,内視鏡止血時の視野確保Gelを用いて病変を浸漬させるGel immersion EMR(Under-Gel EMR)の報告が散見されるようになってきた.本稿ではその方法や展望について述べる.

資料
  • 岩館 峰雄, 平田 大善, Carlos Paolo D. Francisco, Jonard Tan Co, Jeong-Sik Byeo ...
    2023 年 65 巻 7 号 p. 1266-1279
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/20
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    電子付録

    【背景・目的】側方発育型腫瘍非顆粒型(laterally spreading tumor non-granular type;LST-NG),陥凹型腫瘍,10mmを超えるlarge sessile serrated lesion(large SSL)の3病変は,高リスク表面型腫瘍であり,大腸内視鏡検査後に発生する大腸癌(Post-colonoscopy colorectal cancer)への進展に大きく関与している.しかし,この高リスク表面型腫瘍を検出するための効率的で組織的な教育プログラムは未だ確立されていない.本研究の目的は,4つの検出契機(1 襞変形:fold deformation,2 集簇する便/粘液付着:intensive stool/mucus attachment,3 血管視認性低下:no vessel visibility,4 限局性発赤領域:demarcated reddish area 各英語の頭文字をとって「FIND」と覚える)のオンライン教育介入が,高リスク表面型腫瘍の検出率を向上させるかどうかを調べることである.

    【方法】本研究は,アジア13カ国の内視鏡非熟練医を対象としたオンラインでの国際ランダム化比較試験である.内視鏡医は教育群と非教育群にランダムに割り付けられ,全員が同じ画像読影試験を2回(前期と後期)受験した.試験では60枚の大腸内視鏡画像(高リスク表面型腫瘍40枚,隆起型腫瘍5枚,病変なし15枚)を読影し,病変の有無を解答した.教育群のみ,前・後期試験の間に,自己学習教育プログラム(教育ビデオ視聴と練習問題の解答)を受講した.主要評価項目は,高リスク表面型腫瘍の検出率変化とした.

    【結果】総計284名の内視鏡医がランダム化され,試験未解答者を除いた教育群139名,非教育群130名が最終解析対象となった.高リスク表面型腫瘍の検出率は,教育群で14.7%(前期試験:66.6%,後期試験:81.3%)と有意に上昇したが,非教育群では0.8%(前期試験:70.8%,後期試験:70.0%)と低下した.同様に教育群におけるLST-NG,陥凹型腫瘍,large SSLの検出率は,各々12.7%,12.0%,21.6%と有意に向上していた.

    【結論】高リスク表面型大腸腫瘍の検出に関する短時間のオンライン自己学習は,アジアの内視鏡非熟練医に有用であった(UMIN000042348).

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 小野 尚子
    2023 年 65 巻 7 号 p. 1286
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/20
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    【背景】近年のガイドラインでは10mm以下の神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine Tumors:NET)には内視鏡治療が推奨されているが,その方法についてはコンセンサスが得られていない.本研究では,10mm以下の直腸NETに対して改良Cap-EMR(以下mEMR-C)と内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の安全性と治療効果を比較した.

    【方法】mEMR-CとESDの非劣勢無作為化試験が実施された.mEMR-Cは爪付きの先端キャップに半月スネアを装備し,腫瘍を吸引して切除した.主要評価項目は組織学的完全切除率で,副次的評価項目は一括切除率,手術時間,合併症などであった.

    【結果】NETが疑われた90人の患者が登録され,組織学的にNETと診断された79人(mEMR-C群38人,ESD群41人)が最終解析された.組織学的完全切除率はmEMR-C群で97.4%,ESD群で92.7%で,絶対差が4.7%(両側90%信頼区間23.3%-12.2%;P=0.616)でありESDに対するmEMR-Cの非劣性が示された.また,全例で一括切除が達成された.mEMR-CはESDよりも手術時間が短く(8.89±4.58 vs 24.8±9.14分,P<0.05),入院コストが安かった($2,233.76±$717.70 vs $2,987.27±$871.81,P<0.05).術後合併症はmEMR-C群で後出血3例と遅発穿孔1例,ESD群で後出血2例が発生したが,いずれも内視鏡治療で対処できた(11.5% vs 4.9%,P=0.509).

    【結論】mEMR-CはESDに対して完全切除率においては非劣勢であり,手術時間やコスト面でより優れていた.

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