日本消化器内視鏡学会雑誌
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10mm以下の神経内分泌腫瘍に対する改変Cap-EMRとESDの無作為化非劣勢試験
小野 尚子
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2023 年 65 巻 7 号 p. 1286

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抄録

【背景】近年のガイドラインでは10mm以下の神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine Tumors:NET)には内視鏡治療が推奨されているが,その方法についてはコンセンサスが得られていない.本研究では,10mm以下の直腸NETに対して改良Cap-EMR(以下mEMR-C)と内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の安全性と治療効果を比較した.

【方法】mEMR-CとESDの非劣勢無作為化試験が実施された.mEMR-Cは爪付きの先端キャップに半月スネアを装備し,腫瘍を吸引して切除した.主要評価項目は組織学的完全切除率で,副次的評価項目は一括切除率,手術時間,合併症などであった.

【結果】NETが疑われた90人の患者が登録され,組織学的にNETと診断された79人(mEMR-C群38人,ESD群41人)が最終解析された.組織学的完全切除率はmEMR-C群で97.4%,ESD群で92.7%で,絶対差が4.7%(両側90%信頼区間23.3%-12.2%;P=0.616)でありESDに対するmEMR-Cの非劣性が示された.また,全例で一括切除が達成された.mEMR-CはESDよりも手術時間が短く(8.89±4.58 vs 24.8±9.14分,P<0.05),入院コストが安かった($2,233.76±$717.70 vs $2,987.27±$871.81,P<0.05).術後合併症はmEMR-C群で後出血3例と遅発穿孔1例,ESD群で後出血2例が発生したが,いずれも内視鏡治療で対処できた(11.5% vs 4.9%,P=0.509).

【結論】mEMR-CはESDに対して完全切除率においては非劣勢であり,手術時間やコスト面でより優れていた.

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© 2023 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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