日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
名古屋大学医学部附属病院 消化器内科 光学医療診療部
責任者:川嶋啓揮(消化器内科学・教授)  〒466-8550 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65
川嶋 啓揮中村 正直
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2023 年 65 巻 9 号 p. 1493-1497

詳細

概要

沿革・特徴

名古屋大学医学部附属病院は,明治4年(1871年)名古屋藩評定所跡に開設された公立の仮病院及び元町役所に開設された仮医学校を前身として創立され,その後病院機能と教育を維持し,愛知病院,名古屋帝国大学医学部附属病院などの改称を経たのち昭和24年に現在の名古屋大学医学部附属病院の名称となった.

当院は名古屋市昭和区鶴舞町に位置し,複数の公共交通機関の駅,停留所が近く,患者にとって通院しやすい環境にある.病床数1,080床を有し,診療科では内科系14科,外科系21科を標榜する.基本理念は診療・教育・研究を通じて社会に貢献することである.光学医療診療部は1999年に設置され,2019年6月には新診療棟へ移転し光学医療診療部の総面積として国内外で屈指の規模となり,エックス線装置を有する2部屋が設置され幅広い診療が可能となった.

当院の特徴として,2019年(令和元年に国立大学病院では初めて)国際医療施設評価認証機関(JCI)の認証を取得し,再受審の2022年3月には更新を果たした.世界水準の医療の質と患者安全の継続について高い評価を得ることができている.

組織

光学医療診療部は中央診療部門の一つとして独立した組織である.スタッフは医師,専属看護師,臨床工学技士,放射線技師,洗浄員,クラークが常駐し,透視室における内視鏡にも常時対応できる.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

光学医療診療部全体として約1,000m2以上の面積を有し,内視鏡の不潔動線と患者動線が交錯しないよう設計されている.

上部消化管内視鏡検査室5部屋と大腸内視鏡検査室4部屋は完全に独立して機能しているため午前より大腸内視鏡検査が可能である.

超音波内視鏡室を2部屋有している.

アジア内視鏡室では,アジアから内視鏡留学している医師に対して内視鏡指導を行う専用部屋が準備されている.

画像管理室には大型モニターが設置されており,各検査室のカメラ映像での進行状況,内視鏡画像の確認の他にも症例検討や研究検討の際に用いられている.

スタッフ

(2023年1月現在)

医師:消化器内視鏡学会 指導医5名,消化器内視鏡学会 専門医41名,その他スタッフ9名

内視鏡技師:Ⅰ種9名

看護師:常勤14名,非常勤3名

事務職:2名

その他:5名

 

川嶋教授とスタッフ(ERCP 施行前)

設備・備品

(2022年12月現在)

 

 

実績

(2021年4月~2022年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

上部消化管,下部消化管,胆膵,肝臓各々の分野において日本消化器内視鏡学会指導医が在籍する.更には日本消化器内視鏡学会のみならず,日本消化器病学会,日本超音波医学会,日本肝臓学会,日本消化管学会,日本カプセル内視鏡学会において指導施設認定を受けており,内視鏡診療は常にそれらの専門医・指導医が直接指導する体制をとっている.

内視鏡医指導の原則は,日本消化器内視鏡学会認定専門医制度規則を遵守し,各々の技術に応じた段階的な研修を心がけている.JCIにおいても内視鏡技術施行の権限について病院側から厳格な評価を受けており,各自が単独で施行可能,指導医のもと施行可能,不可能の事前評価を受けたうえで診療を行う.当院で内視鏡研修を行う医師は,①初期研修医,②内科専攻医の消化器内科研修として,③大学院入学後の医師6-8年目以降のスキルアップ,に分けられる.

研修医,専攻医に対しては胃大腸内視鏡トレーニングモデル,院内シミュレーションセンターでの実技,レジデントセミナーを通じて内視鏡知識と操作法を十分習熟していただく.主旨として内視鏡に直に触れることで参加型の学習となるように心がけている.

医師6年目以降の内視鏡医は,それまでに名古屋大学関連病院で内視鏡教育を十分に受けてきており,緊急内視鏡,胃内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)までは単独で施行可能な状況である.その後,大腸ESD,内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)の応用手技,超音波内視鏡などについて指導医のもとに施行する.

研修中,毎週月曜に症例検討会に参加する.上級医が問題作成と症例提示を行い,研修中の医師が読影を各画像で進め,上級医による最終診断と解説があり,最後に指導医より症例を診るうえでのアドバイスをしている.毎週水曜に英語論文の抄読会を行っており,各回2名が自身の選んだ英文を説明し批評することによって,内視鏡に関連した知識を広げる機会を得ている.また大学病院の機能として,内視鏡治療成績や新しい処置具使用に関する前向き研究,ランダム化比較研究をデザイン,施行,解析まで指導医のもとに進める.川嶋教授は国内外の多くの内視鏡センター,光学医療診療部施設と協力し人事交流,技術交流を含め進化した内視鏡指導のシステム作りを推進され,他施設の内視鏡医の見学,研修を積極的に受け入れている.このような内視鏡教育により地域医療に貢献できるような内視鏡医,また内視鏡臨床と研究をリードできる次世代の内視鏡指導医の育成を光学医療診療部における内視鏡指導の目標としている.

現状の問題点と今後

2000年以後目覚ましいほどの内視鏡技術の発達と新内視鏡機器,デバイスの登場によって内視鏡診療がもたらす患者へのベネフィットは大きくなってきたが,一方では時代背景やその新技術に関連した問題点を当光学医療診療部においても有している.それらは①検査に必要なマンパワー不足,②鎮静内視鏡数の増加に関する問題,③コロナ禍における内視鏡,が挙げられる.

検査の種類が増えることによって,医師,看護師,臨床工学技士,洗浄員のすべての職種への負担も増えるため,より多くの人材が必要となる.大学病院として内視鏡医数はなんとか確保はできているが,看護師,臨床工学技士は慢性的な人員不足であり,勤務異動もあるため長期継続が難しい状況である.ESD,光線力学的治療法(Photodynamic therapy:PDT)など施行中の機器設定管理が重要視されるなかメディカルスタッフのマンパワーは必須であり,今後資格制度などのインセンティブがあると病院としての人材価値が上がるものと思われる.

鎮静内視鏡の認知度の高まりによって内視鏡予約時に鎮静処置を求める患者は増加傾向にある.その安全性も高いので患者希望があれば鎮静内視鏡を施行することが多いが,実際にはルート確保,鎮静中のモニタリング,当院のルールとして検査後2時間のモニタリング継続によって人員を充てる必要がある.リカバリーベッドを15床設置しており,同時に経過観察する際に安全面の十分な配慮も必要である.日帰りの鎮静内視鏡が多く,検査後に鎮静拮抗薬を投与するが,2時間後であっても転倒リスクがあるため外来患者ではAldrete Scoreを用いて回復期評価を行い,医師の診察によって帰宅を許可するため,スムーズな運用が求められている.

新光学医療診療部はコロナ禍以前に移転したためコロナ陽性患者に対応できる陰圧室の制限がある.消化器内視鏡実施の際には,クラスターを防ぐためにメディカルスタッフによるリスク問診を行い,検査医は日本消化器内視鏡学会が提言している防護策を遵守している.更に検査時の飛沫拡散予防の観点から,呼吸器内科と共同で不織布のサージカルマスクをもとに内視鏡挿入用と吸引カテーテル用の孔を有する内視鏡検査用飛沫防止マスクを開発し,ハイリスクな患者に対して上部消化管内視鏡検査を施行する際には積極的に使用している.なおこのマスクの開発,実証,実装の取り組みについては,第4回日本オープンイノベーション大賞 厚生労働大臣賞を受賞した.

全体を通しての課題は光学医療診療部スタッフの確保であり,またそれに見合うシステム作りが必要である.内視鏡に関する検査と治療は今後更に増え続けることが予測されるため,様々な場面でマンパワーの重要性を伝え募っていくと共に,安全な医療を展開することをスタッフで共有,実践できるよう努めている.

 
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