日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
公益財団法人仙台市医療センター 仙台オープン病院
責任者:伊藤 啓(消化器病センター長兼消化管・肝胆膵内科主任部長)  〒983-0824 宮城県仙台市宮城野区鶴ヶ谷5丁目22番1
菅野 良秀
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2024 年 66 巻 1 号 p. 99-102

詳細

概要

沿革・特徴

1976年,仙台市と仙台市医師会の協力によって,公設民営型の医師会病院として開設(法人名「財団法人仙台市医療センター」,病院名「鶴ヶ谷オープン病院」).当初より「オープンシステム」という診療体制を取り,CTやMRIなどの高度医療機器や入院病床等を登録医に開放している.1986年に病院名称を「仙台オープン病院」に変更,1989年全国第一号の地域医療支援病院に承認,2011年公益財団法人に移行.健診部門と救急部門を有する.

2005年に現A・B棟のグランドオープンに伴って現在の第一内視鏡室(内視鏡室9室[当時]と腹部超音波検査室4室)およびX線テレビ室3室を開設,2018年の新救急センター棟(C棟)落成と同時に第二内視鏡室(内視鏡室4室)を追加整備した.

組織

消化器内視鏡センターは,消化器病センターおよび消化管・肝胆膵内科に属し,主に同科の医師および看護部の内視鏡・放射線部門,診療放射線室,臨床工学室によって診療が担当されている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡センターは,第一内視鏡室(8室,主に上部消化管・胆膵検査),第二内視鏡室(4室,主に下部消化管検査),X線テレビ室(3室),腹部超音波室(4室)から構成されている.すべての内視鏡ブースを壁で仕切り十分な面積を確保することにより,プライバシーへ配慮し,かつ通路での咽頭麻酔や義歯着脱を避けることができるようにした.全室に電子カルテと所見入力端末を配備しており,必要に応じて内視鏡医がその場での説明や診療を行いうる点も特徴的である.静脈ライン確保用専用スペースを3カ所に設け(前処置室1~3),人員に余裕がある場合には入室前に鎮静薬投与ラインを準備し効率化を図っている.3カ所の回復室に計20床のリカバリーベッド(一部ソファ)と,さらに健診受検者用のリカバリーベッド(別フロア)を完備し,希望者には十分な鎮静を行う準備をしている.十分な数の検査用ストレッチャーを活用し,検査後はストレッチャーのまま回復室に移動してベッド移乗を行うことなく休んでいただけるようにした.

内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)(内視鏡室8,12)や緊急内視鏡(内視鏡室5)に対応した部屋は,患者動線に配慮して配置したうえ,特に十分なスペースを確保した.これにより人員や機材の配置,物品管理の自由度を高められた他,見学者の効率的な学習にも寄与していると思われる.また,第一・第二内視鏡室内にそれぞれ換気ダクトを備えた標本室を設け,治療直後にESD・内視鏡的粘膜切除術(EMR)標本を処理することができるようにした.ここで標本の実体顕微鏡撮影も行っている.なお,内視鏡写真,実体顕微鏡写真,病理画像は,すべて電子カルテ上で閲覧可能であるため,症例レビューや情報共有の際に極めて有用である.

内視鏡システム・スコープ,レントゲン装置は最新のものを中心に複数社の製品を導入している.胆膵内視鏡治療は主にX線テレビ室2室(透視撮影室7,9)において必要に応じて並行して行っている.超音波観測装置X線テレビ室2室を含む4室に配備しており,外来超音波内視鏡(EUS)検査,超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA),EUS下インターベンション治療を並行して行うことができる.

カンファランス室では各部屋の内視鏡・レントゲン像をリアルタイムにモニターで一覧できるようにすることで,医師間の連絡・連携を容易にしたうえ,同室で細かな休憩を取りやすくしている.加えて,広い内視鏡センターでの業務を円滑にするためインカムシステムを導入しており,特に看護師間の円滑な情報共有と連絡,種々の調整に一役かっている.

スタッフ

(2023年4月現在)

医師:消化器内視鏡学会 指導医6名,消化器内視鏡学会 専門医13名,その他スタッフ7名,研修医など3名

内視鏡技師:Ⅰ種9名,Ⅱ種1名,臨床工学技士1名

看護師:常勤25名,非常勤2名

事務職:3名

その他:看護助手4名

設備・備品

(2023年4月現在)

 

 

実績

(2022年4月~2023年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当院は消化器内視鏡学会認定指導施設であるとともに,臨床研修プログラムおよび内科専門研修プログラムを有する研修指定病院であり,初期研修から専修まで幅広く消化器内視鏡研修の場を提供している.

入院診療は少人数チーム制(1チーム3~5名,5~6チーム)で行い,修練中の医師が直接患者と深くかかわる機会を重んじている.内視鏡をはじめとする検査・治療手技においては実践を重視する伝統があり,学会指導医監督のもとに多くの手技を経験できるよう配慮されている.消化管グループ,肝胆膵グループそれぞれ週1回程度のカンファランスが開催され,有害事象の確認と共有の他,切除症例(内視鏡的・外科的)における臨床像,画像,病理像を共有し,診断能力の向上に努めている.

学会発表,論文執筆,講演,多施設共同研究への参加など,多岐にわたる学術活動にも積極的に取り組んでいる.研修中の医師にも国内外学会へ参加してもらい新たな知見に触れることを奨励している.年に1度,国内の第一人者を多数招いて内視鏡治療ライブセミナーを主催しており,聴衆のみならずわれわれスタッフにも実り多いものとなっている.週に1度米国ネイティブ講師による英会話レッスンと英語論文編集を院内で受ける仕組みも整備し,効果的な自己研鑽の機会を提供している.

現状の問題点と今後

検査治療数が比較的多いうえ,医師数も少なくないため,時間外労働を回避・低減させるための日々の検査計画には多方面との交渉を要し,計画者の負担となっている.緊急的に発生する治療もしばしばあるため,単純な方式で計画することは難しいものの,運用自由度を高めるための設備増設,システマティックな計画法の開発なども課題である.

また近年,インフェクションコントロールの観点から検査1件ごとの室内清掃の内容を見直しているが,これに伴って検査以外に要する時間が増加した.効率的な運用が課題である.

 
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