日本消化器内視鏡学会雑誌
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66 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
年頭所感
新年の御挨拶
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総説
  • 高木 忠之, 引地 拓人, 小原 勝敏
    2024 年 66 巻 1 号 p. 5-15
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/22
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    食道・胃静脈瘤からの出血は,肝硬変が背景の場合,肝機能の増悪をもたらすこともあり適切に治療を行う必要がある.内視鏡治療法として,食道静脈瘤では内視鏡的静脈瘤結紮術や内視鏡的硬化療法,胃静脈瘤では内視鏡的組織接着剤注入法が確立されたが,現在に至るまで様々な工夫がなされてきた.安全で効果的な治療を行うためには,患者の病態と門脈血行動態を十分に把握したうえで,患者のQOLを考慮したストラテジーをたてることが大切である.

  • 澤田 つな騎, 中村 正直, 川嶋 啓揮
    2024 年 66 巻 1 号 p. 16-28
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/22
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    クローン病の小腸病変は容易に通過障害などを来し,手術率が高いことが知られており,そのマネジメントは重要な課題である.バルーン内視鏡のクローン病診療における役割として,従来の大腸内視鏡検査では観察不可能な部位にしか病変を持たないクローン病の診断や,小腸病変の治療効果判定やモニタリングとして内視鏡的寛解の有無の評価に有用であるとする報告がみられる.また,症候性の小腸狭窄におけるバルーン拡張術は,潰瘍が無いなどの適応基準を満たした病変においては高い手技成功率と,良好な長期成績が示されている.他の小腸評価法と比較して,検査精度が高く,組織生検・内視鏡治療が可能な唯一の検査である一方,侵襲性が高く,消化管穿孔や出血,膵炎などの偶発症が報告されている.小腸病変の評価において,バルーン内視鏡を含めた各種モダリティの中から,状況に応じてどの検査を用いていくか,議論をすすめる必要がある.

症例
  • 岡田 光生, 北岡 真由子, 榮枝 弘司, 青野 礼, 佐竹 朋美, 大川 良洋, 梅下 仁, 矢野 慶太郎, 田島 萌夢, 中島 絢子
    2024 年 66 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/22
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    症例は58歳,女性.嚥下困難の精査のためEGDを施行した.上部食道に約10mm大の黄白色調の臼歯様の隆起性病変を認め,生検にて食道顆粒細胞腫と診断した.また,食道全域に1~2mm大の小陥凹が多発し,食道壁内偽憩室症と診断した.食道顆粒細胞腫を内視鏡的に切除したが,食道壁内偽憩室症による食道粘膜下層の線維化が予想されたため,EMRによる切除は困難と判断し,ESDにより切除を行った.当初の予想通り粘膜下層は線維化を伴っており,粘膜下局注による病変の挙上は不良であったが,一括切除し得た.本症例は食道顆粒細胞腫に食道壁内偽憩室症を合併した点,さらに,食道壁内偽憩室症に併存した腫瘍を内視鏡的に切除し得た点が興味深いと思われたため報告する.

  • 浅原 和久, 川口 真矢, 佐藤 辰宣, 寺田 修三, 遠藤 伸也, 白根 尚文, 髙橋 龍玄, 德田 智史, 金本 秀行, 鈴木 誠
    2024 年 66 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/22
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    症例は72歳男性,腹部超音波検診で膵体部に7mm大の高エコー領域を指摘され当科を紹介受診した.造影CTで膵腫瘤は不明瞭であったが,磁気共鳴胆管膵管撮影(magnetic resonance cholangiopancreatography:MRCP)では膵体部主膵管内に陰影欠損を認め,EUSでは膵体部主膵管内に径11mm大の膵実質と等エコーの乳頭状腫瘤を認めた.膵管造影では膵管径は4mmで,粘液を認めなかったが,連続膵液細胞診では粘液を含有する円柱上皮細胞を認めた.膵管拡張は乏しいが,主膵管型膵管内乳頭粘液性腫瘍と診断し,腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した.病理組織では主膵管内に10×4×4mmの充実性腫瘤を認め,主膵管に発生したgastric type intraductal papillary mucinous adenoma with low-grade dysplasiaと最終診断した.

  • 森田 敏裕, 蜂須賀 崇, 鶴井 裕和, 中野 知幸, 森本 有加里, 藤田 泰三, 山内 淳一, 濱本 愛子, 橋村 友哉
    2024 年 66 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/22
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    症例は76歳女性.2年前に多発肺転移を伴う直腸癌と診断されている.腹痛を主訴に受診し,以前から指摘されていた胆囊内結石が消化管に落下し直腸癌狭窄部に嵌頓した腸閉塞と診断した.内視鏡では直腸に狭窄は認めるものの内視鏡は通過可能であった.原疾患を考慮し,内視鏡的結石除去術を試みた.機械的破砕術が不可能であったため,ホルミウムヤグ(Holmium-Yttrium Aluminum Garnet:Ho-YAG)レーザーを用いて砕石し,回収ネットを用いて結石を除去しえた.胆石による腸閉塞に対しては外科的治療が行われることが多いが,Ho-YAGレーザーによる砕石術は,低侵襲な内視鏡的治療の可能性を広げる一つの選択肢として検討する必要があると考える.

  • 金田 義弘, 入口 陽介, 小田 丈二, 依光 展和, 安藤 早弥, 岸 大輔, 中河原 亜希子, 神谷 綾子, 山村 彰彦
    2024 年 66 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/22
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    症例は64歳男性.胃角部前壁に不整形陥凹を伴う隆起性病変を認めた.背景粘膜は萎縮のない胃底腺粘膜で,腸上皮化生は認めなかった.病変部には不整な微小血管構築像と表面微細構造を認め,分化型の早期胃癌と診断し,内視鏡的粘膜下層剝離術を行った.病理診断は高分化管状腺癌(粘膜内癌)であり,免疫組織化学染色ではMUC5ACとMUC6は陰性,MUC2とCDX2,CD10が陽性で小腸型形質を呈していた.鏡検法および血清Helicobacter pyloriH. pylori)抗体は陰性で,除菌歴はなかった.ペプシノーゲン検査や内視鏡所見と併せ,H. pylori未感染と判断した.H. pylori未感染の胃底腺粘膜を背景とする小腸型高分化腺癌の症例は過去に報告がないため,文献的考察を含め報告する.

手技の解説
  • 村田 雅樹, 八田 和久, 杉本 光繁
    2024 年 66 巻 1 号 p. 56-68
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/22
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    胃腫瘍に対するESDは治療数の増加に伴い,その合併症のマネジメントが重要視されている.特にESD後の遅発性出血は頻度が高い合併症であり,時に重篤な転機を辿るため,その対策を練ることは重要な課題である.われわれは早期胃癌に対するESD後潰瘍出血の発症予測モデルであるBEST-Jスコアを多施設共同研究にて開発した.10種類の要因(血液透析,アスピリン,チエノピリジン系抗血小板薬,シロスタゾール,ワルファリン,直接経口抗凝固薬(DOAC),抗血栓薬の中止,複数の腫瘍の存在,腫瘍径30mm以上,胃下部)がESD後出血を引き起こす候補リスク因子として抽出され,出血リスクに応じて点数を設定し,リスクの層別化を可能とした.ただし,出血リスクが高い症例に対する個別化治療・対策については今後の解決すべき課題と考えられる.ESD後出血を予防する内視鏡治療の工夫や最たるリスク因子である抗凝固薬内服者の対応策についても,早急に検討を行う必要がある.

  • 佐藤 達也, 中井 陽介, 藤城 光弘
    2024 年 66 巻 1 号 p. 69-77
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/22
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    従来,良性胆管空腸吻合部狭窄は経皮経肝胆道ドレナージや外科的再吻合で治療されてきた.近年のバルーン内視鏡および超音波内視鏡の登場により吻合部への内視鏡的アプローチが可能となり,バルーン拡張やステント留置による治療が行われるようになってきている.さらに,治療成績の向上を目指してFully-covered self-expandable metal stentの短期留置による治療も一部の施設から報告されている.本稿では良性胆管空腸吻合部狭窄に対する内視鏡治療について,既報のデータを参照しつつ実際の手技を紹介して解説する.

資料
  • 市島 諒二, 池原 久朝, 隅田 頼信, 稲田 泰亮, 根本 大樹, 中島 勇貴, 皆川 武慶, 住吉 徹哉, 居軒 和也, 吉田 直久, ...
    2024 年 66 巻 1 号 p. 78-88
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/22
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    【目的】消化管早期癌に対する治療として内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)は広く浸透している.しかし大腸ESDは未だ難しい手技である.トラクションを使用した大腸ESDが有用であると報告があるが,いずれも症例数が少なく単施設での研究であり有用性を示すには不十分なエビデンスしかなかった.われわれは,大腸ESDにおけるトラクション法の有用性と安全性を検討する多施設前向き研究を行った.

    【方法】われわれは,前向き,多施設共同,無作為化割り付け,2群間比較試験を日本における10施設で行った.従来法ESD群(C-ESD),トラクションESD群(T-ESD)を1:1に割り付けた.主要評価項目は,内視鏡治療時間とした.

    【結果】2020年4月から2021年8月までの間にC-ESD群128名,T-ESD群123名を研究対象とした.C-ESDとT-ESDにおける治療時間の中央値は,それぞれ61(40-100)分,53(40-76)分(p=0.18)で両群に統計学的な有意差は認めなかった.副次解析で行った病変径≧30mmにおけるC-ESDとT-ESDにおける治療時間はそれぞれ,89(57-80)分,69(50-104)分(p=0.05),非熟練医における治療時間は81(62-120)分,64(52-109)分(p=0.07)であった.

    【結語】大腸ESDにおいてトラクション法は治療時間の短縮には寄与しなかった.しかしながら,腫瘍径が大きい場合や非熟練医が行う場合は有用である可能性がある.

  • 十倉 淳紀, 千野 晶子, 小林 望, 大圃 研, 竹内 洋司, 斎藤 彰一, 山田 真善, 辻 陽介, 堀田 欣一, 原田 馨太, 池松 ...
    2024 年 66 巻 1 号 p. 89-98
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/22
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    【背景・目的】ESDの多くはクリニカルパスを用いた入院スケジュールで行われているが,実態調査に関する報告は少ない.大腸ESDを行っている主要専門施設でのスケジュール内容の現状を把握する.

    【方法】大腸ESD長期予後研究(CREATE-J)の副次研究として,入院スケジュールについてのアンケート調査を集計した.

    【結果】クリニカルパス導入施設は95%,入院日数中央値5日,入院日翌日の治療が89.5%,食事開始は治療翌々日が57.9%と最多であった.前処置は通常検査時より強化する施設が55%,治療後のレントゲン検査は施行しない施設が60%,血液検査は治療翌日のみが60%であった.偶発症頻度は後出血,遅発性穿孔,腹膜炎がそれぞれ2.2%,0.6%,0.3%,また発症時間中央値はそれぞれ治療2日目,42時間後,16.5時間後であった.

    【結論】CREATE-J参加施設におけるクリニカルパスの現状は,安全性を重視する観点から妥当と考えられた.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 木暮 宏史
    2024 年 66 巻 1 号 p. 106
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/22
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    【目的】感染性膵壊死の内視鏡的経消化管的ドレナージにおいて,ルーメンアポージングメタルステント(Lumen-apposing Metal Stents;LAMS)はダブルピッグテールプラスチックステントと比べ臨床的改善が得られると考えられている.しかし,前向き研究による比較データは非常に限られている.

    【デザイン】感染性壊死性膵炎の患者で,LAMSを用いた内視鏡的step-up approachを行った多施設前向きコホート研究の患者と,TENSION試験でダブルピッグテールプラスチックステントを用いた内視鏡的step-up approachに割り付けられた51例の患者を比較した.臨床試験のプロトコルは両群で同一であった.主要評価項目は内視鏡的ネクロセクトミーの必要性であった.副次的評価項目は死亡率,重大な合併症,入院期間,医療費などであった.

    【結果】27カ月間に16の病院で合計53例の患者がLAMSを用いて治療された.内視鏡的ネクロセクトミーの必要性は64%(n=34)であり,プラスチックステントを使用した以前の試験(53%,n=27)と変わらなかった.これは患者背景の補正後も同様であった(オッズ比 1.21(95%信頼区間 0.45〜3.23)).副次的評価項目も群間で差はなく,その中にはインターベンションを必要とする出血も含まれ,LAMS留置後5例(9%)に対し,プラスチックステント留置後11例(22%)であった(相対リスク 0.44;95%信頼区間 0.16〜1.17).総医療費も同程度であった(平均差 −€6348,バイアス補正および加速された95%信頼区間 −€26386〜€10121).

    【結論】同様のデザインによる2つの多施設前向き研究の2つの患者群の比較から,感染性壊死性膵炎患者において,LAMSはダブルピッグテールプラスチックステントと比較して内視鏡的ネクロセクトミーの必要性を減少させないことが示唆された.また,出血性合併症の発生率も同等であった.

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