日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
胆膵領域AIの現状と今後の展望
桑原 崇通 , 原 和生
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2024 年 66 巻 10 号 p. 2439-2447

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要旨

胆膵領域疾患はCTやMRIだけでは確定診断が困難で,EUSやEUS-FNAなどを行うことが必要であるが,術者依存が強いことが欠点である.人工知能(artificial intelligence:AI)は大腸ポリープ検出をはじめ,医療画像診断に活用され薬事承認され日常臨床で使用されている.胆膵疾患に対するAIは本邦では薬事承認された機器は存在しないが,膵腫瘍・膵囊胞・胆囊腫瘍の検出や鑑別など有望な研究報告が散見される.胆膵疾患は消化管疾患に比して有病率が低いため,AIの開発・検証に必要なデータを収集するコストが高くなってしまう.胆膵疾患だけではなく有病率が低い疾患診断のためのAI開発を推進するためには効率的なデータ収集法を確立する必要がある.

Abstract

Pancreatobiliary diseases are difficult to diagnose using CT and MRI and often require additional procedures such as EUS or EUS-FNA; however, these methods heavily rely on the skill of the operator. Artificial intelligence (AI) is increasingly utilized in medical imaging diagnostics (including the detection of colorectal polyps) and is gradually being integrated into routine clinical practice. While AI devices specifically designed for pancreaticobiliary diseases are yet to be approved in Japan, promising research indicates advancements in detecting differentiating pancreatic tumors, pancreatic cysts, and gallbladder tumors. Unlike more common gastrointestinal conditions, pancreatobiliary diseases are less prevalent, posing challenges in adequate data collection for AI development and validation. Efficient methods for data collection are crucial to promote AI progression in diagnosing pancreatobiliary diseases and other low-prevalence diseases.

Ⅰ 胆膵領域の診断の現状と課題

膵疾患は膵管癌(pancreatic ductal adenocarcinoma:PDAC)や膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine neoplasms:pNEN)などの腫瘍性病変,慢性膵炎(chronic pancreatitis:CP)や自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)などの炎症性病変,膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasms:IPMN)や粘液性囊胞性腫瘍(mucinous cystic neoplasms:MCN)などの囊胞性病変など多岐に亘る.胆道疾患も同様に,胆道癌など腫瘍性病変,IgG4関連硬化性胆管炎などの炎症性病変,総胆管結石や良性病変など多岐に亘る 1).治療方針は各々異なるため治療前に正確な診断が重要である.その胆膵領域診断・治療の中心となるものが超音波内視鏡(EUS),内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)など内視鏡関連手技である.その中でも病理学的診断を行うことが可能な超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)は胆膵領域診断の最重要な内視鏡手技であり,世界中で胆膵領域診断のために行われている 2),3).EUS-FNAは充実性病変に対して高い診断能を有しているが,膵囊胞性疾患や胆囊腫瘍などに対しては播種の危険性が指摘されていること 4),EUS-FNAを行ったとしても感度が低いため,本邦ではあまり行われていない 5).またEUS-FNAを行う医師もその検体を読影する病理医も習熟が必要であり,必ずしもすべての施設で高精度の診断ができるわけではない 6).このように胆膵領域診断は諸問題が存在し,現状の診断技術では乗り越えられない壁が存在する.

Ⅱ 人工知能(AI)について

近年人工知能(artificial intelligence:AI)が急速に発展し,様々なタスクを行うことが可能となっている.明確なAIの定義は存在しないが,一般的には何かしらの情報を入力して分類・回帰を行う機械,その機械の精度を上昇させるために多量の情報を学習させる,という意味で使われることが多い 7).AIの発展のきっかけとなったdeep learning(DL)の黎明期は分類することがメインの機能であったが 8),その急速な発展とともに,物体検出(物体の座標を回帰),画像生成(各画素値を回帰)など出力できる形式が増加していった.近年では大規模言語モデル(large language model:LLM)の登場により会話(入力文に続く文章を回帰)や,動画生成(各フレームの画素値を回帰)が可能になったり,入力情報が画像や音声,文章など複数情報を入力すること(マルチモーダル学習)が可能になったり,以前はラベル付きデータによる学習が必須であったがラベルなしでも学習(教師なし学習,対照学習,zero-shot learningなど)が可能になったりと,ここ10年でAIは急速に進化している 9),10).

医療分野でもAIの導入が進んでおり,特に消化管内視鏡分野では薬事承認され日常臨床で使用することが可能となっている.現時点では大腸ポリープの検出(object detection/semantic segmentation)や病変の良悪性診断(image classification)など,DLの基本機能である分類や検出が医療AIの主な機能である 7).両者は構造が全く違うもののようにみえるが,使用されているアルゴリズムはDL発展の基礎となったAlexNetを改変発展させたものが大半である 11).object detectionは物体検出(四角の矩形で検出)とその分類を同時に行うSSD(single shot multibox detector)やyoloアルゴリズムなどが主に用いられ,segmentationはピクセル単位での分類を行うUnetなどが用いられる 12)~14).本邦で最初の内視鏡AIは,2018年に薬事承認されたEndoBRAINである 15).EndoBRAINは拡大内視鏡画像を用いて大腸ポリープの腫瘍性か否かを診断するAIである.また同じEndoBRAINシリーズで下部消化管内視鏡画像から大腸ポリープを検出するEndoBRAIN-EYEが製品化された 16).大腸ポリープ検出AIは一番開発が進んでいる分野で,他社からも販売され,LPIXELのEIRL,FUJIFILMのCAD EYE,NECのWISE VISIONが製品化されている.下部消化管内視鏡領域では他に,浸潤癌の判別を行うEndoBRAIN-Plus,潰瘍性大腸炎の炎症状態を評価するEndoBRAIN-UCなどが販売されている.上部消化管内視鏡分野で食道癌や胃腫瘍検出を行うAIが開発され 17),18),またFUJIFILMからCAD EYEとして製品化されている.また上部内視鏡の各部位の代表的な画像(ランドマーク)が適切に撮影されているか判定するシステムもFUJIFILMから製品化されている.胆膵領域に関しては,CT画像から膵実質の検出を行うAIの開発は以前より機械学習領域ではmajorな検出問題で多数の文献があり,また本邦で製品化され一般的に使用が可能となっている(認証番号22000BZX 00238000)が,このAIは膵臓単体の解析というよりも,他臓器含めた臓器検出の一つである.また,本邦では胆膵内視鏡領域において2024年1月時点ではまだ製品化されたAIは存在しない.

Ⅲ AIの概要

AIのarchitectureは一般的にmachine learning(ML)またはDLが使用されることが多い.MLのアルゴリズムはsupport vector machine(SVM)やfactorization machines, decision tree,random forest(RF),logistic regression analysis(LR)やneural network(NN)など多岐に亘り,DLはMLの一つであるNNから派生したものである.MLとDLの違いは特徴量を算出する必要の有無である.特徴量とは,画像の中に潜む物体の特徴を表す数学的な情報で,数学的処理(texture解析やhistogram解析など)を行って抽出する.また,特徴量は膨大な種類に及ぶため,解析に有用な特徴量を数学的な処理を行って選択する必要がある.MLは画像から抽出された特徴量を入力値として使用する.それに比してDLは特徴量抽出を行わず画像の画素値を直接DLの入力値として使用することが可能である.しかしながらDLは学習用画像データがMLに比して多量に必要とする(ML:≧100,DL:≧1,000).またDLは学習のために並列演算が可能なgraphic process unit(GPU)やtensor process unit(TPU)という半導体が必須となる.大規模なモデルであると学習に数千から数万のGPUやTPUが必要で,開発費用が100億円以上必要となる.

Ⅳ AIの性能評価法

医療系AIだけではなくAIの性能を検討する際に,様々なポイントをチェックする必要がある.参考として,個別の予後や診断に関する多変量予測モデルの透明性のある報告(TORIPOD)チェックリスト 19),生物医学研究における診断精度の報告の質を向上させるための報告基準(STRAD2015) 20),医用画像診断支援システム(人工知能技術を利用するものを含む)開発ガイドライン2019 21)などを参考にして評価することが望ましいが,主な注目点を概説する.

4.1 研究デザイン

最初に,何を行うAI(分類,検出など)を開発したか確認する.基本的にはAIの出力値を確認する.

4.2 入力値

どのようなデータを入力値に使用しているかを確認する.医療AIの場合は内視鏡画像やCT,MRIなどの医療画像や,採血所見や臨床所見,遺伝子所見などを入力値で使用することが多い.入力値が単一ではなく数種類を入力値として使用すること(マルチモーダル学習)もある.

4.3 モデル

AIを使用したモデルを確認する.AIの使用用途と入力値によって使用可能なモデルは確定する.画像を入力値にした場合はDLを用いることが多く,採血所見などのテキストデータの場合はMLを用いることが多い.Radiomoicsという方法は,一般的に画像を入力値にして特徴量抽出・選択を行い,MLをモデルに使用することを指すことが多い 22).MLの場合は特徴量をどのように抽出・選択したかを確認する.

4.4 対象症例・ラベル

対象症例の組み入れ基準・症例数を確認する.必要な症例数は明確な定義はないが,一般的には,学習用データとしてDLは1,000以上,MLは100以上のデータ数があることが望ましい.検証データはその結果を統計学的に証明するために必要なデータ数を収集する必要がある.

次に各ラベルのゴールドスタンダードを確認する.ゴールドスタンダードとしては,病理診断または診断基準に即した結果が望ましいが,良性疾患で病理診断が困難な場合は,病理所見と臨床観察の組み合わせ(生検での悪性所見なし,追跡での変化なし)は認容される.ラベルが二値または多値なのかを確認することが重要である.さらに二値分類においては,対照群の定義を確認することが重要である 23).

4.5 検証法

AIの検証法を確認する.検証法は内的検証と外的検証に大別される.外的検証はAIの開発に用いたデータ群とは別種の群(時間的,空間的,質的)を用いてAIの性能を評価する方法で,エビデンスレベルの高い方法である.しかしながら,外的検証データを収集するコストが確保できない場合は,一つのデータ群を分割してその精度を評価する内的検証を行う.内的検証法としては,データを学習群と検証群にランダムに分割するhold-out法と交差検証法に大別され,交差検証法はk-fold交差検証法や,leave-one-out法(LOO)などが存在する.内的検証法の場合,そのデータ分割法の詳細が重要で,同じ症例の画像が学習群,検証群ともに混在する場合のように学習群のデータの一部が検証群に紛れる事象(data leak)が起こると,本来の精度以上にAIの精度が高く出てしまうことがあるため,データ分割法の詳細を確認することが重要である 23).

4.6 精度指標

AIの精度評価する指標を確認する.基本的には出力値で指標は決定される.分類の場合は感度,特異度,正診率などを指標にする.検出の場合はintersection over units(IoU)を指標に用い,IoU>0.5またはIoU>0.3で検出成功と定義することが多いが,理論的に定義された閾値は存在しない 1).

Ⅴ 胆膵領域AIの現状

先述のように本邦では内視鏡領域で薬事承認された胆膵領域AIは存在しない,しかしながら文献レベルでは胆膵領域AIは多数報告され始めている.著者らは胆膵領域AIの総説を何編か執筆しており,本線ではその中から有用な報告を抜粋し概説する(Table 1) 1),7),23).

Table 1 

主な胆膵領域AIの詳細.

5.1 膵疾患関連AI

膵疾患関連AIは膵腫瘍・膵囊胞・膵炎の検出や鑑別が主な用途で開発されている.

5.1.1 膵腫瘍検出AI

EUS画像を用いて膵腫瘍を検出したAIの報告は1文献認めた.殿塚らは膵疾患93例のEUS画像とCNNをベースとしたfully convolutional networksという検出アルゴリズムを応用してEUS画像から膵腫瘍を検出するAIを作成,47例の外的検証データを用いその精度を評価したところ,AUROCが0.94という結果を報告した(Figure 1) 24).

Figure 1 

膵腫瘍検出AI.

殿塚らが開発した膵腫瘍検出AI画像.EUS画像から膵腫瘍領域を青の矩形で検出している.

5.1.2 膵腫瘍鑑別AI

EUS画像を用いて膵腫瘍を鑑別するAIの報告は膵疾患関連AIの中で多く,12文献認めた.著者らは9種類の膵腫瘤(膵癌,神経内分泌腫瘍,自己免疫性膵炎,慢性膵炎など)694例のEUS画像を入力値に使用し,DLの鑑別アルゴリズムであるEfficientNetv2Lを用いて癌/非癌診断を行うAIを,スーパーコンピューターを用いて作成,161例のテストデータを用いてその精度を検証したところ正診率91.0%という結果を報告した(Figure 2) 6).このAIを効率的に学習させるため,われわれは生成系AIの一つであるDCGANを用いて希少腫瘍のEUS画像を生成し,その画像を追加して学習を行った.Maryaらは膵癌,AIP,慢性膵炎などの膵疾患460例のEUS画像とDLの鑑別アルゴリズムの一つであるResNet50v2を用いAIを作成,123例の外的検証データを用いその精度を評価したところ,sensitivity 0.9, specificity 0.85(膵癌/AIP)という結果を報告した 25).また,EUS画像単独ではなく,エラストグラフィーや造影超音波などEUSの画像強調画像を用いてAIを作成した報告が散見される.Săftoiuらは膵癌または慢性膵炎258例のEUS-elastography画像からhistogram解析を行って特徴量を抽出,neural network(multilayer perceptron)を用いてAIを作成,10fold交差検証を行いその精度を評価したところ,accuracy 0.843という結果を報告した 26),27).

Figure 2 

膵腫瘍鑑別AI.

著者らが開発した膵腫瘍鑑別AI画像.EUS画像に描出された矩形内の腫瘍がcarcinomaか否かを鑑別.本症例はSPN症例でAIはnon-carcinomaと判断している.

5.1.3 膵囊胞鑑別AI

膵囊胞はEUS-FNAでは確定診断が難しく,またCTやMRIなどの他モダリティでも診断能が低く,確定診断が難しいため,画像診断で治療方針を決めることが多い 28),29).そのためAIによる自動診断の恩恵を一番受ける可能性が高い疾患群である.当施設では膵囊胞の一種であるIPMNの良悪性診断を行うAIを,EUS画像を用いて開発した.IPMN50例のEUS画像と,DLの鑑別アルゴリズムであるResNet50を用いて良悪性診断を行うAIを作成,10fold交差検証を行いその精度を評価したところ,accuracy 0.94という結果を報告した(Figure 3).AIの診断能は医師の術前診断能(正診率56.0%)やIPMNのEUS画像所見の診断能(正診率52.0-68.0%)に比して高値であった 30).画像診断だけではなくEUS-FNAを用いて膵囊胞液を採取してその結果をAIに解析する研究を行った.膵囊胞85例の膵囊胞液解析や囊胞液細胞診・臨床情報・採血結果と,隠れ層2層のオリジナルDLアルゴリズムを用いて膵囊胞良悪診断AIを作成,5fold交差検証を行いその精度を評価したところ,accuracy 0.93という結果を報告した 5).その精度は囊胞液中CEAや細胞診より有意に高値であった.Machicadoらは,IPMN35例から,IPMNの良悪性診断を行うAIを,EUS-FNA下で行う共焦点レーザー内視鏡画像と,DLの鑑別・検出アルゴリズムであるVGG16とfaster-R-CNNを用いて開発,5fold交差検証を用いてその精度を検証したところ,accuracyは0.85であったことを報告した 31).

Figure 3 

膵囊胞鑑別AI.

著者らが開発した膵囊胞鑑別AI画像.EUS画像に描出された矩形内の膵囊胞の良悪性を鑑別する.本症例は良性のIPMNでAIはbenignと判断している.

5.1.4 EUS-FNA関連AI

EUS-FNAを行い得られた検体を解析するために開発されたAIの報告が散見される.内藤らは膵癌372例のEUS-FNA検体から得た病理画像を,18名の病理診断医によってアノテーションを行い,DLの鑑別アルゴリズムであるEfficientNetを用いて膵癌か否かを鑑別するAIを作成,120例の外的検証データを用いその精度を評価,その結果accuracyは0.941であったことを報告した 32).開発されたAIは組織構造が不明瞭な断片化した浮遊状腺癌細胞のほとんどを検出することが可能であったと報告した.石川らは膵癌159例から肉眼的EUS-FNA検体画像とDLの鑑別アルゴリズムであるResNet34を用いて病理学的に診断ができる検体か否かを判別するAIを作成,8fold交差検証を用いてその精度を評価したところ,accuracyは0.844であることを報告した 33).

5.1.5 膵炎鑑別AI

AIPやCPをはじめとした膵炎病変は時に膵腫瘍と鑑別が困難な場合があり,その鑑別は重要である.Maryaらは膵癌,AIP,慢性膵炎などの膵疾患460例のEUS画像とDLの鑑別アルゴリズムの一つであるResNet50v2を用いAIを作成,123例の外的検証データを用いその精度を評価したところ,sensitivity 0.9, specificity 0.59(AIP vs CP)という結果を報告した 25).

5.1.6 膵実質検出AI

膵疾患を検出・鑑別するだけではなく,膵実質や観察部位を同定するAIも開発されている.このAIが進化するとEUSのナビゲーションをAIが担う可能性がある.EUS画像からZhangらは294例のEUS画像を入力値とし,DLのsegmentationアルゴリズムの一つであるUNet++を用い膵実質を検出するAIを作成,20例の外的検証データを用いその精度を評価したところ,sensitivity(recall)0.95,または陽性的中率(precision)1.00という結果を報告した 34).同報告では,EUSの代表的な観察位置を6分割し,現在どの位置を観察しているかを鑑別するAIも作成しており,その精度はaccuracy 0.862であったと報告している.

5.2 胆道疾患AI

胆道疾患AIは膵疾患AIに比してその報告は少ないが,その有用性が数件報告されている.

5.2.1 胆囊病変鑑別AI

胆囊ポリープなど胆囊病変は日常臨床でよく遭遇する疾患である.しかしながら,胆囊病変は術前に病理検体を確保することが困難であり,画像診断が重きを置く疾患群でありAIの活用が有望視される.Jangらは胆囊ポリープ1,039症例に対してneoplastic/non-neoplasticの鑑別を行うAIを,EUS画像を入力値,DLの鑑別アルゴリズムの一つであるResNet50を用いて作成,83例の外的検証データを用いてその精度を評価したところ,accuracy 76.2%であったことを報告した 35).胆囊ポリープ鑑別AIは概して多数例を学習データに用いているが,精度が他報告に比して高くない.原因としては,neoplasticの症例がnon-neoplastic症例にして収集しにくく(不均衡データ),AIの学習自体が困難であったと推察される.

5.2.2 ERCP関連AI

ERCPは画像診断や胆管生検や細胞診など病理学的診断も行うことで疾患診断に有用であるだけではなく,胆道ドレナージや総胆管結石砕石など治療も行うことができる重要な内視鏡手技であり,その補助を行うAIの開発も進んでいる.Huangらは1,381枚のERCP画像と,検出アルゴリズムの一つであるCasNetを用いてERCP画像から胆石を検出するAIを開発,228枚のテストデータを用いてその精度を評価したところsensitivityが0.67,陽性的中率が0.8であったことを報告した 36).砕石の難易度が高いか否かを判断するAIも開発し,難易度が高いと判断された症例は破石具の使用率,処置時間,砕石失敗率が有意に高かったことが報告された.また,胆管狭窄の良悪性診断を行うAIの報告も散見される.杉本らは胆管狭窄症例206例から胆管径や採血所見などを抽出し,MLの鑑別アルゴリズムの一つであるlightGBMを用いて胆管狭窄の良悪性診断を行うAIを開発,5fold交差検証を用いてその精度を評価したところaccuracy 0.86であったことを報告した 37).また,Maryaらは122例の経口胆道鏡画像と,DLの鑑別アルゴリズムであるResNet50v2を用いて胆管狭窄良悪性診断を行うAIを開発,32例のテストデータを用いてその精度を評価したところ,accuracy 0.90であったことを報告した 38).

Ⅵ 胆膵領域AIの問題点と今後の展望

上述したが,胆膵内視鏡領域AIは現時点で製品化された鑑別・検出するAIは本邦では存在しない.しかしながら,製品化につながると思われる有用な報告も散見されはじめた.リスク面から考えても消化管内視鏡AIのように胆膵領域AIも病変の検出などが先に製品化するのではないかと考える.Zhangらの報告のように,EUSの位置情報や臓器を認識するAIが進化すれば,AIによるナビゲーションが可能ではないかと推察する.また,近年急速に進化したLLMは多様な情報を処理することが可能である.現時点ではLLMは長時間の動画を解析することが困難だが,LLMがさらに進化すれば,EUS画像から自動で所見を記載するシステムが開発されるかもしれない.今後は画像や臨床情報だけではなく遺伝子情報やタンパク質情報などを多次元・多系列で解析(マルチモーダル学習)し,診断予測が困難な治療効果・予後予測に始まり現時点では考えられなかった所見を診断・予測することが可能になる未来を期待している.

AIは日常臨床で使用するためには薬事承認を取得しなければならない.本邦では約20のプログラム医療機器が薬事承認されているが,現時点では薬事承認された胆膵領域AIは存在しない.原因としては消化管疾患に比して胆膵領域疾患の有病率は低いため薬事承認に必要な症例を集めることが難しいこと(胆膵癌の有病率は消化管癌の約1-2割),製品化したとしてもその有病率の低さと診断機器が少なく市場規模が小さいため開発コストが取れないことなどが,製品化が遅れる原因であると考えられる.近年AIモデルが肥大化しその精度は急上昇している一方,必要とされるデータ量も増加しているため,胆膵疾患のAIを開発するためにはさらに大量のデータを収集する必要がある.そのハードルを越えるためには全国レベルでの効率的なデータ集積法を構築することや,必要なデータ量を削減することが可能な効率的なAIの学習法を考案する必要があると考える.

Ⅶ まとめ

胆膵領域AIの現状を概説した.有病率が低い胆膵疾患に対してもAIは開発,製品化されていくと確信する.AIは急速に進化しており今後画像診断だけではなく,ナビゲーションや診療補助など様々な分野で応用されていくと考えられる.そのためにはAIの開発が円滑に進むような方法を全国レベルで考案していく必要がある.

謝 辞

Figure作成において画像提供頂いた,東京医科大学 糸井隆夫先生,殿塚亮祐先生(Figure 1)に感謝申し上げます.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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