日本消化器内視鏡学会雑誌
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資料
急性下部消化管出血における出血所見同定の予測モデル構築:全国多施設共同研究
青木 智則, 山田 篤生 , 小林 克誠, 山内 淳嗣, 大森 順, 池谷 敬, 青山 大輝, 冨永 直之, 佐藤 義典, 岸埜 高明, 石井 直樹, 澤田 つな騎, 村田 雅樹, 高雄 暁成, 水上 一弘, 金城 健, 藤森 俊二, 魚谷 貴洋, 藤田 穣, 佐藤 裕樹, 鈴木 翔, 奈良坂 俊明, 早坂 淳之介, 船曵 知弘, 金城 譲, 水城 啓, 藤城 光弘, 貝瀬 満, 永田 尚義
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電子付録

2024 年 66 巻 10 号 p. 2484-2497

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要旨

【背景と目的】急性下部消化管出血において,出血所見(SRH:Stigmata of recent hemorrhage)は内視鏡治療の適応とされている.出血所見同定が強く見込まれる患者には大腸内視鏡検査の施行が望まれるが,出血所見の予測因子は明らかになっていない.今回,全国規模のデータを用いて,出血所見を効率的に同定するための予測モデルを構築することを目的とした.

【方法】CODE BLUE-J研究(全国49病院)において,急性下部消化管出血で緊急入院し,入院中に大腸内視鏡検査を施行された8,360例を後方視的に解析した.まず,4,863例を用いて,出血所見同定予測モデルを作成した.「患者背景因子」,「内視鏡関連因子(内視鏡タイミング,腸管前処置,器具)」,「CT検査での血管外造影剤漏出像の有無」を網羅的に評価した.次に,予測モデルの性能を3,497例を用いて外部検証した.

【結果】28%の患者に大腸の出血所見を認めた.高性能の出血所見同定予測モデル(CS-NEEDスコア:ColonoScopic factors, No abdominal pain, Elevated PT-INR, Extravasation on CT, and DOAC use)を構築した(AUC;モデル作成群0.74,外部検証群0.73).このスコアはまた,活動性出血の高い予測能を示した(AUC;モデル作成群0.73,外部検証群0.76).外部検証群における低スコア(0-6点),中間スコア(7-8点),高スコア(9-12点)の患者の出血所見同定率はそれぞれ,20%,31%,64%であった(傾向検定P<0.001).

【結論】大腸の出血所見同定のための新しい予測モデル(CS-NEEDスコア)は,急性下部消化管出血において内視鏡治療遂行の見込みが高い大腸内視鏡検査を特定しうる.初療時にこのモデルを用いることで,出血所見の効率的な発見および治療につながるだろう.

Abstract

Objectives: Stigmata of recent hemorrhage (SRH) directly indicate a need for endoscopic therapy in acute lower gastrointestinal bleeding (LGIB). Colonoscopy would be prioritized for patients with highly suspected SRH, but the predictors of colonic SRH remain unclear. We aimed to construct a predictive model for the efficient detection of SRH using a nationwide cohort.

Methods: We retrospectively analyzed 8360 patients admitted through hospital emergency departments for acute LGIB in the CODE BLUE-J Study (49 hospitals throughout Japan). All patients underwent inpatient colonoscopy. To develop an SRH predictive model, 4863 patients were analyzed. Baseline characteristics, colonoscopic factors (timing, preparation, and devices), and computed tomography (CT) extravasation were extensively assessed. The performance of the model was externally validated in 3497 patients.

Results: Colonic SRH was detected in 28% of patients. A novel predictive model for detecting SRH (CS-NEED score: Colono Scopic factors, No abdominal pain, Elevated PT-INR, Extravasation on CT, and DOAC use) showed high performance (area under the receiver operating characteristic curve [AUC] 0.74 for derivation and 0.73 for external validation). This score was also highly predictive of active bleeding (AUC 0.73 for derivation and 0.76 for external validation). Patients with low (0-6), intermediate (7-8), and high (9-12) scores in the external validation cohort had SRH identification rates of 20%, 31%, and 64%, respectively (P < 0.001 for trend).

Conclusions: A novel predictive model for colonic SRH identification (CS-NEED score) can specify colonoscopies likely to achieve endoscopic therapy in acute LGIB. Using the model during initial management would contribute to finding and treating SRH efficiently.

Ⅰ 背  景

急性下部消化管出血のガイドラインでは,初期検査として大腸内視鏡検査が推奨されている 1)~4).大腸内視鏡検査における出血所見(SRH:Stigmata of recent hemorrhage - 活動性出血・露出血管・凝血塊)は,内視鏡治療の適応とされている 1)~3),5)~9).実際既報では,未治療の出血有所見患者の再出血率は,内視鏡治療を受けた出血有所見患者の再出血率よりも有意に高かった 6),9).よって,出血所見に基づく内視鏡治療は重要な臨床転帰を改善する可能性が高く,出血所見を同定することが急性下部消化管出血のマネージメントを成功させる鍵であると言える.しかし,過去のランダム化比較試験で報告された出血所見同定率が低いこと(13-33%) 10)~12)を考慮すると,急性下部消化管出血患者全員に再出血予防を目的とした大腸内視鏡検査を施行することは必ずしも得策ではない.もし出血所見同定の予測モデルがあれば,出血所見同定が強く見込まれる患者に優先的に大腸内視鏡検査を行い,出血所見を同定・治療することで転帰を効率的に改善できるであろう.しかし,どのような大腸内視鏡検査が内視鏡治療につながる可能性が高いかについて,まだ検討が十分になされていない.したがって,出血所見の予測因子を明らかにすることは意義がある.

急性下部消化管出血のリスク層別化スコアは複数報告されているが 13)~16),それらは出血所見同定よりも重症出血や死亡などの転帰の予測に焦点が当てられており,出血所見同定に焦点を当てた研究は限られている.単一施設からの報告では,大腸内視鏡関連因子(検査のタイミングや使用器具など)と出血所見同定との関連が示唆されている 17).しかし,その研究はサンプルサイズが比較的小さい(n=396)ため臨床的予測因子は同定されず,また外的妥当性に欠ける.したがって,多方面の因子を予測モデルに統合できるような大規模な多施設研究が必要である.

そのためわれわれは,急性下部消化管出血患者を対象とした全国規模の研究を実施した.本研究の目的は,急性下部消化管出血における出血所見の効率的な発見と治療に寄与する予測モデルを構築することである.

Ⅱ 方  法

研究デザイン,対象

2010年1月から2019年12月までに全国49病院に緊急入院した外来発症の急性血便患者を対象とした多施設共同研究を実施した.患者詳細は既報に記載がある(CODE BLUE J-Study:COlonic DivErticular Bleeding Leaders Update Evidence from multicenter Japanese-Study) 18),19).本研究は後ろ向き観察研究であり,オプトアウト法により実施され,参加49施設すべての倫理委員会承認を得た(Table S1)(電子付録).この研究の計画,実施および報告に,患者は関与していない.Figure 1に示すように,集積した急性血便患者(n=10,342)のうち,以下の患者を除外した.入院中の大腸内視鏡検査なし(n=1,278),ポリープ切除後および生検後を含む内視鏡処置後の出血(n=463),上部消化管出血(n=153),小腸出血(n=246).医原性の出血は内視鏡検査前に出血源を予測しやすく出血所見同定率に大きく影響するため,出血所見を主要評価項目とした先行研究 12),17)に準じて医原性出血患者は除外した.残りの対象を,新規モデル作成群とスコアの妥当性を評価するための外部検証群の2群に分けた.モデル作成群は非大学の25の救急病院,検証群は24の大学病院への入院症例とした.この分割基準としたのは,モデル作成群から得られた予測モデルを,患者マネージメントが異なる可能性のある外部施設に適用することで,予測モデルの一般化可能性を検証するためである.ひと月に緊急入院した急性下部消化管出血患者数の中央値は,非大学の救急病院(3.3人)の方が大学病院(2.0人)よりも有意に多かったことから,これら2群間の救急医療体制の違いが示唆された(Table S1)(電子付録).最初の解析として,これら全患者を用いて,造影CT検査での血管外造影剤漏出像有無の因子を含まない解析を行った(解析1).次に,大腸内視鏡検査前の造影CT検査非施行患者を除外し,造影剤漏出像有無の因子を含む解析を行った(解析2).

Figure 1 

モデル作成群と外部検証群の選択フローチャート.

*重複あり

変数(調査項目)

全変数は,消化器内科医または専任研究者により,各参加施設のカルテおよび内視鏡電子データベースから収集された.出血所見同定の予測因子として,i)患者背景因子,ii)大腸内視鏡検査関連因子,iii)大腸内視鏡検査前のCT検査での血管外造影剤漏出像所見,の3種類の変数を評価した.患者背景因子として,併存疾患,随伴症状,来院時バイタルサイン,内服薬,来院時検査所見を評価した.併存疾患情報はCharlson併存疾患指数 20)の算出に使用した.大腸内視鏡検査関連因子として,大腸内視鏡検査のタイミング,経口腸管前処置,内視鏡先端アタッチメントキャップの使用,ウォータージェット装置の使用を評価した 12),17).来院から大腸内視鏡検査までの時間を,モデル作成群における出血所見同定率に基づいて3カテゴリーに分類した(Figure S1)(電子付録).<12時間,12-60時間,≧60時間(同定率はそれぞれ44%,23%,11%).大腸内視鏡検査のための経口腸管前処置は,検査当日にポリエチレングリコール入り溶液2-4Lを用いた 21).アタッチメントキャップおよびウォータージェット装置の使用有無は,医師の裁量による.内視鏡検査の準備段階も含め,内視鏡検査直前までに得られる可能な限り多くの因子の中から出血所見同定に関連する因子を抽出することを意図したため,これらの内視鏡器具も予測因子の候補として評価した.大腸内視鏡検査はすべて,電子内視鏡(オリンパス株式会社または富士フイルム株式会社[いずれも日本])を用いた.

アウトカム(評価項目)

評価項目は,初回大腸内視鏡検査における大腸出血所見の同定である.出血所見は,活動性出血・露出血管・凝血塊とした(Figure 2) 5),6),12).出血所見を評価項目としたのは,医師の裁量で行われる内視鏡治療など他の内視鏡時指標よりも客観的であるためである.

Figure 2 

各出血所見タイプの代表画像.

A:活動性出血.

B:露出血管.

C:凝血塊.

統計解析

まずモデル作成群を用いて,出血所見予測のための新規モデルを作成した.簡便に臨床応用するため,連続変数はすべて,標準的な臨床基準値または統計的尺度のいずれかで二分した.ロジスティック回帰分析により,各変数のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を計算した.出血所見同定の予測モデルは,赤池情報量規準に基づく変数減少法によって構築した.その際,単変量解析でP値<0.10であった変数を多変量解析に入れた.今回,出血所見を予測するための2パターンの重み付けスコアを作成した.1)患者背景因子と内視鏡検査関連因子を用いたスコア(解析1),2)3種類の因子すべて(CT検査での血管外造影剤漏出像を含む)を用いたスコア(解析2).スコアの識別能はROC-AUCを用いて,適合度はHosmer-Lemeshow検定を用いて評価した.さらに,外部検証群を用いてスコアの妥当性を評価した.

カイ二乗検定,Fisherの正確検定,またはノンパラメトリック傾向検定(nptrend,Stataソフトウェア[ver. 14.0;StataCorp, College Station, TX, USA]で実施)を用いて割合を比較した.連続変数の比較にはWilcoxonの順位和検定を,ROC-AUC値の比較にはDelong検定 22)を用いた.P値<0.05を有意とみなした.解析はすべてStataソフトウェアを用いた.

Ⅲ 結  果

患者背景

大腸内視鏡検査を受けた急性下部消化管出血患者8,360例(男性62%,平均年齢71.4歳[範囲20-102歳])を解析した(Table 1).内視鏡検査で大腸に出血所見が同定された患者は28%であった.出血所見の種類は,16%が活動性出血,5%が露出血管,9%が凝血塊であった.内視鏡検査の前に造影CT検査が施行された患者は50%で,うち24%で血管外漏出像が検出された.患者はモデル作成群(n=4,863)と外部検証群(n=3,497)に分けられた.

Table 1 

モデル作成群と外部検証群の患者背景.

解析1:CT検査での血管造影剤漏出像の因子を含まない,出血所見予測モデル

多変量ロジスティック回帰分析により,独立した出血所見予測因子として7つの患者背景因子と3つの内視鏡検査関連因子が同定された(Table S2)(電子付録).出血所見を予測する重み付けスコア(最大31点)を作成した.モデル作成群におけるスコアのAUCは0.71(95%CI,0.70-0.73),Hosmer-Lemeshow検定はP=0.32であった.検証群におけるスコアのAUCは0.66(95%CI,0.64-0.68)であった.

解析2:CT検査での血管造影剤漏出像の因子を含む,出血所見予測モデル

多変量ロジスティック回帰分析により,以下の出血所見予測因子が同定された(Table 2):3つの内視鏡関連因子[早期大腸内視鏡検査(12時間未満または12-60時間),アタッチメントキャップの使用,ウォータージェット装置の使用],腹痛なし,PT-INR上昇(2.0以上),CT検査での血管外造影剤漏出像,DOAC使用.3種類の因子(患者背景,内視鏡検査情報に加えてCT検査情報)すべてを用いて出血所見を予測するスコアを作成した(CS-NEEDスコア最大12点:ColonoScopic factors, No abdominal pain, Elevated PT-INR, Extravasation on CT, and DOAC use).モデル作成群におけるCS-NEEDスコアのAUCは0.74(95%CI,0.72-0.76)(Figure 3-A),Hosmer-Lemeshow検定はP=0.07であった.検証群におけるスコアのAUCは0.73(95%CI,0.70-0.76)であった.活動性出血の予測に関するスコアのAUCは,モデル作成群で0.73,検証群で0.76であった(Figure 3-B,C).

Table 2 

出血所見同定の予測因子(CT検査所見を有するモデル作成群,n=2,897).

Figure 3 

CT検査所見を有する患者(n=3,868)に対する,CT検査での血管外造影剤漏出像因子を含む出血所見予測モデルCS-NEEDスコアの予測能.

A:CS-NEEDスコアのROC曲線.

B:モデル作成群における出血所見タイプごとのROC曲線(n=2,678).

C:外部検証群における出血所見タイプごとのROC曲線(n=1,190).

D:モデル作成群における出血所見同定率(n=2,897).

E:外部検証群における出血所見同定率(n=1,190).

略語:ROC-AUC, area under the receiver operating characteristics curve

モデル作成群における出血所見同定率(Figure 3-D)に基づいて,CS-NEEDスコアを低,中間,高スコアに分類した.Figure 3-Eは,検証群における3つのスコア分類に基づく出血所見同定率を示す.低スコア(0-6点),中間スコア(7-8点),高スコア(9-12点)の患者の出血所見同定率は,それぞれ20%,31%,64%であった(傾向検定P<0.001).

Ⅳ 考  察

今回の急性下部消化管出血の全国多施設共同研究では,大腸の出血所見を効率的に同定するための新しい予測モデルを構築した.内視鏡検査関連因子[早期大腸内視鏡検査(12時間未満),アタッチメントキャップおよびウォータージェット装置の使用],腹痛なし,PT-INR上昇,CT検査での血管外造影剤漏出像,およびDOAC使用で構成されるCS-NEEDスコアリングモデル(Table 2およびFigure 3)は,CT血管外造影剤漏出像の因子を含まないモデル(AUC 0.71)よりも高い性能(AUC 0.74)を示した.CS-NEEDスコアが高い場合(9-12点)は60%以上で出血所見が同定され,内視鏡治療の見込みが高いが,スコアが低い場合(0-6点)は内視鏡治療を要する可能性が低い.さらに,本スコアは大腸内視鏡検査での活動性出血同定を高精度で予測した.このように,われわれの新規モデルは,内視鏡治療遂行の見込みが高い大腸内視鏡検査を特定し,出血所見の効率的な発見と治療に役立てることができる.

内視鏡検査前に各患者の出血所見同定率をシミュレーションできるわれわれの予測モデルは,内視鏡検査のタイミングを検討する際にも有用な可能性がある.アタッチメントキャップとウォータージェット装置が使用可能な施設でのシミュレーション例は,以下の通りである(Figure S2)(電子付録).PT-INRが2.0以上で腹痛のないDOAC使用者には,CT検査で血管外造影剤漏出像が検出されなかった場合でも,シミュレーションによる出血所見同定率は69%(CS-NEEDスコア9点)と高く,早期の内視鏡検査(12時間未満)が推奨される.これらの患者において,内視鏡検査のタイミングとして12-60時間を選択した場合(スコア7点),同定率は40%に減少する.一方,PT-INRが2.0以上で腹痛があり,CT検査で血管外造影剤漏出像を認めないDOAC非内服患者では,待機的な内視鏡検査が許容されるであろう.したがって,出血所見に基づく治療の必要性という観点からわれわれの予測モデルを用いることにより,不必要な早期大腸内視鏡検査を回避できることが示唆される.ただし,本研究は後ろ向き研究のため重要な出血所見予測因子が拾えていない可能性があり,前向き研究が望まれる.

今回新たに,複数の患者背景因子が出血所見の予測因子であると分かった.抗凝固関連因子(DOAC使用とPT-INR上昇)が予測因子であることは,既報からも妥当である.ある症例対照研究では,抗血小板薬使用よりも抗凝固薬使用の方が下部消化管出血リスクは2倍高いことが示され,抗凝固薬の方が止血抑制効果が高いことが示唆された 23).別の研究では,抗凝固薬使用は大腸の血管異形成からの活動性出血のリスク(OR,4.2)であることが示されている 24).したがって,内視鏡医は大腸内の新鮮血を目印に出血所見を容易に発見することができる.実際,本研究における抗凝固薬使用者は非使用者と比較して活動性出血の割合が有意に高かった(21% vs. 15%,P<0.001).

先行研究 17),25),26)と一致して,大腸内視鏡検査のタイミング,およびアタッチメントキャップとウォータージェット装置の使用は出血所見同定と関連していた.したがって,出血所見の同定・治療率を高めることによって臨床転帰を改善するためには,患者背景因子による評価に加え,このような内視鏡器具が有用であろう.ウォータージェット内視鏡は,特に露出血管や凝血塊の同定に重要と思われる(Table S3)(電子付録).内視鏡検査関連因子のうち,ポリエチレングリコールを用いた経口腸管前処置は,多変量解析で出血所見の予測因子ではなかった.サブグループ解析(Figure S3)(電子付録)により,早期大腸内視鏡検査では経口腸管前処置が有効であることが示唆された.一方,経口腸管前処置を行わない内視鏡検査は,CT検査での血管外造影剤漏出像を認める患者や救急医療を専門とする施設(例えば,年間救急車搬送数が4,000件以上)では許容される可能性がある.実際,CT検査から2時間以内で施行した経口腸管前処置不使用の内視鏡検査が,最も出血所見同定率が高かった(71%)(Figure S4)(電子付録).

この研究の限界として,CT検査が救急医または消化器科医の判断で行われたこと,またアタッチメントキャップやウォータージェットスコープ装置の使用が内視鏡医の裁量であったことが挙げられ,これにより選択バイアスが生じた可能性がある.他にも,欠測値の存在とモデル作成群の抽出基準という,選択バイアスに関する2つの側面もある.これらに対処するため,新規モデル(CS-NEEDスコア)における7つの予測因子が有意であることの頑健性を確認する感度分析を行った(Methods S1)(電子付録).多重代入法を用いて欠損値にデータを代入した後,3パターンのモデル作成群を抽出し,各パターンにおいてCS-NEED因子の回帰係数を算出した(Table S4)(電子付録).これらの感度分析により,CS-NEED因子が出血所見を効率的に同定するために重要であることが強調された.さらに研究の限界として,後ろ向き研究であることから,出血所見有無とそのタイプが中央判定ではなく検査時の内視鏡医によって診断されたことも挙げられる.しかし本研究の重要な強みとして,1)複数の施設による外部検証群,2)既存の下部消化管出血予測スコアでは十分に評価されていない患者背景因子,内視鏡関連因子,血管外造影剤漏出像因子などの詳細なデータを8,000人以上の患者から収集した,という点が挙げられる.大量データの解析により,出血所見の各タイプ(活動性出血や露出血管など)に対する,スコアの予測精度評価が可能となった.

結論,われわれの全国規模の研究は,急性下部消化管出血患者における大腸の出血所見同定のための新しい予測モデル(CS-NEEDスコア)を構築した.このモデルを用いることで,出血所見同定率を予測・向上させることができ,再発抑制を目的とした内視鏡検査および治療を効率的に施行できることが期待される.

謝 辞

解析手法を監修していただきました貞嶋栄司先生,データ収集および解釈にご尽力いただきました清時 秀先生,三上達也先生,具嶋亮介先生,藤井宏行先生,冬野雄太先生,郡司直彦先生,鳥谷洋右先生,成松和幸先生,眞部紀明先生,長生幸司先生,金城 徹先生,隅田頼信先生,船越禎広先生,小林清典先生,松橋 保先生,小牧祐雅先生,三木邦寿様,渡辺一弘先生,佐藤雅哉先生,吉田謙子様,論文執筆にご協力いただきました新倉量太先生,佐藤雅哉先生,早河 翼先生,小池和彦先生に厚く御礼申し上げます.

共同研究者:清時 秀先生(周東総合病院 消化器内科),三上達也先生(弘前大学医学部附属病院 光学医療診療部),具嶋亮介先生(熊本大学大学院生命科学研究部 消化器内科学),藤井宏行先生(国立病院機構福岡東医療センター 消化器・肝臓内科),冬野雄太先生(九州大学大学院病態機能内科学),郡司直彦先生(福島県立医科大学 消化器内科),鳥谷洋右先生(岩手医科大学 内科学講座 消化器内科分野),成松和幸先生(防衛医科大学校 内科学講座),眞部紀明先生(川崎医科大学検査診断学 内視鏡・超音波部門),長生幸司先生(市立吹田市民病院 消化器内科),金城 徹先生(琉球大学病院 光学医療診療部),隅田頼信先生(国立病院機構九州医療センター 消化器内科),船越禎広先生(福岡大学病院 消化器内科),小林清典先生(北里大学医学部 消化器内科),松橋 保先生(秋田大学大学院医学系研究科 消化器内科学・神経内科学講座),小牧祐雅先生(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 消化器・生活習慣病学分野,衛生学・健康増進医学),三木邦寿様(東京医科大学 消化器内視鏡学),渡辺一弘先生(国立国際医療研究センター 消化器内科),新倉量太先生(東京大学大学院医学系研究科 消化器内科,東京医科大学 消化器内視鏡学),佐藤雅哉先生(東京大学大学院医学系研究科 消化器内科),早河 翼先生(東京大学大学院医学系研究科 消化器内科),小池和彦先生(東京大学大学院医学系研究科 消化器内科),貞嶋栄司先生(佐賀県医療センター好生館 総合臨床研究所)

研究費支援:本研究は,厚生労働科学研究費補助金(研究課題番号:19HB1003),日本学術振興会科研費(JP17K09365,20K08366),喫煙科学研究財団,武田科学振興財団,および国立国際医療研究センター研究助成(29-2001,29-2004,19A1011,19A1022,19A-2015,29-1025,30-1020)の支援を受けた.資金提供者は,研究デザイン,解析,原稿掲載の決定に関与していない.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

補足資料

Figure S1 病院受診から内視鏡検査までの時間ごとの出血所見同定率(モデル作成群,n=4,863).

Figure S2 CS-NEEDスコアに基づく,内視鏡タイミングごとの出血所見同定率のシミュレーション.

Figure S3 主要なサブグループにおけるPEG製剤を用いた腸管前処置による出血所見同定のオッズ比(単変量解析).

Figure S4 CT検査で血管外造影剤漏出像を認めた患者における,CT検査から大腸内視鏡検査までの時間ごとの出血所見同定率(n=1,014).

Methods S1 多重代入法後のデータセットを用いた感度分析.

Table S1 研究参加49施設と倫理委員会承認番号.

Table S2 出血所見同定の予測因子(モデル作成群,n=4,863).

Table S3 出血所見の各タイプ同定の予測因子(CT検査所見を有するモデル作成群,n=2,897).

Table S4 3パターンのモデル作成群抽出に基づいて算出されたCS-NEED因子の回帰係数(多重代入法後のデータセットを用いた感度分析).

Footnotes

本論文はDigestive Endoscopy(2023)35, 777-89に掲載された「Development and validation of a novel model for predicting stigmata of recent hemorrhage in acute lower gastrointestinal bleeding: Multicenter nationwide study」の第2出版物(Second Publication)であり,Digestive Endoscopy誌の編集委員会の許可を得ている.

文 献
 
© 2024 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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