2024 年 66 巻 10 号 p. 2518
【背景と目的】直接経口抗凝固薬(Direct oral anti-coagulants;DOAC)を用いた内視鏡的切除後の後出血率は高いが,ばらつきがある.本研究(ABCD-J study)は,日本における各DOACとワーファリンの大腸ESD後の後出血率を比較分析することを目的とした.
【方法】2012年から2021年の期間にわたり,国内47施設で実施された34,455例の大腸内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)症例のうち,DOAC内服1,019例と,ワーファリン内服459例を遡及的に検討した.
【結果】DOAC群およびワーファリン群の平均腫瘍径は,それぞれ29.6±14.0mmおよび30.3±16.4mmであった.DOAC群では,ダビガトランの後出血率(18.26%)がアピキサバン(10.08%,P=0.029),エドキサバン(7.73%,P=0.001),リバーロキサバン(7.21%,P<0.001)よりも有意に高かった.リバーロキサバンのみがワーファリン(11.76%,P=0.033)よりも有意に低い後出血率を示した.多変量解析ではヘパリン置換(オッズ比[OR]2.18,95%信頼区間[CI]1.27-3.73,P=0.005),直腸(OR 2.01,95% CI 1.28-3.16,P=0.002),手技時間≧55分(OR 2.43,95% CI 1.49-3.95,P<0.001)がDOAC群における後出血の有意な危険因子であった.DOAC群における後出血リスク(OR,95% CI)は,危険因子が1つある場合は2.13(1.30-3.50),2つある場合は4.53(2.52-8.15)であった.
【結論】ダビガトランは他のDOACよりも後出血率が高く,リバーロキサバンだけがワーファリンよりも有意に後出血率が低かった.
消化器内視鏡診療ガイドラインの追補版 2)には,ESD時のDOACの取り扱いが記載されている.しかし,DOACの種類による出血リスクの違いの報告は少なかった.本研究の結果は,DOACの種類と後出血の危険因子に応じた対策を考慮する必要性を示唆している.ESD後潰瘍の縫縮はそのひとつと考えられるが,今回の検討では多変量解析により有意差が検出されなかった.しかし,縫縮は各内視鏡医の判断によるものであったため,今後の検討課題としている.適切な症例選択や縫縮方法などを含めたさらなる検討が必要である.