日本消化器内視鏡学会雑誌
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症例
CSで整復を試みた回盲部に腸重積を生じた小腸悪性リンパ腫の1例
永田 大和, 堀内 英和, 秋葉 昭多郎, 奥本 和夫 , 八戸 茂美
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2024 年 66 巻 12 号 p. 2667-2673

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要旨

症例は72歳,女性,主訴は下痢,下腹部痛.腹部造影CT検査では回盲部内腔の腫瘤と口側の小腸の拡張を認め,腸重積の所見を呈していた.CSでは回盲弁から逸脱した表面平滑な腫瘤を認め,小腸粘膜をひきこんでいた.送気,圧迫で内視鏡的整復を試みたが困難であり,腹腔鏡補助下回盲部切除を施行,Diffuse large B-cell lymphomaの診断であった.術後化学療法が行われている.腸重積に対するCSによって,重積先進部病変の質的診断や粘膜虚血の評価ができ,外科手術の適応や術式,手術のタイミングを計る情報を得ることができる.症例によっては腫瘍による腸重積に対しても内視鏡的整復が可能なこともあるため,有用性を認識しておく必要がある.

Abstract

We report the case of a 72-year-old female patient who presented with diarrhea and lower abdominal pain. Abdominal contrast-enhanced CT revealed a mass within the cecum and bowel dilatation indicative of intussusception. CS revealed a smooth-surfaced tumor that had prolapsed from the ileocecal valve and involved the small intestinal mucosa. Attempts to reduce it endoscopically using insufflation and pressure were unsuccessful; therefore, laparoscopy-assisted resection of the ileocecal region was performed. A pathological examination confirmed a diagnosis of diffuse large B-cell lymphoma. CS allows for qualitative diagnosis of the leading point lesion and evaluation of the ischemic mucosa, and provides crucial information for determining the surgical indications, operative methods, and timing of surgery. Although endoscopic reduction may be feasible in cases of tumor-induced intussusception, its utility should be recognized.

Ⅰ 緒  言

腸重積は,小児では特発性が多く,注腸による非観血的整復が中心であるのに対し,成人では比較的まれで,悪性腫瘍による2次性の腸重積が多いため,診断された時点で手術が行われることが多かった 1),2).今回,われわれは,大腸内視鏡検査で整復を試みた小腸悪性リンパ腫の1例を経験した.成人腸重積に対する大腸内視鏡の有用性について文献的考察を加えて報告する.

Ⅱ 症  例

72歳,女性.

主訴:下痢,下腹部痛.

既往歴:56歳子宮体癌で子宮全摘出術.

現病歴:下痢,腹痛にて当院外来受診,腹部造影CT検査で回盲部に腸重積の所見を認め入院となった.

現症:身長162cm,体重48kg,腹部膨満なし,筋性防御なし,右下腹部に軽度圧痛を認める.

入院時血液生化学検査所見:CRP 3.35mg/dLと軽度の上昇のほか,特に異常を認めなかった.可溶性IL-2レセプター値は284U/mlと正常であり,各種腫瘍マーカーも正常であった.

画像検査所見:腹部造影CT検査では回盲部内腔に連続する腫瘤性病変と口側の小腸の拡張を認めており,腸重積の所見であった.穿孔や腸管の血流障害,壊死を示唆する所見は認めなかった(Figure 1).翌日CO2送気下で行った大腸内視鏡検査では,回盲弁から逸脱した表面平滑な腫瘤を認め,小腸粘膜までひきこんでいた(Figure 2).腫瘤の表面から生検組織検査を行ったが,壊死物質のみであり,病理学的診断は困難であった.

Figure 1 

腹部造影CT検査.

回盲部内腔の腫瘤性病性病変と口側の小腸の拡張を認めた.穿孔や腸管の血流障害,壊死を示唆する所見は認めなかった.

Figure 2 

大腸内視鏡検査.

a:回盲部に表面平滑な腫瘤(矢印①)と引き込まれた小腸粘膜を認めた(矢印②).

b:小腸粘膜への近接では色調に虚血像を認めなかった.

c:内視鏡下ガストログラフィンⓇ造影検査でも回盲部に引き込まれた腫瘤(矢印)を認めた.

経過:腹痛はその後改善し,筋性防御などの腹膜炎を疑う所見もなく,造影CT検査で腸管の血流障害や壊死所見も認められないことから,待機的手術可能と判断し,大腸内視鏡を施行し整復を試みた.送気,圧迫で内視鏡的整復を試みたが困難であった.小腸腫瘍の腸重積と診断し,第7病日に腹腔鏡補助下回盲部切除を施行した.大腸内視鏡の生検検査では病理的診断はつかなかったが,内視鏡所見から腺癌でなく粘膜下腫瘍,脂肪腫,悪性リンパ腫の可能性が高いと考え,リンパ節の郭清は行わなかった.回腸末端に27×22mm大の隆起性腫瘍を認め(Figure 3-a),N/C比の高い大型~中型の異型リンパ球が充実性に増殖する像がみられ(Figure 3-b),固有筋層への浸潤を認めた(Figure 3-c).異型細胞はCD10(+),CD20(+),CD79a(+),BCL6(+),MUM1(+),cMyc(-),BCL2(-),CD3(-),CD5(-),EBER-ISH(-),Ki-67(+)90%でありDiffuse large B-cell lymphomaの診断であった(Figure 4).術後のCT検査,PET-CT検査でリンパ節への集積を認めず,骨髄検査でも異型リンパ球を認めないことからLugano分類によるステージはⅠ期であった.術後,血液内科でリツキシマブ,シクロホスファミド,ドキソルビシン,ビンクリスチン,プレドニゾロン(R-CHOP)療法が行われている.

Figure 3 

切除標本と病理所見.

回腸末端に27×22mmの隆起性腫瘍を認め(a),N/C比の高い大型~中型の異型リンパ球が充実性に増殖する像がみられ(b),固有筋層への浸潤を認めた(c).

Figure 4 

免疫組織化学染色所見.

異型細胞はCD20(+)(a),Ki67(+)90%(b)でありDiffuse large B-cell lymphomaの診断であった.

Ⅲ 考  察

近年の造影CT検査の進歩により,急性腹症診断の精度が向上したことや,内視鏡時のCO2送気が導入されたことにより,比較的安全に緊急内視鏡検査が可能となったことから,成人腸重積に対する内視鏡的整復の有効例も報告されている 3),4).しかし,成人の腸重積に対する大腸内視鏡の有用性については明らかでない.医学中央雑誌で2005年から2022年まで,「大腸内視鏡」,「腸重積」,「内視鏡的整復」,で検索(会議録を除く)した19例と,関連する文献から検索した症例報告1例の合計20例 5)~24),また,PubMedで「colonoscopy」,「Intussusception」,「Endoscopic Reduction」で検索し,レビューを除外し,検討可能な症例は12例であった 4),17),25)~34).自験例を含めた大腸内視鏡による内視鏡的整復が試みられた成人腸重積32症例をTable 1に提示する.整復可能症例は18例,困難例14例であった.原因疾患の内訳は,腺癌8例,特発性6例,脂肪腫5例,ポリープ3例,その他10例であった.特発性など良性疾患20例中8例で手術が回避できていた.腺癌においても8例中3例が整復可能であった.重積部位は回盲部や上行結腸に多い傾向があったが(13例),S状結腸にも整復可能症例はあり(2例)部位にかかわらず整復成功例を認めた.今回の文献的検討から,成人の腸重積症例においても,内視鏡的整復が可能な例があることが明らかになった.悪性腫瘍などによる2次性の腸重積でも内視鏡的整復が有効な症例があることは認識する必要がある.しかし,内視鏡的整復困難例は報告されていないものが少なからず存在すると考えられるため,正確な内視鏡的整復術の成功率は不明である.整復によって適切な手術適応を評価できる一方で,整復によって血行性転移,腹膜播種のリスクを危惧し整復に否定的な報告がある 1).しかし,内視鏡的整復が長期予後に影響を与えたという報告はないため,今後さらなる検討が必要である.

Table 1 

成人腸重積症例に対して大腸内視鏡による整復が試みられた症例.

大腸内視鏡の情報によって,待機的な手術が可能と判断された場合,生検によって重積先進部の質的診断が可能となる場合もある.本症例では生検を行ったものの診断には至らなかった.小腸悪性リンパ腫が内視鏡的生検により病理学的診断可能であったのは3%と低い 35).生検にあたっては深部から多めに生検や,ボーリング生検を検討するべきである.

成人の腸重積に対する大腸内視鏡はメリットがある一方,デメリットとして消化管穿孔のリスクもある.腸管壊死,穿孔,腹膜炎のリスクがある場合は内視鏡的整復を試みずに緊急手術を考慮すべきである.大腸内視鏡施行時は,重積の部位,腸管の形態,内視鏡的整復の可否の評価のために,放射線による透視の評価が有用である.本症例も透視下において行った.

腸管内圧を上昇させると,消化管穿孔のリスクがあるため,腸閉塞に腸管洗浄剤は禁忌とされている 36).腸重積に対する大腸内視鏡の際は腸管洗浄剤内服なしで行うべきである.また,検査時に腸管内圧を上昇させないためにもCO2送気で行うことが望ましい 37).

成人腸重積症例に対して大腸内視鏡を行う意義は以下の3点であると考える.①重積先進部病変の質的診断,②粘膜虚血の評価ができ,外科手術の適応や術式,手術のタイミングを計る情報を得ることができる.③内視鏡的整復が可能な場合がある.しかし,内視鏡による穿孔のリスクもあるため,全身状態を把握し,腹膜刺激症状の有無,CT検査で穿孔,腸管虚血所見に注意したうえで経験豊富な内視鏡医が外科医のバックアップのもとで行うことが重要である.

Ⅳ 結  語

回盲部の腸重積に対して大腸内視鏡で整復を試みた1例を経験したので文献的考察を加えて報告した.内視鏡医は成人の腸重積に対する大腸内視鏡の有用性を認識しておく必要がある.

本論文要旨は第170回日本消化器内視鏡学会東北支部例会において発表した.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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