日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
Helicobacter pylori除菌治療後の内視鏡診療の役割と重要性
兒玉 雅明 水上 一弘村上 和成
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2024 年 66 巻 4 号 p. 373-384

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要旨

胃癌の原因はHelicobacter pyloriH. pylori)感染症であり,その除菌治療は胃癌発症を抑制することが多くのコホート研究,ランダム化比較試験,メタ解析から明らかになっている.しかし除菌後も完全には胃癌が抑制されず除菌後に発生する除菌後胃癌が問題となっている.除菌後胃癌は男性,高齢,萎縮および腸上皮化生高度,地図状発赤出現などが高リスク因子であり,表層を異型の乏しい組織,内視鏡的に胃炎様所見が覆うことから判別が難しくなる.また除菌後胃癌の多くは分化型だが未分化型は進行例が多く注意が必要である.除菌10年以降は萎縮軽度から中等度例で未分化型胃癌の発症率上昇が認められ,除菌後経過観察がないことがリスク因子となる.今後,胃粘膜のメチル化異常の程度や胃炎の京都分類第3版などを用いた除菌後胃癌の早期発見・治療への対策が必要である.

Abstract

Helicobacter pylori (H. pylori) infection is a major pathogen of gastric cancer, and many cohort studies, randomized controlled trials, and meta-analyses have shown that eradication therapy suppresses gastric cancer development. However, gastric cancer is not completely suppressed even after eradication, and post-eradication gastric cancer remains a problem. The risk factors for post-eradication gastric cancer include male sex, advanced age, high degree of atrophy and intestinal metaplasia, and the appearance of map-like erythema, which is difficult to identify due to the epithelium with low grade atypia and endoscopic gastritis-like findings on the surface. Most post-eradication gastric cancers are of the differentiated type, but undifferentiated gastric cancers are often advanced; thus, careful endoscopic surveillance is required. Ten years after eradication, the incidence of undifferentiated gastric cancer increases in patients with mild to moderate atrophy, and lack of follow-up after eradication is a risk factor of undifferentiated gastric cancer. Recent studies have shown that careful endoscopic follow-up with specific and magnifying endoscopy more than 10 years after eradication, the degree of abnormal gastric mucosal DNA methylation, the Kyoto Classification of Gastritis, and the other indicators may be useful for the early detection and treatment of gastric cancer after H. pylori eradication.

Ⅰ はじめに

胃癌はかつてわが国における臓器別癌死亡数で長く1位であり世界的にも胃癌の粗死亡数は現在も群を抜いて高い胃癌多発国である.近年は減少傾向にあるとはいえ罹患数,死亡数ともに依然3位と看過できない状況である 1

胃癌の主要因はHelicobacter pyloriH. pylori)感染症である 2)~4H. pylori除菌治療は胃癌発症を抑制する.しかし,完全ではなく3分の1から4分の1への減少効果といわれる 4),5.除菌成功後に発見された胃癌がいわゆる除菌後胃癌である.わが国では2013年にH. pylori陽性胃炎に対する除菌の保険適応拡大がされて以降,急速に除菌症例が増加した.それにつれ,発生する胃癌に占める除菌後胃癌割合の増加が問題となっている 6.本稿では,除菌後胃癌の課題,除菌後胃癌の早期発見・治療対策としての内視鏡診療について述べる.

Ⅱ 除菌による胃癌抑制効果

除菌が胃癌発症へ及ぼす影響については1997年Uemuraらによる内視鏡的早期癌治療後の除菌治療介入試験 7,また世界では2004年Wongらによる除菌介入のランダム化比較試験(Randomized controlled trial:RCT) 8が嚆矢といえる.その後多数のコホート研究,RCT,後方視研究が行われ,この中には除菌により胃癌が減少する報告,また非除菌例と有意差を認めない報告 8)~11など様々な意見が認められた.近年は,無症候例また非胃癌例からの初発胃癌および早期胃癌内視鏡切除後の異時性胃癌のいずれも除菌によって減少することはコンセンサスを得ているといえる.

Ⅲ わが国における代表的なコホート研究とRCT

Takeらは消化性潰瘍症例における除菌後胃癌を前向きコホートにて2005年より報告を継続している 12)~14.2015年には,平均9.9年(最長17.4年)の除菌後消化性潰瘍群1,222例の前向き観察にて除菌成功1,030例中21例,不成功192例中9例に除菌後胃癌を認めた 15.胃癌危険率は除菌成功群で年0.21%と,不成功群(年0.45%)に対し有意に低率であった(P=0.049).除菌成功[ハザード比(HR)0.42],年齢(HR0.55),胃粘膜萎縮軽度(HR0.21)が胃癌予防の有意な独立因子であった.胃癌発見まで最長期間は成功群で14.5年と,除菌10年以上経過しても注意すべきとしている.

FukaseらのRCTは,早期胃癌内視鏡的切除術後544例を無作為化し最終的に除菌群255例,非除菌群250例の解析である 5.除菌後3年の経過で除菌群9例,非除菌群24例の異時性胃癌を認め[オッズ比(OR)0.353(95%Confidence interval(CI):0.161-0.775,p=0.009],除菌による異時性胃癌の有意な抑制効果を示した.このエビデンスを元に当時,早期胃癌内視鏡切除後が保険の除菌適応に追加された.同年韓国のChoiらはほぼ同じデザインのRCTで除菌群と非除菌群に有意差を認めなかったが 11,2018年,同スタディの平均71.6カ月の長期経過観察は,除菌群18例(4.1%),非除菌群36例(8.2%)の異時性胃癌を認め有意に除菌群で低率[HR2.02(95%CI:1.14-3.56;P=0.02)]であった 16.このように多くのコホート研究およびRCTが除菌による胃癌罹患率の低下を示している.

Ⅳ 除菌介入によるメタ解析

国内外の多数の除菌介入によるコホート研究,RCTより,メタ解析も多数行われている 17)~22.初発胃癌では2014年Fordら 18,胃癌内視鏡切除後の異時性胃癌ではYoonらのものが初期のメタ解析でいずれも除菌による胃癌減少を示している 19

2016年,Leeらは最終的に24編(14編の一次胃癌,10編の内視鏡治療後の異時性胃癌)によるメタ解析を報告している 20.一次癌発生率は0.62[95% CI:0.49-0.79],異時性胃癌発生率は0.46(95%CI:0.35-0.60),全体で0.54(95%CI:0.46-0.65)であり,いずれも除菌によって胃癌発症減少を示している.

またこの中で,base lineの胃癌発生率が中,高度の場合,胃癌抑制は有意だが,胃癌発生率が低い場合,除菌は有益ではあるものの有意な胃癌抑制は認めないとしている.胃癌は世界各地域での発症頻度が異なり,H. pylori感染状況や胃癌発生率など各地域に合わせた胃癌対策が必要である.

Suganoは,対象基準の多様性から多くのサブグループ解析を用いたメタ解析を報告している 21.最終的に32編のRCTとコホート研究の解析から,除菌群では胃癌リスクが有意に低下(OR 0.46;95%CI:0.39-0.55)していた(Figure 1).国別のサブグループ解析では,日本,中国,韓国で有意なリスク低下を見たが,特に日本で除菌の高い有益性が認められた(OR 0.39;95%CI:0.31-0.49).また,除菌後追跡期間が5年未満(OR 0.55;95%CI:0.41-0.72)に比べ5年以上(OR 0.32;95%CI:0.24-0.43)で有意に胃癌減少効果が高かった(p=0.01).この結果より特に本邦における除菌の胃癌予防効果が高いと考えられ,背景の異なるこれまでのメタ解析で得られる結果以上にわが国の胃癌減少が考慮されるとしている.

Figure 1 

H. pylori除菌と除菌後胃癌発症に関するSystematic ReviewとMeta-analysis(文献21より改変).

Ⅴ 除菌後10年以上経過後の胃癌発症

2004年WongらによるRCTは,全体で除菌による有意な胃癌抑制は見られず,萎縮,腸上皮化生,dysplasiaがないサブグループでの胃癌抑制が報告された.その後,本研究は最長で26.5年間の観察が継続して行われ2022年に報告されている 23.その結果,除菌群は127例死亡(14例,胃癌死),プラセボ投与群は126例死亡(18例,胃癌死),また除菌群21人(2.57%),プラセボ群35人(4.31%)が胃癌と診断され,長期の経過観察により除菌群に有意な胃癌発生率低下を認めた(HR,0.57;95%CI:0.33-0.98)(Figure 2).しかし死亡をエンドポイントとした場合,感染持続群と除菌成功群の間に有意差を認めなかった.この結果から除菌は除菌時点のbaselineで萎縮,腸上皮化生,dysplasiaの前癌病変を認めない場合,胃癌を長期的に予防する可能性を示している.

Figure 2 

除菌群別胃癌のNelson-Aalen累積発生率曲線.

a:全参加者.

b:Baselineで前癌病変のない参加者.

胃癌発生率はaで43%,bで63%の減少を見る(文献23より改変).

除菌が普及してかなりの期間が経過し,近年は除菌後10年を越える長期経過の報告が相次ぎ,これらの報告を元にしたメタ解析がFordらにより行われている 24.これは,除菌後追跡期間が10年以上(10-26.5年)のRCT4編 23),25)~27に絞ったメタ解析であり,胃癌は除菌群2,660例中69例(2.6%),プラセボまた無治療群中2,632例中127例に認めた[Relative Risk(RR),0.54;95% CI:0.41-0.72](Figure 3).胃癌1病変を予防するための除菌人数,治療必要数(number needed to treat:NNT)は45(95% CI:35-74)であった.また,除菌群2,242例中47例(2.1%)が死亡,プラセボまた無治療群2,233例中71例が死亡(RR,0.66;95% CI:0.46-0.95),胃癌による死亡1人を予防するためのNNTは92.5(95% CI:58-629)であった.これより除菌は,健康なH. pylori陽性者において胃発癌,胃癌関連死の予防に有効であるとしている.本邦で消化性潰瘍に除菌が2000年に保険適用されて20年を越える.除菌後10年以上で胃癌抑制の有意な効果を示した結果は今後の治療方針に有用である.

Figure 3 

除菌後10年以上のRCT4編によるメタ解析.

a:胃癌発生.

b:胃癌による死亡.

いずれも除菌介入で有意な低下を認めている(文献24より改変).

Ⅵ 除菌後胃癌の内視鏡的特徴

除菌後胃癌の内視鏡的特徴としてH. pylori現感染時の胃癌よりも内視鏡的に同定が難しくなる点があげられる.拡大Narrow Band Imaging(M-NBI)(オリンパス,東京,日本)やBLI(Blue Laser Imaging)(富士フイルムメディカル,東京,日本)による特殊光観察で,H. pylori陽性胃癌では,微小血管構築像[MV(microvascular)pattern]や表面微細構造[MS(microsurface)pattern]の変化からDemarcation line(DL)が特徴づけられるが,除菌後早期分化型胃癌では,拡大NBI観察にて胃癌表面を非腫瘍性病変に類似した不整構造に乏しい胃炎様所見‘gastritis-like appearance’(胃炎様所見)が覆いDLが不明瞭になることがある(Figure 4 28),29.このため,内視鏡的に腫瘍が判別し難く注意を要す.

Figure 4 

H. pylori陽性胃癌と除菌後胃癌,内視鏡像.

80歳 男性,胃角~前庭部後壁 0-Ⅱa,H. pylori陽性胃癌(▲)(a).拡大NBIにてgastritis like appearanceは見られずDemarcation lineははっきりしている(b).

73歳 男性,体下部小彎 0-Ⅱc,除菌後10年(▲)(c).

拡大NBIにて表層は胃炎様所見が見られ,Demarcation lineが不明瞭となる部分が認められる(d).

胃炎様所見は,組織学的には腫瘍表層を覆う異型の乏しい上皮(Epithelium with low-grade atypia:ELA)からなる 30),31.ELAは癌由来か非癌由来かが不明であったが,2019年Masudaらは,ゲノム解析にて遺伝子変異が下層の癌部と同等であることを示し癌由来であると報告した 32.一方2022年Yamadaらは,ELAのKi67,p53,粘液形質といった免疫組織学的特徴が下方の癌組織と異なることから非癌由来の可能性を指摘している 33.このようにELAの発生機序にはまだ不明な点が含まれている.

Ⅶ 除菌後内視鏡フォローの注意点

除菌後の内視鏡フォローを行うにあたり,除菌後胃癌の高リスク因子を把握することが重要である.背景因子としては,男性 34,除菌時高齢 12),35),36),胃潰瘍症例 10),15,内視鏡的および組織学的高度萎縮 7),37),38,体部優位胃炎 38)~40,高度腸上皮化生 38),41)~43,地図状発赤出現 42,除菌前多発癌 34などがあげられる.

Moribataら 41は,早期胃癌内視鏡切除後122例の後方視観察で22例の異時性胃癌を認めた(平均観察期間3.9±2.2年).多変量解析では除菌後の地図状発赤出現が唯一異時性胃癌発症の予測因子としている(HR 3.61, 95% CI:1.41-9.21,P=0.007).

Shichijyoら 42は,コホート研究で胃癌既往のない573例を除菌後平均6.2±4.8年追跡し21例に胃癌を認めた.腸上皮化生がない群と比較した腸上皮化生高度群のHRは3.7(95% CI:1.1-12,P=0.03),内視鏡萎縮軽度(C0-C2)群と比較した萎縮高度(O2-O3)群のHRは9.35(95% CI:1.7-17.4,P=0.007)であった.

また,胃癌自体にも除菌後特有の特徴が認められる.前庭部に多い,腫瘍径が小,陥凹型,除菌により腫瘍が減高する,などがあげられる 15),30),38),43),44).またKi-67 index低値から除菌の腫瘍増殖抑制効果 31),43),44,腫瘍の粘液形質が腸型より胃型形質が多い 39),43),44,などが報告されている.

これらの結果より,特に除菌時における高度萎縮,腸上皮化生,除菌後に見られる地図状発赤は除菌後胃癌リスクが高く注意を要する.

Ⅷ 除菌後未分化型胃癌の特徴とリスク因子

胃炎様所見により同定が難しいとはいえ,除菌後の注意深い内視鏡観察で発見される胃癌の多くは分化型胃癌である.この多くは早期胃癌で内視鏡切除が可能であり予後が良い.一方,除菌後に発生する未分化型胃癌は進行例で発見されることが多く予後不良である.Mabeらは,後方視観察で発見された除菌後胃癌47例中で11例が進行癌であったが,そのほとんどがDiffuse typeもしくはintestinalとdiffuseの混合した腫瘍であったとしている 9.Songらは,胃癌の組織型で分化型と未分化型の混合型がより深い深達度を示すことを報告している 45

小さな胃型形質を持つ分化型胃癌は発育過程で未分化型へ転化する可能性 46,またCDH1にコードされるE-cadherinの機能喪失も関与するとされる 47

Ⅸ Takeらの10年を越えたコホート研究

Takeらによる2020年の報告では 48,除菌成功後2,737例(男性2,193例,平均年齢53.8歳)を平均7.1年(最長21.4年)追跡,68例(0.35%/年)の胃癌を認めた.胃癌発生までの期間は最長18.3年,内視鏡萎縮が高度ほど胃癌発生は高率であった.

全体では内視鏡萎縮が軽度0.15%/年に対し高度では0.67%/年と有意に胃癌発生率が高い.追跡期間前半10年と後半10年では,観察期間が長いほどDiffuse typeがintestinal typeより胃癌発症率が高くなることが指摘されている.また除菌10年以降において,除菌時の萎縮が軽度[標準化発生比(standardized incidence ratio:SIR)無限大]から中等度(SIR 10.9)におけるDiffuse typeのリスクが増加する(Figure 5).この結果より,Takeらは萎縮程度に関わらず除菌10年以上でも内視鏡フォローアップを継続すべきとしている.

Figure 5 

除菌後,次の10年間における組織型別胃癌リスク.

除菌10年以降では,Diffuse typeがintestinal typeより発症率が高くなってくる(a).特に軽度から中等度萎縮の症例においてDiffuse type胃癌のリスク増加が見られる(b-B,D).たとえ除菌20年を経過しても胃癌リスクがある(文献48より改変).

Ⅹ 除菌後未分化型胃癌のリスク因子

自験例では,除菌後胃癌のうち分化型99例113病変,未分化型16例16病変の臨床病理学的特徴の比較を行った 49.多重ロジスティック解析を用いた比較では,女性がOR 3.24(95% CI:1.02-10.37),フォローアップなしがOR 4.99(95% CI:1.60-15.57)と独立した危険因子としてあげられた(Table 1).特に除菌後長期間フォローアップがされていないと発生した腫瘍の進展過程で未分化型への転化,増殖につながる可能性が考慮される.これより,やはり除菌後長期経過した場合も内視鏡的フォローアップは必要といえる.

Table 1 

分化型および未分化型除菌後胃癌における臨床病理学的因子の差異(文献49より改変).

Ⅺ 内視鏡フォローアップの必要性

それでは,どの程度内視鏡フォローアップが必要か.

欧州消化器病学会,欧州ヘリコバクター学会等による胃の前癌病変に関するガイドラインManagement of precancerous conditions and lesions in the stomach(MAPS)があり 50,2019年MAPSⅡにアップデートされた 51.高精細内視鏡,前庭部体部からの生検組織による萎縮,腸上皮化生,OLGA,OLGIM,家族歴などによりリスクがわけられそれぞれにおいてフォローアップ間隔も示されている.胃癌罹患率や検査手法などは高精細内視鏡観察に加え生検による萎縮,腸上皮化生評価が基本となること,また組織分類など本邦とは異なり,治療方針や検査間隔も本邦とは差がある.しかし,これには胃癌罹患率が大きく異なるなど背景の差がある.萎縮,腸上皮化生が最も胃癌リスクとされる点などには大きな違いはない.

日本ヘリコバクター学会によるH. pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版 52では,胃癌予防の提言において若年層ほど胃癌予防効果が高いこと,しかし,除菌は70歳以上でも胃癌予防に有効であることを示している.

韓国ではH. pylori除菌による一次予防よりも内視鏡検診による二次予防に重点が置かれている.Junらは,韓国における年代別,内視鏡スクリーニングの回数と胃癌死亡率との関連を報告しているが,いずれの年代においても内視鏡1回のみより,2回,それよりも3回以上の施行が,胃癌死亡率を有意に下げている 53

Jungらは韓国の国民健康保険庁のデータベースを用いた大規模コホート研究により,胃癌家族歴有無に関わらず除菌年齢が早いほど胃癌リスクは低減することを示している(Figure 6 54

Figure 6 

除菌時年齢別の胃癌リスク(文献54より改変).

Sakitaniらは,除菌後胃癌の全死因死亡率および胃癌特異的死亡率を追跡し,除菌不成功例との死亡率と比較した結果,胃癌死亡率もその他原因による死亡率も除菌成功群で有意に低値であった 55.また多変量解析にて胃癌stageⅠとは胃癌診断前2年以内に内視鏡を受けていることがOR 12.2,(95% CI:1.25-119.9)と最も高いORを示していた(Table 2).これより除菌後の定期的内視鏡サーベイランスによる胃癌早期発見が,胃癌患者の予後改善に寄与するとしている.

Table 2 

多変量解析を用いた胃癌stageⅠに関連する因子(文献55より改変).

このように胃癌予防のための早期除菌治療,また胃癌早期発見には高リスク因子を踏まえた内視鏡フォローアップは欠かせないといえる.

Ⅻ DNAメチル化異常による胃癌リスク評価

胃発癌にはゲノム異常よりもメチル化などのエピゲノム異常が関与しているとされる 56.Maedaらは,早期胃癌内視鏡切除後,除菌治療を行い非癌部胃粘膜のメチル化異常の程度を測定した結果,例としてmiR-124a-3のメチル化が強いほど胃癌再発率が高いことが示された 57.現在は,星薬科大学学長 牛島俊和が代表を務めるAMED研究「高精度エピゲノム胃がんリスク診断の確立と多層的食道がんリスク診断の開発」が進行しており,エピゲノム異常を新たなバイオマーカーとした胃癌の早期診断手法の開発が進められている.

ⅩⅢ 新しい京都胃炎分類と除菌後の内視鏡フォローアップ

胃炎の京都分類は,H. pylori感染状況と胃癌リスク評価を目的として作られた.英語版,中国語版がありわが国のみでなく海外でも汎用されている.2023年,新たに第3版が発行された 58.第3版の特徴としては,これまで内視鏡所見の解説主体であったが,新しく内視鏡所見に伴う組織学的所見についても詳細な解説が加えられている点である.また,内視鏡所見としてはスクラッチサイン,フジツボ様所見などが新たに加えられ,H. pylori感染状況に伴う各所見の有無,局在などもより精度が高い記載となっている(Table 3).更に胃癌リスクの内視鏡所見スコアも改訂されている.また今回は,H. pylori感染以外の粘膜所見も記載されており,自己免疫性胃炎からサイトメガロウイルス胃炎などH. pylori感染のみならず胃粘膜疾患全体を網羅する形式となっており,除菌後胃粘膜フォローアップには非常に有用である.

Table 3 

胃炎の京都分類 第3版(H. pylori感染に関わる粘膜所見)(文献58より改変).

ⅩⅣ おわりに

おもに除菌後胃癌対策を中心とした除菌治療後の内視鏡診療について述べた.若年層ではわずか数パーセントとなりつつあるH. pylori感染だが,高齢者では依然高い感染率,また感染既往が認められる.除菌後胃癌以外でも逆流性食道炎,自己免疫性胃炎,機能性胃炎など多くの問題が含まれる.更に世界的には感染率が高い地域も多く,H. pylori除菌後の内視鏡診療と解決すべき問題の重要性は高い.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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