日本消化器内視鏡学会雑誌
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手技の解説
逆流防止弁付胆管ステントの挿入およびre-interventionにおける工夫
金 俊文 高橋 邦幸潟沼 朗生
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2024 年 66 巻 4 号 p. 436-443

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要旨

金属ステントを用いた胆道ドレナージの問題には十二指腸内容物の逆流によるステント機能不全があり,その対策として逆流防止弁(anti-reflux valve,ARV)付き金属ステント(anti-reflux metal stent,ARMS)が開発された.現在までに数多くのARMSが報告されているが,一般的な金属ステントに対する優位性は十分に示されておらず,今後も更なる研究・開発が必須である.ARMSの留置法は通常の金属ステントと大きく変わらないが,ARMSの展開時にARVを確実に十二指腸内に露出させるためステントの金属部分が乳頭を横断するように留置することが重要である.ARMS閉塞時も通常の金属ステントと同様にステント交換を試行するが,抜去に難渋する場合にはstent-in-stent法によるステントの追加留置や,経消化管・経皮的アプローチなど他のドレナージ法による対処を考慮する.

Abstract

A concern of using metal stents to address biliary drainage is stent dysfunction induced by duodenal reflux; therefore, anti-reflux metal stent (ARMS) with anti-reflux valve (ARV) have been developed to solve this problem. Although various ARMS have been reported till date, the superiority over conventional metal stents have not been fully demonstrated. Therefore, further development for ARMS is indispensable. Biliary stenting using an ARMS is almost similar to that using the conventional metal stent; however, the metal part of the ARMS should be placed across the papilla to ensure the exposure of ARV in the duodenum. An ARMS needs to be exchanged when stent dysfunction occurs, as with the conventional metal stent. For cases with difficulties in ARMS extraction, additional stent placement utilizing a stent-in-stent technique or other biliary interventions, such as percutaneous drainage or transluminal drainage using endoscopic ultrasound, should be considered.

Ⅰ はじめに

内視鏡的逆行性膵管胆管造影(ERCP)関連手技による経乳頭的胆道ドレナージは,胆汁うっ滞に起因する閉塞性黄疸や胆管炎に対する第一選択治療として広く普及している 1),2.胆道ドレナージに使用するステントにはプラスチックステントと金属ステントの2種類があり,留置部位やドレナージの目的によって使用ステントを考慮するが,遠位悪性胆管狭窄においては開存期間の面から金属ステントを用いることが多い 3)~5.特に,近年の術前化学療法の発展に伴い切除企図例においてもドレナージから外科切除までの期間が延長している傾向があり,金属ステントの使用頻度は従来よりも増加傾向にある 6

ステントを用いた胆道ドレナージに関する問題にステント機能不全(Recurrent biliary obstruction,RBO)がある 7.特に,金属ステントは口径が大きくドレナージ効率が高い一方で,食物残渣など十二指腸内の内容物がステント内に逆流しやすく 8),9,数カ月程度で閉塞することもある.このような逆流によるステント閉塞を防止すべく,逆流防止弁(anti-reflux valve,ARV)付き金属ステント(anti-reflux metal stent,ARMS)が開発された 10)~23

本稿では,ARMSを用いた胆道ドレナージの成績,およびARMS留置あるいは閉塞時の抜去手技に関して概説する.

Ⅱ ARMSを用いた胆道ドレナージの成績

ARMSを用いた胆道ドレナージの成績についてTable 1に示す.今日までに様々な形状のARVが報告されており,十分な開存期間が得られなかったステントや従来の金属ステントとの比較試験を通じて開存期間が延長を示した報告も見られる.Huらは,nipple型のARVを有するARMSを提案し,RBO発生までの期間(Time to RBO,TRBO)中央値が13カ月であったこと,アンカバー型SEMSよりTRBOが長かったことを報告している 10),14.Leeらは,S型のARVを有するARMSを使用し,中央値14.4カ月のTRBOを報告している 11.Leeらは,Windsock型と呼称される長くて柔らかいARVを考案し,カバー型SEMSとのRCTにおいてARMSの方がTRBOが長かったことから,本ARMSが腸液の胆管内逆流予防に有効であることを証明した 16

Table 1 

逆流防止弁付き金属ステントの手技的成功,機能的奏効,再発性胆道閉塞までの期間に関する報告.

一方,ARMSに関する否定的な報告も認めている.Kimらは,ワイングラス型のARVを有するARMSを開発したが,開存期間が短くステント検証試験を中断することとなった 12.本邦においても,HamadaらやMoritaらがFunnel型ARVを有するARMSの実臨床における有用性を報告しているが 13),15),17),18,従来のSEMSとのRCTにおいてARMSの優越性を示すことはできなかった 19

近年,Duckbill型ARVを有するARMSが新たに開発され,胆道ドレナージにおいて有用とする報告が散見される 20)~22.本ARMSは経乳頭的アプローチ以外でも活用されており,超音波内視鏡ガイド下経消化管的胆道ドレナージでの使用経験に関する報告も認めている 23),24.しかし,Takedaらが実施した切除不能膵癌に対する経乳頭的胆道ドレナージに関する後方視的比較研究では,カバー型SEMSに対する本ARMSの優越性は証明されなかった 25

これらの結果から,ARMSを用いた胆道ドレナージの治療成績は現時点では満足のいくものではなく,一般的なSEMSに対する優位性が十分に示されていないこともあって,実臨床の場における普及は限定的と言わざるを得ない.実際,現時点で本邦に流通しているARMSは,SBカワスミ株式会社製の川澄ダックビルIT胆管ステントとEGIS Biliaryステントフレアバルブ型の2種類に限られている(Figure 1).将来的なARMSの普及においてステント機能不全の更なる防止は解決すべき課題の1つであり,現在ARVの形状を含め様々な研究・開発が進んでいる.また,ステントの遠位端をすぼめることにより腸管内容物の逆流軽減を期待するステントも開発されており 26,ARV以外で機能不全を防止するステントの開発も期待される.

Figure 1 

現在本邦に流通している逆流防止弁付き金属ステント.

a:川澄ダックビルIT胆管ステント(SBカワスミ株式会社).

b:EGIS Biliaryステント フレアバルブ型(SBカワスミ株式会社).

Ⅲ ARMSの留置法

ARMSの挿入に関しては,通常の金属ステントを胆管に留置する方法と大きく変わらない(Figure 2).一般的な十二指腸鏡を使用し,治療前の前処置として鎮静剤(ミダゾラム,ジアゼパム,プロポフォール)および鎮痛剤(ペチジン塩酸塩,ペンタゾシン)を使用する 27.使用するARMSのステント長に関しては,狭窄を完全に被覆しつつ胆管分枝にかからない長さを選択する必要がある.従って,ステント挿入前に胆管造影や磁気共鳴胆管膵管撮影(MRCP:Magnetic Resonance Cholangiopancreatgraphy)にて狭窄部位や狭窄長,左右胆管分岐の位置,胆管分岐異常の有無(右後区域枝の肝外胆管分岐など)を確認することが重要である.また,膵癌など偏移の強い狭窄の場合に短いステントを使用すると,ステントのaxial forceにより上流の胆管が引きつれてkinkingをきたすことがある 28.そのため,ステント長の選択肢が複数ある場合には長めのステントを選んだ方が良い.

Figure 2 

逆流防止弁付き金属ステントを用いて胆道ドレナージを施行した1例.

a:X線透視.遠位胆管に圧排性の胆管狭窄を認める(白矢印).

b:内視鏡.十二指腸鏡下に内視鏡的乳頭切開術を施行.

c:X線透視,d:内視鏡.本例では80mmの逆流防止弁付き金属ステントを使用した.留置前に同ステントが胆管分枝を被覆しないことを確認し,ステント下端を示すマーカー(白矢印)を内視鏡下に視認しながら展開した.

e:X線透視,f:内視鏡.ステント留置後.ステント拡張は良好であり,逆流防止弁も十二指腸内に留置されている.

ARMS挿入前の乳頭処置に関しては,ステントのスムーズな挿入および金属ステントの膵管口圧排に起因する膵炎予防という観点から,原則として内視鏡的乳頭括約筋切開術(Endoscopic Sphincterotomy,ES)を施行する.ただし,ESでは膵炎を完全に予防することが困難との報告もあり 29,膵炎合併のリスクが高い症例などでは膵管ステント留置を考慮する必要がある 30.同様に,金属ステントの胆囊管閉塞に伴う胆囊炎も少なくないため 31,可能であれば胆囊ステント留置も試行する 32

実際のステント留置に際しては,ARVを確実に十二指腸内に露出させるというARMS固有の注意点がある.そのためには,ステントの金属部分が乳頭を横断する必要があり,ステント展開時に金属部分の下端位置を意識することがポイントとなる.多くの場合は,ARVやシースの色調変化などを捉えることにより下端位置を把握することが可能であるが,ステント下端を鏡視下で確認しづらいこともあり,そのような場合には透視下にステント下端を確認する必要がある.また,ステント展開後にARVが十二指腸内に十分に露出していない場合は,生検鉗子などを用いてステントを十二指腸側に引き出す必要がある.しかし,ARVを把持してステントの位置調整を行うと破損の原因となるため,金属ステントを確実に把持するよう注意が必要である.

Ⅳ ARMS閉塞時の対応

ARMS閉塞時にはステント交換,即ち,閉塞したステントを抜去し新たなステントを再挿入することにより対処することが望ましい.実際のステント抜去に際しては,一般的な金属ステント抜去と同様にスネア鉗子や抜去用鉗子,生検鉗子を用いてステントの遠位端を把持し,内視鏡操作により胆管軸に沿ってステントを引き抜く(Figure 3).ただし,ARVを把持して抜去を試みるとARVの破損をきたし抜去困難となるため,金属ステント部分を確実に把持することが重要である.

Figure 3 

逆流防止弁付き金属ステントを抜去した1例.

a:X線透視,b:内視鏡.ステント機能不全により内視鏡処置を施行.逆流防止弁付き金属ステントの破損を認める(白矢印).

c:内視鏡.ディスポーザブル回転把持鉗子(オリンパス)で金属部分を把持し,金属ステントを抜去した.

d:X線透視,e:内視鏡.ステントの遺残なく抜去することが可能であった.抜去後の内視鏡観察にてoozingを認めるものの自然止血が得られた.

f:X線透視,g:内視鏡.本例では12mm径のカバー型金属ステント(SUPREMO12,センチュリーメディカル)を再留置した.

注意すべきポイントとして,Duckbill型ARMSなどlaser-cut構造の場合には引き抜き時にステントの破損・断裂をきたし,抜去困難となることがある(Figure 4).過去の報告では,Duckbill型ARMSの抜去困難を約30%に認めており,主な原因としてtumor ingrowth,ステント断裂,十二指腸狭窄が挙げられていた 20),33.従って,力ずくの抜去操作は避け,愛護的操作に努めることが重要である.抜去に難渋する場合には,stent-in-stent法によるステントの追加留置や 34,経消化管・経皮的アプローチなど他のドレナージ法による対処が望ましいと考える.

Figure 4 

逆流防止弁付き金属ステントの抜去が困難であった1例.

a:X線透視,b:内視鏡.胆泥貯留によるステント機能不全を認める.

c:X線透視,d:内視鏡.ディスポーザブル回転把持鉗子(オリンパス)で金属部分を把持し,金属ステントの抜去を試行した.

e:X内視鏡.ステントの十二指腸露出部が断裂した.処置の継続も検討したが,ステントの更なる破損により胆管へのアプローチが困難となることを懸念して抜去困難と判断した.

f:X線透視,g:内視鏡.遺残したステント内腔から胆管内にアプローチし,胆管造影およびガイドワイヤ留置を行った.

h:X線透視,i:内視鏡.本例では10mmの金属ステント(Wallflex,ボストンサイエンティフィック)をstent-in-stent法により留置した.

Ⅴ おわりに

ARMSを用いた胆道ドレナージおよび閉塞時の対応につき概説した.ARMSは未だ発展途上の金属ステントであるが,腸液逆流によるステント機能不全を予防しうることから従来より注目を集めている.ARMSの扱いに関しては一般的な金属ステントと大きく異なる点は少ないが,ARVの扱いなどARMS固有の注意点は少なからず存在する.このような点に留意しながら,今後もARMSを積極的に活用することが望まれる.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:潟沼朗生(オリンパス)

文 献
 
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