日本消化器内視鏡学会雑誌
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急性胆管炎を有する術後再建腸管症例における内視鏡的逆行性膵胆管造影法関連手技は有効かつ安全に施行できるのか?―ショートタイプシングルバルーン内視鏡下内視鏡的逆行性膵胆管造影法の開始時期における成績の比較
谷坂 優樹 水出 雅文藤田 曜地主 龍平塩味 里恵申 貴広平田 大寺田 里絵田島 知明真下 由美良沢 昭銘
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電子付録

2024 年 66 巻 4 号 p. 444-453

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要旨

【背景・目的】急性胆管炎を有する術後再建腸管(surgically altered anatomy:SAA)症例に対するショートタイプシングルバルーン内視鏡(short-type single- balloon enteroscopy:short SBE)下ERCPの成績について評価した.

【方法】2011年9月から2022年4月までの期間の成績を解析した.治療開始を24時間以内と以降に分けて比較した.主要評価項目を入院期間(length of stay:LOS)とした.

【結果】56例に24時間以内,58例は24時間以降に治療を行った.手技成功率と偶発症は87.7%と4.4%であった.Grade Ⅲの急性胆管炎と全身性炎症反応症候群症例により24時間以内に治療を行った.LOSと退院までの日数は早期治療介入群において有意に短かった.多変量解析では,24時間以内の治療がLOSの短縮に影響していた.重症胆管炎と悪性胆道狭窄症例はLOSの延長に影響していた.

【結論】急性胆管炎を有するSAA症例に対するshort SBE下ERCPは有効かつ安全に施行できた.早期治療介入は早期に全身状態を改善し,LOS短縮に寄与すると考えられた.

Abstract

Objectives: Balloon enteroscopy (BE)-assisted endoscopic retrograde cholangiopancreatography (ERCP)-related procedures to resolve acute cholangitis (AC) in patients with surgically altered anatomy (SAA) are limited. There is a lack of evidence on whether the timing of BE-assisted ERCP affects clinical outcomes in patients with AC. This study aimed to evaluate the clinical outcomes of short-type single-balloon enteroscopy (short SBE)- assisted ERCP in patients with SAA and AC.

Methods: Patients with AC who underwent short SBE-assisted ERCP procedures between September 2011 and April 2022 were retrospectively reviewed. The outcomes of procedures undergone at ≤24 h and >24 h were compared. The primary outcome was the length of stay (LOS).

Results: Overall, 56 patients underwent procedures at ≤24 h, and 58 patients at >24 h. The procedural success and adverse event rates of short SBE-assisted ERCP were 87.7% (95% confidence interval [CI] 80.3-93.1%) and 4.4% (95% CI 1.4- 9.9%), respectively. Patients with severe (Grade Ⅲ) AC and systemic inflammatory response syndrome were more in early (at ≤24 h) ERCP groups. LOS and median time from ERCP procedures to discharge were shorter in the early group. Procedural success and adverse event rates between both groups had no significant differences. Multivariable linear regression analysis showed that ERCP performed at ≤24 h was associated with shorter LOS, while severe cholangitis and malignant biliary obstruction were associated with longer LOS.

Conclusions: Short SBE-assisted ERCP is effective and safe in patients with SAA and AC. Early procedures seemed to attribute early improvement of general condition, thus shortening the LOS.

Ⅰ 緒  言

急性胆管炎は胆管に細菌感染を惹起し,敗血症や臓器不全を引き起こす.重症急性胆管炎や治療介入の遅れは高い死亡率へと繋がってくる 1)~3.内視鏡的胆道ステント留置術(endoscopic biliary drainage:EBD)を含む内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)関連手技が急性胆管炎症例に対する第1選択として推奨されている 4)~6.Tokyo Guidelines 2018(TG18)においてもEBDの有用性につき言及されている 7.さらには,ERCP関連手技介入のタイミングについても様々な報告がなされている 8)~11.いくつかの報告では,急性胆管炎症例に対して24-48時間以内の早期ERCP治療介入が入院期間(length of stay:LOS)の短縮に関連しているとしている 9),11.TG18においても24時間以内の緊急EBDを推奨している 7

術後再建腸管(surgically altered anatomy:SAA)症例に対するERCP関連手技はスコープ挿入ならびにその後の処置ともに困難である.2001年 12にバルーン内視鏡(balloon enteroscopy:BE)が導入されて以降,シングルバルーン内視鏡(single- balloon enteroscopy:SBE)とダブルバルーン内視鏡(double- balloon enteroscopy:DBE)は,SAA症例に対する有用性が報告されている 13)~19.また,有効長152cm,内視鏡鉗子口径3.2mmのショートタイプシングルバルーン内視鏡(short-type single- balloon enteroscopy:short SBE)も有用であると報告されている 13)~15

急性胆管炎を有するSAA症例に対するBE下ERCPの成績はこれまであまり報告がないため,その有効性や安全性についてはあまり知られていない.BE下ERCPは困難かつ時間もかかり得るため,胆管炎症例に対して安全に施行できるかどうかの評価は重要である.さらには,BE下ERCPの治療介入のタイミングを見出すことは有益であると考える.以上より,本研究では,急性胆管炎を有するSAA症例に対するshort SBE下ERCPの成績について評価した.

Ⅱ 対象と方法

倫理規定

本研究は,埼玉医科大学国際医療センター倫理委員会で承認を得ている研究である(承認番号:2021-203).すべての患者は本手技施行にあたっては,文書での同意を得ている.

研究デザインと患者について

本研究は後方視的研究である.2011年9月から2022年4月までの期間に施行した急性胆管炎を有するSAA症例に対するshort SBE下ERCP関連手技のデータを抽出した.SAAには,胃切除術後Roux-en-Y再建(Roux-en-Y gastrectomy),Roux-en-Y再建を伴う胆管空腸吻合術後(hepaticojejunostomy with Roux-en-Y),膵頭十二指腸切除術後(Child変法)(pancreaticoduodenectomy),胃切除術後ビルロートⅡ法再建(Billroth Ⅱ gastrectomy)が含まれていた.入院時における急性胆管炎確診例,疑診例を対象とした.急性胆管炎の診断は以下に記すTG18の診断基準に従った 7;(A)全身の炎症所見(発熱(悪寒戦慄を伴うこともある)/血液検査:炎症反応所見),(B)胆汁うっ滞所見(黄疸/血液検査:肝機能検査異常),(C)胆管病変の画像所見(胆管拡張/胆管炎の成因:胆管狭窄,胆管結石,ステント,など).Aのいずれか+BもしくはCのいずれかが当てはまれば“疑診”,Aのいずれか+Bのいずれか+Cのいずれかが当てはまれば“確診”とした.急性胆管炎における重症度の軽症(Grade Ⅰ)から重症(Grade Ⅲ)の定義もTG18の診断基準に従った(Table S1電子付録)) 7.胆管炎による初回入院かつ,ERCPを施行した症例のみ解析した.

Short SBE下ERCP関連手技施行と退院決定のタイミング

われわれの施設におけるShort SBE下ERCP関連手技施行時期について適用した戦略を以下に記す:重症急性胆管炎症例では,胆管炎からの回復,多臓器不全を防ぐため,診断後ただちに内視鏡治療を行った.一方で,軽症もしくは中等症急性胆管炎症例に対しては,抗菌薬投与を第一選択とした.もし午前中に入院した場合には同日中に内視鏡治療を行い,午後に入院した場合には翌日に行った.週末に入院した場合には週明けに内視鏡治療を行った.患者個人で状況が異なるため,この戦略通りにすべて行ったわけではないが,本戦略は患者の全身状態が不良でない場合には,熟練した内視鏡医,看護師がいる環境で治療を行う方が良いと考えてのことである.

内視鏡治療後に症状(発熱,腹痛等)や血液検査データ(白血球数やCRP値,総ビリルビン値等)の改善を認めた場合,食事を再開とした.その後も悪化を認めず,家で過ごせると判断できるほどに全身状態が改善した場合に退院とした(最短で食事再開後2-3日後).

Short SBEを用いた内視鏡手技の実際

SIF-Y0004[試作品]とSIF-H290S 20[2016年以降;Figure S1電子付録)];Olympus Medical Systems,Tokyo,Japanの2種のスコープを使用した.両方とも有効長152cm,鉗子口径3.2mmであった.処置はミダゾラムとペチジンを使用した鎮静下で行われた.全症例,CO2送気で行い,先端アタッチメントキャップ(D-201-10704;Olympus Medical Systems)を装着して手技を施行した.

患者を伏臥位にして手技を行った.スコープ挿入困難時には腹部圧迫を駆使した.目的部位に到達したのちは,胆管挿管を行った.重症胆管炎症例には,さらなる胆管炎の悪化を防ぐため,胆管造影は最小限とした.基本的には胆管挿管の後にはEBDを行ったが,患者の全身状態が良好な軽症,中等症急性胆管炎かつ,結石が容易に除去できると予測された場合には,結石除去まで行った.

手技が不成功であった場合には,後日ERCP再検,経皮的経肝胆管ドレナージ(percutaneous transhepatic biliary drainage:PTBD),超音波内視鏡ガイド下胆管ドレナージ(endoscopic ultrasound-guided biliary drainage:EUS-BD),抗菌薬投与による保存的加療のいずれかを選択した.

評価項目の定義

急性胆管炎を有するSAA症例におけるShort SBE下ERCPの手技的ならびに臨床的な治療成績を24時間以内に行った群(≤24 h)と,それ以降に行った群(>24 h)に分けて比較した.Short SBE下ERCP開始までの時間は,患者が病院に到着してからShort SBE下ERCPを開始するまでの時間とした.主要評価項目はLOSとし,急性胆管炎加療のための入院期間(日)と定義した.さらに,目的部位到達成功率,胆管挿管成功率,治療手技成功率,目的部位到達時間,総処置時間,偶発症,ERCP施行から退院までの時間,入院中の死亡,臓器不全を解析した.目的部位到達成功は,目的部位(乳頭もしくは胆管空腸吻合部)へスコープが到達できること,胆管挿管成功は,胆管内にカテーテルの挿管が可能であること,治療手技成功は,スコープ挿入から意図する手技(ステント留置等)まで完遂できることとした.目的部位到達時間は,スコープ挿入開始から目的部位到達までの時間とした.総処置時間はスコープ挿入開始から抜去までの時間とした.偶発症は,米国内視鏡学会の重症度分類に従って評価した 21.臓器不全は,腎・呼吸器,もしくは循環器の不全を認めたものとした.

統計解析

≤24 hと>24 hの2群における患者背景と治療成績を単変量解析で比較した.2値変数は,Pearsonʼs X2 testを用いて比較した.連続変数は,Mann-Whitney U testを用いて比較した.単変量解析でP値<0.20であった項目に関しては,LOSに影響を与える因子を評価するため,多変量解析を行った.さらには,胆囊炎・膵炎,もしくは肝膿瘍を合併している場合にはLOSの延長に影響を及ぼすと考えたため,それらも多変量解析の項目に含めた.P値<0.05であった場合を統計学的有意差ありとした.統計解析には,STATA version 17(StataCorp,College Station,TX,USA)を用いた.

Ⅲ 結  果

患者

本研究期間では,総計114例の急性胆管炎に対してShort SBE下ERCPを施行した.うち56例が≤24 hに,58例が>24 hに手技が行われた.急性胆管炎を有するSAA症例に対するshort SBE下ERCPの患者背景をTable 1に示す.胆管炎の重症度ならびに全身性炎症反応症候群症例(systemic inflammatory response syndrome:SIRS) 22の内訳は両群に統計学的有意差を認めた(P=0.02,0.001).早期治療介入群において重症急性胆管炎(Grade Ⅲ),SIRSが多かった.重症胆管炎症例全例において24時間以内にShort SBE下ERCPが行われた.入院してからERCP手技開始までの時間中央値は≤24 h,>24 hそれぞれにおいて18時間,35時間であった(P<0.001).初めてERCPを行った患者は80.7%であり,胆管炎以外の理由で過去にERCPを行ったことがある患者は19.3%であった.悪性胆道狭窄症例は33例(28.9%)であった.

Table 1 

患者背景.

Short SBE下ERCPにおける手技的ならびに臨床的な治療成績

Figure 1に手技のフローチャートを示し,Table 2には,Short SBE下ERCPの治療成績を示す.全症例,早期(≤24 h),晩期(>24 h)に施行したShort SBE下ERCPの治療手技成功率はそれぞれ,87.7%(95%信頼区間(confidence interval: CI)80.3-93.1%),91.1%(95% CI 80.4-97.0%),84.5%(95% CI 72.6-92.7%)であった.2群間において有意差は認めなかった(P=0.28).良性疾患であった81例のうち52例においてEBD(plastic stent留置)が行われた.残りの29例は,軽症もしくは中等症の胆管炎かつ全身状態が良好であったため,結石除去(うち,内視鏡的乳頭切開術[2例],内視鏡的乳頭拡張術[3例],内視鏡的乳頭大口径バルーン拡張術(バルーン径>10mm)[11例],胆管空腸吻合部拡張術[9例])が行われた.早期(≤24 h)治療介入群の9例において結石除去が行われた.一方で,悪性胆道狭窄33例においては,plastic stent留置(18例),経鼻胆管ドレナージ(2例),金属ステント留置(3例)が行われた.4例で胆管生検を行った.重症胆管炎6例全例と,24例の軽症もしくは中等症の胆管炎に対しては,全身状態不良につき胆管挿管直後にEBDのみ行い手技終了とした(Figure 2).

Figure 1 

急性胆管炎を有する術後再建腸管症例に対するショートタイプシングルバルーン内視鏡下ERCP手技のフローチャート.

EUS-BD,endoscopic ultrasound-guided biliary drainage;PTBD,percutaneous transhepatic biliary drainage.

Table 2 

Short SBE下ERCPの治療成績.

Figure 2 

重症胆管炎の1例.

a,b:胆管挿管に成功している.胆管造影では胆管結石を認める(矢印).

c,d:胆管挿管直後に内視鏡的胆道ステント留置術(endoscopic biliary drainage:EBD)を行った.

全症例,早期(≤24 h),晩期(>24 h)に施行したERCPの偶発症率はそれぞれ,4.4%(95% CI 1.4-9.9%),1.8%(95% CI 0.05-9.6%),6.9% (95% CI 1.9-16.7%)であった.2群間で有意差は認めなかった(P=0.18).全症例,保存的加療で軽快した.腸管穿孔をきたした症例は,クリッピングを行い粘膜縫縮した.

Table 3に臨床的治療成績を示す.LOSは≤24 hにShort SBE下ERCPを施行した群において有意に短かった(≤24 h,中央値7日;四分位範囲(interquartile range:IQR)9-15日)(>24 h,中央値10.5日;IQR 8-16日)(P<0.001).さらには,ERCP施行から退院までの時間も≤24 hにShort SBE下ERCPを施行した群において有意に短かった(≤24 h,中央値7日;IQR 5-11.25日)(>24 h,中央値10.5日;IQR 8-16日)(P=0.04).2例が胆道ドレナージ後に死亡した.2例とも悪性胆道狭窄による軽症胆管炎であり,入院してからERCP処置施行までの時間はそれぞれ31,32時間であった.手技はスムーズに施行され,胆管ドレナージ後には急性胆管炎は治癒した.しかしながら,癌終末期であったため,自宅退院できるほどの全身状態にまでは回復しなかった.最終的に癌によって入院中に死亡となった.

Table 3 

臨床的治療成績(n=114).

LOSに影響を及ぼす因子の解析

LOSに影響を及ぼす因子についての多変量解析の結果をTable 4に示す.≤24 hにShort SBE下ERCPを行うことが,LOSの短縮に影響しており(偏回帰係数-3.51),一方,重症胆管炎と悪性胆道狭窄症例はLOSの延長に影響していた(偏回帰係数5.60,1.95).

Table 4 

入院期間に影響を及ぼす因子についての多変量解析.

Ⅳ 考  察

今回,急性胆管炎を有するSAA症例に対するShort SBE下ERCPを施行した114例の成績を解析した.本研究は,BE下処置を行った急性胆管炎を有するSAA症例に焦点を当てた最初の報告であると考える.

本研究では,治療成功率・偶発症率はそれぞれ87.7%と4.4%であり,既報の研究と同様の結果であった 13),15.本研究におけるBE下ERCPを解析する目的としては,胆道ドレナージの効果についてであったが,軽症・中等症の急性胆管炎に対しては,症例に応じて結石除去まで行った.安全に胆管結石除去が行われた場合,胆道ドレナージを行ったことと同義であると考える.幸い,偶発症を生じた患者の全例において保存的加療のみで軽快に至った.以上より,急性胆管炎症例であっても,Short SBE下ERCPは有効かつ安全に施行できたと言える.Figure 2に示すとおり,重症胆管炎6例全例に対しては,≤24 hにShort SBE下ERCPを施行し,胆管挿管直後にEBDのみ行い手技終了とした.うち2例は呼吸状態が悪く,人工呼吸器管理下にERCPを行ったが,幸い30分以内に手技を完遂し,その後治癒に至った.しかしながら,今回重症胆管炎6例全例に早期のBE下ERCPが有効であったが,このような症例に対して早期のBE下ERCPが推奨されるかどうかを結論づけるには症例数が少なすぎると言える.BE下ERCPは手技完遂までに時間を要し得るため,PTBDを先に行い,後日BE下ERCPを行うという戦略も良いと考えられる.依然,早期,晩期BE下ERCPのどちらが適切かどうかは議論の余地があるため,さらなる症例の蓄積が必要である.

既存の報告で24時間以内もしくは48時間以内の早期ERCPを行うことが,通常解剖症例においてLOSの短縮に影響する 9),11とされているため,本研究ではLOSを主要評価項目に設定した.Short SBE下ERCPにおいても通常解剖と同様の結果であるかどうかを評価するのは興味深いと考えた.≤24 hにShort SBE下ERCPを施行した症例は,>24 hと比べ,LOSとERCP施行から退院までの時間が有意に短かった.早期のShort SBE下ERCP手技は全身状態の早期改善を促すと思われ,LOSの短縮に寄与していると考えられた.胆道ドレナージが,cholangiovenous refluxを低減し,胆汁・血清のエンドトキシンレベルを低下させるとの報告もある 23

またわれわれは,Short SBE下ERCP関連手技を行うタイミングやERCP行うタイミングの2群間(≤24 h.>24 h)の患者背景の比較を単変量解析した結果P値が0.20未満であったもの,さらには胆囊炎・膵炎・肝膿瘍合併例を多変量解析しLOSに影響を及ぼす因子を解析した.その結果,24時間以内にERCPを行うことがLOSの短縮に影響し,重症胆管炎(Grade Ⅲ)・悪性胆道狭窄がLOSの延長に影響を及ぼしていたことが明らかとなった.重症胆管炎の患者は全身状態が不良であると考えられるため,LOSが延長したと考える.悪性胆道狭窄の患者に関しては,当院では化学療法は入院では行わず外来通院で行っている.また,4例のみ癌診断のための生検等の処置が必要であったが,胆道ドレナージと同時に行うことができた.以上より,LOSが延長した原因は,上記ではなく,癌により全身状態が不良となったため退院までに時間を要したと考える.胆囊炎・膵炎・肝膿瘍合併例は今回LOSに影響は及ぼさなかった.これらの患者は両群とも15%以下に過ぎず,重症胆管炎もきたしていなかったため,LOSに大きく影響を及ぼさなかったと考える.

本研究におけるShort SBE下ERCPを早期(≤24 h)に行った群と晩期(>24 h)に行った群の比較では,LOS以外に差を認めたものはなかった.そのため,先述した戦略通り,患者の状態が悪くなっていかないのであれば,熟練した内視鏡医や看護師スタッフが揃うまで内視鏡による介入を遅らせることは許容できるのではないかと考える.

本研究で解析した症例にすべて対処していくには,PTBDやEUS-BDのような代替治療の習熟も求められる.近年EUS-BDの有用性について報告されている 24)~27.急性胆管炎症例に対して緊急もしくは早期(96時間以内)にEUS-BDの成績について解析した結果,有効かつ安全に施行できたとの報告もある 28.EUS-BDは処置時間が短いため,呼吸機能に問題のある患者に対して有用であると考えられる.

本研究にはいくつかのLimitationがある.第1に,本研究は単施設の後ろ向き試験である.第2に,先述したわれわれの内視鏡治療を行うタイミングを決定する戦略は,≤24 h,>24 hの2群へ振り分ける際にバイアスが生じ得る.さらには,重症急性胆管炎症例6例すべて,早期のBE下ERCPを行った.このことは背景因子のバイアスとなっている.第3に,重症胆管炎は全体のわずか5.3%であったため,低い死亡率(2例)となっている.もし本研究で重症急性胆管炎症例がより多かった場合には,今回行った2群間比較で死亡率がどうであったかがより重要となってくるであろう.第4に,重症急性胆管炎症例すべてにおいて,早期にBE下ERCPを行い,EBD手技のみ行った.一方で,軽症もしくは中等症症例には,晩期にBE下ERCPを行ったが,EBDだけではなく,症例に応じては結石除去まで行った.2群間の手技内容に違いがあった.

Ⅴ 結  論

本研究では,急性胆管炎を有するSAA症例に対するShort SBE下ERCPは有効かつ安全に行えることを示した.急性胆管炎を有するSAA症例に対してBE下ERCPは良い適応の1つであると言えるであろう.さらには,早期(≤24 h)の内視鏡治療介入はLOSの短縮に影響していた.さらなる症例の集積を行い,これらの患者の治療結果に影響を及ぼす因子を明らかにしていくことが望まれる.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

補足資料

Table S1 Tokyo Guidelines 2018(TG18)における急性胆管炎重症度.

Figure S1 ショートタイプシングルバルーン内視鏡(SIF-H290S;Olympus Medical Systems,Tokyo,Japan).

Footnotes

本論文はDigestive Endoscopy(2023)35, 361-8に掲載された「Can endoscopic retrograde cholangiopancreatography-related procedures for resolving acute cholangitis be effectively and safely performed in patients with surgically altered anatomy? Comparison study to evaluate the timing of short-type single-balloon enteroscopy-assisted endoscopic retrograde cholangiopancreatography」の第2出版物(Second Publication)であり,Digestive Endoscopy誌の編集委員会の許可を得ている.

文 献
 
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