日本消化器内視鏡学会雑誌
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食道粘膜下に迷入した魚骨を内視鏡的粘膜切開術で摘出した1例
重田 早紀子奈良坂 俊明 小林 真理子
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電子付録

2024 年 66 巻 6 号 p. 1346

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食道異物は粘膜下深部へ迷入すると同定や摘出が困難となり,手術を要した報告例も少なくない 1.今回内視鏡的に粘膜を切開し,粘膜下に迷入した魚骨を摘出した1例を経験した.症例は80歳女性.魚骨を誤飲し,咽頭の違和感が出現したため前医を受診した.CT検査で頸部食道後壁に27mm大の高吸収域を認め,魚骨と判断した.前医の上部消化管内視鏡検査では,食道入口部左側に白色点状の魚骨の先端を確認し摘出を試みたが,処置中に粘膜下へ迷入した.当院耳鼻科へ紹介となり,全身麻酔下に直達鏡で摘出を試みたが不可能であり,当科へ紹介となった.全身麻酔下で再度上部消化管内視鏡を用いて摘出を試みたが,魚骨の同定は困難であった.内視鏡先端を刺入部口側近傍に置いて鉗子孔から送水し食道内を水で満たしたところ,体表からの頸部超音波による内視鏡と魚骨の同定が可能となり,内視鏡先端近傍に魚骨が存在していることを確認し,粘膜切開を試みることとした.刺入部周囲にインジゴカルミン添加生理食塩水で局注し,先端長1.5mmのDual Knife J(KD-655Q,Olympus)で刺入部付近より肛門側へ1cm程度切開を行ったが魚骨が露出しなかったため,その切開と直交するように5mm程度切開を行ったところ,魚骨の先端が確認でき,生検鉗子で把持し摘出した.粘膜下層に迷入した魚骨は,粘膜下層内を移動することから正確な位置の特定が困難となり,内視鏡処置に難渋し得る.内視鏡での視認が困難な異物でも,粘膜切開により粘膜下層を検索することで低侵襲的な異物除去が可能と報告されているが 2,さらに体表からの超音波観察を併用することでより安全で確実な除去が可能となる.これまでに内視鏡的粘膜切開術と超音波内視鏡を併用した報告例は複数あるが 3,体外超音波を併用した例はなく,粘膜下に迷入した異物除去において有用な治療法と考える.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

電子動画

ビデオクリップ 1 内視鏡的粘膜切開.

ビデオクリップ 1

Figure 1 CT・直達鏡所見.

a:頸部食道後壁に27mm大の高吸収域を認めた.

b:直達鏡にて食道入口部左側に白色点状の魚骨の刺入部を確認した.

文 献
 
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