2024 年 66 巻 7 号 p. 1539-1542
自治医科大学は,医療に恵まれないへき地等における医療の確保及び向上と地域住民の福祉の増進を図るため,全国の都道府県が共同し,1972年に設立された.自治医科大学附属病院は,1974年に開院し,現在,病床数1,132床,診療科47科を開設している.内視鏡室は,1974年の開院当初より中央施設部門のひとつとして組織的には独立した形で発足した.1986年の内視鏡室拡張を期に,その名称も内視鏡室から内視鏡部と替わった.2008年に光学医療センターとなり,同年7月に現在の場所にリニューアル移転をした.消化器分野では,特に画像強調内視鏡による腫瘍診断(存在診断,範囲診断,深達度診断),表層性の消化管腫瘍に対する内視鏡的粘膜下層剥離術,ダブルバルーン内視鏡による小腸疾患の診断治療,胆膵疾患の診断・治療に力をいれており,国内外から多数の研修生・見学者を受け入れている.また,地域の救急病院として,24時間緊急内視鏡ができる体制を組んでいる.
組織中央施設部門の一部門として位置づけられている.消化器部門の診療は,消化器センター内科部門,外科部門の医師が主に従事している.呼吸器部門は,呼吸器センター内科及び外科部門の医師が従事している.小児患者に対しては,小児科医師もしくは小児外科医師と消化器センター内科部門の医師が協力して診療している.
ポータブル光源・プロセッサーが3台あり,集中治療室や救急初療室での内視鏡も行っている.全身麻酔が必要な内視鏡検査・治療は,中央手術室もしくはこども医療センター手術室にて麻酔科医による全身麻酔下に行っている.
通常の検査室6部屋に加えて,2部屋にX線透視装置を備え,内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)や小腸内視鏡,気管支鏡で使用している.全検査室に富士フイルムとオリンパスの光源・プロセッサーが設置してあり,柔軟に運用可能である.
内視鏡室レイアウト
(2023年11月現在)
医師:消化器内視鏡学会 指導医23名,消化器内視鏡学会 専門医39名,その他スタッフ9名
内視鏡技師:Ⅰ種2名,その他技師5名
光学医療センタースタッフ
(2023年11月現在)
1年間(2022年4月~2023年3月まで)
当院は臨床研修指定病院であり,研修医,内科及び消化器内科専攻医,若手消化器内科医・消化器外科医や,消化器系小児科医への指導教育を行っている.また,自治医科大学卒業生の後期研修も受け入れている.
上部消化管内視鏡は,研修医でも本人の意向次第でシミュレーターを開始し,指導医に合格と判定されれば,指導医監督下に術者として経験させている.
大腸内視鏡は,卒後3年目以降の専攻医からシミュレーターを開始し,指導医に合格と判定されれば,指導医監督下に術者として挿入の修練を開始する.大腸内視鏡の基礎的操作の習得後は,深部挿入が安定していない段階でも,平行して経肛門ダブルバルーン内視鏡の修練を開始する.経肛門ダブルバルーン内視鏡の助手としてオーバーチューブを保持すれば上級医の操作を画面だけでなく手で感じることができる.術者となれば,上級医がオーバーチューブを保持して力加減まで指導でき,必要に応じてX線透視下にスコープ形状の確認やループ解除が可能である.また,当院の経肛門ダブルバルーン内視鏡の挿入は,完全無送気のminimal water exchange法で行っており,無送気の視野に慣れることができる.これらのことは,大腸内視鏡挿入の修練に役立つと考えている.
専攻医以上では,各個人の技量に合わせて,より専門的な内視鏡診療に関する指導教育を行っている.
内視鏡に関連するカンファレンスとして,内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)術前カンファレンスを毎週月火水曜日の昼に医師・看護師が集まり,治療リスクの評価,治療戦略の確認を行っている.また,上部ESDの術後病理結果に関するカンファレンスを毎週一回,内科・外科合同の下部消化管カンファレンスを週一回,内科・外科合同の胆膵カンファレンスを月一回行っている.
専属の臨床工学技士が配属されておらず,高周波発生装置の定期点検・トラブル対応のみとなっている.しかし,高周波発生装置を除く多種多様な機器は,各メーカー担当者に依存しており,メーカーが異なる機器間の配線等では行き当たりばったりの作業となっている.各検査室にメーカーの異なる光源・プロセッサーが2組設置してあり,それぞれに画像ファイリングシステムへの転送装置や録画装置,ディスプレイとの配線,ナースステーションやトレーニング室への配線も存在するため,複雑な配線となっており,全部屋の配線状況の把握が困難な状況となっていた.2023年7月より兼務ではあるが臨床工学技士4名が配属され,2024年4月以降の本格業務に向けて準備段階に入っている.内視鏡機器全般の管理・運用・保守,機器の配線の整理の他,将来的には内視鏡検査・治療の準備・介助業務,効率的な機器導入の検討が可能になると期待している.
夜間・休日の緊急内視鏡は,医師3人(消化器肝臓内科の当直もしくは宅直1人と内視鏡当番2人)のみで対応しており,パラメディカルの協力は緊急内視鏡終了後のスコープ洗浄と部屋の清掃のみに限られている.2024年2月より休日の緊急内視鏡に救急部看護師の支援が得られることになったが,平日夜間については人員の充足を待つ必要がある.
比較的大きな規模の内視鏡部にも関わらず,内視鏡技師数が少ない.これは内視鏡部に勤務する看護師が外来看護部に属しており,内視鏡技師の資格取得による待遇改善がないことも原因と考えており,今後働きかける必要がある.