日本消化器内視鏡学会雑誌
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処置後の局所冷却予防はERCP後膵炎の発症率を有意に低下させる:多施設ランダム化比較試験
木暮 宏史
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2025 年 67 巻 11 号 p. 2369

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抄録

【背景】ERCP後膵炎(post-ERCP pancreatitis;PEP)は,ERCPに伴う一般的で潜在的に重篤な有害事象である.予防として直腸投与の非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs;NSAIDs)が推奨されているが,日本では用量に関する懸念から使用が限られている.本多施設無作為化対照試験は,PEP低減における乳頭への氷水灌流の有効性と安全性を評価した.

【方法】単盲検試験として,未処置乳頭を有しERCPを受ける成人880例を日本の8病院で登録(2022年3月〜2024年2月).3例が撤回し,877例を解析対象とした(氷水冷却予防:434例,対照:443例).主要評価項目はPEP発症率で,定義は24時間以内の腹痛に加え,血清アミラーゼまたはリパーゼが基準上限の3倍以上.副次評価項目は胆管炎,出血,穿孔,死亡とした.

【結果】PEP発症率は,氷水冷却予防群で3.2%(95%信頼区間[CI]1.7%-5.4%),対照群で6.8%(95%CI 4.6%-9.6%)と有意に低く(P=0.02),絶対リスク減少3.6%,相対リスク減少52.4%であった.副次評価項目(胆管炎0.9% vs 1.1%,P=1.00;出血1.4% vs 2.5%,P=0.33;穿孔0.9% vs 0.2%,P=0.21)に有意差は認めなかった.対照群で重症PEPにより1例が死亡した.氷水冷却予防に関連する有害事象は報告されなかった.

【結語】氷水を用いた冷却予防はPEP発症を有意に減少させ,安全・有効かつ低コストの戦略であることを示した.本アプローチは,NSAIDsの使用が制限される状況において実践的な代替策を提供する.

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