膵囊胞性病変が無症状で偶発的に発見される機会は増えている.臨床の場で遭遇する膵囊胞の診断名はその頻度から限られており,各腫瘍の病理と画像所見の特徴を把握しておくことで鑑別診断の多くが可能となる.囊胞性腫瘍では,膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN),粘液性囊胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm:MCN),漿液性囊胞腫瘍(serous cystic neoplasm:SCN)の鑑別を行うことになる.その他,充実性腫瘍の囊胞化あるいは充実性腫瘍の周囲に貯留囊胞や仮性囊胞を形成する場合には充実と囊胞の混在する病態を呈するため鑑別診断に際し注意する必要がある.
Pancreatic cystic lesions are increasingly discovered incidentally and without symptoms. The types of pancreatic cysts encountered in clinical practice are limited in number but frequent, and several differential diagnoses can be made by understanding the pathology and imaging features of each disease. It is important to differentiate between intraductal papillary mucinous neoplasms (IPMNs), mucinous cystic neoplasms (MCNs), and serous cystic neoplasms (SCNs) in cystic tumors. In certain cases, cystic changes within a solid tumor or the formation of a retention cyst or pseudocyst around a solid tumor may present as a mixture of solid and cystic lesions and should be considered in the differential diagnosis.
近年の画像診断機器・技術の進歩と検診の普及に伴い,膵囊胞が無症状で偶発的に発見される頻度が増えている.既報によると,膵疾患目的以外に撮影されたCTで2-10%,MRIでは13-41%の頻度で偶発的に膵囊胞が指摘されるとされ,頻繁に遭遇するといえる 1)~5).また膵囊胞は,膵癌の高危険因子の一つでもあり,見過ごすわけにはいかない病態である 6).本稿では,膵囊胞の分類とその診断方法について解説する.
膵囊胞は上皮性囊胞と非上皮性囊胞に大別され,前者が囊胞内腔を被覆する上皮が存在する囊胞で,後者が被覆上皮を欠如する囊胞とされる.それぞれに腫瘍性と非腫瘍性が存在する(Table 1).腫瘍性囊胞を見落とすことなく的確に診断し,それらの中から外科切除が必要な状態か見極めることが重要となる.しかしながら,Table 1に提示したように膵囊胞には複数の疾患があり,似たような形態・多様な形態を呈することがあるためその鑑別診断に苦慮することも多く,また悪性病変だけでなく前癌病変や良性病変まで幅広い疾患が存在する他,良性の囊胞性腫瘍であっても膵内の離れた部位に通常型膵癌を併存することがあるなど,その診断は容易でないことも少なくない.

膵囊胞の分類.
膵腫瘍性囊胞は,1965年にBeckerらが囊胞内容液の性状からserous typeとmucinous typeに分けたのがはじまりで 7),その後1982年に大橋らによる“粘液産生膵癌”としての報告がブレイクスルーとなり 8),以降本邦を中心に様々な検討が行われ,現在の分類に落ち着いている.
“粘液産生膵癌”は現在では膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)と命名され,最も頻度の高い腫瘍性囊胞として周知されている.その他膵粘液性囊胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm:MCN),膵漿液性囊胞性腫瘍(serous cystic neoplasm:SCN)が腫瘍性囊胞として挙げられる.
a.IPMN
・病態・臨床的特徴
主膵管もしくは分枝膵管から発生し,膵管上皮に乳頭状構造および細胞異型を呈し,粘液を産生する性質を持つ.産生する粘液により膵管拡張を呈するがその程度は産生する粘液量により様々である.粘液が主膵管に流出してくると十二指腸乳頭開口部の開大を伴う場合がある.肉眼分類では主膵管型,分枝型,混合型の三つに分類される.主膵管型は他に原因のない部分的,あるいは全体的な5mm以上の主膵管の拡張,分枝型は5mm以上に分枝膵管が拡張しているもの,混合型は両方の特徴を有するものと定義されている.IPMNに対する手術適応や経過観察法は国際診療ガイドラインに則って行われるが 9),High risk stigmata(HRS)やworrisome featuresに該当しない悪性化リスクが低いと考えられる分枝型IPMNにおいても,経過観察期間に左右されずに一定の発癌リスクが持続する点には注意を要する 10).また,IPMN由来癌と併存癌の二種類の悪性化があるが,併存癌は囊胞径や主膵管径といったIPMNの悪性度とは無関係に発生することがわかっているため,IPMNのみならず周囲にも腫瘤がないか注意を払う必要がある.
・画像的特徴(Figure 1)

分枝型IPMN症例.
a:CT画像.膵頭部に多房性囊胞を認める.結節を疑う充実成分は認めない.
b:MRI heavy T2画像.膵頭部の病変は水成分を反映して高信号を呈する.囊胞内には結節を疑う欠損像は認めない.
c:EUS画像.囊胞内に結節を疑う高エコーの乳頭状隆起を認める.
d:内視鏡画像.乳頭からは粘液の排出がみられる.
e:切除後病理画像.結節部は胃型のLG-IPMNであり,他の部位にも癌は認めなかった.
それぞれが別々の隣接する分枝膵管の拡張であるため,ブドウの房状(cyst by cyst)と形容される多房性の形態を呈する.膵管との交通があるとされているが,内部粘液栓を作ることもあり,膵管-囊胞間の交通が遮断され画像上不明瞭であることは少なくない.小さいものでは単房性となり,貯留囊胞と鑑別困難な場合もある.壁在結節の診断には超音波内視鏡検査(EUS)が最も感度が高く有用とされる.IPMNでは囊胞内に蛋白栓や石灰化,debris貯留を認めることがあり,これらと壁在結節はEUSでも鑑別困難なことがあり,その場合はソナゾイドによる造影EUSが有用となる.
・病理学的特徴
組織学的異型の程度から,腺腫に相当するlow grade IPMN(LG-IPMN),上皮内癌に相当するhigh grade IPMN(HG-IPMN),浸潤癌のinvasive carcinomaに分けられる.また,組織亜型は胃型(gastric type),腸型(intestinal type),膵胆道型(pancreato-biliary type)の三つに分類され,それぞれで悪性度が異なる.以前の好酸性細胞型(oncocytic type)という組織亜型については,WHO分類第5版(2019年版)よりはintraductal oncocytic papillary neoplasm(IOPN)に名称が変更され,IPMNとは別の独立した腫瘍として分けられるようになった.IPMNの三つの組織亜型はオーバーラップすることも多いが,一般的に胃型は分枝型に多く,異型の弱いLG-IPMNが多いとされる.腸型は主膵管型に多く,異型の強いHG-IPMNが多いとされ,粘稠な粘液を多量に産生することが特徴である.その粘液により囊胞は大きく,主膵管拡張を呈することが多い.膵胆道型は異型の強い乳頭状の腫瘍性上皮を認め,悪性度が高いのが特徴である.一方,IOPNは好酸性胞体を持つ細胞が葉状に増殖し,異型が強いものの他のIPMNと比して予後が良いとされる.多くのIPMNでみられるKRASやGNASの遺伝子変異は認められない点などからIPMNからは独立した概念に分類されるようになった.国際診療ガイドラインでは造影される5mm高以上の壁在結節がHRSの一つの因子であるが,注意しなくてはならないのは結節に一致して病理学的に癌を認めるわけではなく,あくまでHRSがあると結節を含む囊胞のどこかに癌が存在する可能性が高いという統計学的な指標である点である.
b.MCN
・病態・臨床的特徴
40-50歳台の中高年女性の膵尾部に後発し,男性例や膵頭部病変は極めて稀である.多くの場合症状はなく,検診などでたまたま発見される.本邦からの多施設共同後ろ向き観察研究の報告では,悪性化の頻度は10%程度と報告されており 11),MCNの診断がつけば基本的には外科切除の適応となる.しかしその一方で,血清CA19-9値が正常かつ3cm未満のMCNでは悪性所見がなかったという報告もあり 12),こうした症例に対しては経過観察という選択肢も考慮されるため,サーベイランスおよび治療方針は症例ごとに慎重になる必要がある.
・画像的特徴
比較的厚い共通被膜に覆われた大小不同の囊胞はcyst-in-cyst様(夏みかん)の形態をとるとされる.被膜は線維成分を反映し,造影CTで遅延性濃染することが多いが,“比較的厚い”とされる被膜については,画像検査上はそれ程厚くない点は要注意である(Figure 2).また,その隔壁は薄いためCTではcyst-in-cyst構造の認識が困難であることが多く,体外式超音波(AUS)やEUSで確認し確定診断に繋げることが多い.多房性囊胞間に交通がなく,囊胞ごとで内容液の性状が異なるため,MRIのT2強調画像ではそれぞれが異なった信号強度を呈する(independent cyst).基本的には主膵管との交通を認めないことが特徴とされているが,約18%で膵管との交通がみられたとの報告もある 13).病理学的にはcyst-in-cystの形態を呈していてもその大きさが小さい場合は画像ではcyst-in-cystを呈さず壁内囊胞の形態をとることもあるため注意を要する(Figure 3).

MCN症例.
a:CT画像.膵尾部に類円形の囊胞性病変を認める.薄い被膜はわずかに造影効果を有し,尾側の膵実質近傍の内部にはわずかに造影される隔壁様構造を認める.
b:MRI T2強調画像.内部は水成分を反映し高信号を呈する.隔壁やcyst in cyst構造ははっきりしない.
c:EUS画像.cyst in cyst構造を有する類円形の囊胞性病変.
d:切除後病理画像.腫瘍辺縁全体を厚い線維性被膜で囲まれる(矢印).

非典型的なMCN症例.
a:EUS画像.典型的なcyst in cyst構造は呈さずスリット状の隔壁である(矢印).
b:EUS画像.典型的なcyst in cyst構造は呈さず壁内囊胞の形態の隔壁である(矢頭).
・病理学的特徴
囊胞の辺縁には厚い線維性被膜を認める.囊胞の内腔面は高円柱状の粘液性上皮が平坦状,乳頭状に増殖し,上皮下に血管に富む紡錘形細胞が特徴的な卵巣様間質(ovarian-type stroma:OTS)を伴う.このOTSはMCNの診断に必須であり,その間質の細胞にはエストロゲン受容体やプロゲステロン受容体の核発現を認める.
c.SCN
・病態・臨床的特徴
60-70歳台の中高年の女性に多い比較的稀な膵腫瘍である.膵臓のどの部位にも発生し得,悪性化の頻度は1%以下と極めて稀とされる良性疾患である 14),15).
肉眼形態としては,microcystic type(個々の囊胞径が1cm以下),mixed type(1cm以下と1cm以上の囊胞の混在),macrocystic type(1cm以上),solid type に分類され,本邦からの多施設後ろ向きの報告ではmicrocystic typeが58%,macrocystic typeが20%,mixed typeが16%,solid typeが3%と,microcystic typeが半数を占めるとされる 14).
・画像的特徴
典型例では球形から楕円形の形態を呈し,囊胞内部には小囊胞が集簇した蜂巣状構造(honeycombed appearance)を認める.Honeycomed appearanceは特にEUSで感度の高い所見であり,EUSで小囊胞の集簇が確認できれば容易にSCNの診断が可能となる(Figure 4).Mixed type SCNでは中心にmicrocystを,辺縁にmacrocystを認めることが多いので中心部での小囊胞の集簇に着目し診断に繋げることが重要である.また,中心部が線維化,石灰化することによるcentral stellate scar やsun-burst appearanceも比較的特徴的な所見であり,これはCT検査における陽性率が高い.囊胞上皮直下の線維性問質には発達した毛細血管を認めるため,隔壁部分が動脈早期相からhypervascularとなることもSCNにおいて大きな特徴である.このため特にsolid typeなどでは造影CTや超音波検査所見のみでは神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)などの多血性実性腫瘍との鑑別が困難な場合もあるが,SCNではMRIのT2強調画像(特にMRCPのheavy T2)で漿液成分を反映して,著明な高信号を呈する点が鑑別に有用となる(Figure 5).

SCN症例(mixed type).
a:CT画像.左から順に膵実質相,門脈相,平衡相.膵頭部の囊胞性病変は動脈相から隔壁は濃染し,その隔壁は囊胞の中心に集まる中心瘢痕様形態を呈する.
b:MRI heavy T2画像.腫瘍は水成分を反映して高信号を呈する.
c:EUS画像.囊胞の内部には周辺に比較的大きな囊胞が無エコー領域として,中央寄りに小さなmicrocystの集簇が混在してみられる.

SCN症例(solid type).
a:CT画像.膵尾部にやや造影不良な低吸収領域がみられる.
b:EUS画像.腫瘍はやや低エコーの充実性腫瘍として描出される.
c:MRCP画像.EUSで充実性腫瘍様に見えた腫瘍も水成分を反映して高信号を呈する.
・病理学的特徴
囊胞内は小型立方状の腫瘍細胞に裏装され胞体内にはグリコーゲンを多く含む.PAS染色で強陽性を示し,免疫染色ではMUC6,α-inhibinが陽性を示す.
Ⅲ-2 非腫瘍性囊胞Table 1で示した上皮性非腫瘍性囊胞で比較的頻度の多いものとしてリンパ上皮囊胞(lymphoepithelial cyst:LEC)と類表皮囊胞(epidermoid cyst)が挙げられる.
a.リンパ上皮囊胞(LEC)
・病態・臨床的特徴
1985年に初めて報告された非腫瘍性囊胞性病変であり 16),中高年男性に多い.臨床症状としては腹痛,背部痛,不快感などが約半数の症例で認められ,残り半数は無症状であるため検診で偶然発見されることが多い.また,約半数でCA19-9が上昇するとされる.膵臓の各部位に認められ,多房性で薄い隔壁を持ち,囊胞内容物としてケラチン様物質を豊富に含むことが特徴とされる 17).
良性疾患のため確定診断がつけば経過観察となるものの,腫瘍性囊胞との鑑別困難なため外科切除されてから診断に至ることも少なくない.
・画像的特徴
CTでは造影効果に乏しい単房もしくは多房性囊胞の形態を呈する.MRIではT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を呈する.拡散強調画像では囊胞内のケラチン様物質が高信号を呈し,ADC値も低値であることが画像上の特徴といえる(Figure 6) 18),19).

LEC症例.
a:CT画像.膵尾部に類円形の囊胞性病変を認める.内部にはわずかに造影される隔壁様構造を認める.
b:MRI T2強調画像.内部は低信号と高信号が混在する.
c:EUS画像.比較的均一な低エコー腫瘤として描出される.一見すると充実性腫瘍様であるが囊胞性病変を反映して辺縁に無エコー領域がみられる.
d:MRI拡散強調画像.腫瘍全体が高信号となる(拡散制限を認める).
・病理学的特徴
囊胞の内面には皮膚付属器を伴わない扁平上皮を認め,上皮下にはリンパ組織像を認めるその病理学的特徴から1987年にLECと命名された 17).
b.類表皮囊胞(epidermoid cyst)
・病態・臨床的特徴
膵内副脾に由来する囊胞であり,主として膵尾部にみられる.年齢,性別に一定の傾向はない.症状はみられないことが多いが,腹痛,背部痛,腹部腫瘤,上腹部違和感などの症状を呈することがある 20).LEC同様CA19-9高値を示すこともある 21).囊胞内容は漿液性もしくはケラチン様物質を含む.LEC同様良性疾患のため確定診断がつけば経過観察となるものの,腫瘍性囊胞との鑑別困難なため外科切除されてから診断に至ることも少なくない.
・画像的特徴(Figure 7)

epidermoid cyst症例.
a:CTとMRI heavy T2画像.膵尾部に類円形の囊胞性病変を認める.輪郭にはわずかに充実部を認め,ダイナミックCTで脾臓と同等の造影効果を呈する.囊胞部分は水成分を反映してMRI heavy T2では高信号を呈する.
b:EUS画像.類円形の囊胞性病変の辺縁に三日月状の充実部分を認める.
c:切除後病理画像.腫瘍辺縁に脾臓の成分を認める.
膵内副脾に発生した類上皮囊胞の診断には,AUSやEUSなどの画像診断で囊胞性腫瘤に付随する膵内副脾の充実性部分を正しく描出し,充実性部分を副脾と診断することがポイントとなる.副脾の診断には超常磁性酸化鉄製剤造影MRI(superparamagnetic iron oxide:SPIO MRI)が有効となる.SPIO造影剤は超常磁性酸化鉄であり網内系細胞に取り込まれてT2信号を短縮する効果を有するため,T2強調画像で充実性部分が脾臓と同等の信号低下を示す.しかしながら膵内副脾の脾臓の成分が少ない場合は画像に反映されにくくなり,脾臓の証明ができないため診断に難渋することも多々ある.
・病理学的特徴
囊胞の内面には皮膚付属器を伴わない重層扁平上皮を認め,膵内副脾の部分には赤脾髄とリンパ小節を主体とする白脾髄からなる脾臓組織がみられる.
c.貯留囊胞
・病態・臨床的特徴
貯留囊胞はなんらかの原因により膵管に閉塞や狭窄を生じた結果,膵液がうっ滞して膵管内圧の上昇が起こったために膵管が囊胞状に拡張したものである.
貯留囊胞の原因として見逃してはならないのは膵癌などの腫瘍によるもので,その他に炎症,膵石や蛋白栓などによる閉塞が挙げられる.貯留囊胞を認識した際には膵管閉塞の原因が何なのか考え,周囲に腫瘍の存在を見逃さないことが重要である.
・画像的特徴
貯留囊胞の画像所見は,通常は小型で単房性の囊胞としてとらえられる.
上記のように腫瘍や膵石などの膵管内圧が上昇するような責任病変が画像検査でとらえることができるとその診断は容易となる.
・病理学的特徴
囊胞内面を覆う上皮には異型を伴わない1層の膵管上皮で覆われている.
非上皮性囊胞には仮性囊胞と充実性腫瘍の内部が囊胞変性を呈する例があり,しばしば上皮性腫瘍性囊胞との鑑別を要する.頻度として最も多いのが膵炎に随伴する仮性囊胞である.その他後腹膜腫瘍では比較的頻度の高いリンパ管腫も膵に稀にみられることがある.
Ⅳ-1 充実性腫瘍の囊胞変性充実性腫瘍の内部に出血や壊死などにより囊胞化がみられるもので,囊胞には裏打ちする上皮がないため非上皮性囊胞に分類される.通常型の膵癌のような浸潤性発育する腫瘍でみられることは極めて稀であり,膨張性発育のタイプの充実性腫瘍や急速に発育する腫瘍にみられることが多い.その代表的な腫瘍として内分泌腫瘍とsolid-pseudopapillary neoplasm(SPN)が挙げられる.その他腺房細胞癌や腺扁平上皮癌,退形成癌といったいわゆる特殊型膵癌でもみられることがある.これらの囊胞変性は,腫瘍の出血や壊死で形成された囊胞のため内容は純粋な水成分となることは極めて稀であり,これが画像検査にも反映されるのでその診断において上皮性の腫瘍性囊胞との鑑別の一助となることが多いが例外も多く,囊胞変性のない完全な充実性腫瘍の場合よりはその鑑別が困難となり,わずかでも存在する充実部分の特徴から診断に迫る必要がある 22).
a.神経内分泌腫瘍(NET)
・病態・臨床的特徴
神経内分泌系細胞への分化を示す充実性腫瘍である.充実性腫瘍としては膵癌に次ぐ頻度である.基本的に多血性の腫瘍で,膵実質相で著明な濃染を呈するのが典型像である.囊胞変性を伴うのは膵NETの10-17%とされる 23).充実性成分主体でその一部分に囊胞変性を認める場合と充実成分が辺縁のみで多くを囊胞成分が占める場合があり,中にはほぼ囊胞が主体となり充実部がほとんど残存せず囊胞性病変にしか見えない症例も存在する 24).囊胞化の要因としては腫瘍内の出血の関与が示唆されており,従来はある程度腫瘍径の大きなもので起こりやすいと考えられてきたが,数mm程度の小さな腫瘍でも囊胞化はみられるため,囊胞化は腫瘍自体の特性の一つと推測される(Figure 8).診断には,辺縁などに存在する充実部の同定がポイントとなる.

囊胞変性を来した小さな内分泌腫瘍症例.
a:CT画像.膵頭部に類円形の多血性腫瘍を認める.内部には造影されない部分を認める.
b:EUS画像.境界明瞭,輪郭整な低エコー腫瘤,腫瘍内には一部囊胞部分を認める.
c:切除標本割面写真.充実性腫瘍の中央部分が囊胞状に抜けている.
d:病理標本.充実部分の腫瘍はリボン状に配列した内分泌腫瘍であった.
・画像所見(Figure 9)

囊胞変性を来した内分泌腫瘍症例.
a:CT画像.膵体部に類円形の囊胞性腫瘍を認める.囊胞の輪郭には多血性の充実成分を認める.
b:EUS画像.囊胞が主体であるが,輪郭に充実部分がみられる.
c:MRCP画像.腫瘍全体は水成分を反映して高信号を呈する.
d:病理標本.囊胞の辺縁に三日月状の充実部分を認め,同部位に内分泌腫瘍細胞を認めた.
基本的に多血性の腫瘍で,膵実質相で著明な濃染を呈するのが典型像であるため,囊胞変性を伴う場合も辺縁などに残存する充実部に着目し,充実部での膵実質相で著明な濃染を確認することで診断可能である.充実部がわずかしかない場合にはCTでの同定は困難でEUSが有効なこともある.また,その場合は血流評価に造影EUSが有用となる.前述の通り稀に充実部分が画像診断では同定できないほぼ囊胞性腫瘍の形態を呈する場合があり,その時診断は極めて困難となる.
・病理学的特徴
肉眼的には境界明瞭な充実・髄様性腫瘍で,多血性の軟らかい腫瘍である.組織学的には富細胞性で毛細血管網を伴って腫瘍細胞が増殖する.腫瘍細胞は類円形の核と広めの淡好酸性~顆粒状の胞体を有し,索状~網目状,胞巣状,ロゼット状の配列を示す.免疫染色では神経内分泌マーカー(chromogranin Aやsynaptophysin)の発現を示すのが特徴である.
b.充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)
・病態・臨床的特徴
分化方向の不明な上皮性腫瘍に分類されており,大部分が若年女性に発生する稀な腫瘍である.小児例も多く,小児の膵腫瘍では最も多いとされる.ほとんどは良性の経過を辿る低悪性度腫瘍と考えられているが,稀に肝転移や腹膜播種を来し予後不良となる報告がある.このためmalignant potentialを有する腫瘍と考えられており,外科的切除による治療が原則となる.
・画像所見(Figure 10)

SPN症例.
a:US画像.膵頭部に類円形の囊胞性腫瘍を認める.囊胞の輪郭には石灰化を反映した高エコーがみられ,腫瘍の内部は高エコーと低エコーが混在している.
b:CT画像.単純CTで腫瘍の輪郭に卵殻様の石灰化,内部にも石灰化を認める.腫瘍の一部に遅延性濃染を呈する充実部分がみられる(矢頭).
c:MRI画像.上がT1強調画像,下がT2強調画像.腫瘍の内部は新旧の出血を反映してT1とT2ともに高信号と低信号が入り混じっている.
d:MRCP画像.腫瘍の内部は淡い高信号を呈する(矢頭)(水成分程の高信号にはならない).
腫瘍が膵内に限局した小さい段階で発見されると出血や壊死も少ない実性腫瘍の形態で辺縁に被膜も形成していないが,その多くは発見時には既に増大し膵外に突出しており,厚い線維性被膜を有する類円形腫瘍となっている.細胞間の接写が弱いため腫瘍が増大すると出血・壊死を来しやすいため,画像所見の特徴として腫瘍内部には充実と囊胞部分の混在がみられる.充実と囊胞部分が種々の割合で含有するため画像所見は様々な像を呈し,診断に難渋することも少なくない 25).囊胞部分のMRIでの特徴としては,新たな出血部分はT1強調画像で高信号,T2強調画像で低信号を呈することが多い一方,古い出血や壊死ではT2強調画像で一見すると水成分と見間違うような高信号を示すことがあるがheavy T2画像では水成分とは異なり淡い高信号となる.CTでは囊胞内の出血を反映した高濃度や,辺縁部に卵殻状の石灰化を伴う場合や腫瘍中心部に石灰化を伴うことがある点の他,造影CTで充実部分に関して早期濃染に乏しく漸増性の淡い造影効果を呈する.
・病理学的特徴
組織学的特徴は,小型円形核を持つ好酸性細胞の硝子間間質を伴う小・毛細血管を中心とした充実性増殖であり,細胞間の密着が弱く解離し乳頭状配列や偽花冠状配列を示す.細胞間の接写が弱いため出血・壊死を来しやすいとされる.
Ⅳ-2 膵仮性囊胞(PPC)と被包化壊死(WON)膵仮性囊胞は,膵内あるいは膵周囲に形成された囊胞様構造で,被膜に囲まれた内腔に膵液や壊死物質,出血などの内容物を含み,内腔壁は炎症後の線維や肉芽組織で覆われ上皮細胞を認めないものと定義される.成因として,慢性膵炎や急性膵炎,外傷性などが挙げられる.以前は膵炎後一定時間経過して形成された線維性の被膜に覆われた膵液の貯留すべてを仮性囊胞と呼んでいたが,2012年報告された改訂Atlanta分類によって急性膵炎発症後4週以上経過して被包化された膵周囲の液体貯留は急性膵周囲液体貯留(pancreatic fluid collection:PFC)と命名され,PFCをさらに膵管が破綻してできた膵周囲液体貯留である膵仮性囊胞(pancreatic pseudocyst:PPC)と,壊死性貯留が被包化されたものである被包化壊死(walled-off necrosis:WON)に分類した 26).いずれにせよ急性膵炎の経過で発生するものであるので臨床経過からその診断は比較的容易である.稀に無症状で経過し,PPC増大に伴う腹部症状を契機に発見されることがあり,その時には囊胞性腫瘍との鑑別が問題となる.PPCは時間経過とともに画像所見は変化するが,基本的に膵内から膵外への囊胞としてとらえられることが多く,囊胞内は液体貯留により均一を呈し,時にdebris貯留や出血が起こると様々な画像所見を呈する.WONの画像所見は,内部は液体および壊死物質を示す不均一な貯留で形成され,様々な程度の多房性形態を呈する.辺縁には境界明瞭な壁を持ち,完全に被包化されているのが特徴である.
前述の通り膵囊胞は複数の疾患から成るため,それぞれの疾患の形態的特徴から診断を進める必要がある.その画像診断法としては,AUS・CT・MRCPに加えて,EUSや必要に応じて内視鏡的逆行性膵管造影検査(endoscopic retrograde pancreatography:ERP),管腔内超音波検査(intra ductal ultra sonography:IDUS),経口膵管鏡(peroral pancreato scopy:POPS)などの内視鏡診断法を用いて精査し,慎重に鑑別診断を行う.特にEUSは膵臓の分解能に優れているため,他のモダリティでは指摘できないような微細な異常や構造変化をとらえることが可能であり,膵囊胞性腫瘍の診断に重要な役割を担う.
膵腫瘍の診断に際し,まず充実性腫瘍か囊胞性腫瘍か充実性腫瘍と囊胞性病変が混在するかを区別した上でさらなる鑑別診断を進めていく.
各疾患の鑑別のポイントとしては,前述の通り膵腫瘍の幾つかは好発年齢,性別や発生部位に特徴を有する(SPN:主に若い女性,MCN:ほとんどが女性,MCNやLECは尾部に多いなど)ため,それら基礎知識を把握しておく必要がある 27),28).また,画像診断においては,①病変の存在部位,②単発か多発か,③輪郭,④内部構造,⑤内容液の性状,⑥囊胞壁や隔壁の性状(被膜や壁肥厚があるか,結節があるか),⑦vascularity,⑧背景膵の膵管および膵実質の状態,囊胞と膵管との交通の有無,に着目し,その鑑別診断に繋げていく.
Ⅴ-1 囊胞性腫瘍の鑑別診断(Table 2)
膵囊胞性腫瘍のまとめ.
具体的な診断方法であるが,囊胞性腫瘍の場合,IPMN,MCN,SCNの違いはその形態にある(Table 2).MCNは囊胞内囊胞(cyst in cyst)の構造を示すのに対して,IPMNはぶどうの房状の構造を呈し,SCNは中心部に小さな囊胞が集離する蜂巣状の構造を伴うのが特徴である.また,SCNでは小囊胞の集簇の描出が決め手となるため,EUSで隔壁に着目して小囊胞の集簇の有無を見極めることが重要である(Figure 11).その他鑑別のポイントとして,MCNやIPMNなどの粘液産生腫瘍はその粘稠な内溶液を反映しUSでデブリ様の内部エコーあるいはCTで内部濃度の上昇を呈することがあるが,SCNでは漿液性の内溶液のため内部エコーや内部濃度の上昇は認めず,solid typeであってもMRIのheavy T2画像で水と同程度の高信号を呈する.また,MCNはIPMNと異なりそれぞれの囊胞腔が独立しているため,囊胞腔ごとに内溶液の性状が異なることがある(independent cyst).尚,PPCでも炎症性のデブリを反映し内部エコーを認めることがある.時に鑑別が困難となるIPMNとmacrocystic type SCNの鑑別点として最も重要なのは,主膵管との交通を有するか否かである.交通がある場合はIPMNを第一に考えるべきであるが,CTやMRIなどの画像検査では主膵管との交通がはっきりしないことも多く,その場合には必要に応じてERPを行う.また,SCNと類似した画像を呈する疾患として粘液癌があるが,MRIのheavy T2画像で粘液のため淡い高信号を呈する点がSCNとは大きく異なる点なので鑑別に有用である(Figure 12).

SCN症例.
a:US画像.b:CT画像.c:MRI T2強調画像.膵頭部に多房性囊胞を認め,いずれの画像でもmicrocystは同定できず分枝型IPMNとの鑑別は困難.
d:EUS画像.囊胞の中央の隔壁内にmicrocystの集簇を認め,この病変がSCNであると診断可能となる.

粘液癌とSCN症例の対比(左が粘液癌,右がSCN症例).
ダイナミックCT,MRI T2強調画像,EUSいずれの画像でも膵尾部に似たような多房性囊胞性病変を認め,両者の画像上の鑑別は困難.
MRCP画像.粘液癌では病変は淡い高信号,SCNでは水と同程度の高信号を呈するため,両者の鑑別が可能となる.
充実性腫瘍と囊胞性病変が混在している時は,①充実性腫瘍の内部が囊胞化を呈する場合,②囊胞性腫瘍の内部の充実部が大きく描出される場合,③充実性腫瘍による膵管狭窄のために周囲に貯留囊胞や仮性囊胞を形成する場合のいずれかであり,どれに当てはまるか各種画像検査から考察した上で鑑別診断を進めていく.
充実性腫瘍と囊胞性病変の混在パターンの場合にまず注目すべき所見として,囊胞成分と充実成分のいずれが主体かである.囊胞成分が主体であれば,囊胞性腫瘍の内部に充実成分が出現した病変である可能性が高くなり,充実成分が主体であれば,充実性腫瘍が囊胞変性(あるいは壊死)した病変である可能性が高くなる.また,充実部分の形態からも類推は可能であり,例えば囊胞に突出するような乳頭状の隆起であれば囊胞性腫瘍内に出現した充実部分の可能性が,囊胞部分がまるでくり抜いたかのような形で残る充実部が三日月状の形態であれば充実性腫瘍が囊胞変性した病変の可能性が高くなる(Figure 9).囊胞性腫瘍に充実部分が出現した場合は,IPMNやMCNの悪性化を疑うことになる.充実性腫瘍の囊胞変性を疑う場合は充実部分の輪郭の形態,造影態度などからⅣで述べた腫瘍の中のどれに当てはまるか鑑別していく.ただし,充実性腫瘍の大部分が囊胞変性(あるいは壊死)した場合には,あたかも囊胞性腫瘍であるかのような画像を呈することがある.そのような場合には,残存する充実部分の所見に注目することで正しい診断にたどり着くことができるが,充実部分がほとんどない場合は正しい診断を導くことができないこともある(Figure 13).同様に囊胞性腫瘍の大部分が結節に置換された場合には,あたかも充実性腫瘍であるかのような画像を呈するため,その診断には困難を極める(Figure 14).

囊胞成分が主体の内分泌腫瘍症例(天理よろづ相談所病院南竜城先生より画像提供).
a:CT画像.膵体部に類円形の囊胞性腫瘍を認める.囊胞の被膜は淡く造影されるものの充実成分ははっきりしない.
b:EUS画像.囊胞が主体であるが,輪郭の被膜はやや厚い.
c:MRCP画像.腫瘍全体は水成分を反映して高信号を呈する.
d:病理標本.囊胞の辺縁に細胞集塊を認め,内分泌腫瘍細胞であった.

結節が充満した分枝型IPMN症例.
a:CT画像.膵体部に内部に石灰化を有する類円形の腫瘍を認める.腫瘍は比較的均一な淡い造影効果を呈し,囊胞性腫瘍というよりは充実性腫瘍を疑う.
b:MRI T2強調画像とheavy T2画像.腫瘍全体は水成分を反映して高信号を呈する.
c:EUS画像.やや高エコーの充実成分が主体であるが,辺縁のEUSプローブ近傍に無エコー部分がみられる.
d:病理標本.腫瘍の内部を結節が占めており,囊胞部分は辺縁のごく一部のみであった.膵胆道型のHG-IPMNであった.
膵囊胞の診断法について解説した.超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)の普及に伴い,膵充実性腫瘍については組織診断が容易になった一方で,囊胞性病変については播種の問題などからEUS-FNAは施行できない場合がほとんどであり,各種画像検査による画像診断に委ねざるを得ないのが現状である.画像診断から導いたそれぞれの疾患に応じて外科切除か経過観察か治療方針を決定していくことが重要である.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし