日本消化器内視鏡学会雑誌
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67 巻, 2 号
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総説
  • 鈴木 晴久, 河村 玲央奈, 木暮 宏史
    2025 年67 巻2 号 p. 105-115
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/20
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    かつて咽頭・頸部食道領域の癌は,内視鏡観察が困難であるため,診断の遅れから侵襲的な治療が必要であることが多かったが,近年の画像強調内視鏡の導入と普及に伴い,早期発見が可能となり,低侵襲な内視鏡治療が提供できる時代になってきた.但し,この領域の内視鏡治療は,通常の消化管腫瘍の内視鏡治療と違い,狭い空間での処置となるため,全身麻酔・気管内挿管,耳鼻科のサポート下で喉頭展開し処置を行うなど,この領域に特化した治療戦略を講じる必要がある.治療後は食道・頭頸部領域に異時性癌の発症リスクが高いため,転移再発の検索も含めて,定期的なサーベイランスが重要であり,早期発見ができれば根治可能であることも多いため,適切なサーベイランス方法の確立が急務である.

  • 栗田 亮
    2025 年67 巻2 号 p. 116-133
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/20
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    膵囊胞性病変が無症状で偶発的に発見される機会は増えている.臨床の場で遭遇する膵囊胞の診断名はその頻度から限られており,各腫瘍の病理と画像所見の特徴を把握しておくことで鑑別診断の多くが可能となる.囊胞性腫瘍では,膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN),粘液性囊胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm:MCN),漿液性囊胞腫瘍(serous cystic neoplasm:SCN)の鑑別を行うことになる.その他,充実性腫瘍の囊胞化あるいは充実性腫瘍の周囲に貯留囊胞や仮性囊胞を形成する場合には充実と囊胞の混在する病態を呈するため鑑別診断に際し注意する必要がある.

症例
  • 堀川 宜範, 石山 晃世志, 濱田 晃市, 鉄地川原 香恵, 志波 慶樹, 永橋 尭之, 石川 雅文, 佐久間 秀文
    2025 年67 巻2 号 p. 134-139
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/20
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    症例は34歳の女性.食道癌術後の嚥下困難精査目的のEGDで,吻合部直上から口側に広がる径15mmの発赤調の平坦な病変を認めた.残存食道に発生した径15mmの粘膜内扁平上皮癌と診断し,ESDを施行した.しかし,吻合部が狭窄を呈しており,処置用内視鏡が通過できなかった.そこで,ESDの前に,狭窄の解除が必要と判断した.しかし,病変肛門側の切除断端陰性を確保することも重要であると考え,病変以外の部分に対してradial incision and cutting(RIC)を施行した.RICで病変部以外の瘢痕を除去したことで処置用内視鏡が通過可能となり,ESDで一括切除し得た.切除標本の病理組織学的結果は,粘膜上皮にとどまる高分化型扁平上皮癌であり,水平断端,垂直断端ともに陰性であった.

  • 佐藤 真生, 吉田 樹, 松橋 保, 高橋 壮, 福田 翔, 南條 博, 廣嶋 優子, 飯島 克則
    2025 年67 巻2 号 p. 140-148
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/20
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    電子付録

    十二指腸球部に60mm大の有茎性の粘膜下病変を認められた.Brunner腺過形成が疑われたが,病変の大きさから切除を検討された.しかし,本人に切除の希望がなかったため,経過観察をされた.診断から11年後,心窩部痛をきたし,CTで同病変の十二指腸水平部への嵌頓を認めた.そこで,病変をESDで切除した上で,開腹で切除検体を回収した.最終的に75mm大のBrunner腺過形成と診断された.Brunner腺過形成は,十二指腸の粘膜下病変として発見されることが多いが,確定診断は容易ではない.したがって,増大傾向がある場合や通過障害の原因となる場合には,腫瘍との鑑別のためにも切除の対象となることがある.今回,経過観察中に増大し,嵌頓をきたした十二指腸Brunner腺過形成を内視鏡的に切除しえたが,病変の体外への回収には開腹手術を要した症例を経験した.

  • 中野 貴博, 奥山 祐右, 澤井 剛, 植原 知暉, 提中 克幸, 田中 信, 稲田 裕, 中津川 善和, 戸祭 直也, 佐藤 秀樹
    2025 年67 巻2 号 p. 149-154
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/20
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    症例は41歳男性.サバとカツオの刺身を摂取した翌日から心窩部痛が出現し,右下腹部に移動したため,救急外来を受診した.腹部造影CTで終末回腸に浮腫状の壁肥厚,周囲の脂肪濃度上昇と腹水を認めた.病歴より小腸アニサキス症を疑い,経肛門的シングルバルーン小腸内視鏡検査を施行した.終末回腸は粘膜下腫瘍様に隆起し,管腔は狭小化していた.回腸粘膜に刺入したアニサキス虫体を認め,生検鉗子で摘出した.症状は速やかに改善し,処置翌日に退院した.4週間後の内視鏡観察では,以前の所見は消失していた.小腸アニサキス症も,胃と同様に虫体の摘出が早期の症状の改善につながり,粘膜所見の変化を観察することができた貴重な症例である.

  • 束野 奈津己, 宮瀨 志保, 三浦 浩美, 柚留木 秀人, 藤山 重俊, 竹内 真衣, 大島 孝一
    2025 年67 巻2 号 p. 155-161
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/20
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    症例は41歳男性.膠原病に対し生物学的製剤を使用されていた.下血で救急病院を受診し,直腸肛門部潰瘍を認めた.潰瘍からの生検でcytomegalovirus感染や医原性リンパ増殖性疾患が疑われ,生物学的製剤を中止したが改善しなかった.初回指摘から約5カ月後に,直腸肛門部潰瘍からの再生検でリンパ腫を疑う細胞が少数認められ,その後,HIV感染とEpstein-Barr virus(EBV)-encoded small RNA陽性所見が判明し,EBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の形態を示すHIV関連リンパ腫と最終診断された.直腸肛門病変では常にHIVを含めた性感染症を鑑別に挙げるべきと考えられたため報告する.

手技の解説
  • 横井 千寿, 赤澤 直樹, 秋山 純一
    2025 年67 巻2 号 p. 162-169
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/20
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    世界中の内視鏡医を魅了し,瞬く間に全世界に普及したESDは,1990年代末に本学会員の誇るべきエキスパート達の情熱が共鳴し合い「産みの苦しさ」を乗り越えて誕生した.国内の保険収載は,2006年の胃ESDの承認を皮切りに,2008年に食道,2012年に大腸へ拡がった.ESDをスマートに成功させる秘訣を一つだけ挙げるとすれば,「カウンタートラクションの確保」である.良好なカウンタートラクションは,組織に適度な張力をもたらし,ピンポイントでスピーディな切開・剝離を可能にし,無血ESDを達成させ,穿孔リスク低減に繋がる.近年では様々なトラクションデバイスが開発され,術者は選択の幅が増えているが,安価で導入しやすいデンタルフロスと止血クリップを用いた牽引法は多くの施設で汎用されており,特に重力や液体貯留の影響で視野確保が困難になる胃体中上部大彎病変で有用であることは,ランダム化比較試験でも示唆されている.本稿では,カウンタートラクションを得るための工夫として2点牽引法を紹介する.

資料
  • 小塚 和博, 小原 英幹, 松井 崇矩, 藤澤 明彦, 龍田 美和, 小林 三善, 安田 貢, 中谷 夏帆, 多田 尚矢, 千代 大翔, 小 ...
    2025 年67 巻2 号 p. 170-179
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/20
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    電子付録

    【目的】上部消化管内視鏡検査における十二指腸の観察方法は確立されていない.そのため,われわれが新たに考案した十二指腸観察手順の実装性と腫瘍検出能を検討した.

    【方法】本研究は2施設での前向き観察研究である.われわれの考案した7枚撮像十二指腸観察手順(Seven Pictures Rule:7PR)は十二指腸球部前・後壁,上十二指腸角とその対側,下行部乳頭側とその対側,水平部の合計7部位で各一枚撮像する方法である.主要評価項目は7PRの完遂率とし,副次評価項目は腫瘍検出率,部位毎の腫瘍検出率,観察時間,スコープ径毎の7PR完遂率とした.

    【結果】対象は1,549名.7PRの完遂率は81.1%であった.腫瘍検出率は,要治療腫瘍全体では0.84%,腺腫では0.71%,癌は0.06%であった.要治療腫瘍の検出は下行部の乳頭対側(69.2%)で最も多く,水平部(0%)ではみられなかった.十二指腸の平均観察時間は53.1秒であった.通常径内視鏡と超細径内視鏡間の7PR完遂率の比較では,84.4%(1,077/1,276) vs. 65.6%(179/273)であった(P<0.01).

    【結論】7PRは受容性のある十二指腸観察法であり,標準観察手技になりうる.

    【試験登録】大学病院医療ネットワーク臨床試験登録(UMIN登録番号000035344).

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 千野 晶子
    2025 年67 巻2 号 p. 187
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/20
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    【背景】近年,APC(adenoma per Colonoscopy)が大腸内視鏡検査の質的指標として評価されている.そこで,AI(Artificial Intelligence)システム併用の有無による大腸内視鏡検査での腺腫の検出率について,APCによる評価が行われた.

    【方法】本試験は,米国をベースとした多施設ランダム化臨床試験の前向き研究である.使用したAIシステムは,EW10-EC02(CAD-EYE;Fujifilm,Tokyo,Japan)である.対象者は,45歳以上のスクリーニングもしくは,ポリープ切除後3年以上が経過した平均リスク被験者となっている.使用電子スコープは高性能機種を用い,CAD-EYE併用群(CAC)または,非併用群(CC)のいずれかを受けるかは,事前に治療コード表と各施設の電子データベースを利用し,無作為化を行った.主要評価項目は,APCおよびIRR(Incident rate ratio)とし,副次評価項目は,PPV(総ポリープ数のうちの腺腫の割合)とADR(adenoma detection rate)等となっている.

    【結果】対象者は1,031件(平均年齢59.1±9.8歳;男性割合49.9%)で,Intention-to-treat analysisにてCAC群520件に対し,CC群523件,2群間で年齢や性別,人種,大腸内視鏡検査の適応に差はなかった.CAC群とCC群のAPCは,それぞれ0.99±1.6vs 0.85±1.5(P=0.02)であり,IRRは1.17(1.03- 1.33,P=0.02)であった.双方の抜去時間に有意な差はなかった(11.28±4.59分vs 10.8±4.81分;P=0.11).PPVは,CAD群とCC群でそれぞれ48.6%vs 54%(95%CI:-9.56%~ -1.48%),ADRは46.9%vs 42.8%であり,Advanced DRは6.5%vs 6.3%,Sessile serrated lesion DRは12.9%vs 10.1%,Polyp DRは63.9%vs 59.3%であった.大腸内視鏡あたりのpolyp数は,CAD群で1.68±2.1,CC群で1.33±1.8,IRRは有意に高かった(1.27;1.15- 1.4;P<0.01).

    【結語】新規AIシステム併用した大腸内視鏡検査において,抜去時間の影響を受けることなく,検査あたりの腺腫の発見率が向上する結果となり,AIシステム導入による大腸内視鏡検査の質の向上が示された(Clinical Trials. gov NCT04979962).

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