2025 年 67 巻 4 号 p. 281-288
薬剤に起因する胃粘膜傷害および胃粘膜変化は,日常診療で頻繁に遭遇する消化管病変の一つである.多くの薬剤が胃粘膜に影響を及ぼすが,その発症機序や内視鏡所見,病理組織所見は薬剤ごとに異なる.本総説では,非ステロイド性抗炎症薬,プロトンポンプ阻害薬およびボノプラザン,ビスホスホネート,鉄剤,抗生物質,酢酸亜鉛,免疫チェックポイント阻害薬,オルメサルタン,炭酸ランタンなど,代表的な薬剤による胃粘膜病変について,内視鏡所見の特徴を中心に概説する.
Drug-induced gastric mucosal injury is a common gastrointestinal condition encountered in clinical practice. Various medications can damage the gastric mucosa through distinct mechanisms, resulting in characteristic endoscopic findings and histopathological features. This review highlights the endoscopic findings associated with several representative drugs, including nonsteroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs), proton pump inhibitors (PPIs), vonoprazan, bisphosphonates, iron supplements, antibiotics, zinc acetate, immune checkpoint inhibitors, olmesartan, and lanthanum carbonate. NSAIDs are a major cause of drug-induced gastric injury, often presenting endoscopically as erosions, ulcers, and bleeding predominantly in the antrum and pyloric regions. Risk factors include the concomitant use of corticosteroids or bisphosphonates, as well as Helicobacter pylori infection. PPIs and vonoprazan can induce unique changes, such as multiple white and flat elevated lesions, cobblestone-like mucosa, and enlargement of hyperplastic or fundic gland polyps. Notably, web-like mucus may impair visualization, necessitating a thorough examination. Bisphosphonates and iron supplements frequently cause direct mucosal irritation resulting in erosive lesions. Zinc acetate has been reported to induce gastric mucosal changes, including erythema, erosions, and a white coating, particularly in the gastric body. Immune checkpoint inhibitors, widely used in cancer immunotherapy, can result in immune-related gastric injuries. Lanthanum carbonate deposits in the gastric mucosa appear whitish on endoscopy. This review emphasizes the importance of recognizing drug-specific endoscopic findings to improve the diagnostic accuracy and guide appropriate management. Familiarity with these distinctive patterns is crucial for endoscopists to deliver optimal care to patients with drug-induced gastric mucosal lesions.
薬剤起因性胃粘膜病変は,さまざまな薬剤が直接的または間接的に胃粘膜に影響を及ぼし,炎症,潰瘍,出血,色素沈着,形態変化などを引き起こす病態である.近年,高齢化に伴う薬剤の長期使用の増加や新薬の上市により,これらの病変の発生リスクは上昇している.内視鏡検査は,胃病変を早期に発見し,適切に対応する上で欠かせない診断手段である.原因となる薬剤は,ジクロフェナクやロキソプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs),プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitors:PPI)やボノプラザンなどの酸分泌抑制剤といった一般診療で頻用される薬剤から,免疫チェックポイント阻害薬や炭酸ランタンなど特定の疾病に使用される薬剤まで多岐にわたる.胃粘膜病変の内視鏡像は薬剤ごとに異なるため,典型的な所見に精通しておくことは内視鏡医にとって重要である.本稿では,薬剤による胃粘膜病変の内視鏡所見について,代表的な薬剤ごとにその特徴を解説する.
NSAIDsは,胃粘膜保護作用を持つプロスタグランジンの産生を阻害することで,胃の血流を低下させ,粘膜傷害を引き起こす 1),2).NSAIDs使用者においては,潰瘍,びらん,出血などの病変が内視鏡で観察されることがある(Figure 1).特に低用量アスピリン服用者では出血性潰瘍を含め出血のリスクが増加することが知られており,糖質ステロイドやビスホスホネートの併用,高用量NSAIDsや2種類以上のNSAIDs使用も,NSAIDs起因性胃粘膜傷害のリスク因子である 3).したがって,内視鏡検査前に投薬内容を確認することが重要である.NSAIDsによる胃粘膜傷害は,前庭部から幽門部にかけて発生しやすく,多発する傾向を示す.潰瘍は比較的浅いものが多いが,出血を伴う合併症の頻度は比較的高いと報告されている 4),5).一方で,NSAIDsの投与期間により粘膜傷害の部位は異なり,長期投与例では前庭部に発生しやすいのに対して,短期投与例では体部に潰瘍を生じるとの報告もある 6).

NSAIDs服用者の胃体部後壁にみられた胃潰瘍.
H. pylori感染は,NSAIDs使用者における胃粘膜傷害のリスクをさらに増加させる要因と考えられている.H. pylori感染患者においてNSAIDs起因性胃粘膜傷害の有病率が高いことが複数の研究で報告されており,特にNSAIDs投与開始前に除菌を行うと潰瘍発生を抑制する効果が大きい 7),8).このため,NSAIDsを長期使用する患者に対しては,H. pyloriの感染状態を確認し,必要に応じて除菌治療を行うことが望ましい 9).また,NSAIDsによる胃粘膜傷害の再発予防策としては,PPIの併用が推奨される 3).さらに,選択的COX-2阻害薬の使用は,従来のNSAIDsに比べて胃粘膜傷害のリスクを低減させることがわかっており,消化性潰瘍の発症予防の観点からは,疼痛管理において選択的COX-2阻害薬の使用が推奨される 3),10).いずれにせよNSAIDsを使用する際には,最低限の有効量を最短期間で使用することが基本であり,漫然と使用することは避けるべきである.
PPIやボノプラザンは,胃酸分泌を抑制することで逆流性食道炎や消化性潰瘍の治療に広く用いられているが,長期使用により胃粘膜にさまざまな変化を引き起こすことがある.内視鏡所見としては,多発性白色扁平隆起,胃底腺ポリープや過形成性ポリープの増大,敷石状粘膜,黒点,白点,粘膜発赤,蜘蛛の巣様粘液などが挙げられる 11).
多発性白色扁平隆起は穹窿部から体上部に好発する,丈の低い白色調の表面隆起性病変である(Figure 2矢印) 12),13).また,PPIやボノプラザンの服用により,既存の胃底腺ポリープが増大,あるいは新規に出現することがある.これらはしばしば多発し,増大すると亜有茎性の水腫様の外観を呈する(Figure 3) 14).さらに,発赤調の過形成性ポリープが出現し,薬剤の服用継続に伴い増大することが知られている(Figure 4-a) 15).敷石状粘膜は,周囲粘膜と同色調の小顆粒状隆起が集簇したものであり,皺襞間にみられる(Figure 5) 16).黒点は黒子様の小斑点であり,胃底腺領域に散在して認められる(Figure 2矢頭) 17).また,胃底腺ポリープの表面にも黒点が観察されることがある.白点は通常光観察で視認できる1mm以下の白色点状病変を指す(Figure 6).胃癌でみられる白色球状外観(white globe appearance)に類似した内視鏡所見であり,PPIまたはボノプラザン内服症例のほか,自己免疫性胃炎でもみられることがある 18),19).粘膜発赤は体部大彎を中心とする斑状または線状の赤色の色調変化で,薬剤の服用期間とは無関係に生じる(Figure 7) 20).蜘蛛の巣様粘液は,水洗では除去が困難な透明感のある白色の粘液であり,ボノプラザンを内服している症例で,胃の穹窿部から体部にかけて認められることがある(Figure 8) 21).

PPI服用者の穹窿部にみられた多発性白色扁平隆起(矢印)と黒点(矢頭).
a:白色光観察.
b:Narrow-band imaging観察.

PPI(エソメプラゾール)内服患者で観察された水腫様に腫大した多発性の胃底腺ポリープ.

a:胃に多発性の過形成性ポリープを認める.
b:ボノプラザン服用を中止し,H2受容体拮抗剤へ変更したところ,7カ月後にはポリープが著明に縮小していた.

敷石状粘膜の内視鏡像.本症例では体部前壁の粘膜が小結節状となっている.周囲粘膜とは同色調である.

体部粘膜に複数の白点を認める(a:白色光,矢印).Narrow-band imaging観察で明瞭に認識できる(b:矢印).

ボノプラザン内服症例で観察された体部大彎の粘膜発赤.

ボノプラザン内服患者で体部にみられた蜘蛛の巣様粘液.水洗では除去が困難であった.
上記のような胃粘膜変化が認められる症例では,一般的にPPIやボノプラザンの休薬や中止は不要である.しかし,蜘蛛の巣様粘液が原因で内視鏡観察が不十分となる場合は,内服薬を一時的に休止して再検査を検討すべきである 11).また,過形成性ポリープが増大し出血を伴う場合は,さらなる酸分泌の抑制ではなく,むしろPPIやボノプラザンを中止するか,H2受容体拮抗剤へ変更することで,過形成性ポリープの縮小が期待できる(Figure 4-b).
経口鉄剤やビスホスホネートは,消化管粘膜に対して直接的な刺激作用を持つ 22).特にビスホスホネートは食道および胃粘膜に強い刺激を与え,粘膜傷害を引き起こすリスクがあるため,患者への投与時には適切な服薬指導が重要である.鉄剤や,抗生物質であるドキシサイクリンもびらん性病変の原因となる 23),24).
酢酸亜鉛錠は,亜鉛欠乏症やウィルソン病の治療に使用される薬剤である.筆者らは,酢酸亜鉛内服中で上部消化管内視鏡検査を実施した47例を対象に後ろ向き観察研究を行い,そのうち29例(62%)に胃粘膜傷害を認めることを明らかにした(Figure 9) 25).胃病変の内視鏡所見としては,粘膜発赤(93%),びらん(90%),白苔付着(86%),潰瘍(31%)が挙げられた.病変の局在部位は,M領域(97%),U領域(66%),L領域(46%)の順に多く認められた.特に,“体部の白苔付着を伴うびらんと周囲の粘膜発赤”は,酢酸亜鉛起因性胃粘膜傷害の典型像として特徴づけられる 26).さらに,内服開始2日後に吐血で発症した症例を経験しており,酢酸亜鉛内服開始後早期に胃粘膜傷害を発症する可能性が示唆される 25).出血性胃潰瘍をきたすこともあり得るため,酢酸亜鉛錠を投与されている患者では,胃粘膜傷害の発生に留意する必要がある.

酢酸亜鉛内服患者でみられた胃粘膜傷害.白苔を伴うびらんで,周囲に発赤がみられる.
免疫チェックポイント阻害薬は免疫細胞の活性化を介して抗腫瘍効果を発揮する一方で,自己反応性T細胞を活性化し,自己免疫性の副作用である免疫関連有害事象(immune-related adverse events:irAE)を引き起こす可能性がある.irAEによる消化管病変としては大腸炎がよく知られているが,頻度は低いものの胃炎も発生することがある(Figure 10) 27).自験5症例では粗造粘膜,白色浸出物,発赤,易出血性をそれぞれ4例に認めたほか,浮腫が1例,小潰瘍が1例でみられ,拡大観察を行った4例では腺管構造が消失していた 28).既報のirAE胃炎36例を集計した結果では,内視鏡的特徴として頻度の高い順に,発赤(44%),びらん・潰瘍(42%),脆弱粘膜(22%),浮腫(19%),白色浸出物(17%),正常粘膜(11%),顆粒状粘膜(8%),出血性胃炎(6%)が認められたと報告されている 29).ステロイド治療を必要とするかどうかは粘膜傷害の程度に応じて判断する.

免疫チェックポイント阻害薬による胃粘膜傷害.体部~前庭部にかけて白色浸出物と発赤,自然出血を認める.
偽メラノーシスは,黒色の色素が粘膜のマクロファージ内に蓄積するものである.偽メラノーシスの患者は利尿薬やβ遮断薬,鉄剤を服用していることが多く,これらの薬剤が原因と推測されている 30).内視鏡では胃粘膜の黒色の色素沈着として観察されるが,無害な病態と考えられており,粘膜傷害や臨床症状は伴わないため,治療介入を行う必要はないとされている.
高血圧治療薬として広く使用されるアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬の一つであるオルメサルタンは,セリアック病様症状を伴う腸症を引き起こすことが知られている.また,まれではあるが,オルメサルタンによる胃炎の発症も報告されている.その頻度の低さゆえに特徴的な内視鏡所見は明らかとなっていないが,複数の症例を病理学的に解析した報告では,上皮の脱落を伴う胃炎が多いことが示唆されている 31).さらに,膠原線維性胃炎(collagenous gastritis)として知られる,上皮直下の膠原線維帯の肥厚を特徴とする病理学的パターンを呈する症例も報告されている 32).
炭酸ランタンは,慢性腎不全患者の高リン血症の是正に使用される.副作用として嘔吐や便秘などの消化器症状がある一方で,内視鏡検査では胃粘膜に白色の色素沈着が観察されることがある(Figure 11) 33).微細な白色病変がランタン沈着を示す特徴的な内視鏡所見であり,narrow band imagingやblue LASER imagingで明瞭に認識できる.非萎縮粘膜ではびまん性白色病変を呈する傾向があり,内服薬の長期接触により体部後壁~小彎にランタンが沈着することが多い.萎縮粘膜や腸上皮化生領域では環状または顆粒状白色病変がみられる.胃粘膜におけるランタン沈着の病的意義は不明であるが,これまでに健康障害は報告されておらず,胃ランタン沈着を理由に服薬中止は不要と考えられている.

炭酸ランタン服用患者でみられた環状白色病変(a:白色光).Narrow-band imaging観察で白色沈着物が明瞭に観察される(b).
本総説では,主要な薬剤による胃粘膜の変化と,その内視鏡的特徴について概説した.薬剤起因性の胃粘膜病変は多岐にわたるため,その診断には内視鏡的および病理学的な知見が不可欠である.内視鏡検査で特徴的な胃粘膜病変が認められた場合,薬剤の副作用である可能性を考慮し,患者の薬剤使用歴を確認する必要がある.そのため,内視鏡検査前には個々の患者の薬剤使用歴を詳細に確認することが望ましい.あるいは,「お薬手帳」や診療録など,薬剤使用歴がわかる資料を内視鏡検査中に速やかに参照できるよう準備しておくべきである.
内視鏡医が薬剤起因性の胃粘膜病変に精通しておくことは,以下の点で重要である.第1に,薬剤による粘膜傷害が疑われる場合,迅速かつ適切に薬剤の投与中断を指示することで,患者の症状や病態の改善を図ることが可能である.第2に,腫瘍性病変やその他の胃粘膜病変との鑑別診断を行う際に,薬剤が原因となる可能性を念頭に置くことで,より正確な診断に繋げることができる.このように,薬剤起因性の胃粘膜病変についての知識を持つことは,診療の質を向上させるために欠かせないと言える.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし