日本消化器内視鏡学会雑誌
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Letter to the Editor
Letter to the Editor
外間 昭
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2025 年 67 巻 4 号 p. 340

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小林ら 1の出血性大腸毛細血管拡張症の解説を興味深く拝読した.特に,アルゴンプラズマ凝固治療の詳説は読者にとって極めて有用と思われた.しかしながら,本症の原因として知られているHeyde症候群についての記載がないことを指摘し,その診療の進歩を述べたい.Heyde症候群とは,Heyde 2が報告した大動脈弁狭窄症(aortic stenosis:AS)に本症が合併する病態である.ASの脈圧低下で続発する毛細血管拡張に,狭窄弁部での早い血流によって血小板凝集に関わるvon Willebrand factor(VWF)が破砕・変性される出血傾向が加わって生じる機構が明らかになった 3.また,VWFの変性が毛細血管増生をさらに促すとも言われている.疫学的にも米国の報告 4では,毛細血管拡張症の31%にASが合併している.このような病態の解明が本症の治療に大きく寄与し,Heyde症候群では大動脈弁置換術や低侵襲の経カテーテル大動脈弁留置術によって難治性の消化管出血が高率に改善している 5.おわりに,私も経験したが 6,本症に遭遇した際,潜在するASとVWF異常を評価する重要性とASの治療によって本症が改善する可能性を強調したい.

Letter to the Editorへの質問に関する返答

この度はわれわれの報告「下部消化管出血をきたす大腸毛細血管拡張症の臨床的特徴と治療」に貴重なご意見をいただき誠にありがとうございます.ご指摘のとおり,大腸毛細血管拡張症出血において大動脈弁狭窄症に合併する消化管出血(Heyde症候群)はその原因疾患として重要なものと考えます.

Heyde症候群の原因は狭窄弁部での高いずり応力によるvon Willebrand因子の高分子多量体欠損による後天性von Willebrand症候群と解明されております 1.Tamuraらは,重症大動脈弁狭窄症の大半で血液学的には後天性von Willebrand症候群を発症していることを報告しております 2.大動脈弁狭窄症と消化管出血に関する疫学データとしては,アイルランドにおけるICD-9に基づく退院時データの大規模研究において,大動脈弁狭窄症と毛細血管拡張症に起因すると推察される出血に有意な相関が報告されており,大動脈弁狭窄症患者における消化管出血の発生率は0.9%,消化管出血患者における大動脈弁狭窄症の発生率は1.5%でした 3.すなわち,後天性von Willebrand症候群を呈する大動脈弁狭窄症患者の消化管毛細血管拡張症において,出血が問題となり,内視鏡処置を必要とするケースは実際には少ないと考えられます.

われわれの論文の主旨はあくまでもAPCの手技の解説であり,下部消化管出血をきたす毛細血管拡張症のリスク因子として個別にHeyde症候群には触れず,心血管疾患のみ記載しました.上記のようにHeyde症候群による下部消化管出血は実際には少ないことがその理由です.しかし重度の貧血や繰り返す消化管出血を引き起こす毛細血管拡張症においては,大動脈弁狭窄症や後天性von Willebrand症候群の検索が必須であると考えます.重要なご意見をありがとうございました.

なお当該疾患の治療としては,ご指摘のように経カテーテル的大動脈弁置換術などの大動脈弁狭窄症に対するアプローチが考慮されます 4.一方,Samiらは毛細血管拡張症からの著しい消化管出血を伴う患者では,大動脈弁置換術のほかに腸管切除も選択肢となりうる 5と考察していることも追記させていただきます.

この度は,われわれの報告に注目いただき,感謝申し上げます.

筑波大学附属病院 消化器内科

小林真理子,秋山慎太郎,奈良坂俊明

文 献
 
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