2025 年 67 巻 7 号 p. 1315
【背景】超音波内視鏡下エタノール注入療法(endoscopic ultrasonography-guided ethanol injection:EUS-EI)は,膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine neoplasms:PNENs)の治療戦略の一つとして近年実施されているが,外科的治療の代替としての役割は明らかにされていない.本研究では,前向き多施設共同研究を通じて,小型PNENの治療におけるEUS-EIの有効性と安全性について評価した.
【方法】病理学的に確認されたグレード1,直径≤15mmの腫瘍を有する患者を組み入れた.主要評価項目は有効性と安全性の評価であり,具体的には治療後1カ月および6カ月でのCTを用いた完全焼灼,治療後1カ月以内の有害事象,治療後1カ月での重篤な膵液瘻,および治療後6カ月での糖尿病の新規発症または悪化について評価した.EUS-EIの主要複合評価項目は,外科的治療に基づく過去の研究の結果と比較した.
【結果】PNEN患者25例(腫瘍径中央値10.1mm)をEUS-EIにて治療した.主要複合評価項目は,患者の76.0%(25例中19例)で達成され(95%CI 54.9%-90.6%),これは外科的治療の47.8%よりも有意に優れていた(P=0.008).有効性に関して,患者の88.0%(25例中22例)が1カ月および6カ月時点で完全焼灼を達成した(95%CI 68.8%-97.5%).安全性に関して,患者の96.0%(25例中24例)において,1カ月以内に膵液瘻を含む重篤な有害事象を認めなかった(95%CI 79.7%-99.9%).また,患者の84.0%(25例中21例)において6カ月時点で糖尿病の新規発症または悪化を認めなかった(95%CI 63.9%-95.5%).
【結論】EUS-EIは安全であり,小型のPNENsに対する有望な治療選択肢になり得ることが示唆された.
PNENsは比較的稀な腫瘍である 2).しかし,画像診断技術の進歩により発見される機会が増加している 3).特に径2cm以下の非機能性・低悪性度PNENsに対しては,経過観察や外科的切除に加え,近年では超音波内視鏡ガイド下局所療法が低侵襲治療として注目されている.EUS-EIはその一つであるが,外科的治療の代替としてのエビデンスは未だ明らかではない 4).
本論文は,日本の多施設が共同で行った前向き研究であり,腫瘍径15mm以下の小型PNENsに対するEUS-EIの有効性と安全性を評価したものである 1).結果として,複合主要評価項目において過去の外科的切除のデータ(自施設)を上回り,特に安全性(重篤有害事象,膵液瘻の回避)の面で優れていた.また完全焼灼率は88%と良好であったことより,EUS-EIは高い有効性と安全性を有していることが示唆された.さらに外科的切除と比較して,低侵襲性と膵機能温存の観点から大きなメリットがあると考えられる.
本研究では,治療戦略として1セッションあたりのエタノール使用量に上限を設定し,治療早期(3-5日後)に効果判定を行い,必要に応じて同入院期間中に追加治療を行うというプロトコルを採用した.これにより安全性を担保しつつ,単回治療では効果不十分な症例に対しても治療効果を高める工夫がなされており,良好な結果につながったと考えられる.
本研究においてEUS-EIは,小型PNENsに対して安全かつ有効で,低侵襲な治療選択肢となり得ることが示された.一方で,フォローアップ期間が6カ月と短く,治療後の長期的な再発率や予後については明らかになっていない.また,どのような症例(腫瘍径,部位,機能性の有無など)にEUS-EIが最も適しているか,適応の明確化が必要である.今後のさらなるエビデンスの集積により,PNENs治療におけるEUS-EIの役割がより明確になることが期待される.